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四、虚々実々……細工はりゅうりゅうでございますのよ! 十

「もともと刀剣の鑑定には戦士や武術家としての能力が要求される。俺は武術は得意だったが、鑑定の基本はあいつから教わった。あいつは、冒険者としてはいま一つだったが鑑定は一流だった。皮肉なことに、先代にかわいがられたのは俺のほうだった。逸品の数々を土産にしてきたからな……一人息子として、あいつは焦っていた」

「古代剣は、師匠や今の会長が見つけたものではないのでしょう?」


 ベレンの説明では、発見した冒険者は行方不明になったままだ。


「そうだ。あくまで関係ない。当時の俺達と同年代の男ではあった。とにかくあいつは古代剣に入れこんだ。先代も俺も偽物と結論づけたのに、あいつだけは本物と主張していて……先代の死がやってきた。商会をあいつが引きつぐのはなんの問題もなかったが、あいつはむりやり古代剣を本物にしようとした。だから絶縁した」

「そのときにはもう、古代剣はだれかがもっていったあとですよね。どうしていまになって会長の手に……」

「わからん。剣闘士の試合に魔法や祈祷は使えない。自分や装備にかけるのもなしだ。幸か不幸か、俺と先代が判断したとおりの品ならふつうの武器とかわらない」

「あの剣に殺されたら傷口に竜が浮かびますよね? それは魔法になるんじゃ……」

「それなりのからくりを用意しているんだろうな。俺達には知りようがない。優勝しないかぎりは」


 そこで、ベレンはある重要な事実に気づいた。


「お前、賭けは絶対禁止だっていっただろう!」

「師匠も許可したじゃないですか!」

「あれは……あー、そうだな。うん」

「師匠、私達は勝つんですよね?」

「当たりまえだ……いや、これまでに鑑定してきた武器でもじゅうぶん戦えるはずだが……」

「選手のよしあしもありますよね?」

「当然だ。装備だけで勝負はきまらない」


 にもかかわらず、ブロンゾはいかにも古代剣の力できまるといわんばかりだった。


「元締めと八百長するということでしょうか?」

「そこは不文律の線引きがあってな。元締めは元締め同士、鑑定士は鑑定士同士でしか八百長できない。でないとバレる危険が高くなりすぎる。あいつにそれを破るだけの決断がつくとは思えないし、あくまで古美術商だ。興行主とはちがう。ああ、つけくわえるなら御前試合は一応公営だ。元締めとか興行主とかいうのはそれぞればらばらの民間業者だからな、念のため」


 しばらく静かになってから、私は不意に閃いた。


「元締め同士の八百長を知ってから、勝つがわに古代剣を使わせたらいいんじゃありませんか?」

「それだ!」


 百回やって百回勝ちたければそうならざるをえない。

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