四、虚々実々……細工はりゅうりゅうでございますのよ! 八
にっくき恋仇……というより玉の輿仇……が追放前のギルモとつながっていたなら、ギルモの死にもまたかかわりがあると仮説をたててもいいだろう。聖女は私とギルモを相討ちさせて、どっちが残っても始末できるようにしたのか。ということは、私より前にギルモの相談にものっていたのか。
聖女自身が古代剣……偽物らしいけど……をふるったとは思えない。あんな華奢な体格では短剣がやっとだろう。ただ、ギルモを修道院からだすきっかけは聖女がつくったはずだ。
「ギルモがいた修道院も、リオクの肝煎りで建てられたってね。もっとも、出資者は第三王子だ。ああそうそう、第三王子はしょっちゅう修道院に寄付金をとどけにきてるよ。自分自身で」
なら簡単だ。王子をダシにすれば脱走してでも修道院からでるだろう。あとは、(偽)古代剣の持ち主がはっきりすれば……。
「報告はそれでおわりだ。ここからは俺の無料サービスなんで、ありがたく拝聴しなよ。古代剣の持ち主がはっきりしたぜ」
「なに!?」
「ええっ!?」
身をのりださずにはいられない。
「ウチのオーナーだ。ブロンゾ古美術商会。かつてはお前もそこの現地調査員……という名目の冒険者だったよな、ベレン」
「師匠!?」
「その話はやめろ」
「やめていいのか? お前の師匠、つまり先代のブロンゾ会長の仇をとりたくないのか? おっと、断っとくが現会長はお前の師匠ともギルモとも無関係だ。アリバイってやつが完璧にあるからな」
フードの男は、壁に飾られている肖像画をちらっと見た。そんな実力者だったのかと私もようやく思いしった。
「やめろといってるだろう!」
ベレンは机の脚を蹴った。がつんと音がして机の位置がずれ、書類が何枚か床に落ちた。
「へいへい。こっちに復帰すりゃ、真実ってのがわかるぜ。あの剣、偽物どころかすげぇ威力だ。赤ん坊が握っても一騎当千ってもんよ」
「なら八百長なんて必要ないじゃないですか」
「ロネーゼ、黙ってろ!」
ベレンが感情をむきだしにして、正直なところ怖い。でも引きさがってはだめだ。
「お弟子さんは純粋だね。あいにくと、古代剣はどこかの工房が作ったものじゃないから宣伝にならねぇ。だいいち偽物って鑑定結果もでてる」
「ますます意味不明です」
「俺達に古代剣を再現させたものをわたして『再現古代剣』としての折紙をつけさせ、決勝戦でお前らの折紙がついた武器を使う選手がそれを破って優勝という段どりだろうが!」
「ああ、よくわかったな。鍛冶屋もこっちで万端ととのえてる。あとは書類仕事だろ」
それは私の職掌だ。




