三、類は友を呼ぶ……とでもいうのかしら? 私は例外でございますわ! 九
「尼僧は、基本的には修道院からでません。特別な用事があればべつです」
「たとえば?」
「院内でまかなえない……またはまかなえなくなった品を買いにいくときとか、目上の方のお使いとか」
「まさか、彼女は修道院で殺されたのではないだろう。なら、用事ででたのか」
「そうなりますね」
「俺の師匠と、お前の陰謀の被害者……同じ犯人に殺されたであろう以外に共通点があると思うか?」
「行方不明の冒険者についてもっと知ることができればわかるかもしれません。でも、手がかりがないです」
「いや、一つだけある」
「ある……とは?」
「今日きた男だ。あいつに調べさせる」
「でも、頼むからにはお金がいりますよ」
眉間にしわを寄せて、ベレンは目をつぶった。
なにを考えているのかだいたいわかる。八百長に参加するのと引きかえにするべきかどうかで迷っているのだろう。馬を売る手もないではないが、日々の仕事にさしつかえる。
「師匠。お金なら私がどうにかします」
私には、迷いはなかった。
「どうやって」
「ドレスを売ります」
「あんなボロを?」
「口上は私が述べます」
「相場を知っているのか?」
「足りなければ賭けをします」
「賭け?」
「こうみえて、賭博には自信がありますから」
「そんなあやふやな話、とても許可できん」
「でも、このまま時間を捨てるよりはずっとましです」
ギルモの死で、私の危険は遠ざかったかに思える。彼女が強盗にでも殺されたのなら安心できただろう。いま、私はベレンの保護でどうにか生きのびている。彼に干渉してくる存在はつぶしてしまわねばならない。
「仮にやるとして、どこで博打を打つんだ?」
「中流階層の地区に適当なのがありますから。フードの人も、常軌を逸してまでふっかけたりはしないでしょう?」
「いいだろう。いっておくが、成功しようとすまいと修行はつづけてもらうぞ」
「はい、もちろん」
話はまとまった。ギルモの遺体は手のほどこしようがないのでおいていく。それより、仕事場にもどらないと。
帰り道は自然と足どりが早くなった。ちらっと太陽をたしかめると、だいぶ西にかたむいている。賭博場は夜に開く反面、衣類を扱うようなお店は日没には閉じてしまう。仕事場のドアを師匠が開けて、すぐに私は木箱へとりついた。
「師匠、ドレスを入れる袋と馬をだして頂けますか?」
ドレスをだしながら、私は頼んだ。
「どっちが助手なんだか……そうそう、明日から馬の世話はお前がやれよ。やり方は今日の用事がすんだら教えてやる」
「はい、よろこんで」
ぶつぶつつぶやきつつも、ベレンは協力してくれた。できれば乗りかたも知りたいが、さすがに無理だろう。




