コント『プレゼント』
ゲラゲラゲラコンテスト4応募作です。
ボケ-A(父親)
ツッコミ-B(息子)
子どもが自宅で、父親の帰宅を待っている。
Aーただいまー。
Bーお帰り、お父さん!
Aーケンジ、13歳の誕生日おめでとう!プレゼント買ってきたぞ。
Bーうわっ、ありがとう!袋、開けていい?
Aーいいぞ!開けてみろ。
Bープレゼント何だろうなぁ、新しいゲーム機かな、サッカーのスパイクかなー、…え?木材?あの、お父さん、この木材、何?
Aーたいまつだよ。
Bーは?
Aープレゼントの、たいまつだ。
Bーごめん、ちょっと意味がわからない。
Aーすまん、正確には、たいまつにするための木材だよ。
Bーそういうことじゃなくて!僕への誕生日プレゼントが、僕が欲しいって言ってた、ゲーム機でもスパイクでもなく、たいまつに落ちついたってこと?
Aーいかにも。
Bーいかにもじゃないよ!どこの中学生がたいまつもらって喜ぶんだよ!
Aーケンジ、自覚しなさい。ケンジは、中学生がたいまつもらって喜ぶと思い込んでる父親に育てられてるんだ。
Bーなんか、まわりくどいな、その言い方!スッと入ってこないよ。あのー、父さんはこれをもらって僕が喜ぶと真剣に思ってるんだね。
Aーケンジ、そんなに怒るな。お父さんはな、どんな暗闇でも、たいまつをもって先頭に立つ。そんなリーダーに、ケンジがなってほしいという願いを込めて、たいまつを贈るんだ。
Bーどんだけ遠いとこから連想してくんのよ!いつも遠回りなんだよ、父さん!
Aーそうだな、だからわかりやすく、理想のリーダー像がイメージできるように、スティーヴ・ジョブズと松下幸之助の自伝を買ってきたから、これも読みなさい。
Bーなら、最初からこれくれたらよくない!?なんで1回たいまつを噛ますんだよ。
Aーたいまつか。たいまつなー。あのな、小さい頃、父さんは貧しい家で育ったんだ。でも、父さんの父さん、つまりケンジのおじいちゃんは、エジソンとか、偉人の伝記や自伝だけは、好きなだけ買ってくれたんだ、だから、お前にもそういう本を贈りたいんだ。わかるか?
Bー…たいまつの話はどこに行ったんだよ!今、たいまつの話をしてるんだよ、僕は。
Aーたいまつ、たいまつって、どうしてお前はそんなにたいまつにこだわるんだ?
Bーそれはこっちのセリフだよ!…父さん、いい加減にしてくれ。もう、10回目だよ、このやりとり!なんで、僕の誕生日プレゼントは毎年たいまつなんだよ!
Aーいいじゃないか、たいまつで。
Bー良くないよ。去年、幼馴染のジュンジは、誕生日に新しい自転車を買ってもらってたのに、僕はたいまつ。今年、野球部のケンタは新しいバットを買ってもらってたのに、僕はたいまつ。恥ずかしくて何もらったか言えないよ!
Aーバットと、たいまつだったら、同じような形じゃないかー。
Bーウキウキ感が違うんだよ!
Aーたいまつダメかー。
Bーあのね、毎年楽しみにプレゼントを待って、父さんが帰ってきて、手に持ったホームセンターの紙袋を見た瞬間の絶望感が分かる!
Aーまあ、そう言うなよ、父さん会社帰りに、わざわざ遠回りしてホームセンターに寄ってきてるんだから。
Bーそこも遠回り!それは、ありがとう!でも残念なことに、13歳が欲しいものランキングに、たいまつは永遠に入らないんだよ!
Aーとはいえ、ケンジ。たいまつは凄いぞ。いつもみんなを明るく照らす、みんなを温かくする、そんな存在なんだ…。父さんはケンジにそういう人になってほしい。それを分かりやすく理解するために、チャーリー・チャップリンの自伝も買ってきたから読みなさい。
Bー荷が重いよ!もう30冊目だよ、偉人の自伝も。スティーヴ・ジョブズかつチャップリンになれと言われて、僕、どこの高校に行けばいいんだよ!
Aースティーヴ・ジョブズかつチャップリンが嫌なら、松下幸之助かつ福沢諭吉でもじゃないか!
Bー僕は田舎で有機野菜のレストランとかやりたいんだよ!偉人の自伝読みすぎた反動すげえきてんの!もう読みたくないの!
Aーそうか…。小さい頃、父さんは貧しい家で育ったんだ。でも、父さんの父さん、つまりケンジのおじいちゃんは偉人の自伝だけは…。
Bーデジャヴ!それ聞くのも30回目!…あの、父さんは、なんで、毎年たいまつ買ってくるの?結局、何がしたいの?
Aー…たしかに、もうそれを告白する時期かもしれんな。
Bーえ?
Aー父さんな、実はお前とキャンプに行きたいんだよ。
Bーまわりくどすぎるよー!いい加減にしろ!