69話〜黒と白〜
昨日更新できずに申し訳ありません……
今回、ちょっと長いかも……
熱い風と冷たい風が身体に纏わり付くように吹き抜ける。
俺は確か、ルクスィギスとラギルとハラグロが混ざって出来たゴーレムスライムを倒して、倒れたはず。
なのに俺は今、夜の草原に立っている。
空には月も星も何も無い。
分厚い雲に覆われたように真っ暗な空。
足元には腰程の高さまである草が生えており、絶えず吹き続ける風によって靡いている。
ここがどこかは分からない。
ただ、ずっと吹く風は俺に進む事を促すように背中に当たる。
気は進まないがここにとどまっていても何も進展は無さそうなので、俺は風に従う事にした。
風に従い、歩く事多分数分。
月も星も目印も何も無いので本当に進んでいるのか、もしかしたら同じ所をグルグル周っているのかも分からないが歩き続ける。
ただ、不思議な事に疲労は一切感じない。
風は変わらず吹いている。
歩き続けて進んでいるのが分かった。
というのも、さっきまでは無かった物があったからだ。
地面に突き刺さった弓と矢。更に行くと槍が刺さっており、近くには馬が倒れている。
「進んでは、いるんだよな……」
そう呟きながら歩く。
道中でまた何か落ちている。
今度は一組の男女だ。
姉弟なのだろう。
姉と思われる人が弟を守るように抱きしめて事切れている。
「……何か戦いでもあったのか?」
また一組の男女がいる。
男の方は倒れており、女性の方は祈るように跪いている。こちらも両者共に事切れている。
「……誰、だ」
どこかで会った気がする。
でも、それが誰かなのか思い出せない。
まぁ良いだろう。
思い出せないという事はきっと大事な人では無いのだろう。
まぁ良いかと歩き続ける。
歩き続けて、俺はふと立ち止まる。
思い出せない。
金髪の少女がこちらを見ている。
思い出せない。
その笑顔が誰のものか。
思い出せない。
何故その声が俺を激しくイラつかせるのか。
思い出せない。
何故俺は、お前が憎いのか……
その時だった。
ふと、誰かに呼ばれた気がしたので振り返って、俺は目を見開いた。
振り返った先でユミナが、エンシさんが、エンシさんの馬のウェイブが、サフィアさんとラピス君が、アニキとエラスが……
死んでいた。
気付けば俺は目の前に現れた女性を押し倒し、首を両手で締め付けていた。
お前が!!
俺の下で苦しそうにもがく女性。
鬱陶しいから顔面を殴る。
頬を殴る。
顔面を掴んで地面に叩き付ける。
お前が、やったのか!!
「何で!? 何でそんな事するの!?」
なんか喚いている。
「私が行く前に来てくれたじゃない!!」
彼女が何を言っているのか分からない。
「も、もうやめ……」
あぁ、うるさい。
側に落ちている真っ赤な石を手に取り、頬に押し当てる。
ジュウゥゥゥッという肉が焼ける音が聞こえ、直後に女性の悲鳴も聞こえる。
しまった。これでは余計にうるさくなってしまった。
まぁ良いか。
「うるさい」
そう言って更に石を押し当てる。
遂に彼女があげる声は金切り声のような声へと変わった。
ジタバタと俺から逃げようと暴れる女性。
だが真っ赤に熱を帯びた石を頬に押し当てられ、首は片手で締められているため逃げられない。
そう。
彼女は逃げられない。
そう思えば思う程彼女は俺から逃げられない。
まるでそういう運命であるとでもいうように、彼女が逃げられる要素が無くなる。
石を押し当てるのも飽きた俺は彼女を持ち上げ、近くの木へと投げ付ける。
汚い悲鳴をあげ、壁に叩きつけられる女性。
何故だろうか、彼女はまるで俺の事を知っているかのように話しかけて来る。
やめてくれと。
私が悪かったと言ってくる。
だが何故だろう。
彼女の言葉を聞けば聞く程、憎くて憎くて仕方がなくなってくる。
背後から吹き抜ける風が囁く。
その怒りを彼女にぶつけるのだ
お前にはその権利がある
さぁ、己の心のままに
彼女の心を
踏み躙ってやれ
そう風が囁く。
真っ黒な風が囁く。
風が俺の背中を押して後押しする。
「あぁ、そうだな……」
彼女に向かって一歩踏み出す。
何故だろうか。
心の底から俺は、風に囁かれた事を望んでいるように思った。
いや、思っている。
その思いに突き動かされながら俺は彼女を掴み、木へと何度も叩き付ける。
叩き付けて叩き付けて叩き付けて、叩き付けて……
怒りと力のままに投げ付けるとなんと、彼女の姿が消えてしまった。
逃すか。
今逃せばこの怒りは何処へ行く。
この憎悪は何にぶつければ良い。
怒りと憎悪をぶつける為だけに追いかけようと一歩踏み出す。
先の見えない、真っ暗な世界を進もうとした時だった。
横から乱入して来た、フードを被った誰かが俺の襟首を両手でガッシリと掴んだのだ。
誰だと思ったが、フードの中は真っ暗なせいで顔は分からない。
俺が混乱しているとフードの男は俺を引き寄せるようにガバッと腕を引くと……
「ッ……ハッ!? ……ハァ、はぁ……はぁ……あれ? ……いって」
跳ね起きるように目を覚ました俺がいたのは、見覚えの無い部屋だった。
壁も床も天井も清潔感のある白。
カーテンも白。
俺が寝ていたベッドも白だ
室内の物のほとんどが白なのだ。
ここはどこだろうかと見回していると右手を痛みが襲う。
何だろうかと見てみると、なんと右手には包帯が巻かれていた。
とりあえずベッドから降り、ここがどこなのか調べる為に部屋から出るのだが、出て早々に俺は動きを止めてしまった。
というのも外に出る為に開けたドアの前。
目の前の廊下で一人の少女と二人と騎士が土下座をしているのだ。
「あ、……えっと?」
うん。
状況が飲み込めない。
だってそうだろう。
どこだか分からない所で目を覚まして、外に出たら土下座で出迎えられたんだから。
「……あの、貴女達は」
とりあえず顔をあげて欲しいと思いつつ話しかけると少女がまず顔をあげた。
立っていれば腰程まであると思われる程長い銀髪に、おっとりとした穏やかな目。
雪のように白い肌の少女はゆっくりと顔を上げて俺を見るなり
「お目覚めになりましたね。勇者様」
「え……ゆ、勇者?」
「はい。お目覚めになる事を願ってのお祈りを捧げに参りました所、貴方様がお目覚めになられていたので」
「い、いや待て待て待て。それにしても土下座って……」
「はい。入る前のお祈りです。勇者様がお休みになられております神聖なお部屋ですので」
「は、はぁ……」
「あ!! 申し訳ありません。私の名はスティラ・アウローラ。教会の聖女です」
ニコリと穏やかな微笑みと共に名乗るスティラ。
うん……聖女かぁ。
こりゃまた面倒そうだな、と思っていると
「あ、あの……勇者様、どこかお体の具合が優れませんか?」
「……え?」
「怖い顔をなさっておられましたので」
「いや……大丈夫だけど……つかここは?」
「ここですか? ……ここは教会の管轄下の教会です」
うん。頭がこんがらがって来た。
「教会の管轄下?」
「はい。えっと……」
「悪いな。今まで教会と関わった事無いからほとんど知らないんだ。村とかにある教会と何か違うのか?」
「はい。違います」
「マジかぁ……説明長くなるか?」
「しっかり説明しますとそうなりますが……短い方が良いですか?」
「それだと嬉しい」
「でしたら一言で言いますね。信仰先が違うんです。村にある教会とかは神とかを信仰していますが、我々の信仰先は」
「……まさか」
「はい。勇者様です」
何でこうなるかなぁ……
思いっきり面倒事になりそうだ。
いや、なるだろうな。
これは。
「我々教会は歴代の勇者様に援助をしてきた組織。正しい名前は聖勇教会と言います」
「そ、そうなのか……あとそれと後ろの二人。早く顔あげてくれ」
「ハハッ!!」
「お許しをいただき、ありがとうございます!!」
後ろの騎士が顔をあげるが二人共女だった。
兜は被ったままなのだが口の部分のパーツが左右に分かれて頬部分に、目元の部分は額に上げられているので顔が見えるようになっている。
「すげぇ……その兜、どうなっているんだ?」
「これですか? ……えっと、こうなっております」
俺の言葉に片方の騎士が応じて見せてくれたのだが、変形する兜なんて初めて見た。
珍しいと思い、変形する兜をマジマジと眺める俺だったが、どうやら見過ぎたらしい。
「す、すみませんが」
「あぁ、悪い」
彼女はスイッと目線を逸らすように顔を逸らしてしまった。
「彼女達は聖騎士。教会に……聖勇教会に所属します戦力です」
「どうも」
「よろしく」
「お、おう……名前は?」
「ありません」
「は?」
「彼女達は皆、孤児なのです。ですので本当の名前はありません」
「そ、そうだったのか……」
「勇者様が謝る事はありません」
「我等は好きでこの職に就いておりますので」
淡々と話す聖騎士の二人。
「で、でも勇者って言えば俺だけじゃなくて……アニキだって」
「いえ、彼は勇者ではありません」
「そんなはずは……だってアニキは勇者・陽のスキルを持っているんだし」
「はい。確かな彼はそのようなスキルを持っております。ですが、彼は自身を勇者である事を認めておりません」
「そうなの?」
「はい。そもそも我々の定義する勇者様とは、大水晶が認めた方です」
「大水晶?」
「はい。私達、聖勇教会の御神体とも言える神聖な水晶です。見ますか?」
「ここにあるのか?」
「本体は本部にありますので、そこまで大きくはありませんが宜しければこちらへ」
立ち上がり、どうぞという様に歩きますスティラ。
それに着いて行く俺と、その俺をまるで護衛するかの様に後ろを歩く聖騎士。
廊下も俺が寝ていた部屋の様に真っ白。
白でない色と言えば廊下に飾られている花ぐらいだ。
中庭では子ども達が元気に遊んでいる。
「……あの子達は?」
「孤児です。将来、聖女や聖騎士になる子もいます。ここは孤児院もやっておりますので」
「……そうか」
「全員が全員、聖女や聖騎士になるわけではありませんけどね……ここでご飯を作る方もいますし、お庭の手入れをする方もいますからね」
「そう、だな……」
と、子ども達を眺めながら歩いていると
「あ!! スティラ様だー!!」
「スティラ様〜!!」
「スティラ様遊んでー!!」
こちらに気付いた子ども達が走って来る。
皆ちゃんと飯を食えているのだろう。
皆ここの人達に愛されているのだろう。
一見すれば孤児には見えず、普通の家庭の子と同じ様に見える。
「スティラ様〜隣のお兄さん誰ー?」
一人の少女が俺を指差しながら尋ねてくる。
「お兄さんだーれー?」
「だれ〜?」
「誰なのー?」
遠慮する事なく近付いてくる子ども達。
あまりにぐいぐい来るのでつい後退ってしまう。
「皆さんいけませんよ〜? この方は勇者様です」
「えー!! 勇者様なの!?」
「すごーい!!」
「初めて見たー!!」
スティラが俺を紹介すると子ども達は目を輝かせて俺を見上げる。
「勇者様カッケー!!」
「すごーい!!」
「い、いや……そこまでは」
「けんそんしてるー!!」
「勇者様って聖女様とけっこんするんでしょー?」
「……え?」
何その話。
初耳なんだけど。
どういう事か聞こうとスティラの方を見るが、何故か顔を赤くしている。
もう訳が分からない、と思っていると一人の少女が本を見せて来た。
「ん? ……勇者物語?」
勇者物語とは子ども達や一部の若者に人気のお伽話の一つだ。
内容を簡単にいうと人類と悪の魔族が戦う中、勇者達が現れて魔族を退治し、世界に平和をもたらすというものだ。
そのラストで勇者と聖女が結ばれてめでたしめでたしという感じの物語なのだ。
多分皆、これと重ねて言っているのだろう。
ただスティラ。
何で赤面してんだよ。
俺にその気は無いからな。
つかもう嫌だぞ。
面倒事は背負い込みたくないぞ。
そう思っていると
「か、からかってはダメですよ」
おーい!?
「聖女様。あの」
「あ、そうでしたね。いけませんいけません」
「行っちゃうのー?」
「皆さんごめんなさいね。また今度遊びましょうね」
「はーい!!」
「またねー!!」
素直に言う事を聞き、俺達に手を振って遊びに戻る子ども達。
「……良い子達だな」
「そうですね……できたらあの様な子達が欲しいですね」
「……俺彼女いるぞ」
「え!? そ、そうなのですか……」
「ただ、恋人らしい事……何もしてやれて無いんだけどな」
「……喧嘩でもしたのですか?」
「……いや違う。俺の前の彼女のせいって言うか、俺の人を見る目が悪かったせいで勝手に傷付いてちょっと信じるのが難しくなっているだけだよ」
「そうなんですね……何があったのか、聞いてもよろしいですか?」
「……あんまり面白い話じゃねぇぞ?」
そう言いつつ俺は話した。
セーラにアニキを狂わされた事。
幼馴染みが死ぬ原因を作った事。
魔女として裁かれた後に脱走し、大砂漠で盗賊団に入っていた事。
盗賊団の次は教国に潜り込んで先日のルクスィギスの件に関わっていた事。
簡単に、短めに話す。
その話を黙って聞いていたスティラは俺の話が終わるや近くにいたシスターと聖騎士を呼び寄せて何やら話している。
「良いですね? すぐにですよ。彼女が遠くへ逃げる前にやるのです」
「は、はい!!」
「かしこまりました」
うん?
いったいスティラは何をする気なんだ?
「ささ。先へ進みましょう」
「お、おう……」
スティラの後ろを歩きながら思う。
確かに俺はユミナに恋人らしい事はやれていない。
でも群狼の皆だけでなく、村の皆も応援してくれている。
だから俺は、ユミナを愛してあげたい。
ユミナの行為に応えられてあげたい。
いつかは、俺はちゃんと彼女を愛してあげられるだろうか。
その時には、セーラの事は忘れられているだろうか。
その時には、俺が抱える傷は癒えているだろうか。
時々すごく不安になってしまう俺はまだ未熟なのだろう。
「こちらです」
スティラに連れて来られたのは教会の地下にある部屋。
会議室程ある広さの部屋の中に入って、俺は息を呑んだ。
と言うのも、その部屋の中はビッシリと水晶で覆われている。
まるで氷の大地に来たみたいだ。
そして一番奥の壁にあるソレを見て更に息を呑んだ。
「凄いな……」
「あれが、本部にあります大水晶のお告げを受け取ります、受水晶です」
受水晶と言われたソレは部屋の一番奥で俺達を待つ様に静かに佇んでいる。
「受水晶と言いましても、こちらからメッセージを送る事もできますけどね」
「そうなんだ……」
「あ、そうだ。折角ですので……んんっ、受水晶より大水晶へ。あなたが認めた勇者様のお姿を見せて下さいな」
恥ずかしげも無く受水晶へと話しかけるスティラ。
すると受水晶はポワポワと輝き出し、やがてその表面に大水晶が認めたという勇者の顔が写し出される。
「ね? 勇者様のお顔でしょ?」
首を傾げながら俺を見るスティラ。
うん。確かにそこに写し出されているのは、俺の顔だった。
「はぁ、はぁ……はぁ……っくそ!!」
時間は戻って昨晩。
月明かりが照らす道を一人の女性が走っている。
彼女の名前はセーラ。
ハヤテの元カノにして、敵だ。
彼女は走っていた。
何かから逃げる様に。
時折背後を振り返りながら走っている。
既に何度も転んだのだろう。
着ている服はボロボロ。
そして首には指の痕と頬には火傷を負っていた。
「何で、何でだよ!! ……っあ!!」
また転んだ。
擦りむいた膝からは血が滲んでいる。
何故彼女は逃げているのか。
それはまた少しだけ前のこと。
彼女は使えなくなったルクスィギスを捨てた後、ラギルの前からも姿を消した。
彼女の中では、アイツももう用済みだったのだ。
そして次に目を付けたのが、利用して捨てた元彼であるハヤテだったのだ。
厚顔無恥とはまさにこの事である。
彼女は一旦逃げた後、ラギルと共にルクスィギスのもとへ行く前にアジトとして使っていた小屋に来ていた。
ラギルが来るかもとは思ったが、捕まっているだろうと決め付けたのだ。
そこで彼女が何をしたのかと言うと簡単な事だ。
水浴びをし、着替えて化粧を済ませたのだ。
「ハヤテを落とそうにも魅了の対策はしているだろうし……うーん、この際だからこの身体で落とすか」
そう判断したのだ。
既に敵として見ている相手をそう簡単に抱くだろうか。
少なくともハヤテの場合は否だ。
だがセーラは逃げる前にコロシアムで言った言葉の通り、ハヤテは簡単に落ちるだろう、乗ってくるだろう。
渋ったら身体で迫れば簡単に落ちる。
兄がそうだったのだから弟だってそのはずだ。
その程度に思っていたのだ。
が、彼女にも厄災は訪れる。
室内を吹き抜けた黒い風。
扉が開けっ放しだったかと思い、振り返ればそこにいたのは何とハヤテだった。
彼女は喜んだ。
聖母の様に優しく、淫魔の様に淫らに微笑んでハヤテを受け入れようとして、次の瞬間には床に叩き付けられていた。
そこから始まったのは、憎しみと怒りによる蹂躙だった。
簡易暖炉に置かれていた石は彼が手に取った瞬間に真っ赤に熱せられ、それが頬に押し当てられた。
フーの時より酷い火傷を負った彼女は半狂乱になって叫んだ。
それを鬱陶しく思った相手に投げ飛ばされ、壁に叩き付けられてまた投げ飛ばされた。
そこで運の良い事に壁を突き破って外へと飛び出した彼女は、着の身着のままに逃げ出し、今に至るという訳だ。
「ふ、ふざけやがって!! この私の体を好きにして良いって言ってやったのに!!」
回復魔法を何度かけても火傷は治らず、むしろ呪いの様にジクジクと広がっていくら、
回復魔法をかければかける程、回復スキルを使えば使う程その範囲は広がっていき、今では喉にまで差し掛かっている。
「あぁクソ!! クソクソクソ!! あのクソガキが!!」
何故彼女は自分を求めてくれると思ったのだろうか。
何故彼女はいつも、自分の思い通りに行くと思ってしまうのか。
少し考えれば分かったはずだ。
ハヤテにしてきた事、彼等にしてきた事を考えれば分かったはずだ。
彼等に関わらずに遠くで生きようと思えばこうはならなかったはずだ。
結局彼女は自分の幸せだけを最優先したのだ。
その結果がこれだ。
癒す事のできない火傷を負わされて逃げる事になった。
とにかく今は逃げよう。
そうだ、皇国辺りに逃げよう。
皇国を経由してオーブ王国へ逃げよう。
そこから更に逃げて、また強い男を捕まえて復讐をしよう。
と、そう決めてコロシアムから逃げた時に動いていれば違った未来が待っていたのに。
そう決めるのが、圧倒的に遅過ぎた。
だってその日の昼間。
ハヤテが目を覚まし、スティラと話してしまったから。
その結果セーラは、聖勇教会の影響が及ぶ国にて手配される事になる。
それもとんでも無い懸賞金をかけられてだ。
その金額欄にはなんと、Gとだけ書かれていたのだ。
教会はこう言ったのだ。
「捕まえた者には、好きなだけ払う」
と。
ルクスィギスのもとで豪遊していたセーラは一転して、懸賞首になるのだった。
「……ほう。面白い人間もいるものだな」
と、そんな未来を知らずに走るセーラを、一人の男性が眺めていた。
鎧も着ずに軽装で、飄々とした雰囲気の男性。
その腰には、ロウエンと同じく刀が差されていた。
お読み下さり、ありがとうございます。
前書きにも書きましたが、昨日更新できずに申し訳ありません。
さて、ハヤテを保護した聖勇教会ですが……
なんか凄いですね。勇者が信仰の対象って…
書いててうーん?って思いましたけど、良いのです!!
信仰の自由がありますからね!!
聖騎士の兜、変形するのかぁ……
かっこよくね?
そんでもってラストの方。
何とセーラ、ハヤテにボッコボコにされてましたね。
しかも回復系を使うと広がる火傷って……完璧アウトっすな。
セーラの受難がやっと始まる……のか?
……そんなセーラを見つめる瞳は果たして、誰のものなのか……
ブクマ、星ポイント、本当にありがとうございます。
いつもメチャクチャ励みになっております!!
次回も読んでいただけると、嬉しいです。
次回もお楽しみに!!