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49話〜お守りという名の〜


「にしても驚きだったな」

「バリーナの事か?」

「あぁ……それと」

「それと?」

「クリスリルってスタイル良いんだな」

「そういう話はやめろよ!?」

「ロウエン……場所を考えてくれよ」

「ははっ、済まない済まない」

「……にしても、俺としてはロウエンが魔族だって事の方が驚きだよ」


 王都にあるカフェでユミナ達を待ちつつ、暇だったのでロウエンが話したのだ。


「にしても本当。人間にしか見えねぇよ」

「まぁ産まれた時からこの姿に似ていたからな。隠しているのは耳や尻尾ぐらいだしよ」

「へ〜」

「……見せねぇからな」

「ちぇっ」

「ちぇじゃねぇよ。ぜってぇに見せねぇからな……」

「はいはいっと」

「全く……はいはいっとじゃねぇよ。カラト、お前これからどうするんだ?」

「……どうするって?」

「お前、剣じゃなくて魔法の方が得意なんだろ?」

「……そ、それは」


 俺がレイェスさんの所に行っている間に話したそうだ。

 アニキは剣より魔法の方が得意なタイプなのだという。

 ただこの名は出したくは無いのだが、セーラに勇者と言えば聖剣だよと言われて剣術を教えてもらおうと師事し、帝都の騎士も剣を教えたのだ。

 あのクソ女。

 本当に余計な事しかしねぇな。


「もし魔法を鍛えたいって言ったら……どうする?」

「知り合いを紹介する」

「いるのか!?」

「おう、いるぞ」

「本当か!?」

「そんなにがっつくなよ暑苦しい……」

「す、すまない……」

「俺は行きたくないから後で紹介状書いてやる。それ持って行け」

「い、行きたくないって……嫌いなのか?」

「……苦手なんだよ。あの人は」

「ロウエンが苦手って言うぐらいだから……」

「多分……」

「言っておくが、女だからな?」

「あ、そうなんだ」

「おいお前等何を想像した?」

「「……」」

「二人して無言になるなよ!? ……全く。やり方が独特過ぎて俺じゃ学び取れなかったんだよ」

「あ、なるほど」

「まぁ、あの人ならお前の事を鍛えてくれるだろ……」


 と、何故か遠い目をしながら言うロウエン。

 ロウエンでダメなのにアニキで大丈夫かメチャクチャ不安なのだが、ここはロウエンを信じよう。


「あ、いたいた!! ただいま〜!!」

「お、ユミナ。ただいま……で合ってるのか?」

「えへへ、良いの良いの!!」

「遅くなりましたか?」

「んにゃ。俺達は俺達で話があったからちょうど良かったぜ」

「そうですか」


 ユミナとエンシさんも用事が終わったらしく、合流する。


「何の話してたの?」

「ん? ちょっとアニキが修行に出るって話」

「え、カラト出て行くの!?」

「修行終えたら帰って来るからな!?」

「え……」

「え……って」

「冗談だよ。冗談」

「おいおい……」

「ユミナさん。あまりからかっちゃダメですよ」

「はーい」


 実の姉妹のように仲が良い二人。


「あ、そうだこれ!!」

「ん? なんだよこれ……」

「定番の返しをありがとう!! 開けてみて!!」


 言われた通り、ユミナが渡して来た小箱を開ける。

 中に入っていたのは綺麗な石がはめ込まれたペアリング。


「これ……」

「えへへ。綺麗でしょ。せっかくだし、番の指輪を作ってもらったの」

「作ってもらった?」

「うん。訳を話したらエンシさんの知り合いに技工士さんがいるっていうから、紹介してもらったの!!」

「そうだったのか……ありがとう、エンシさん」

「いえ。あぁそうだ。私からもありますよ。皆さんに」


 そう言ってエンシさんは俺達男子陣に縦長の木箱を渡して来る。

 中に入っているのはペンダントだった。


「破邪のまじないがかかっています。これでもう、悪女には引っかからないはずです!!」

「……そういうのにも効くのか?」

「さぁ?」

「長年生きて来たが、聞いた覚えが無いな」

「……」

「あ、め、メチャクチャ嬉しいですよ!! なぁアニキ!!」

「お、おう!! メチャクチャ嬉しいですよ!! 本当にありがとうございます!!」

「これ本当に効くのかグフゥ!?」

「アンタは少し黙ってろ……」

「い、いてて……」


 ユミナに拳骨を落とされるロウエン。

 受け取ったネックレスを首にかける。

 うん、丁度良い長さだ。

 ネックレスにも石がはめ込まれており、俺のは緑、アニキのは黄、ロウエンのは赤の石になっている。


「これがあればきっと。皆の事、守ってくれるよ」


 指輪を身に着けながら呟くユミナ。


「でも本当にありがとうエンシさん。指輪、本当は買おうって思ってたんだけど……腕の良い技師さんを紹介してくれて、本当に嬉しい!!」

「いえ、お安い御用です。騎士ですからね。この街の事はだいたいは把握しておりますので」

「おかげで良い代物に出会えました〜」

「それなら紹介した甲斐がありましたよ」


 微笑ましいやり取りを見つつ、俺も自分の指輪を見る。

 指輪の石はお揃いで、夕陽の様な明るい赤。

 カザミ村で見たような、次の日はきっと晴れだと思えるぐらい綺麗な夕陽のように赤い石。

 その石がお互いの指輪にお揃いではめ込まれている。


「綺麗だね……」

「そうだな……」

「……おーっとお二人さん。惚気るのなら帰ってからにしてくれるか?」

「あ、悪い悪い」

「ごめんなさ〜い」

「さて、そんじゃ用事も済んだ事だし帰るか」

「そうですね。遅くなると心配させちゃいますからね」


 カフェのお題を払い、帰路につく。


「帰ったら荷造りか……」

「そんなに長く行くの?」

「短いとも思えないしな……なぁロウエン。どのくらいかかるんだ?」

「さぁな」

「さぁなって……分からないのか?」

「あぁ。分からないな」

「マジかよ……予想とかは?」

「それが分かれば苦労しねぇよ」

「げぇ……マジかよ……」

「何だ? 嫌になったか?」

「……ま、まぁ少しな」

「ならやめるか?」


 後ろを歩くアニキを肩越しに見ながら話すロウエン。

 ロウエンの口ぶりからすると、余程癖のある人みたいだ。


「……い、いややめねぇよ。俺は行く。行って」

「行って?」

「……力を、身に付ける。正しい力を」

「……それは勇者としてか? それとも、兄としてか?」

「……それは分からない」

「分かんねぇのかよ」

「でも……でも、間違った力を身に付けても、誰も救えない」

「……」

「俺は、多くの人に迷惑をかけて来た……それの償いをするためにも、正しい力を身に付けたいんだ。だから」

「だから、行くってのか?」

「……答えは、その都度探す」

「……」

「ダメか?」

「ダメでもお前が行くって言うのなら止めねぇし、止めた所で行かねぇって事にはならないんだろ?」

「当然だ」

「じゃあ」


 ロウエンはそこで言葉を一旦切ると立ち止まり、振り返り


「弱音吐くんじゃねぇぞ」

「分かってるよ」

「紹介って言ったがいわば俺が推薦するようなもんだぞ」

「お、おう」

「不甲斐ない結果で帰って来たら分かってんだろうな?」

「……」

「ベッドのし」

「分かりました分かりました分かりました!!」

「まぁ、あの人なら途中でほっぽる様な事はしねぇと思うけどな」

「ほっ……」

「だからって気を抜くんじゃねぇぞ」

「……あぁ。任せろ!!」

「……んじゃまぁ、頑張って来いや」


 ワシャワシャとアニキの頭を撫でながらニカッと笑うロウエン。

 それに応える様にアニキも笑う。


「……頑張って来いよ」

「ありがとうな」


 アニキの言葉に満足したのか、手を離して歩き出すロウエン。

 それを追う様に俺達もまた歩き出す。




 アニキの出発は早い方が良いという事で明日になった。

 初めはエラスとミナモは心配そうにしていたが、アニキの言葉に納得していた。


「私も行きますからね」

「……え、マジかよ」

「何か不都合な事でも?」

「い、いや……無いけどさ」

「ではそのように」

「……はい」


 なんとエラスまで行く事になってしまった。

 アニキの反応から、最初は一人で行くつもりだったみたいだが一人で行かせるのも心配だし、まぁ良いか。


「じゃあカラトの修行が上手くいく事を願って、今夜はご馳走にしてやるか」

「本当かミナモ!!」

「ウルとルフが獲物をドッサリ獲って来たからね。肉たっぷりシチューにでもと思って既に仕込み済みさ!!」

「流石は群狼三番目のメンバー!! 仕事が速い!!」

「ふふん。どーよ」

「ワフ!!」

「ワウ!!」

「お前達も偉いぞ。ウル、ルフ」

「ワフ〜」

「ワウ〜」


 凄く、凄く穏やかな時間だった。

 でもそんな時間がずっとは続かない事を俺は知っている。

 知っているからこそ、俺はその時間を大事にしたい。

 とりあえず今は、夕飯のシチューが楽しみで仕方がない俺だった。




 それと、ロウエンがアニキを修行に出したこの行為が、まさかあんな事になるなんて思ってもみなかった……

今回もお読みくださり、ありがとうございます。

うーん……最近話が短くなってしまっている…

でも無理に伸ばすとダラダラしちゃいそうだし、これでも良いのかな……


と、取り敢えずカラトが修行に行く事になりました。

修行の相手はロウエンが苦手と言う人。果たしてどんな人なのか……


それとユミナとエンシからのプレゼント。

きっと彼等を守ってくれる……よね?


ブクマ、星本当にありがとうございます!!

本当にメチャクチャ嬉しいです!!


次回もお楽しみに!!

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