36話〜光を〜
ごめんなさい。
今回ちょっと長いです。
タドラトスにほど近い小さな町の安宿。
そこが俺の今の拠点だ。
「おや珍しい」
「……こんにちは」
「今日は具合良さそうですね」
「はい……」
部屋から出てエントランスを歩いていると受付の女性に声をかけられた。
俺より10程年上の彼女。
キリッとした目に黒縁のメガネ。
サラサラの金髪は肩口で切りそろえられている。
話し方のせいか、怜悧な印象を受ける。
「今日はお出かけでしょうか?」
「はい。依頼を受けようかと」
「そうですか。お気を付けて」
「……どうも」
受付にそう言って宿を出る。
向かう先は集会所。
そこで依頼を受けようと思ったのだが……
「あ〜、ダメダメ。お前みたいな低レベルじゃその依頼は無理だろ。俺に寄越せよ」
「いっ……」
依頼書を取られ
「おらおら、道の邪魔だ邪魔!!」
「あうっ……」
依頼を探していたら突き飛ばされる。
今の俺のレベルじゃ彼等には勝てない。
今の俺じゃスライムのような低級モンスターしか相手にできないだろう。
「ははっ、情けねぇ……」
勇者としてもてはやされ、勇者としての肩書にあぐらをかき、自分は大物だと勘違いした結果がこれだ。
俺のパーティーはバラバラになった。
モーラは行方不明になり、セーラとヒモリは魔女として裁かれヒモリは火刑に処されてセーラは行方不明。
唯一残ってくれたのはシスターのエラスだけ。
俺の元に残ってくるのはエラスだけだった。
その彼女のおかげで俺は今生活ができている。勇者からヒモだ。
情けなさ過ぎて笑えもしない。
宿の宿泊費の大半はエラスが稼いでくれている。おかげで俺は屋根の下で眠れているのだ。
だけど、ずっとそのままという訳にもいかない。
「……これなら。これしか、できないか……」
そう呟きながら俺は一枚の依頼書を手に取った。
「ありがとうねぇ〜」
「いえ。このぐらいしかできませんし……」
俺が受けた依頼は町の外れに住んでいる老婆からのもの。
どうやら家の戸棚が傾いたり、戸の立て付けが悪くなっているので直して欲しいそうだ。
初めは大工に頼めよと思ったが、出せる金額を超えてしまうため依頼として出していたのだ。
今の俺にできるのはこの程度。
それなのに婆さんは感謝してくれる。
「これで全部か?」
「そうだねぇ。ありがとうねぇ」
「いや……依頼だし」
「さぁさ、こっちおいで。お茶にしましょ」
「いやあの」
「さぁさぁ」
婆さんに促され、席に着く。
「本当にありがとうねぇ。助かったわぁ」
「あ、あぁ……」
「お茶、どうかしら?」
「あ、美味しいです」
「それは良かったわぁ」
ニコニコと笑いながら話す婆さん。
婆さんは俺に菓子を勧め、茶が無くなればすぐに入れてくれた。
なんだろう。
こんなに温かい空間。
すごく懐かしい。
勇者になる前の俺の家もこんな感じだった。
それが、ひどく懐かしく思える。
「……お兄ちゃんは家族とかどうなんだい?」
「家族は……その」
婆さんに聞かれ、俺は家族について話す。
父が行方不明になった事。
弟と喧嘩してそのままの事。
家に母親を一人残している事。
ポツリポツリと話した。
「そうかぁ……兄ちゃんも大変なんだねぇ」
俺の話を婆さんはただただ聴いてくれた。
「……俺は本当に、情けない奴なんですよ」
「……いんにゃ。兄ちゃんはまだ情けなくなんかないよ」
俺の話を聞いて婆さんはそう返した。
「本当に情けない奴ってのはね、自分の口で自分の事ぉ情けない奴なんて言わないんよ」
ニコニコと笑いながら婆さんは話す。
「お前さんは弟さんとの事、お母さんとの事で悩んどるんやろ? 苦しんどるんやろ? ……お前さんは向き合っとるんやろ? なら、情けなくはないさね」
「婆ちゃん……」
「お前さんが望めば、まだやり直せるんと違うかい?」
「……」
「お前さん、そう思っているから婆ちゃんに話したんだろう? 踏ん切りがつかんから婆ちゃんに話したんだろう? 婆ちゃんに背中、押してもらいたかったんじゃろ?」
「……っ」
「大丈夫大丈夫。乗り越えられん試練はなかよ」
ニコリと優しく笑んで俺を見る婆ちゃん。
その態度が優しくて嬉しくて。
俺の話を聞いてくれて、頷いて、それでいて婆ちゃんが思った事を伝えてくれて。
勇者である俺だったら周りの誰もが俺の考えを否定せず笑顔で頷いていた。
でも婆ちゃんは違った。
勇者である事は伝えていない。
だからこそだろう。
婆ちゃんは俺自身の声を聞いてくれた。
勇者ではない。
ただのちっぽけな俺の言葉を聞いてくれた。
そこでやっと俺は気付いたんだ。
(あぁそうか。俺が欲しかったのって)
勇者としてではない、俺自身を見てくれる人だったんだ。
そんな簡単な事に気付けなかった。
いや、見ていてくれた人を俺は傷付けたんだ。
でも、婆ちゃんが思い出させてくれた。
決心させてくれた。
やり直したいという俺の背中を押してくれた。
(道は決まった)
暗く閉ざされ、前も後ろも分からなかった道が光で照らされる。
俺が勇者として帝都の城に招かれた時に言われた言葉を思い出す。
「お前は何のためにその勇者としての力を使う?」
女性だった。
一人の女性に城の廊下で問われた事を思い出した。
その時俺は何と答えたって。
あぁ、確かこう返したんだ。
「苦しんでいる人達を助けたい」
そう返したんだ。
それがどうしてこうなっちゃったんだろうな。
苦しんでいる人達を助けたい。
それはあの時は本心だった。
でもそれはいつからか建前になっていた。
誰かを助ける為に、苦手だったが懸命に修練した剣は己の力を誇示する為の物へと成り下がった。
誰かを助ける為に得意だった魔法を役立てようと思っていたが、それも己の力を誇示する為の物へと成り下がった。
誰かを助ける為に身に付けた力は、いつからか薄汚れていた。
でも、忘れていた原点を婆ちゃんは思い出させてくれた。
もう道は間違えない。
踏み外さない。
踏み外した道へ戻るのは大変だろう。
だから何だ。
それが俺のするべき償いだ。
そしてまずするべき事。
それは婆ちゃんへの礼。
その礼を、感謝の気持ちを婆ちゃんへ伝えよう。
そう思った時だった。
「ヒヒヒヒィィィン!!」
「オラオラ金出せや!!」
「だ、誰だいアンタは!!」
山賊だろうか。斧を持った男性が押し入って来たのだ。
「あん? ババアとガキか。なら家探しも楽そうだな」
「や、やめてくださ……ちょっと!?」
「危ねぇから逃げるぞ!!」
見ただけで分かる。
あの山賊は俺一人で勝てる相手じゃない。
そう判断して俺は婆ちゃんを肩に担いで家を出る。
向かうのは集会所。
あそこなら強い冒険者達がいる。
彼等なら、そう思っていた。
「なんだコイツら!! 次から次へと!!」
「マズいな……」
「泣き言を言うな!! 死んでも集会所には行かせるな!!」
「合点だぁ!!」
「奪え奪え!! 手に取る物全て奪え!!」
「キャハハ〜!! 良い男がいるじゃなーい!! アタシの獲物きーめた!!」
「わざわざ大砂漠から来てやったんだ。上玉頂いて行くぜー!!」
集会所の近くでは山賊の仲間と冒険者達が既に戦っていた。
「大砂漠だと!? という事はお前等まさか!!」
「そうよ。そのまさかよ。俺達は大砂漠の盗賊団。クラック様の盗賊団の者よ!!」
なんと奴等は山賊ではなく大砂漠に根城を持つ盗賊団だった。
「に、兄ちゃん?」
「あ、すまない……」
ひとまず婆ちゃんを一旦下ろし、背負い直す。
「あ、いた!! カラト!!」
「エラス、無事だったか!!」
「はい。ここは危険ですとにかく……背中の方もいますし」
「あぁ……宿に行こう」
エラスと合流した俺はひとまず宿まで帰る。
やはりというか想像通り、そこには避難して来た人でごった返していた。
「水を!! 水をくれ!!」
「怪我人はこちらに!! 順番に手当てをしますから!!」
「頼む!! 腕を切られて血が止まんねぇんだ!!」
「おい並べよおっさん!! 俺が先だ!!」
「怪我した子がいる!! 俺は良いから先に手当てさせてやってくれ!!」
「誰か!! 誰か治療ができる方はいませんか!!」
「……カラト。私行ってくる」
「あ、おい……」
「私!! 治癒のスキルを持っています!! 手伝わせて下さい!!」
「本当か!! それはありがたい……こっちに来てくれ!!」
「はい!!」
俺と別れ、治療の手伝いに向かうエラス。
アイツだって、パーティーが崩壊する前の実力は無いはず。
前まで使えた治癒スキルが使えないと悩んでいたのに。
「……俺には、何もできないのか」
知らず知らずの内に俺は拳を握り締めていた。
「あぁ、ほれほれ。ここにお座り」
「お婆ちゃん、ありがとう!!」
「良いの良いの。お婆ちゃんこのお兄ちゃんがおぶってくれたからまだまだ元気なのよ」
そんな俺の側では婆ちゃんが少年に椅子を譲っている。
何もできない俺が情けない。
「行っちゃダメって、何度言ったら分かるの!!」
「でも父ちゃんが!!」
そんな時だった。
一組の親子が言い争っている。
片方は母親。
もう片方はまだ幼い少年だ。
その少年はオモチャだろうか。
剣を片手に飛び出そうとしている。
先程の言葉からすると盗賊団と戦う冒険者の中に父親がいるそうだ。
「父ちゃんはね、あんたを守る為にも戦ってんだよ!! そのお前が行って、危ない目に遭ったらどうするんだい!!」
「でも!!」
その子の目は真剣なものだった。
対する母の目も真剣だった。
二人にも譲れない物があるのだろう。
母には大切な家族、息子には父を助けたいという思い。
いや、彼等だけじゃないだろう。
ここに来る途中で集会所で俺を突き飛ばした冒険者達とすれ違った。
彼等にも守りたい人がいるのだろう。
だから戦っているのだろう。
それなのに俺は……
(レベルがなんだ……助けたかったんじゃなのかよ……情けねぇ。本当に情けねぇ……)
爪が皮膚に食い込む。
そんな時だった。
「お願いカラト。戦って」
「……エラス?」
「無理を言っているのは分かっている。でもこのままじゃ……」
治療の手伝いを抜けたエラスが俺に頭を下げる。
「山に住んでいる魔術師さんに応援を頼みに行った人達が、その魔術師さんを連れて帰って来るまでで良いの。だから、お願い!!」
山の魔術師。
雪山には美しい魔術師が住んでいると聞いた事がある。
その人を呼びに行ったのだろう。
帰って来るまで時間はそうかからないと思うが……
「お願い!!」
「……無理だ、今の俺じゃ」
「……なら」
そう言ってエラスが取り出したのは金だった。
「お前、なんのつもり」
「このお金、覚えている?」
「……え?」
「これ、ゴブリン退治の時に貴方がくれたお金です。これで、依頼させて下さい!!」
「依頼って……」
「依頼? あの人、冒険者か何かなの?」
「そうなのか?」
「確かあの人、薬草取りとかばかり受けていた……」
エラスの依頼という言葉を聞いた人達が俺へと視線を向ける。
「……俺は」
情けない事に断ろうとする俺。だが俺が断るより先に
「お願いお兄ちゃん!! 俺の父ちゃんを助けて!!」
「頼むよ!! 私の弟を守って!!」
「お願いします!! どうか私の家族を!!」
「頼む!!」
「お願いだ!!」
「私の彼を守って!!」
「俺の娘夫婦を助けてやってくれ!!」
俺への依頼が殺到する。
「……俺」
「あんたなら大丈夫よ」
「……婆ちゃん……ありがとう」
また婆ちゃんが背中を押してくれた。
「分かったよエラス。行ってくる」
「はい」
「坊主」
「な、なに?」
「剣がいる。貸してくれるか?」
「う、うん!!」
父親を助けてくれと言っていた子から剣を受け取る。
思った通り、おもちゃの剣だが問題は無い。
だって俺は、剣が苦手だからな。
剣を片手に宿を出る。
その時、帝都の城での会話をまた思い出す。
「そうか、勇者か。その勇が勇敢である事を私は祈っているよ」
「あの、貴女の名前は?」
「私か? 私はメリムだ」
その会話を思い出しながら俺は、宿を出た。
「へっへっへ……誰か出て来たと思ったらガキンチョが一人か」
「へ〜? 案外可愛い顔してるじゃない」
「アジトに連れて帰ってタァ〜ップリ可愛がってあげるわぁ」
男が一人に女が二人。
以前の俺なら敵でもなかった、とは言い切れないな。
「しかもおもちゃの剣かよ」
「あらあら〜。本物はまだ危ないでちゅもんね〜?」
「安心してぇ? ちゃんと可愛がってあげるから」
なんか言っているが気にしない。
今の俺のレベルじゃ使えるスキルは限られている。
倍化は使えるが今の俺ではそこまで強化できないだろう。
ならばどうするか。
倍化でダメなら別のスキルを使えば良い。
だが無いのなら習得すれば良い。
セーラに支配されていたせいで忘れていた存在。
俺が習得していたスキル。
前借りを使う。
このスキル、使い勝手は悪いが強力なスキルなのだ。
これを覚えたのは帝都に行った時、城の書庫で読んだ書物がきっかけだった。
そんな事は今は良い。
このスキル、対価を払えば願いを叶える効果を持つ。
簡単に言うと、〜するから〜を叶えてほしいを現実にするのだ。
ただし、願いに対して対価が見合わないと効果は無い。
この場合、俺が提示する対価は簡単だ。
「……この町の人達を守るから、俺に力をよこせ」
言うのは簡単。
実現するのは困難。
だがそれで良い。
これだけの条件を提示すれば
「ッ!?」
来た。
「っ、ガアァァァァァッ!?」
体の奥底から電撃が走り、また奥底へと潜り込んでいく。
「お、おいコイツ大丈夫か?」
「アタシが楽しむ前に潰れないでよ〜?」
「は、ははっ……軽口叩けんのも、今のうちだ、ぜぇ……」
胸を押さえ、息も絶え絶えに返す。
「こ、来い!!」
直後、スキルが来た。
スキル名は超過。
倍化系スキルの最上位スキルだ。
思った以上の大物に俺は驚きつつ、会った事の無い神に感謝する。
「あいつ、何する気?」
「さぁ?」
「まぁ良い。さっさと連れて行きや」
奴等の言葉を待ちはしない。
借りた剣を静かに構える。
「超過……」
その言葉に応えるように、剣から光の刃が天目掛けて伸びる。
「な、……え?」
「これは」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
それを見て驚き、踵を返して走り出す三人。
だが逃がさない。
「伐剣・絶光!!」
その刃で真横に薙ぐ。
突風を巻き上げて奮われる刃を受ける三人。
彼等は悲鳴をあげる事なく吹っ飛ばされる。
そのまま三人は木の枝に引っかかり、そのまま気絶する。
のだが……
「……ッ!? ……ゲフッ!!」
レベルに合わない大技を使った代償だ。血を吐き、俺は膝をついた。
「……ゲホゴホッ!! ……ガホッ!!」
しかも運の悪い事に
「おい何の音だ!?」
「おいまだいるぞ!!」
冒険者達をくぐり抜けたのだろう。
数名の盗賊が俺の目の前に現れる。
(……クソッ)
また前借りを使えば立てるが、立てるだけの力を借りるのに何を対価として差し出せば良い。
エラスから受け取った金があるが、あれでは数分しか立てないだろう。
そして仮に先程の町の人達を守ると言う言葉が守れなかった場合、どうなるかは知らないがタダでは済まないだろう。
(……ははっ、最後まで情けねぇな。俺)
最後の力で笑う。
そんな俺に迫る盗賊。その内の一人が俺を捕らえようと手を伸ばした。
その時だった!!
「行け!! ウル!! ルフ!!」
「グルアァァァァァッ!!」
「ゴガアァァァァァッ!!」
「え!? な、なんだってギャァァァァァッ!!」
突如、山の斜面を滑る様に駆け降りて来た二頭の灰色の狼。
片方は背骨に沿うように黒い毛が生えた青い目の狼。
もう片方は耳の先端に白い毛が生えた緑の目の狼。
その二頭の狼の青い目の方が俺に伸ばされた腕に、緑の目の方が肩にその牙を深く突き立てる。
「い、一体何が」
突然の襲撃に慌てる盗賊達。
「どこを、見ている!!」
「ぐぇ!?」
山の中から放たれた矢がその内の一人の肩に刺さる。
「ちっ、馬をよ……」
「馬なら来ねぇよ」
「え? ぐげっ!?」
「安心しろ、峰打ちだ」
一人は片刃の剣の背を打ち込まれて気絶する。
「さ、退がれ退がれ!!」
「俺達だけじゃ無理だ!!」
そう言って逃げる残り。
「あ、おいそっちは……」
その姿を見て片刃の剣を持つ男性が心配をする。
その直後、逃げた奴等が木の葉のように宙を舞って戻って来た。
「あーあ。だから言ったのに。おいミナモ」
「分かってるわよ。ハヤテからの指示だもんね……ほい、捕縛」
飛竜に乗って現れた女性が水で作った鎖で宙を舞う盗賊を捕まえる。
って待て。今ハヤテって……そう俺が思った時だった。
「そっちは片付いたか?」
「あぁ。まぁ、なんとかな」
そいつが目の前に現れた。
「馬は食用。盗賊は情報を吐かせるために捕らえる。少しは成長したな」
「まだまだだろ。にしても、まさかここで会うとはな」
槍を持って現れた彼は俺を見て呟く。
「アニキ」
「ハヤテ……なんでお前がここに」
「ちょっと山にいてな。そしたら呼ばれたんだよ」
「そ、そうだったのか……」
「……ありがとうな」
「え?」
「……俺達が着くまで、守ってくれて」
いつぶりだろうか。
ハヤテから礼を言われたのは。
ひどく懐かしく、そして嬉しい響き。
「あ、あぁ……俺の方こそ」
来てくれてありがとう。
そう言おうとした時だった。
「あっれ〜? アホ勇者のカラトに〜、出来損ないのハヤテじゃ〜ん。ひっさしっぶり〜♪」
「セーラ……」
「セーラ。なんでお前が盗賊団といるんだよ」
「は〜? 見て分かんない? 今私、クラックの女なの」
手下だろう。
盗賊を引き連れて現れるセーラ。
俺を歪めた張本人。
だが何故だろう。
セーラを見るハヤテの目には怒りの色がある。
「セーラ」
「ん? な〜にぃ?」
「……モーラが、死んだぞ」
「……ふぅ〜ん? それで? なぁに? 悲しいから私に慰めてほし」
「悲しくないのかよ!!」
ハヤテの口から聞かされたのは俺も知らない話。
モーラが死んだと言う話だった。
「悲しくないのかって……だって悲しんだら生き返るわけじゃないしさ〜」
「じゃあお前は!!」
「ってか何? 看取ったの? きゃーモーラったら幸せ者ー」
「……何?」
「え? 何? ほら良くあるじゃない。死ぬ前に少し言葉を交わすア・レ。そこで聞いたんでしょう?」
ニヤニヤと目を細めて笑いながらセーラは言う。
最悪の事実を伝える。
「モーラがね、ハヤテの事が好きだったってコ・ト」
お読みくださり、ありがとうございます。
誤字報告、ありがとうございます。
はい、カラトすこーし復活!!
そしてピンチに駆け付けたのはハヤテ!!
ここから仲直りはできるかな〜?
そしてセーラが言ったよ。
あいつ言いやがったよ。
前回もご感想本当にありがとうございます!!
次回もお楽しみにです!!