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125話〜不義の代償〜

今回、久しぶりのクズキャラ警報が発令されました。

ご注意ください。


「はぁ……やっと終わったな」


 (バラマ)は馬に揺られながら我が国へと帰って来ていた。

 愛する妻と息子が待つ国。


 つい先週、急に舞い込んだ山賊狩りの任務を終わらせ、急いで帰って来たのだ。

 愛する者達に会うために。






「バラマ、戻りました」

「山賊退治の任、ご苦労だった」


 私に労いの言葉をかけるのは我等が騎士団団長ライアックス。

 私の上司にして義父。

 とても家族思いの優しい、良い人だ。


「次いつ仕事が入るか分からんからな。ゆっくり過ごすと良い」

「ありがとうございます」


 そんな簡単な話を終え、私は部屋を出る。

 向かうのは愛する者が待つ家。

 そこに向かって馬を走らせる。

 馬を休ませる事なく走らせ、辿り着いたのはそこそこ大きな一軒家。


 そこに、私の愛する人はいた。


「会いたかったよ」

「あぁ、お帰りなさい」

「待たせたね。ハイドリシア」


 私を出迎える美しい女。

 手入れがしっかりとされた銀髪は真っ直ぐ長く、脇ぐらいまである。

 私を真っ直ぐ見上げるその翠眼は程よく潤んで光を反射しており、まるで宝石のよう。


「お待ちしておりましわ。私、この子と共に……貴方の事を」


 愛おしそうに自らの腹部を撫でるともう一度私を見上げるハイドリシア。

 そんな彼女と軽い口付けを交わし、私は家の中へと入って行った。




「あの、バラマ様」

「どうした?」

「あの……どのくらい一緒にいられ」

「その話は無しだと言ったはずだよ? 大丈夫。ちゃんと私の家に迎え入れてあげるから」

「はい!! 私、待っています!!」


 隣で横になるハイドリシアの頭を撫でると彼女はウットリとした表情で私を見てくる。

 その身に私の子を宿した愛しい女性。

 彼女と幸せなひとときを過ごし、私はその家を出た。






「やぁ、今帰ったよ」

「……お帰りなさい」


 私が次に来たのは家族が住む屋敷だ。

 妻と子が待つ屋敷。


「何も変わりないか?」

「はい。バルカンも勉学に励んでいましたよ」

「そうか。バルカンは?」

「明日ご友人の家に遊びに行くそうなのでもう寝ました」

「そうか」


 私の帰宅を出迎えたのは妻だ。

 名はレイシア。

 私が席を置く騎士団団長の娘さんだ。

 婿である私に部隊を預けてくれた人の娘だ。

 可愛いよりは美人寄りの顔をしており、短めに揃えられ、ふんわりとした黒髪。

 常に少し眠そうな目をしており、一見すると大人しそうな女性だがそんな事は無い。


 仮にも騎士の家の娘。

 しかも団長を務める者の娘。

 礼節を重んじる、強い女だ。


 そしてその最愛の女性との間に生まれたのが息子のバルカンだ。

 全てを飲み込み、焼き尽くすマグマのように赤い髪。

 学び舎でよく学び、将来は騎士になる事を目標にしているそうだ。


 それが私の愛する家族。


 そんな家族がいながら私は、他の女に手を出した。

 それが年上の部下であるジュリアスの妻。

 ハイドリシアを奪ってやったのだ。


 では何故私が部下の女を奪ったのか。

 それだけ良い女だったからだ。


 というのも我が妻レイシアには問題がある。

 礼節を重んじ、催しの際には夫である私を立てる良い女だった。

 それだけではない。

 家事だって万全にこなす。

 料理に掃除、子育てに裁縫。

 メイド達にやらせればいい事を彼女は、可能な限り自分の手でする女なのだ。


 おまけに騎士の家に生まれた事もあってか剣の腕も立ち、馬の扱いも上手い。

 もしレイシアが男だったら私は敵わなかっただろう。


 だがハイドリシアは違う。

 料理もできない、掃除も苦手、子育ても専門の人を雇ってしており、裁縫に至ってだが針に糸が通せないと来た。

 ハッキリ言って、何もできない女だった。

 だが、そこが男の庇護欲を煽る。


 箱入れ娘だったのだろう。

 その手は白く、シワも怪我の痕も無く美しい手。

 その手で剣を持った事は当然なく、持った事のある重い物といえば自分の子ぐらいだろう。

 

 その彼女と初めて出会ったのは騎士団のパーティーの時だった。

 お互いに一目惚れし、それからは早かった。

 私は自身の金で二人で過ごす家を買い、そこでゆっくり過ごした。

 レイシアは騎士団の仕事だと思い、特に何か言ってくる事は無かった。


 その後しばらくして私は彼女の家に招かれた。

 彼女の旦那の痕跡が残る家で、部屋で、彼女を堪能した。


 他にもパーティーの最中に抜け出した事もあった。


 レイシアと違い、ハイドリシアの反応は可愛かった。

 ベッドの上では常に私を称えた。

 旦那と私を比べ、私がいかに勝っているか。

 旦那とは違うと、私の側で言い続けた。

 自分より年上で、オッサンになった旦那とは大違いだと。


 時には旦那との思い出の地に共に向かい、二人での時間を堪能した事もあった。


 レイシアと比べると大きな胸も、尻も、柔らかい体も。

 ジュリアスから奪うつもりで彼女と過ごした。


 そして私はジュリアスにある任務を言い渡した。

 半年の間、国境警備に就かせたのだ。

 その間私は彼女と毎日会った。

 時にハイドリシアは、旦那への差し入れを届けて欲しいと荷物を持って騎士団を訪れて来た事もあった。


 そうして毎日会っているとある日、彼女にある異変が訪れた。


 彼女の腹がわずかに膨らんでいたのだ。


 その膨らみ方も、食べ過ぎてお腹が膨れたのとは違った。

 その膨らみ方とはその身に新たな命を宿した膨らみ方だったのだ。

 そう、彼女はついに私の子を宿したのだ。


 後は彼女とジュリアスを別れさせるだけ。

 どう話をさせようかと思ったのだが良い案は無いかと考えている間に時は過ぎ、ジュリアスが帰って来る日に。


 ハイドリシアは正直に全て話したのだという。

 結果、ジュリアスはハイドリシアと別れる事に。

 二人の間にいた娘はジュリアスについて行く事になったのだという。


 結果、晴れて私達は結ばれる事が可能な状態になる事ができたのだ。

 が、すぐに彼女を迎え入れはしない。

 そんな事をすれば私達の事を勘繰る者が出て来そうだったからだ。

 だから私はハイドリシアと話し合い、翌月まで待とうと決めたのだ。


 まぁ二人目を迎える事に問題は無いだろう。

 貴族や王族だって第二、第三の妻を迎えているのだ。

 私が二人目の妻を迎えたって別に問題は無いはずだ。


 そう思いながらレイシアやバルカンと穏やかな時を過ごし、時にはハイドリシアと二人きりの時間を過ごしていたある日だった。


「貴方、お母様に呼ばれたからバルカンとちょっと行ってくるわね」

「あぁ。私もお義父さんに呼ばれているから騎士団まで顔を出してくるよ」

「そう……気を付けて」

「あぁ、うん。君もね」


 そんな会話をして私達はそれぞれ向かう所へと向かった。


 その時は、まさかあんな事になるなんて思ってもみなかった。






 騎士団本部へと到着した私は真っ直ぐ義父であり、騎士団団長であるライアックスが真っ直ぐ団長室へと向かった。


「団長、バラマです」

「……入れ」


 ドアをノックし、入室する。

 我等騎士団を率いる団長のために用意された部屋。

 歴代団長がこの部屋で職務を行い、次の団長へと譲り渡し、受け継がれて来た部屋。

 まさに、我等が騎士団の歴史が詰まっていると言っても過言では無い部屋なのだ。


「急に呼び出してすまないな」

「いえ」

「ゆっくり休めたか?」

「はい。おかげさまで」

「そうかそうか。それなら良かった」


 団長と話しながら、私の背筋は自然と伸びていた。

 この部屋に入る時はいつもそうなのだ。

 緊張とは言い切れない、謎の感覚が私の背筋を伸ばさせるのだ。


「さて、呼び出したのは他でも無い。話があるのだが」

「はい」


 団長のみが座る事を許された椅子に座り、テーブルの上に両手を組んで団長が口を開く。


「君、今日付けでクビね」

「……えっと」


 何を言われたのかが分からず、思わず聞き返してしまう。


「うん、驚くよね。だからもう一度言おう」


 そこで私は気付いた。


「お前はクビだ。我が娘だけならず、他の家族まで不幸にしやがって……」


 団長の顔は険しく、まるで噴火前の火山のようだった。


「娘とも別れてもらうぞ」


 まるで、足元がガラガラと崩れていくようだった……

お読みくださり、ありがとうございます。


おらバラマ、落ちる時だ!!

さて、どんな結末にするか……

お楽しみに……


ブクマ、ポイント、本当にありがとうございます。

皆様のおかげでエンジン回っております!!

次回もお楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ハイドリシアが思ったよりも糞女でビビる(笑) こりゃあ極貧生活でも送らせるか、ヤスリで拷問した後に捨てるか、とにかく一生後悔する人生を味わわせないと読者のヘイトが解消されませんわ…
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