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第一話 予定調和ハーレム準備回

男なら誰しも一度は夢見るものがある。

それはハーレム。女性たちに囲まれる夢のような世界。


動物界ではハーレムを作る生き物も存在する。

例えばライオンやオットセイ、アザラシ等々が有名だ。 


人間界では、一夫一妻制によりハーレムを本能的に作ることはなかなか少なくなってしまったが、彼らもまた三大欲求をもつ生き物である。

人間誰しも心の奥底には、女性たちに囲まれたいという欲が存在するに違いない。




それは無論、この物語の主人公。紺野孝司も同じだった。



◆◆◆



「最終回…最高だったな!」

そういって孝司は授業中に隣で居眠りをしている友則の肩をたたいた。


昨日最終回を迎えた夏期アニメ「真夏の貝殻」

漫画原作の王道美少女ハーレム系ラブコメだが、キャラの圧倒的なかわいさと、話の作り込みで話題を呼んだ。

主人公を囲む三人の美少女。千里、美波、紗江。

そして主人公に惹かれていく三人の気持ちに全く気付かないお決まりの難聴鈍感主人公。

孝司含む視聴者たちがそんな主人公に大きな嫉妬と憎悪を抱いたのは言うまでもない。


「うーん…俺は千里ちゃん推しだったからなぁ…」

眠そうな目をこすりながら友則は答えた。


「いやいや~。僕だって美波推しだけどさ、結果として紗江とくっ付いて良かったと思うよ。」


「まぁそうだけどよ…結局のところ終盤も終盤まで主人公の奴が千里ちゃんたちの気持ちに気付かなかったってんのが気に食わねぇんだ。」

友則の顔がこわばる。


「そうなんだよ!よく言ってくれた友則ぃぃ!」


急にぶち上がる孝司のテンションに友則は少しぎょっとする。


「お、おうよ。だいたいよ、あーいう系統の主人公ってあまりに鈍感すぎやしないか?見ててかなりイラつくんだが。」


「その通りだ。僕は絶対みんなの気持ちに気付くっていうのに主人公ときたら… 僕だったらみんな平等に愛情を捧げられるのになぁ。」


「おいおいみんなにって…何股する気なんだよ孝司…」


友則の冷静なツッコミを孝司は華麗にスルーした。



「ハーレム…か…」

そう言って孝司はため息をつく。孝司だって現実を理解しているのだ。

ハーレムなんて現実世界じゃなかなか実現できるものではない。

ましてやアニメにおける理想の美少女ハーレムなんて、もう存在できないに等しい。


考えてもみろ。

小さいころからひそかに恋心を寄せられているツンデレ幼馴染も、実はドMな変態ビッチな先輩も、甘えん坊の後輩も、目立たないけど実はめっちゃ可愛い同級生も。そんな簡単にいる訳ないじゃないか。


さらに孝司のような、女子と話すことすらないオタクの一味となると、これまた厳しすぎる。


「僕なんか…」

孝司は窓に映る自分に目をやる。

高校2年生。男。2組。出席番号11番。彼女なし。

オタクで特に顔がいいわけでもなく頭がいいわけでもなく運動ができるわけでもない。

かといってハーレム系ラブコメとしては王道の、

“普通なのになぜか女がわんさか寄ってくる眼鏡くん”

系統の普通とはまた違う。というかそんなことはこれまた現実世界ではあり得ない。


うーむ。なんとか現実の僕らでもできることは無いだろうか。

少し考えた後、僕は再び居眠りに入っていた友則の肩をたたいてこう言った。


「なぁ友則。僕、ハーレムを作りたい。」

友則の顔がゆがむと同時に教室に彼の笑い声が響いた。









_____________________________________


9月30日 とあるグループチャットにて



[ついにもうすぐ完成ですね。] 22:34



[あぁ。ようやくここまで来たな。] 22:37



[何例かのシステムテストも完璧に終了しましたし。残りあと少しですね。] 22:38



[@課長 ただ…人手が今一つ足りないんですよね…] 22:42



[うーん、それはサービス開始までに何とかすることにしましょう。] 22:45



[こんな超難易度の仕事、任せられる人簡単に見つかりますかねぇ?] 22:47



[見つける…しかないわ] 22:48


_____________________________________


次回 第二話 に続く


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