↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4の純情な異世界  作者: 美奈子
PR
1/1

4人は異世界で王都を目指す

 1


 奇妙な感覚だった。

 ウィリアムは、目が覚めたことに疑問を覚えていた。


 目が覚めるはずはなかった。『奇妙さ』すら感じるはずはない。思考は無に帰すべきだし、身体は動くべきではないのだ。


 ウィリアムは死んだのだから。


 ロンドン行きの列車に身体を引きちぎられ、転がる自身の破片を眺めながら、彼は絶命したはずだった。


 けれども、今、彼はこうして覚醒した。


 脳を巡る血液の律動が、彼を意識の表層へと連れ出し、まぶたが開き、網膜は光を感じる。ここは、どこだろう?


 目醒めた場所は、コンクリート打ちっぱなしの壁で囲まれた小さな空間だった。知らない場所だ。


ウィリアムは起き上がり、頭をゆるゆると振る。彼の性質上、混乱よりも状況把握が先行した。


 床は冷たい。こちらもコンクリート剥き出し。床から三メートルほどの天井も同様にネズミ色のコンクリートだ。一つの壁に鋼鉄製のように見える黒い扉があるだけで、窓はなく、家具や装飾品も一切ない。


「コンクリートの箱だな……」


 ウィリアムは独りごちた。


窓は無いのに周囲が見えるのは、ぼんやりとした光源が何処からか発生している所為だが、その正体はつかめない。


知らぬ場所で目醒めたが、不思議と恐怖はなかった。


立ち上がり、身体の動きを確認する。健康そのものだ。痛みも疲労もない。列車に轢かれてバラバラになった身体を、最先端の医療でつなぎ合わせたわけでは無さそうだ。


『蘇生』や『復活』といったオカルトめいた事象とはまた違った、別の何かが自身に起こったようだ。

それが何かは分からない。


不意に、目の前の黒い扉が開いた。


「ようこそ」


扉を開けたのは、居丈高の黒服の男だった。男は続ける。


「さっそくですが、あなたには軍を率いて王都を目指していただきます」


「……軍? 王都?」


 状況も分からず、男の言う意味も分からない。考えるにしても、材料があまりにも僅少だ。ウィリアムは思わず手を顎にあてる。


「急いでいただく必要があります」


 黒服は、ウィリアムの手をグイと引く。体躯のわりに非力なようだ。ウィリアムは抵抗した。


「誰だお前は」


「失礼は承知ですが、あまり時間は無いのです。急いでいただかねば。私の名など、どうでもよろしいのです」


「ここはどこなんだ? なんで俺は……」


 黒服はウィリアムの疑問を無視して言葉を重ねた。

「急いでいただきたい。あなた様ならば、行く道がてらに状況を理解できるはず。さあ、行きましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。