4人は異世界で王都を目指す
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奇妙な感覚だった。
ウィリアムは、目が覚めたことに疑問を覚えていた。
目が覚めるはずはなかった。『奇妙さ』すら感じるはずはない。思考は無に帰すべきだし、身体は動くべきではないのだ。
ウィリアムは死んだのだから。
ロンドン行きの列車に身体を引きちぎられ、転がる自身の破片を眺めながら、彼は絶命したはずだった。
けれども、今、彼はこうして覚醒した。
脳を巡る血液の律動が、彼を意識の表層へと連れ出し、まぶたが開き、網膜は光を感じる。ここは、どこだろう?
目醒めた場所は、コンクリート打ちっぱなしの壁で囲まれた小さな空間だった。知らない場所だ。
ウィリアムは起き上がり、頭をゆるゆると振る。彼の性質上、混乱よりも状況把握が先行した。
床は冷たい。こちらもコンクリート剥き出し。床から三メートルほどの天井も同様にネズミ色のコンクリートだ。一つの壁に鋼鉄製のように見える黒い扉があるだけで、窓はなく、家具や装飾品も一切ない。
「コンクリートの箱だな……」
ウィリアムは独りごちた。
窓は無いのに周囲が見えるのは、ぼんやりとした光源が何処からか発生している所為だが、その正体はつかめない。
知らぬ場所で目醒めたが、不思議と恐怖はなかった。
立ち上がり、身体の動きを確認する。健康そのものだ。痛みも疲労もない。列車に轢かれてバラバラになった身体を、最先端の医療でつなぎ合わせたわけでは無さそうだ。
『蘇生』や『復活』といったオカルトめいた事象とはまた違った、別の何かが自身に起こったようだ。
それが何かは分からない。
不意に、目の前の黒い扉が開いた。
「ようこそ」
扉を開けたのは、居丈高の黒服の男だった。男は続ける。
「さっそくですが、あなたには軍を率いて王都を目指していただきます」
「……軍? 王都?」
状況も分からず、男の言う意味も分からない。考えるにしても、材料があまりにも僅少だ。ウィリアムは思わず手を顎にあてる。
「急いでいただく必要があります」
黒服は、ウィリアムの手をグイと引く。体躯のわりに非力なようだ。ウィリアムは抵抗した。
「誰だお前は」
「失礼は承知ですが、あまり時間は無いのです。急いでいただかねば。私の名など、どうでもよろしいのです」
「ここはどこなんだ? なんで俺は……」
黒服はウィリアムの疑問を無視して言葉を重ねた。
「急いでいただきたい。あなた様ならば、行く道がてらに状況を理解できるはず。さあ、行きましょう」




