俺はいつも形からはいるんだ
「ふあ~~」
ようやく、ようやく自然と目が覚めた俺は自分の物とは思えない可愛らしい声で大きなあくびをかまし、それとともに布団の中で体をぐいと伸ばした。むむ、なんかベッドサイズの合ってない感ぱねぇ。めちゃくちゃでかく感じるぞ……って、そうか。女になって背も縮んでるんだった。なんか起きた早々色々違和感ありすぎてたまらんな、これ。
おかしいだろ、背が縮むなんてさ。なんて思ったものの、そもそも女になってるってことが一番おかしいわけだが。ま、今更言ってもしゃ~ないか……なんて考えながらもぞもぞ体を起こしつつ、壁の時計を見て驚いた。
「まじかよおい、丸一日近く寝てたってか」
時間は朝の7時。色々やって、ちょっと仮眠って感じで寝たのが昼前の11時くらいだったはず。日付も確認し確信した。
「ちっ、なんてことだ、寝て起きたら元に戻ってたって線、あるいはワンチャン夢落ちだった……なんて線もこれで消えちまった~~~~!」
俺は自分の体を見下ろしつつ馬鹿な発言をした。
でもそれくらい許して欲しい。俺はまだ正直、このありえない変化に気持ちが追い付けてるわけじゃない。くだらないことでも言ってないとなんか、こう……、どうにかなってしまいそうだ。
そんなことをうだうだ考えてたら「くきゅる~」なんてまたかわいい音で腹の虫が鳴った。
――――そういや昨日からなんも食ってねぇわ。
「とりあえずめし、食うか……」
ベットから抜けだし、ペタペタと小さい足でキッチンへと向かう。
出不精な俺は幸い買い置きはいっぱいある。その中から食い物をあさる。
「むー、カップめんでいいか」
手っ取り早くそう決めお湯を沸かすべく、鍋に水を入れようとしてまたも衝撃を受ける。
「流し台高ぇ…」
恐るべし俺の低身長! なんとか届くとはいえこの小さな子供がお手伝いしてる感……、俺の心を的確にくじいてきやがるぜ……。そんなアホな感想はともかく、がんばって鍋に水を入れお湯を沸かした俺は無事カップめんを食した。満腹感ぱねぇ! やっぱカレー味は至高。ちょっとカラさが気になったとはいえ、あのとろみ加減が最高だぜ!(俺はお湯少な目で作るのが好きだ) まぁ、Tシャツに撥ねまくって黄色く染めちまったのはご愛敬ってとこで。口直しにペットボトルのお茶を飲み、トイレを済ませてから自分の部屋へと戻る。ペットボトルのキャップを開けるのに手こずったのは内緒だ。トイレなんてものはすぐ慣れた! 自分の体なんだ、しょせんそんなものだ、うん――。
――泣いていい?
「これとこれはまず必要だな」
今はPCで絶賛ネットショッピング中だ。何しろこんな体になっちまったんだ。必要なものが山ほどある、と思う。マルチディスプレイにしてる俺は左画面にショップサイト。右画面に色々参考になりそうなサイトを表示させて色々物色しているって感じだ。便利なんだ2画面、ネトゲするときにも色々威力を発揮するぜ!
今見てるのは下着だな。今絶賛ノーパン中の俺にはまず一番に必要なものだ。それに着る服もないからそれも併せて買ってしまうつもりだ。いつまでもTシャツ、短パンだけじゃさすがにな……。着替えもないし。
こんなサイト、男だった俺が見てたらちょっと引くところだが、今はもう問題ない、ないよな? まぁ金引き落とされるのは男の俺の口座なわけだが、そんなの気にしても仕方ないことだ。
ああ、そういえば口座かぁ……、それも問題なんだよな。銀行口座とかクレジットカードとか、俺名義で契約してるものがいっぱいあるよな。ったくもう、ホントめんどくせえなぁ……。やらなきゃならないことは山積みなのに、その全てに解決方法が見当たらない――というね。
はいはい、これも先送りね。とりあえず継続して使ってる分には問題ないしな。もうしらんわ。
「これかわいいな、これもいいし、う~ん、いっぱいあって迷うな」
下着のほか、もちろんファッション関連もいっぱいサイトがあるからあれやこれ閲覧しまくって、これはと目についたものをポチポチ買いまくってる俺がいた。
参考にしてるサイトにしたって迷うくらい色々あってためになる。有名動画サイト「ユームーブ」とか、さすがに動画だけあってわかりやすいし素人の俺が見ても十分ためになるしで、すぐ応用できそうなのがいいよな。(センスよくまとめられるとは言ってない)けっこうチャンネル登録とかしちまった。
まぁなんだ、人間まずは形から! これ大事ね。