四人寄ったら、尚、かしましい
翌朝、目の色はまた赤色に戻ってた。
たった半日だけの変化だった。すみれ色のほうが目立たなくっていいんだけどな……。しっかし、なんでこんなに目の色や石の色がフラフラ変わるんだよ! 俺は宇宙からやってきた、でっかいタイツの人の、胸でピコピコ光ってるタイマーかなにかかよ? 時間制かよ、燃料切れたら色変わるんかい!
「……ま、マジでそうだったりしてな……」
寝起きでえらいことになってる髪をなんとかしようと撫でつけながら、そんなアホなことを考えてる俺がいた――。
スタートは色々つまずいた俺だったけど、その後は特に問題もなく、日々落ち着いた生活を送っていると思う。
こいつらさえ、いなければな!
「幸音? なにぼーっと物思いにふけってるの。時間は有限なの! もっとしっかり教えなさいよっ」
「ちょっと、杏珠、教えてもらってるくせになに偉そうにしてるのかな~」
「立夏、あんたにだけは言われたくない! ほんとにもうっ、なにしに来てるんだか。マンガばっか読んでないで、しっかりやれ! あんたが一番怪しいんでしょうが~~」
「もう、二人ともうるさいよ~、もうちょっと落ち着こうよぉ。……でも幸音ちゃんが、こんなにオタクさんだとは思わなかったな~」
「「麻衣はオモチャいじってないで、自分のやることしっかりやれ!」」
か、混沌だ……。あと、オモチャ言うな! そいつらにいくら投資してると。
俺の部屋になぜ、この三人がおいでになっているのかしら?
つか、麻衣さんや、俺のゲーム専用機とPC、いじらないでくれるかな? かな?
ああ、鈴にゃんの口ぐせ、移ったじゃないですか、やだ~。
――あの出来事から、早二週間が過ぎ、騒がしさもひと段落した……のであるが。
だがしかし! この俺に安穏としたネトゲ生活を送らせることを良しとしない、嫌味な神様がいるらしい。
学校行事定番、オリエンテーションという二日間の研修に参加した中で、クラスのみんなとの関係はけっこう縮まった。俺にとっては今の四人との関係が特に大きく進展した。
小集団活動をするなかで同じ班になったからである。立夏と麻衣、そんで俺。ここまではまぁなるべくしてって感じだけど、そこに、持ち前の強気行動で、杏珠がグイグイ入り込んできた。
どうなることかと思ったけど、普通にうまくいった。立夏はまんま体育会系でさばさばしてるし、麻衣はまぁ、アレだし。
――うん、うまくいかない要素なかった!
杏珠はぱっと見、やたら可愛いし負けず嫌いな性格から取っ付きにくく感じるけど、実際は面倒見良くていい子だしな。マザコンだけど。
で、オリエンテーション中、班別実力テストなんて、ふざけた企画があったわけだ。普通そんなことするか? 考えた教師は絞める。でだ、班ごとに点数競ったわけだ。誰が何点とか出さないし、実際の成績にも反映されないって、まぁ、お遊び的なものだった。それがまた、まだまだガキっぽい生徒たちの競争心、見事に煽ったね。まぁ所詮小学校でたばかりの内容だし、しれてるけどな。
俺たちが一番になった!
すまん、ついやってしまった。大人げなかった。……でも、反省はしてない!
2番手の班の、寺前って、お高くとまった、背もお高い美人さんにすっげ睨まれた。俺ってそんなのばっかだ。
てなことから、俺が勉強できるってことがバレたわけである。
クラスの野郎どもの意外そうな顔が、俺のプライドを擽りまくったのは内緒だ! アホ毛ピクピクってなったわ! ないけどな! ないよな?
ちなみにオリエンテーション旅行などというものはなかった。なぜなら、住んでる町自体がそういうところだからである! わざわざ旅行しなくてもそういうところがイッパイあるんだから、わざわざ遠くに行く必要はないと。大人ずるい。けち臭いだけじゃん。旅行そのものが集団活動の勉強やないの?
あ、文句言ってるけど、俺、旅行嫌いなんで。引き籠りサイコー!
長かったけど、話し戻す――。
「えっと……、その、みんな、がんばれ! 頑張った分だけ……いい点、とれる。いい点とったら撫でてあげよ……っか?」
励ましたった。俺の励ましブーストはすごいぞ。クラスの男子なら2倍以上のパワーアップ必至!(てきとう)
それにしてもなぜ俺の家がバレたのか。んでもって、なぜ俺の部屋で勉強会という名のおしゃべり会が開かれてしまっているのか……。
朝起きたら幸奈がにこやかに俺のおめかしを始めた。
外に知らない車、止まった。
なぜか、中から三人が一緒に現れた。うれしそう。仲いいね。
解せぬ!
すべては幸奈と杏珠ママのせいだ!
確かに「いつでも遊びに来て……」って言ったことはある。認める。くっそ、社交辞令だっつうの!
やつら、裏で繋がってやがる。俺は一人で遊んでるのが至高だというのにっ! きぃ~~っ!
「も~っ、幸音、ふ・ざ・け・な・い・でっ! あんたの励ましでいい点とれるんなら苦労しないんだからね! ……あ、でもくれるって言うんなら……、貰ってあげてもいいけどっ」
あの一件以来、杏珠のデレっぷりがヒドイのですが。どうしたらよいでしょうか?
まあ、なんにしろ、杏珠、立夏、麻衣、だいたいこの3人と一緒にいることが増えてきた、今日この頃なのである。で、今は今度こそほんとの学力診断テストにむけて、無駄な努力をしてる最中なのである。
まじめにやってるやつが居ないように見えるのは、俺の目が赤いせいですかね?
「みんな……無理(して勉強してるフリ)しないで、今の実力、試すと思って、受ければいい……のに」
ああ、つい思ってること言ってしまった。
「はぁ~~~? 幸音に言われたくないんですけど! この隠れガリ勉!」
「そうだそうだ、オリエンテーションでのあの点数。私すっごくショックだったんだけど!」
「あれ、反則だったよねぇ~」
杏珠、立夏、麻衣の順である。
「ううっ、そこまで言わなくたって……いいと思う」
「はいはい、ゴメンごめん。幸音はいいこ、いいこ」
落ち込んで、拗ねたふりをした俺の頭を立夏がふざけて撫でてくる。家の中にずっといたから、髪はくくったりしてなくて、サラサラストレートである。きゅーてぃくるくるである! なんだそれ?
「うわ、いつにも増してサラサラだ。めっちゃ撫で心地いい!」
「ちょっと、立夏。なに勝手に幸音の頭撫でてるの!」
「どうして杏珠の許可いるかな? 私は撫でたいときに撫でるっ!」
「も~っ、立夏! そこになおれ! 成敗してあげるわっ」
ここ俺の部屋なのに……。
ネトゲぇ……。
もうおしゃべり会って認めれば楽になると思う――。
とりとめのない、おはなし
オリエンてーしょんで話つくれやっ!




