後回しばっかだな
続き!
シャワーを浴び、すっきりしたのはいいが、濡れた体をタオルで拭うのに一苦労した。髪の毛めちゃ大変。乾かすだけですっげぇ時間かかりそうだったから適当に済ませちまった。
着替えも困った。スウェットを着てと言いたいところだったが……、2着あったスウェットのうち、一着は洗濯、もう一着はそのあれだ、濡らしてしまったこともあり……無地のTシャツと短パンに着替えた。どちらもサイズごまかしやすいし、今の時期ちょっと肌寒いが家の中は常時エアコンで過ごしやすい温度にしてるから問題はないしな。
ちなみにパンツは履いてない。なんかサイズも合わないし、なにより履きたくないって気持ちが大きかった。
何はともあれまず自分の部屋に行こう。一度落ち着いてじっくり考えたい。幸い、体の痛みはきれいさっぱり、完全に収まったみたいだしな。
「くさっ」
自分の部屋に入ってまず思ったのはこれだった。我慢できないほどではないにしろ、なんというかまぁ、要はおっさん臭かった。
泣いていいか? 俺。
外はまだ寒いだろうが、窓を開けしばらく換気しファ〇リーズしてようやく落ち着いたところでベッドに腰掛ける。そこでまたちょっと嫌な感じが……。く~~~泣いていいよな? 俺。
布団のシーツ、ついでに枕カバーも納戸の収納にしまってあった妹が使っていたものと取り換え(もちろんクリーニング済な)、ほっとしたところで今度こそベッドに座り込む。なんかもう疲れてきた。主に精神的に。
改めて自分に起こったことを振り返ってみたい。
昨日の夜、裏山で変な光を浴びた感じだ。それが何だったのかは俺には知る由もない。放射線みたいなものを被爆してしまったのだとしても、それ以外のものだったとしてももう今更だ。浴びちまったものは取り返しはつかないし、そもそもすでに影響出まくりな訳だし。
俺の変化が昨日の光のせいだって結びつける証拠なぞもちろんないが、それが関係ないなんてことはそれ以上にありえないことだとも思える。
――これ、今日寝て明日起きたら元の俺に戻ってるなんてことないだろうか?
ないか?
ないよなー。
脱線した。
次は俺の体だ。ありえないことに女に変わっちまった……。
マジ今でも信じられない、っていうか信じたくない。けど、これもう、どうこうしようもないことなんだろうしなぁ……はぁ。
でだ。
こうなっちまったものは仕方ないにしてもだ――。(いやほんとは納得なんてしたくないんだが)
これからどうするって話なんだが。
生活自体は特にというか全く問題ないと思う。
金はまぁ余裕な訳だし、元々一人暮らしな訳だし、外にはほとんど出ない引き籠りだった訳だし、ここに来る人なんて宅配業者くらいなものな訳だし。 もっと言えば、生活物資もその宅配で済ませられる訳だし……な!
こう考えるとマジ俺人付き合い無かった。泣いていい?
じゃあ逆に何が問題になってくるのかだ。
一番の問題は戸籍とかなんだろうけど……、これはちょっとすぐどうにか出来るもんでもないから後回しだな。正直どうすりゃいいのかさっぱりだ。
次はえっとなんだ、やっぱ病気かな? 何しろ見た目はおろか、性別すら変わっちまったからなー。健康保険、使えないだろなぁ……。かぜひいたくらいなら市販の薬で事足りるだろうけど、これって実際は戸籍よりずっと切実でやばい問題だよな。
とは言うもののこれも対処難しすぎるわ。
戸籍もそうだけどこれ絶対正直に言っても信じてもらえる自信ないわ。俺がもし逆の立場で、このことを信じてくれ?って言われても難しいぞ、実際。
仮に、もし仮に信じてもらえたとしてだ……、その先に待ってるのは俺にとって良いものだとはとても思えないな……。
はい、これも後回し!
ま、とりあえずほんとに急がなきゃいけないもんなんてないな、うん。これは現実逃避なんかじゃないぞ? ないったらない!
なんてこと考えてるうちに今度は普通に眠気が襲ってきた。う~ん、こんな頭で考えてもいいことないし、ちょっと仮眠でもするか。眠気にがんがん襲われてる頭でそこまで考え、もそもそとベッドに潜り込み速攻意識を手放した。