オフイベ!(すずにゃん)~うしろ編~
12/8 けっこう、かなり改稿……
「おっ、ノリちび、あれに顔入れてみろよ? 写真とってやるからさ」
会場内で色々行われてるイベントをつまみ食いしながら歩いてたら、けんぴがそんなこと言ってきた。
「ええ~、あれに? 恥ずかしい……」
観光地によくあるやつである。キャラクターの全身が型抜きしてあって、顔の部分に自分の顔をぶち込んで、さもそのキャラになったように、見えるかも知れなくもない……、あれのことだ。ここに置いてあるんだからもちろんゲームのキャラである。リリース初期からあった職のキャラ分はあるな。
「ほれほれ、子供なら喜んで撮ってもらうもんだ! 後つかえてんだから急げ~」
くぅ、こんなしょ~もないもんに並ぶなよっ! 仕方ない……。俺は自キャラの職業である、前衛、近接のイメージキャラである剣士のところで、顔を突っ込んだ。ご丁寧にちゃんと踏み台とかも用意してあった。運営は神!
「可愛いよねぇ、女の子なのに剣士さんが好きなんだね!」
「恥ずかしがってるとこもいいよね。お兄さんと二人で来たのかな~」
「見てっ銀髪だよ? 外人さんかな? それか、ウィッグかな~?」
「お兄さんは普通に黒髪だよ? どんな関係なんだろ~」
何この羞恥プレイ? けんぴはよ撮れ! 変な話になってるし、恥ずかしすぎっ。
俺が恥ずかしがってるのを知ってか、知らずか、一枚撮って終わればいいものを何度か撮り直しなんぞしやがって。けんぴ、ゆるすまじ!
「ノリちび、そんなにむくれるなって。悪かったって。ほら、これで機嫌直せって……」
あんなハズイ目に合わされて、悪かったで済まされると思うな!
ん? おおっ、オレンジじゅーちゅ、ではないか! これ大好きなんだ! 仕方ないな、ゆるしてやる!
「くくっ、ご機嫌復活だな? おまえ、ほんと、わかりやすいわ……」
ほっといてっ。
あっさり物でつられた俺だった。
けんぴが見たがってた情報イベも無事見れたところで鈴にゃんからCHAINが入った。鈴にゃん、催しものなんも見てないよな? ここへ何しに来てんだか……。ま、いいけど。
ねこちゃんポーチからスマホを出す。「猫かよ、似合いすぎかよ」って、けんぴに笑われた。くっそ、けんぴのくせに!
鈴にゃんにCHAINで呼ばれ、けんぴの案内で向かったのはイベ会場の2Fにある一室だった。廊下とか自販機コーナーとか、ゲームキャラにコスプレした若い奴らがたむろってて、いかにも何か時間待ちしてる感じだ。あとこいつら、会話がマニアックすぎてやばい。
待て待て! この流れ、……まずくない? 絶対あかんやつだ。
「ねぇ、けんぴ? えっと、私イベ会場に戻っていい?」
「ダメに決まってんだろ、ほ~れ、もう勘づいちまってるみたいだけど……、ぷふっ、観念して逝ってこい!」
こいつ笑いやがった。けんぴと無駄な駆け引きしてたら、部屋のドアが開いて、手が伸びてきた。
「はい、ノリちゃん確保~!」
うおっ、鈴にゃん。中に引っ張り込まれた。
「か、かわいぃ~~~~!」
「ちょっと何、この子、ハーフなの?」
「え、この銀髪地毛なの? うわっ、まつ毛なが~! まつ毛まで銀髪だしっ。これ、まじものじゃん!」
「お目目、赤いっ! リアル、吸血鬼っ娘だよ!」
俺は入った早々、女性集団に囲まれ蹂躙された。もうお嫁にいけない……。なんてこと思うかっ! なんなんだよこれは!
「はいは~い、みんな落ち着こっ、どうどう!」
鈴にゃんが荒ぶる女たちと俺の間に入り込んで、なんとか解放された。くっそ、俺を殺す気か!
「ノリちゃん、ごめんね~、ビックリしちゃったよね。まったく、みんなガッツキすぎ! 12歳の女の子相手に大人げなさすぎだよ! 反省して、反省」
言ってることはまともだが、それを口にしてるのは鈴にゃんである。一番信用できんわ!
「ごめ~ん、ゆるして~」
「ノリちゃんって、言うんだ? え、ノリスケ? 男みたいなキャラ名だね。ごめんね~、いきなりで、びっくりしちゃったでしょ」
口々に謝ってくれるお騒がせな女性たち。俺はもう呆気に取られ、そんなお姉さんたちをぽか~んと口開けて、見上げるほかなかった。
見れば、みんなコスプレしてるし。ゲームキャラだけあって結構きわどいカッコしてる人も多い。お姉さん、おちち……こぼれちゃうよ? けんぴやなおっちが見たら鼻の下を盛大に伸ばすの確定な!
「ノリちゃん、黙っててごめんね! もう察してると思うけど~、これが私のサプライズなのだ!」
どや顔でそう言い放った鈴にゃん。
こいつ、俺が喜ぶとでも? いや喜ばん! むしろさっさとトンずらしたい。けれど! 俺の思い、鈴にゃんが知る由もなく。っていうか、知る気もないよね! 俺は女だらけの、この部屋でもてあそばれる哀れな子羊と化した……。
「けんぴ~、おっまたせ~!」
「いや、むしろ思ったより早かったぞ。ノリちびが抵抗してもっと時間かかると予想してた。おめぇもまたすっごいかっこだな」
魔術師のコスプレをした鈴にゃんである。もろゲームの自キャラのかっこで、こだわりの作りこみがすさまじくリアルだ。ちょっとスカート短すぎない? 幸音は心配です。
小道具も凝ってて、ロッド(杖)なんかもめちゃリアルだ。しっかし、こんなものどこに隠してたんだよ? 紫ロングのウィッグといかにも魔術師って感じの帽子が、鈴にゃんの小悪魔的容姿にぴったりはまっていい感じだ。ま、胸は残念だけどな! 盛ってないだけ、正直でよい。
鈴にゃんのカッコを見て色々言ってたけんぴの目が俺に向いた。ちょ、こっち見んな!
「へっへ~~ん! どう、けんぴ! この出来栄え。もうね、ドレッシングルームの中でみんなして写真撮りまくったよ! 会心のできっしょ!」
鈴にゃん、鼻の穴、広がってるよ。はしたない。俺はもう思考を放棄した。無心になる。色即是空空即是色……、あーめん。 すまん、適当に言った。
「……すっげーな、これ。俺もうこれ見れただけで今日来た甲斐あったわ……」
素直なけんぴはきらいです。
俺のコスだが……、俺のゲームキャラは近接戦闘の得意な剣士さまである。ソードマスターさまなのだ! 決して、決して今着てるコス、黒魔導士、ソーサラーなどではないのである!
真っ黒なローブは白のレースで縁取りされてて、お上品に見える。おかげで俺の銀髪がすごく映える。ローブにはフードが付いてるので髪は前に左右に垂らしてある。ローブの下のチュニックは淡い赤で、これもレースの縁取りがされてて可愛いい。黒いニーソまでもキッチリ白レースで縁取られ、清楚感ぱねぇ。っていうかだ、俺の足に絶対領域なるものが出来てしまった! なんぞこれ! 靴は黒いパンプスを履かせてもらってる。
これみんな鈴にゃんが作ったり買ってきたりしたんかな?
これが若さか! 情熱の使い方間違ってるわ……。
ともあれ、俺の可愛くも麗しい姿にみなひれ伏すがよい! ふははははっ!
うそです。恥ずかしいから見ないでいいです。
イベント会場にみんなして繰り出した。俺恥ずかしさで悶絶死する。けんぴ笑いすぎ! そして視線エロすぎ。お姉さんたちをそんな目で見んな!
で、俺、ロリコン共の視線、独り占め! ウレシクナイ。銀髪赤目の小さい女の子、俺のコスプレ姿は目立ちまくりだったけど、案外普通に歩けた。みんなきっちりルール守って、不埒な真似してくるやつとか、変態行為するやつもいなくて以外だった。
お前ら……、紳士の鏡だな!
女衆からコスプレコンテストのお誘いも受けたけど、俺は丁重に、でも断固として拒否した! そんなものに出てたまるか。鈴にゃんの説得攻撃には、幸奈の名前を出して抵抗したった。
効果抜群だった。
コスプレ自体は、まぁ、なんだ。案外楽しいなって思った。恥ずかしいけど、みんなとワイワイやるのもいいもんだと、ちょっとは思えた。知らない人しかいなかったけどな。だがしかし、コンテストは別だ! あれは引き籠りの敵!
何が悲しくて大勢の人の前で俺がパンチラ晒さねばならないのかと! ロリコンに媚びへつらうのはゴメンであるからして。自分なりに楽しめればそれでいいじゃんか。
ちなみに男のレイヤーもいたが目が汚れるのでスルーな。
俺はコスプレ大会に出てる鈴にゃんたちは放っておいて、見たがって涙するけんぴを無理やり引き連れ、気になってたゲームバトルへと足を運んだ。もちコスプレのままである。着替える時間無いし! 気に入ったわけじゃないんだからね? ないったらない!
タイムアタック方式のバトルで、直接対決はない。俺はけんぴとペアでそれに挑んだ。カッコは黒魔導士だけど、扱うは大剣使いの剣士、ソードマスターノリスケだ! けんぴを盾にガンガン突き進んだった。タンク乙、けんぴ!
決勝まで進んだった!
負けたった!
「銀髪魔導士姿のとっても可愛いらしいレイヤーさん、コスプレでの参戦ありがとう! でもプレイは剣士だったノリスケちゃんです。ゲーム中の操作に必死な様子もいじらしくって、とっても良かったですね~! 運営としてもおいしかったです。準優勝おめでとうございます」
「……あ、ありがとうございます……」
悔しさで涙目の俺。追い打ちかけるようにステージに立たされ、インタビューまで受けちまった。引き籠りに対してなんたる仕打ち! それにしても、どいつもこいつもロリコンか!
「ノリスケちゃんと、ペアのけんぴさんには準優勝の景品として、ゲーム内のアイテム交換に使えるチケットコードをプレゼントします! 改めて、おめでとうございました。はい、みなさんも、暖かい拍手をお願いしま~す」
けんぴ、ついで感パねぇな。君のやられた数だけ俺は集中できた! 誇っていいと思うの。それにしても大勢の人の前で、こんなハズイカッコで称えられるなんて……、複雑だ――。
「幸音ちゃ~~~ん、ダメだったよ~~~」
鈴にゃんたちは、コスプレコンテストでベストスリーに残れなかったらしい。悔しそうに俺に抱き着いてきた。背の高さ違うんだからやめて、潰れちゃうから。あと、本名で呼ぶなや!
ま、いいや。今日は色々やってもらったし。けんぴだって足手まといの俺を助けてくれたしな。
こんな体験、生まれてこの方初めてだった。なのに色々濃すぎ!
楽しくはあったけど、もう勘弁願いたい……。
幸奈と、仕方ないから瑠美にも、CHAINに写真を上げといてやろう。瑠美が悔しがる姿が目に浮かぶなー、くふふっ。
すさまじく濃厚な一日を終え、俺たちは早めの帰途についた。けんぴは名残惜しそうだったな、すまん。俺はレイヤーのお姉さんたちにチューされまくって大変だった。くっそぉ、男の時の俺にお願いしたかった。
……だから疲れ果てた俺が、帰りの電車で寝てしまったのは当然の結果というものだ!
俺悪くない。
気付いたら家のベッドで寝てたことはもちろん内緒なのである。
なんぞこれ、最長文記録更新w
文まとめられないわ~w




