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女の子になったけど淡々と暮らしたい──ちょっと不思議もあるかもね──  作者: あやちん


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幸奈の奮戦

とりあえず投稿

「え? なに?」


 今何か聞こえた気がする。


「幸音? あの子……確かトイレに行くって……」


 私はどうにも嫌な胸騒ぎがして、同僚との『CHAIN』のやりとりを中断して様子を見に行くことにした。自然と早足になった。ああ、頭がジンジンする。なんだろこれ。


 トイレへと向かう通路に差し掛かってすぐ、その光景を見た私は一気に頭に血が上った!


「あなたっ、その子から離れなさいっ! 早くっ! 人を呼びますよっ!」


 くうっ、幸音が通路に倒れてる。身動き一つしない……。


 倒れてる幸音のすぐ脇、一見普通に見える、背の低い痩せた男が背を向けて立っていた。そいつが、私の声にびくりと振り返った。こ、怖い。でも、ここで逃げるわけにはいかない!

 目深(まぶか)に被った帽子で表情が見えないのがよけい不気味に感じる。骨ばったその手にはパッと見、男性が使う電気かみそりのような物を持ってる。……そうだ、あれってスタンガンだ! ストーカー対策のビデオで見たことがある。あ、あんなものを幸音に! 私は自身に気合いを入れ、男を(にら)みつけながら思い切り息を吸い込んだ。


「きゃ……」


 私が大声を出そうとするのと、男が身を(ひるがえ)して逃げるのと。どちらが早かっただろう……。


 ともかく、私は気持ちを切り替え、すぐさま幸音の元へと駆け寄った。

 幸音は気を失っていた。

 

「うっ、ひどい。あいつ、どれだけ強い力で幸音にっ。可哀そうに……、首筋のあたりが真っ赤に腫れあがってるじゃない!」


 普通、スタンガンをあてられた程度じゃ気絶なんてしないって教わったのに。幸音……、気を失うほどショックを受けたのかな……。

 そんなことを思いつつも、いつもまでも通路に倒れたままにはしておけない。幸音の体をなんとか持ち上げ、近くの長イスまで連れていき、膝枕をしてあげた。いくら小さいとはいえ、140cm近くあるんだからそれなりに苦労した。


 でも、良かった、無事でいてくれて。


 あのまま気付かずにいたらと思うと……、余りにぞっとしない話だ。

 私は膝の上で今も気を失ったままの、幸音のまあるく可愛らしいおでこを撫でる。ふふっ、黙っていたらこんなにも可愛らしいのに、喋ってしまうと残念な子になってしまう。外ではそれなりに猫を被れるようになったけど、家ではまだまだだ。……苦労してるね、兄さん!

 つんとした小鼻をちょこんと指で弾いてやった。心配させたバツだ。甘んじて受けるがいい。


「むにゃ……」


 それが刺激になったのか、幸音がうわ言とともに身動きする。ふふっ、可愛いんだから、もう。



 そういえばさっきのこと……。


 なぜか幸音のことが気になって、わざわざトイレにまで様子を見にいった。これと似たようなことが前にもあった。そう、高熱を出して……目の色まで変わった時だ。これ、絶対無関係だとは思えない。幸音が落ち着いたら一度確認しなきゃ。


 そう心にメモを残しつつ、幸音の目が覚めるまで……、私はやさしくおでこや、艶々キューティクルおばけの髪を撫で続けた――。


 ちょっと、これ気持ちよすぎだ!


 

 そうそう!

 

 スタンガン野郎には逃げられてしまい、悔しいったらない。

 一応ショッピングモールに子供が被害にあったという連絡をし、他のお客さんにも注意してもらうようにしたのは当然のことだ。


 もちろん警察にも被害届は出した。

 警察のみなさん、ぜったい(・・・・)にっ、捕まえてくださいねっ!




「姉さん、昨日は私、どうしちゃったんだっけ? なんか、いつの間にか部屋で寝てたんだけど……」

「幸音……、あなた覚えてないの?」


 むむぅ、なんか幸奈の態度が妙に硬い。なんだっけかなぁ……。


「ん~~~~、ショッピングモールで制服とか色々買ったのは覚えてる。めんどくさかった」

「こ~ら、そんなこと言う子には朝ごはんあげないよ」

「あ~~~、ちょっと、うそうそ。感謝してる、感謝してますから!」


 不意に幸奈の顔がまじめな表情に変わった。


「幸音、昨日あなたは暴漢というか変質者かな? 変な男にスタンガンで撃たれたの」

「ええっ、そ、そうだったけ……」


 どうも昨日の記憶はあやふやなんだよな……。


「撃たれたのよ! あなたは気を失って倒れてた。でもね、なぜか私はその時すぐに駆けつけられたんだよね。不思議だと思わない?」


 んん? 幸奈は何を言いたいんだ?


「先日、高熱出して寝込んだとき、夜中に私、あなたの部屋に押しかけたでしょ。あの時はどうしてだろね? って二人で首かしげたじゃない」

「う~ん、そうだっけ? もう覚えてないや……」


 いや……、そういえばそうだったか。む~ん。


「昨日、あの時、何か聞こえたような気がして、頭がジンジンしだして、……幸音のところに行かなきゃって気持ちになったんだよね」


「う……ん」


「もうハッキリ言うけど、笑わないでね? これ、きっとテレパシーみたいなものだと思う! 幸音がつらい思いしたときとか、驚いたときとか。気持ちが昂ったりしたときにね……、その気持ちが私に伝わってきてるんだと思う」


 おおう、まじめな幸奈をして、こうまで言わせるとは。よっぽど昨日のことが(こた)えたんだな、すまん……。

 でも、十分ありえそうな話かもな。なんか自分でも身に覚えがある気がするし……。なにより不安げにこっち見てる幸奈に何か言ってあげなきゃな。


「えっと……、私もそんな気がする。よくわかんないけど……、きっとね、これのせいだと思うし」


 俺はそう言って、胸元のペンダントを引っ張り出し、目の前に掲げて見せる。青い色も鮮やかな謎の石。すべての不思議はみ~~んな、こいつに繋がるのだ!



 あ、あれ、あお……く、ない?


「ゆ、幸音? それ青かった……よね?」

「うん、すっごく綺麗な青だった。紫がかった、こゆ~~い青だった」

「これ、赤色って言わない?」

「そ、だね」




 うわ~~~っ、もう、なんなんだっ、これはっ!



 もう俺しらん!


むむん

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