どうすんだよこれ?
続き! 初回連投ここまでです。
「冷たい……」
腰から背中が冷たくって目が覚めた。
「ああっ! いてっ!」
またも寝っ転がってたようで、慌てて身を起こそうとしたら手で髪を押さえつけてしまったみたいで頭皮が思いっきり引っ張られめちゃ痛かった。って、ええ? なんで髪? なんで手で押さえつけられんの? などと考えてるうちにさっきまでの出来事も頭ん中で急浮上してきた。
「うええええええっっ?」
もう俺は混乱の極みだ。もう朝から矢継ぎ早にいろんなことがこの身に起こって頭パンクしそうだっ!
冷静になるためにも風呂でまたシャワーを浴びる。はや今日2回目だ。
体の痛みは嘘のように収まっていたが、別のもの、俺の自尊心はボロボロだ。35にもなってしょんべん漏らすなんてどうよ? もちろん言い訳は山ほどあるとは言え、マジいやになる……。
けどだ。けどよ! そんなことど~~~~~~~~~~~っでもいいようなことが今俺の身に発生しているっ!
「ま、まじかこれ!」
シャワーを浴びながら鏡を見る。どうしようもない今の状況をようやくきっちり把握した俺は、もう自尊心どころか精神が崩壊しちまうんじゃないかと我ながら心配になってくる。
お、俺、女になってるし。
なんだこれ。
なんだよこれ。
なんなんだよこれ!
顔を下げ、改めて自分の体を見る。
俺の目はどうしても股間にくぎ付けだ。
ない。どう見てもない。あるのはただ一筋のあれだけだ。触ってみてもやっぱりない。
中に隠れてんじゃないかなんて馬鹿なことまで考えてしまった俺は悪くない。実際確認してしまったし。いや、当然するだろっ?
「はぁーーーーー? んな馬鹿な……」
改めて俺はこの非現実にどう対処していいのか見当もつかず、混乱するばかりだ。なんて思ってても仕方ないので確認を続ける。あれ、なんか冷静じゃない? 俺。
髪が長い。しかもまばゆいばかりの銀髪でつやっつやだ。尻まで届いてるな。元は短く刈り込んだ髪だったはずなのに、どうしてこうなる?
背が低い! どうしようもなく低い! 170超えてたはずなのに今140あるかも微妙だぞ……。なんだそれ!
ついでにいえばめちゃ細で胸なんてほぼない。これはあれだな、女っていうよりもだ、女の子って言ったほうがしっくりくるな。いやだから何って話だが……。
体を見てるうちになぜかどんどん落ち着いてきた。マジ俺ってこんなやつだったっけ?
鏡をじーっと見つめてみる。
「天使か!」
ぽろっとそんな言葉が出る。陳腐すぎる表現だがそれしか言えん! うん、美少女すぎだろ俺。
今更だがその声もいかにも女の子の出す声で、ちょっと舌っ足らずぎみだがソプラノの可愛らしい声だ。でもそれが自分の声だと思うとちょっと思うところがあるわけだが。
顔はもう、元の俺からは想像できないほど様変わりしていて、妹と比べてみても全然にていないと思う。なんでこうなったのか想像もつかんが、これもうやばい。まじで。俺ロリコンじゃないけど、見たら絶対猫可愛がる自信ある。いやこれ俺だけどもさ。
目の色はすみれ色? 紫っぽい色でかなり変わった色だよな。肌は肌で真っ白で日本人とは思えない色あいだと思う。おーおーシャワーのお湯をよくはじくはじく。さっき一度起きた時も確認したけど火傷の跡とか古傷とかも一掃されてて、表現陳腐ですまんがまさに玉の肌! すげーな俺。
くそー、つくづく、なんでさっき一度起きた時の若返った状態で留まっててくれなかったんだよ! あの時の俺で生きていけたならまじ人生捨てたもんじゃないって思えたのに。
ああ現実逃避――。
なんてこと考えてる場合じゃないよな!
どうすんだよこれ?