ネトゲじけん後編!(しょうげき)
過去最長文!
「こんにちは、こちらが、ええっと……、ワイルドビスケッツ? のオフ会集合場所で、あなたが鈴にゃんさん? で良かったでしょうか」
うっわ、美女さんに話しかけられちゃったよ。しかも私のことまで知ってるっぽい! なんなのこの状況? 訝し気にこっち見つめてくる~~~、って、そか返事返事~!
「はい、そうですよ~、ここで間違いないですし、私がその、えっと、鈴にゃんでつっ」
し、しまった。かんだっ! く~~~、こんな美人を前に、はっず~~。だって仕方ないじゃん、知らない人相手にキャラネーム伝えるってどんな罰ゲーム? ……後ろでけんぴが笑ってる声がする。ちっ、後で絞めるっ!
「そうですか、それは良かった。――ほら、前に出てご挨拶は?」
「あえっ、う、うん……」
なんだろ? 後ろに隠れるようにしてこっちを覗き見してた美幼女ちゃんの背中に手をやって前に出そうとしてる。もう、かっわいぃ~、恥ずかしがり屋さんだね、この子。でもご挨拶? って何?
――え? でもでも、まさか、ねぇ。
「そ、そのぉ、えっと……」
美幼女ちゃんが俯きながらも前に出て、お話ししだした。美女さんが背中をナデナデして励ましてる。そんでもって美女さんの顔を、はっとして仰ぎ見ちゃうとか、もう! これどんなご褒美? 後ろのやつらもなんかざわってるよ~!
「のっ……、ノリスケですっ! 今日はよろしくお願いします!」
「「「「うええぇ~~~~~~!」」」」
一気に言い切った美幼女ちゃん。後ろのやつら、私が反応するより先に、どよめきの声あげちゃってるよ。でも、ちょ、ちょっと待って。まじ? なにこれ、ドッキリ?
「ええ、あの? の、ノリスケさんですかっ? 君が? ええっ!」
テンパった私は悪くない! こんなのテンパらないほうがどうかしてる。でも私に話しかけてくれた自称ノリスケさんの美幼女ちゃんも、小さい体に緊張感たっぷりにじませたまま固まってる。もうね、可愛すぎ!
「ほら、鈴にゃんさんが話しかけてくれてるわよ? それにいつまでもサングラスしてないで外して。……気持ちはわかるけど、初対面の人に失礼でしょ?」
うわ、クールな美人さんに「鈴にゃんさん」とか言われちゃうとなんか倒錯的感覚に陥ってしまいそう。でも小さい子へのこの対応にすっごく好感! カンペキ美人さんだわ~。
「う、うん。わかった……」
自称ノリスケ幼女ちゃんが、俯きかげんの小さな顔からそっとサングラスを外した。ほあぁ、手もすっごくちっちゃ! 外した拍子に銀髪がさらっと流れ落ちてキラキラした。もうね、この子、萌えの体現者すぎて怖いんですけどっ。
「ノリスケです! あらためまして、きょ、今日はよろしくお願いします!」
美幼女ちゃんが、伏し目がちながらも顔を上げ、ちょっと舌足らずな言葉で挨拶をやり直した、その時、この場を完璧な静寂が支配した!
「おいおい、まじかよ……」
これはけんぴさんの言葉。
「いい、いいです、すごくいい!」
これ、なおっちね。こいつぶれないな、このロリコン。
「これは……また。しかし彼女、本当にノリスケさん……なのか?」
――信じられん――、最後は呟くような言葉だったけど……、禿同だ。マヌエルさんのその言葉で私は我に返った。
「お気遣いありがとう! でも恥ずかしがらなくてもいいんだからね~! みんな優しい人たちばかりだし。(きっと!) でも、ちょっと確認なんだけどね、君が、そのぉ、ノリスケさんで間違いない、わけ……なのかな? かな?」
ちょ、ちょっと! 赤い目、赤い目だよっ。くぅ~~~~!
あぁ、ツッコミたい。はげし~く、ツッコミたい! けどっ。サングラスまでして隠してたのに、今それを言うのはあまりにもアレだし……。なので、無難に確認だけした。
あたふたと、途切れがちながらもしっかり受け答えしてくれるノリスケちゃん(さんはダメ、ちゃんだよね) 更に、いくつかの質問を交わし、美女さんからの言葉もあって間違いないと裏が取れたところで、レンタルスペースの利用時間となった。
「では私は一度失礼させてもらいますね。また迎えに来させてもらいますので、この子のことよろしくお願いします」
ほんと礼儀をわきまえた方だよね、美女さん。北美幸奈さんって言うらしい。――わざわざ自己紹介までしてもらっちゃったし――。
そう言って美幼女ちゃん(ノリスケちゃんと確定!)に軽く手を振りながら、颯爽とした足取りで去っていった。男どもがちょっと残念そうな顔をしてるのがすっごく癪である。ノリスケちゃんは立ち去った方をしばらく寂しそうに見つめてて、もうね、抱きしめてあげたくなっちゃった!(馴染んでないし、まだ、しないけどね!)
さて、オフ会開始と行こうではないか~!
「はい、ノリスケちゃんはこっち、私の隣ね~」
「男性は、そこいら辺、適当に座ったらいいよ」
リビングダイニングになってる部屋は10人くらいは余裕で入れるスペースがある。リビング側に向かい合ってソファーがあり、間にテーブルが並べられてる。ま、この辺は適当にアレンジもできちゃう感じだね。料理とかもしようと思えば出来ちゃうけど、もちろんケータリングで注文済だ! けんぴたちはちゃっかりお菓子とかも持ち込んでいる。私の言葉にちょっとぶーたれてるけど無視です、無視!
「ではでは、いきなり色々あっちゃったけど! オフ会始めたいと思いま~す! 司会はわたくし、鈴にゃんが努めますんでぇ、みんな協力よろしくお願いしま~す!」
そんなこんなでやっと始まったよ、長かったぁ。
「じゃお約束の自己紹介いきまっしょ~!」
届いたケータリングの料理をパクパク食べつつ、オフ会を進行していく。うむうむ、みんな協力的でけっこうけっこう!
「まず私ね! 鈴にゃんこと、林堂悠乃です。地元出身でOLなんかやってま~す。年は内緒だけど高校出てからもうじき4年だね~」
「それ隠す意味あんのかよ? ああそうか、留年ってことも……」
「うるさい、けんぴさん! じゃバツで次けんぴさんね!」
ほんと小うるさい奴である。
「じゃ、俺ってことで、けんぴだ! 本名は飯田健人。この界隈で大学生やってます。たぶん鈴にゃんとは近いと思う。ちな、早生まれの21歳な! よろしくお願いします!」
む、年代同じっぽいし、それじゃあ私のが1っこ上になっちゃうじゃん。くっそ、けんぴの癖に生意気な! でもまぁイケメンの範疇には加えてあげよう。背も高いし。
「次は私で。リーダーやってるマヌエルです。見ての通り一番の年上になるのかな? ノリスケさんとは同じくらいだと思っていたんだが……。おっと余計だったね、正木真之介です。もう30歳になる会社員のおっさんで申し訳ないが、よろしく頼みます」
マヌエルさん、平凡。だがそれがいい! いつまでも変わらないマヌエルさんでいてください。
「じゃ、次はオレで! なおっちっす! 高坂尚己、17歳です。地方で高校生やってます。富士山がすっごく綺麗に見えるとこなんで、また良ければ遊びに来てくれたらウレシイっす!」
こいつはなぁ、あれだね。ロリコンで決まってしまったよ。せっかく可愛い顔してるのに、残念!
さあて、最後はお待ちかね! みんなの視線が銀髪赤目っ子に集まる。ソファがちょ~っと高かったね! 足をプラプラさせてたけど、視線が集まってやめてしまった、ちっ。
「えっと、その、ノリスケです…………」
つ、続かない! ずっと伏し目がちなままだし。ネトゲとのギャップ、ひどすぎ。あの、チーム一のイン率とトップレベルのランキングスコアを誇る、強キャラの面影がひとっつもないよ。
「ほら、がんばって、ノリスケちゃん。歳上ばかりだからって、緊張しなくていいんだからね。ネトゲの時みたいにね、地でいっちゃえ、地で!」
私の声にみんなも大きくうなずく。
「……う、うん。そのノリスケです。名前は北美幸音です。12歳です。その……、今まで隠しててごめんなさい! でも、でも、これからも……、出来れば仲良くして……欲しい、です」
ノリスケちゃんは、ここまで言って感極まってしまったのか、赤いお目々にいっぱい涙をためてうるうるしだした。うぉ~~~、美幼女の涙。尊い!
「12歳かよぉ……、くあ~~、なんっちゅう子供っぷり。それであのネトゲ無双って、すごすぎだろ! ノリスケさん、ああ、ちゃんか。ノリスケちゃんはすげえ! 誇って、自慢していいんだぜ! 子供らしくよ。最高な奴なんだ。もっと自信もってけ」
けんぴが言葉は雑だとは言え、泣いてるノリスケちゃんを励ましてる。う~~ん、侮れない奴。それを皮切りにみんながノリスケちゃんを囲んで、口々に励ましや慰めの言葉をかけだした。うんうん、いいね、いいねぇ。このチーム、ほんと最高だね!
考えてたオフ会のイベント、たくさんあるけど今はこの時間を大切にしたいって思うから。だからしばらくはこのままでいいよね。
落ち着いたらもっともっと話をしよう。ノリスケちゃん、幸音ちゃんは不思議がいっぱいだ。聞きたいことてんこ盛りすぎで困る!
私はそんなことを考えつつ、今は笑顔に変わりつつある、幸音ちゃんのその可愛らしい顔を堪能する。
う~~ん、オフ会して良かった!
ちなみにみんなに良くしてもらい、ようやく打ち解けてきたノリスケちゃんとみんなで、即席落ちゲー大会なんぞをしてみたところ、揃って大差でぼろっぼろ、マヌエルさんですら歯が立たず……やられてしまったのはいい思い出だ。
やっぱ幸音ちゃんはノリスケさんだった!
後日、けんぴはマジ悔しかったらしく、しばらく落ちゲーにはまったらしい。
ほんと馬鹿だと思った。
難産すぎて遅れたった




