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女の子になったけど淡々と暮らしたい──ちょっと不思議もあるかもね──  作者: あやちん


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結局なにもわからない

なげぇの

 昨日の話は、わだかまりを残したままなし崩しに終わった。

 幸奈は黙り込んでしまったし、俺ももう言うことはなかったし。幸奈の目が俺を非難してるようでいたたまれなかった。けど、俺に一体どうしろと……。俺は完璧超人じゃないし、いつでもどこでも最良の判断が出来るような人格者じゃないんだっつうの。


 俺はそのまま部屋に引き籠りネトゲに逃避した――。


 朝になって幸奈は学校に出勤していったけど、俺とは顔を合わさずじまいだ。俺なんて風呂も入らず、めしも食わず、久しぶりの徹夜プレイで、イン率低下で開いてたチムメンとの差をだいぶ挽回した。ドロップ大量で武器強化も(はかど)ったぜ。


 むぅ、やっぱむなしい、な……。




 小雪舞う寒空の(もと)、幸奈が小箱を抱えて帰ってきた。外はもうすっかり暗くなっていて、いつもよりかなり遅い帰宅だ。俺は気まずいながらも出迎えた。お互い最低限の言葉で挨拶を交わす。心配だったのに素直じゃないよな、俺も。


「それ何?」


 そんな中でも気になった俺は、我慢しきれずそう問いかけた。

 俺の声に反応はしたものの無言で居間に向け歩く幸奈。後をついていく俺。パタパタとクマ耳スリッパの音だけが廊下に響く。


 居間のテーブルに小箱を置き、俺の声なんて聞こえてないかのように開封作業を黙々と始める幸奈。俺はもうあきらめて、じっと見つめてる。

 小型の……電気機器? 新品じゃなさそうだし、どこかで借りてきたって感じだな。ごそごそと取リ出された機器は、つやのない黒色をした細長い直方体で、片方の先端は円筒状になってる。ペットボトルと似たサイズ感で俺にはちょっと重そうだ。


 幸奈はそれをおもむろに片手で持ち、カチカチ、ポチポチいじくり出したかと思ったら……、


 俺の胸元に向け、急に差し出してきた!


「わわっ」


 テーブルに前のめりになって覗き見してた俺は、びっくりして尻もちをついてしまった。幸奈は尻もちをついた俺に構わず、機器を胸元にかざしたままだ。な、なんだよ一体。


 不審に思いつつもやってることを(かんが)見てれば、予想はついてきた。だいぶ緩んできた頭とはいえ、大卒ですからして。

 でも……、俺の幸奈への気持ちは最低である。あるけれど、俺も大人! 幸奈のやりたいようにやらせてあげようと、尻もちからぺたん座りへと体勢を移し、大人しくされるに任す。

 幸奈は何度か機器のモードを切り換えては胸にかざすことを繰り返し、そのたびにアラームが鳴ってびっくりしたけど、まぁ慣れた。


 幸奈の表情は真剣そのものだったけど、次第に表情が緩んできているのがわかった。で、とうとうそんな作業が途切れ、機器の液晶パネルをじっと見つめていた幸奈がついに言葉を発した。



「うん、大丈夫、大丈夫だった……」


 そんな言葉を発した幸奈をそっと窺うように見てみれば……、とても穏やかで優しい表情を浮かべていた。


 女神か!



 結局。


 幸奈様は相変わらず俺の言うことはま~~ったく、信じてなかったわけで――。


 信用できなかったから放射線測定器なるものまで持ち出して各種線量を測ってたってわけだ。わざわざ測定器をレンタルしてきたらしい。

 帰りが遅かったのは借りてから宝飾店……ああ、エトワールだっけか? に立ち寄って確認していたからなんだと。今の雰囲気だと向こうもなんともなかったみたいだな、うん。


 エトワールの店主さんと幸奈は気の置けない仲のように見えたし……、そう考えると幸奈があれほど怒るのにも(うなず)ける。いや、ほんと軽率でごめんな……。


 ま、俺の勘で言ってるようにしか聞こえなかっただろうし、信じる方がおかしいか。当然だな――。


「で、幸音。昨日は途中であれだったけど……、もう一つ大事なことがあるよね」


 落ち着いたところでまたお話(・・)始まったよ。


「その石がないと結局幸音はどうなってしまうの? あの疲れようはどういうことなの?」


 そう来るよね。知ってた。


「正直、私にもわかんないっていうのがほんと。でも感覚からするとね……、この石は私の活力の源的な感じ? ぶっちゃけ電池代わり? 先日のあれはまさに電池切れ!」


 自分で言ってて何それって思うわ。でもそう感じたわけだし。

 持ってるとずっと胸の辺りが暖かく感じるんだよな。安心感ぱねぇし。……でもまぁ、なきゃ無いで済むって軽く思ってたんだけどな。


 先日のあれであっさり崩れ去ったな。


「何よ、それ。意味不明だわ、電池って……、オモチャじゃあるまいし。でも実際、フラフラだったしねぇ」

「そだねぇ……」


 そう相槌(あいづち)を打った途端に頭を小突かれた。ちょ、けっこう痛いんですけど!


「むぅ、姉さん、何するの~~」

「何するのじゃない! 自分のことでしょ、真面目に考える!」


 そうは言ってもな。どうしようもないでしょ、これ。きっと俺の体はあの光浴びてどうにかなっちゃったんだろ。(事実なってるけどな、外見的に!)この石が持ってる力がないとどうにかなっちゃう的なやつ。――なんか自分で考えててウケル。なにその厨二設定。


「むむ、考えてることは考えてるけど……どうしようもないしさ……」


 言った幸奈もわかってるのか、ほとほと困った顔をしてる。美人はそんな顔でも美人である。


「と、とりあえず! 幸音はその石は肌身離さず持ってること! 絶対無くさないように注意ね」


 おお、怪しさより実をとったな。そりゃそうか。倒れてたら元も子もないしな。


「わかった!」

「それから一度精密検査を受けなさい! もうこの際、思い切って受けちゃいなさい。それで何かあったとしても……、いえ、大丈夫! 一緒に行ってあげるから、ね、わかった?」

「わ、わかった! しかたないね……」


 うへぇ。面倒の予感しかしない。

 でもまぁもう、しゃーないな。生きてたらいずれどこかで受けることになるんだ。早めに受けてはっきりさせるさ。



 はぁ……。


 でもさ。実際、男から女に変わったわけで。中身どうなっていることやら――。



 うん、不安しかないなっ!


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