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これ何回繰り返すん?

続き!

「さ、さむっ!」


 気付けば激しい身震いとともに声を上げていた。それとともに急激に覚醒した俺は自分の状況への違和感に激しい戸惑いを覚える。


 朝の陽ざしが、葉が半分枯れ落ちた雑木林の中に差し込んでいた。

 どうやらスウェットのみの薄着のままここで寝てたみたいだ。それもなぜか地面にうつ伏せのはいつくばった体勢でだ。秋の夜、こんなところで朝まで寝っ転がってたらそりゃ寒いわっ。

 まず仰向けになった。頬に着いた落ち葉混じりの土が、口の中に入ってしまい思わず噛んじまった。くそっ!


「ぺっぺっ!」


 慌てて上体を起こし、ガリつく土を吐き出した。

 唾を吐きながらも、どうも体の調子が悪いようで節々が痛い。これはあれか、かぜでもひいちまったか?


「っていうかなんで俺こんなとこで寝てるんだって……」


 思わずそう口にした。で、周りを窺えばいやでもそれが目に入る。直径4、5m深さ2mちょいってとこかな? ミニクレーターっていう感じの円錐状に陥没した地面が俺のすぐそこにあった。

 うんうん、どんどん思い出してきたぞ。昨日の夜、ここに来てみればそこのクレーター中心に淡白く輝く何かが見えたんだ。俺は今考えると不用心にもほどがある行動でそれをよく見ようと近づこうとして……、あっと思ったときにはすでに目の前をその光に覆われてた。


「むぅ……、びっくりして気を失ったってとこなんか? ええ歳してちょっとハズイな」


 気恥ずかしさからそう口に出しつつ、クレーターの中心に改めて目をやる。


「何もないな。あれ一体なんだったんだ? 曲がりなりにもこんだけの陥没ができるんだ。それなりの物があるかと思ったんだけど……。深いとこまで埋まっちまったんかな?」


 クレーターの淵から中心部を見るものの何も見当たらなかった。さすがに降りて掘り返すことはためらわれる。しかも体の節々がどんどん痛くなって体調がしゃれにならないくらい悪くなってきた。


「なんだよこれ、痛すぎる……、やばくないか」


 痛みのせいもあり怖くなってきた俺はもうクレーターを調べるどころじゃなく、痛む体に鞭打ちながら這う這うの体(ほうほうのてい)で自宅へと引き返す羽目になった。


 家に戻り靴を脱ぎすて廊下に足をつけたところで、限界を向かえた俺はそのまま倒れこみまた気を失った――。




「俺、また気絶してたんか……」


 目が覚めた俺は周りを見まわし、自分の家であることにほっとした。体はまだ痛いがこのままってわけにもいかず、軋む体にまたも鞭打ち立ち上がる。口の中がきしきしする。土かんだし地面に寝っ転がってたし、まずはシャワーでも浴びよう。


「は?」


 鏡見て驚いた。俺は今35歳。世の中では紛れもなく中年と言われる年齢だ。見た目はまあ、可もなく不可もなくって感じのごく普通のおっさんだったと思う。それがどうだ……


「なんだよこれ、どこの学生さんだよ……おい」


 鏡に映った顔を凝視する。

 若い。めっちゃ若い。20代、いや10代って言っても通用するくらいの変わり様で世の中のアンチエイジングにシャカリキになってる年寄りやおばさん連中に見せてやりたいくらいだ。口周り、目元に目立つようになってきた小じわやたるみもきれいさっぱり消えていた。はっとして慌てて手足も確認してみる。


「傷がねぇ……」


 肌ツヤがいいいどころじゃ無かった。35年生きてきた間に刻み込んできた細かい傷あとが跡形もなく消えていた。特に驚いたのは左手首にケロイド状に残っていた火傷の跡だ。それがきれいさっぱり消えていた。

 確認をもっと続けたかったがどうにも痛みが治まらず、それどころかまた激しくなってきたので急いでなんとかシャワーだけは浴び、新しいスウェットをどうにか着込み、今度はなんとか寝床まではたどり着いたものの……そこまでで、またもや気を失った――。




 尿意で目が覚めた。


「なんか俺、すっげぇ体勢だな……」


 尻を突き上げたまま布団の中に半ば体を突っ込んだ時点で力尽きたようで苦笑いしかない。枕じゃなく敷布団にべったり頬をつけてたせいか、口元からはよだれがたれまくっててシーツがひどいことになってる。


「やばい漏れそう」


 状況確認もそこそこ、まだ頭がはっきりしない中でも早くトイレに行かなければと立ち上がる。いや立ち上がろうとした。

 

 すっ転んだ。


「ちっ」


 舌打ちとともにふたたび、今度はちょっと慎重に行動する。なんとも体のバランスをとることがうまくいかずふらついたものの成功。トイレに向かい歩く。なんかおかしいな……。そう思いつつも尿意最優先だ。冷たい廊下をふらつきながら歩く。頭が重い……、くらくらする、それにマジなんかおかしい。なんだろこれ……。考えがまとまらない。


 トイレの前。ふらつきつつドアを開けようと手を伸ばすもすかした。


「あれ?」


 違和感。


 でも今はそれどこじゃねぇ! 肩口近くにある(・・・・・・・)ノブをひっつかみドアを開け水洗便所のフタをぐいと上げ、スウェットのズボンとトランクスの前を一気に下し、なじみのブツをひっつかみ……、ひっつか……、え? 俺はぎょっとし下半身を見下ろし、しばし頭が真っ白になったところでこの日何度目か?


 また気を失った――。

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