幸奈追及す
誤字報告ありがとうございます!
修正すごく楽でびっくりです
目が覚めたら朝だった。
自分の部屋だった。
知らないふわモコ部屋着着てた。かわいい。
パンツ変わってた。くまさん。
髪もいい匂いしてるし――、
ツインテールに結んであった。
てけてけってってって~!
幸音はダメな子レベルが上がった。
幸音は世話が焼けるっ子レベルが上がった。
テケテケテケテケテ~レッ
幸音は可愛く仕上がってた。
幸音は男として大ダメージを受けた。
幸音は男としては、もう完璧……終わった――。
まじ終わった。
ねぇ、泣いて……いい?
いえ、――泣かせて!
ああ、俺ってなんだっけ? もう俺の心はゲシュタルト崩壊へと……
「幸音~~、いつまで寝てるの~~!」
あうあうあ……。
「幸音、聞こえてる~?」
く~~~、落ち込むことすら最後までさせてくれんとは!
幸奈おそるべし!
はぁ、こりゃもう幸奈に一生頭が上がらね。
…………。
「起きよ……」
「その、おはよっ」
「はい、おはよう。ふふっ、ようやく起きたね、うちの眠り姫は」
ひ、姫って……。くぅ、これも俺の不徳の致すところ……、やむなしか。甘んじて受けるしかない。
「もう言わないで。ごめん。なんか迷惑かけちゃった? 起きたらもうこんなだったし」
もこフワ部屋着の胸元をつまんで見せ、ツインテールになった銀髪をついでにフリフリする。
「いいでしょ~、それ。昨日買ったからさっそく着せてみた。触り心地とかもう最高でしょ? 女の子にすっごい人気のブランドなんだからね」
食事を用意してくれつつも、その鼻息はたいへん荒くてらっしゃる。もう止まらない。
「私が着るのはちょっとあれだったんだけどね~、幸音すっごく似合ってる、可愛いよ~」
褒めてくれるのはとてもうれしくはあるのだがしかし。
「あ、あの、姉さん? そんなことより、さ……」
「あ、そうそう、それスリッパもあるんだよね~、耳とかついちゃってもう可愛いったら……」
この後、しばらく買い物品についてのウンチクが続き、日曜日の午前はダラダラと過ぎていった。
うん、平和だ――。
って、違うだろ!
結局昨日の顛末を聞き出すまでさらに小一時間ほどかかった。俺の写真はちゃっかり瑠美と共有したんだそうな。何がうれしいんだか。
パワーストーンって言われるものが世の中にはたくさんある。効果のほどは知らん。
俺の拾った石は、そんなパワーストーンとは一線を画す、俺にとっては正真正銘、なんらかの影響を及ぼしてくる存在のようだ。いや、昨日の出来事を鑑みるにそんな生易しいレベルでは無いのかもしれない。俺がなんでこんな小難しいことを言い出したかと言えばだ……。
「幸音、今日ははっきりさせましょ!」
などと息巻く幸奈様が俺の目の前に座り込んでいるからである。昼までが嘘のような変貌っぷりでビビる。
「は、はっきりって……な、なにを?」
とりあえずしらばっくれてみたり。
「とぼけないで」
そう言いながら向かいあって座ってるテーブルの上をコツコツたたく幸奈。怖いです。
「は、はい。ごめん」
仕方ないね。ちゃんと話そう。まぁ正直全然わかってないんだけどな。
「私がこうなった経緯は前にも話したよね」
「そうだね、裏山での話ね。それはいいよ」
俺はうなずき続ける。
「それでだな、これはその時クレーターを調べてて見つけた石なんだよな。綺麗だな~って思って。場所が場所だけにちょっと放射線とかやばいかも? なんて思ったりもしたけど、俺、そん時すでにこんなのだったし、今更かって思って拾ってきちまったわけ」
思い起こしながら話す俺。
「幸音、言葉戻ってる」
おおう。思い出しながらしゃべったからつい。しかし、ほんと細かい、さすが教師。
「持って帰ってきたときは特に何も無かった……と思う。なんか、とても安心するなぁって感じはしたけど、それだけだし」
パワーストーンとかも『気がするグッズ』だし、似たようなものだろ、って感じだよな。
「幸音ったらなんて軽率なの。そんな空から降ってきた、怪しいものを不用心に……」
なんかブツブツ言ってるな。ま、いいか、続けよ。
「そのあとはまぁ、姉さんも知っての通りお守りにして首にかけてたって感じかな。特に変わったこともなく、過ごしてたと思うけど……、昨日みたいなことになった」
「ずっと身に着けてたわけだよね、その石を。そして昨日はそれを半日少々とはいえ手放した。――ほんと、危ないとか思わなかったのかな……。それに私から言わせれば十分変わってます! 幸音! あなたの体質、忘れたとは言わせない」
幸奈がまじめな顔をしてそう突っ込んできた。
「え、でも、それはこの石拾う前からそうだったと……」
「もう、違うでしょ。その石を拾ったのは変わったあとでしょうけど、そもそもそうなったのって何が原因? ほら、答えて」
何が原因って……、そりゃあ。
「あ、クレーター作ったのはきっと隕石? なわけで、あの時の俺を覆いつくした光の発生源は……」
俺は息を飲んだ。そうだよ。これだよな……。俺、なんで今まで気にしなかったんだろ……。あそこから拾ってきた石だ。俺自身もこれが隕石だって思ってたはずなのに。
「わかったみたいね。そうだよ、きっとその石が幸音がそうなった一因に違いないわけ! 全く根拠もない推論だけど、他にそんな不思議を起こすようなもの有りようも無いんだからそれ一択でしょ!」
おおう。幸奈が神ッてる……。
「晃生もずいぶん手にしてたけど……、影響とか大丈夫かな? 私や瑠美ちゃんは? ああもう、私の迂闊! 持って行くんじゃなかった」
幸奈が心配そうにブツブツ言ってるが……、
「えっと、大丈夫だと思う。根拠ないけど。これは私にだけしか影響ないよ、うん」
そうとしか言えない。でもそう思えるんだから仕方ない。そう言えば今までもあったな、こういうの。
幸奈はそんな俺の言葉に胡乱な目を向けてくるのだった。
パワーストーンに思うところはありません。私もブレスしてますしw




