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女の子になったけど淡々と暮らしたい──ちょっと不思議もあるかもね──  作者: あやちん


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18/51

俺が寝てる間になにやってるんだ

 まさかの店の中で泣きだしてしまった俺は、みんなからの温かい視線(一部生温かったが)に身もだえすることになってしまった。


 自分の体、感情のはずなのにままならないこの感覚。ほんと俺は一体どうしてしまったのか?

 まぁ、こんな体になってしまったこと自体がそもそも不思議待った無しなので今更か……はぁ。


 あんな醜態(しゅうたい)を周りにさらしてしまった見返り、自分へのダメージは海よりも深く大きい――。


 泣いていい?


 ごめん、もう泣いてたわ――。


 しかも俺はそのあと自ら、更なる追い打ちをかけてしまった。

 すなわち泣きつかれて寝てしまったのである。く~~、きっと歩き回った疲れが出たのと、石が手元に戻った安心感がそうさせてしまったのだと……、そうさせてしまったのだとっ、俺は思いたい!





「どうしよ、幸音ちゃん寝ちゃったよ」

「困った子ねぇ……、でもまさかこの子が(・・・・)泣き出すなんて思ってなかったから私、びっくりしちゃったわ」

「うん……、感受性が高い子なんだろうね。この子が君が前から言ってた……お兄さんの娘さんなんだね――。素直そうで、なんとも可愛らしい子じゃないか……」

「そ、そうね。そんなところもあるのかもね」


 昂生(こうせい)のやつが、私の膝枕で口を半開きにしてぽかんとした顔で寝ている、そんな姿も愛らしい……(これで中身は私の兄、35歳なんだからね)幸音のことをそんな風に言う。幸音はほんと、電池が切れたみたいにぱたりと寝入ってしまった。私のほうに崩れ落ちてきたから慌てて支える羽目になった。


 でもねぇ、感受性が高いねぇ……。ふ~ん、家での実態を知ってる私としては何とも言えないよね。


「へぇ……、君もまだまだ理解しきれてないって感じだね。うまくいってるのかい? 二人の関係は。君のことだからきつく当たってないか心配だな」


 こいつ、幸音が寝ちゃったから素に戻ってるな。このええかっこしいめ!

 それに、珍しく突っ込んでくるな。(うち)のことなんてまったく興味示さなかったくせに。ま、まさかこいつ……ろ、ロリか? ロリなのか?


「あんたに言われるまでもなくちゃんとやれてます~。それより何? ずいぶん(・・・・)幸音にご執心(しゅうしん)のようだけど? まさか幼女趣味だった……なんてないよね? いやよ、そんなの」


「ふっ、そんな訳ないだろ。……幸音ちゃん、ちょっと精神状態不安定なんじゃないかなと、僭越(せんえつ)ながらも心配させてもらっただけさ」

「ああ、そうですか~。それはそれは、ありがとうございました! おかげさまでうちは仲良くやらせていただいておりますのよっ」


 うわぁ、なんだか売り言葉に買い言葉になってしまった。そんなつもり無かったんだけどな。なんか昂生の顔見ると言いたくなってしまうんだよねぇ。


「まったく君ってやつは。久しぶりに顔を出してくれたかと思えばこれだか……「はいはい、二人ともそこまで~~~」


 私と昂生がいつものやつを景気よく始めだしたところで、可愛いらしい仲裁の声が入った。


「まったくもう! 二人ともいい加減にしてください。幸音ちゃんが起きちゃうでしょ! 痴話げんかは他所(よそ)でやってください、他所(よそ)で!」


「「お、おう(は、はい)、すみません……」」


 恥ずかしくも高校生の瑠美ちゃんに叱責(しっせき)されてしまった私たちなのだった。



「それはともかく、幸音ちゃんの石のことなんだけど」


 一転して真面目な表情を浮かべ、話し出した昂生。私は先を促すように目を見てうなずいた。


「僕の記憶にある限り、見たことも聞いたこともない石だった。それ……、一体何なんだい? 差し(つか)えなければ、教えて欲しいな」


 なんて昂生は聞いてくるけど。そんなの私にもわかんないよ。きっと幸音だってわかってはいないと思う。ただ……、幸音がそれをとても大切に思ってるってことは知ってるけどね。


「ごめん、私にもわからない。幸音がね……、家の近くを散歩してた時に見つけたらしいんだけど。とても綺麗だったから拾ってきたって聞いただけなのよね」


 嘘半分、ほんと半分。これが妥当なとこだね。


「そうかい……、ふ~ん」


 むむ、なんかあんまり信じてないって顔してる!

 でも事実を言うわけにもいかないしねぇ……、勘弁してね、昂生。


「……わかった。とても珍しい石だからね。もしまた見つけたなら……、ぜひ僕にも譲って欲しいって幸音ちゃんに伝えておいてくれる? もちろんお礼もするからね」


 くぅ、なにこの意味ない圧力。昂生のくせに!


「わ、わかった。幸音にはそう伝えておく。けど、まぁ、期待しないでね。小さい子の行動なんて行き当たりばったりなんだから。きっともうどこで拾ったかも覚えてないよ」


 ふっ、思いっきり子供扱いしてやった。幸音、……兄さん、ごめん。




 意味があるのかないのかわからない攻防のあと、眠る幸音をチンクちゃんに乗せ帰途につく。まったく起きる気配なしってどうなの。

 瑠美ちゃんがすごく名残惜しそうに幸音の顔を覗き込んでいたのが微笑ましかった。昂生とはえらい違いである!


 そうだ……、最後に一言。

 店の名前は『エトワール』 フランス語で「星」って意味だそうだ。


 フランス語だなんて……、昂生のくせに生意気だ。

 ま、星川だからでしょうけど……。



 ひねりが足りない!


痴話げんかw

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