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女の子になったけど淡々と暮らしたい──ちょっと不思議もあるかもね──  作者: あやちん


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幸音は小学生か?いえ中学生です(予定)

この物語はフィクション……です!

 色々すったもんだはあったが、幸奈がしっかりと俺の戸籍習得に動いてくれている。

 女の子になってしまった俺は何も助けになることが出来ず、まさにおんぶにだっこ状態でまじ肩身が狭い。幸奈だってまだ28歳になったばかり。(歳を言うと怒るからな、ここだけの話だ)他にやりたいこともあるだろうに、ほんと申し訳なさでいっぱいである。

 役所ではお家芸のたらい回しとかにもあったみたいだ。とはいえ、最低限の親の義務すら果たさぬまま行方知れず(の設定。泣ける――)になった両親の代わりに唯一の親族である幸奈が引き取る意欲を示したことは良い印象を与えたようで、戸籍についてはなんとか決着を見ることができたようだ。ここまでに費やした期間は実に1ヶ月。お疲れさまとしか言いようがない。すまない……幸奈。


 でもこれで誰はばかることなく、ごく普通の少女、北美幸音として生きていけることとなった。――まぁちょっと普通じゃないところも多いわけだが――、まさか俺が女として生きていくことになろうとは……なんとも因果な人生だな。苦労してくれた幸奈のためにもこの先は変なことがないことを祈りたい。


 ところでだ、戸籍を取得するとき必要だったものにこの体の年齢、というか生年月日があったわけだ。俺自身は当然誕生日があって、しっかり35年生きてきた記憶もあるわけだから、幸奈に指摘されるまで全く気にも留めていなかった。この見た目で35歳はないよな? って言ってみたら思いっきり(にら)みつけられた。冗談だったのに……。


 結局、先のこともあるからって幸奈が12歳にしてしまった。ま、見た目は小学生って言っても通じるレベルだもんな……泣くぞ! で、生まれた日は11月4日。これは俺がこの体になってしまった日だ。ある意味誕生日で間違いないな、うん。


「なぁ、先のことってなんだよ?」


 ふと気になって聞いてみて返ってきた返事がこれだ。


「何って……、学校に決まってるじゃない? 子供なんだから当然でしょ? 何言ってるの」


 さも当たり前のように言われ、俺はもう愕然としたね!


「う、うそだろ~~~~」

「嘘じゃありません~、幸音、観念しなさい。ふふ、春から中学生ですからね。よかったね~~」


 こんなことをぬかしやがった幸奈の目はしっかり笑っていた。くそ~~~楽しんでやがる。だが散々面倒をかけた身。文句言うなんて出来るわけもない。俺はがっくりとうなだれ、負けを認めるしかなかった――。


 なんてことがあったわけだ。


 他にもある。この見た目についてだ。髪はつやつやした銀髪、目ん玉はきれいなすみれ色、肌の色なんて青白く見えるほど真っ白で、おまけに超美少女ね。日本で生活していく上では相当変わった外見って訳で、もう色んな所で浮いてしまうのは目に見えてるぜ。いやだいやだ。


 ちなみに漏れなくハーフ設定が付いてくるまでがテンプレだ。


 そんなお困りのあなたにお勧め! カンペキな解決策といえばそう、引き籠りだ! 当分何もしなくても大丈夫なくらい金はあるしな。俺はまさにそうしようと思ってたんだが、当然のように妹からダメ出しくらった。ついでにカードやら預金通帳やら、すべて取り上げられた。ネット通販も許可制になっちまった~~~! 俺の生き甲斐が――。


 く~~~~、泣きたい。


 で、最初の会話に戻る――。


 俺なんで今更学校に通わなきゃなんねぇの? こう見えて国立大出てんのよ? 引き籠りだったけど。いいじゃん、行かなくても。人間、学校なんて行かなくても生きていける! 少なくとも俺はいける! なんてぶつくさ(つぶや)いてたら幸奈のやつ、俺の頭にゲンコツ食らわせてきやがった。俺涙目――。





 あれこれと忙しく動き回った激動のひと月が過ぎ、我が家もようやく落ち着きを取り戻してきた。

 幸奈は結局マンションを売りに出すことにしたようで、生活の場はすでに実家であるこの家となっている。田舎暮らしを嫌がってたはずなのにこうなってしまい、まじ申し訳ないと思う。

 街の中学で教師をしている幸奈はここから通勤である。まぁ30分程度で通えるってことだから問題ないレベルではあるな。

 

 俺にずっとかまけているが、彼氏との仲は大丈夫なのか? 幸音(おにいさん)は心配である。





「ねぇ、幸音。いつも言ってるでしょ? その言葉使い早く直して欲しいんだけど」


 うへぇ、また始まった。

 一緒に暮らし始めてすぐ、幸奈が俺への指導が必要だって言いだしたものの一つがこれだ。


 女の子らしく話せ……だ。これ、めちゃきつい。


 まったく、男人生35年の俺をなめんなよ? そう簡単に言葉遣いが女らしくなってたまるかってんだ! ――なんてこと声に出して言えればいいんだけどな……。妹、幸奈に対して相当の負い目がある俺はそんなこと言えるはずもない。


「お、おう……」

「え、なに(・・)?」

「あっ、うん、わかった。気を付ける……」

「そう、わかってくれたならいいの。春から中学校に通うんだから、おかしな言葉使ってたらすぐいじめられちゃうんだから。厳しいようだけど、これは幸音のために言ってるんだからね?」


 なんとも厳しい幸奈さんである。「家でどんな話し方してても誰も聞いてる人いないんだから問題ないだろ?」って主張してみたこともある。「そんなこと言ってたら引き籠りの俺はどこで話すんだ」って、一蹴されて終わった。

 

 まぁ、女言葉はともかく、丁寧に話すことを心がけようとは思う……。


 あと「幸奈」って呼び捨てにするのもやめてと言われた。これはまぁそうだよな。子供が大人を呼び捨てにするなんざ、どんな(しつけ)されてるんだってことになる。気をつけることとしよう。呼び方は『姉さん』か『お姉ちゃん』ってとこか。けっしておばさんと言ってはいけない。これ大事だ!


 しかしまぁ、俺が中学って……、まじかよ。


 やばすぎて先が思いやられるわ――。

現実はこうもうまくはいかないことでしょう……

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