裏山アクシデント
思いつきで投稿
その日、家の裏山の方からすごくでかい音がしたのでつい気になって様子を見に行ってしまった。思えばそれが俺の人生の分岐点だったな……。
俺の家はどこにでもありそうな地方都市から車で3、40分。のどかというより田舎って言ったほうがよさげな里山の中にぽつんとある一軒家だ。
家族は七つ年下の妹が一人。両親と祖父母は交通事故で5年前に他界してすでにいない。で、妹はそんな田舎暮らしと家族の思い出が詰まった家にいるのがいやなのか……、とっとと街に出ていってしまい帰ってくるのは盆、正月くらいのものだ。ということで嫁も彼女もいない今の俺は一人暮らしの寂しいやつってことだ。
で、そんな俺がどうやって生計をたてているかというとだ――。
ずばり土地売って金作った! 運のいいことに道路を通す話もあり地価も上がってきてたから機を見て売った。家の周りの土地を少し残してすっぱり売っぱらった! 先祖代々の土地だったんだが……まぁ、ご先祖様すまん。おかげで一生遊んで暮らすにはちょいきついが、妹と二人くらいなら普通に暮らせるくらいの金が入った。さっきも言ったように妹はその金が入ったこともあって出ていったがなっ!
じゃあ働いてないのかって? そんなことはないぞ。そこそこ金持ってるから半分趣味みたいなもんだが、案外売れてる物書きだったりするんだなこれが。つってもこれで得られる収入はほぼほぼ俺の趣味に消えゆく運命となるものだ。ふふふ。
そういうことでだ。自分の仕事部屋(ここ大事)でネットで買った高スペックゲーミングPCでネトゲしつつ、ときどきはそのPCで物書きもする、そんな生活を送ってたわけで。その日もそうやって熱心にPCに向かい、夜も更けてきていたにもかかわらずなんやかやしてたとき、その運命の出来事が起こってしまった。
軽い揺れを伴った鈍いけど部屋にいても腹に響くような大きな音で、部屋の小物が一斉にガタガタゆれてさすがの俺も驚いてしまった。事なかれ主義の人見知り、ほとんど家から出ない引きこもりオタのくせに、その時ばかりは好奇心に負け、ついついその音の発生源と思われる現場に足を運んでしまったのである。(はぁ、マジあのときの俺をぶん殴ってやりたい……)
裏山とはいってもまぁ雑木林が広がる小高い丘レベルの場所で、昔はよく犬の散歩に連れ行ったところであり、秋が深まってきて多少冷え込んでいたものの部屋着のスウェットのままLEDライト片手にずんずん入っていった。ほんともっと警戒しておけよ、もっとビビっとけよあの時の俺!
「な、なんだこれ……」
俺が現場に着いて、その様子を見てまず放った言葉がこれであり、最後に今のオレが発した言葉でもあった。