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異世界旅行は日帰りで

作者: Rぱか
掲載日:2019/08/14

(異世界パスポート…?)


財布を開けると見覚えのないカードが目に入る。


「なにこれ、こんなカード作ったかな〜?」


不思議に思うがそこにはミヤタアコと自分の名が書かれていた。

財布の中は様々なカードで溢れかえっている。覚えてないカードの一つや二つあるだろうと、もう行くことの無さそうなお店のカードを片っ端から捨てていった。

異世界パスポートと書かれたカードも捨てようと手に取ると…


「本人確認完了致しました」


(えっ…?)


カードから声が聞こえたと思った瞬間に目の前が真っ白になる。

眩しさに咄嗟に目を瞑り、ゆっくりと目を開ける。そこには扉が二つついた白い壁が現れた。

突然の出来事に混乱して動けないでいると、後ろから声がする。


「いらっしゃいませ。ようこそ異世界旅行社へ」


振り返るとそこにはペッ◯ー君(受付係)が居た。


(あー…これは夢かな)


見慣れたものが現れて少し冷静になってきた。夢ならばと思い、周りを見渡しながら受付へと近づきタッチパネルを見る。

[行先を選んでください]

(はいはい、ポチッとね…お試し観光地?)

選ぶも何も一つしか押せなさそうなので押してみる。

[オプションを選んで下さい]

通訳、旅行鞄、ガイド、アバター

選べるもの全てにチェックを入れ決定を押した。


「受付が完了しました。それではいってらっしゃいませ。」


「はーい。行ってきまーす」

受付係に軽いノリで挨拶をし、後ろを振り返るとドアの前にはショルダーバッグとスマホが置かれていた。


鞄とスマホを持って入口と書かれた扉を開けるとそこはまた別の部屋に繋がっていた。

しかし先ほどの部屋とは違い外が騒がしく、窓がありその奥には空が見える。

窓に近づき外を覗いてみた。


(わぁ!凄い!これぞ異世界って感じね)


獣人、エルフ、ドワーフ、人間、ペット?だって犬猫とはなんだか違うし…市場のような所で色んな種族が行き交っている。異世界要素てんこもりの夢に嬉しくなる。

手に持っていたスマホが震え、その存在を思い出し画面を開いた。

「案内を開始します。ガイドの形状を選んで下さい」


「何でも良いから早く外行きたいよー!お任せで!」


スマホが光ると目の前に獣人の男が現れた。

「案内人のガイだ、よろしくな!よーし、じゃあ早速外行くか!まずは大通りの市場からだな。いくぞ!」

「アコです!よろしくお願いします!」


外へ出ると市場の屋台からの良い匂いが漂ってきた。美味しそうな匂いにつられ屋台へと向かうことにして、歩きながら食べ物について話を聞く。

ガイドから一通りの説明を聞き、気になったいくつかの屋台へ向かう。

「いらっしゃい、どれにするんだい?」

「これと、これを下さい。あっ後これも少し」

「はいよっ、全部で300ゴールドだよ」

(あっどうしよう、お金持ってない…)

「鞄の中見てみな、小さな布袋が入ってるから。それがここでの財布だ」

ガイに言われ鞄の中を見ると確かに入っている。お金を支払い、どこか食べれる場所がないかキョロキョロしているとガイに手を引っ張られベンチへと連れていかれた。


薄いパン生地に肉と野菜が包まれたものを一口食べる。

「美味しい〜、本物みたいっ!」

「本物みたいってなんだよ、それはケパプっていうだ。偽物なんてあるのか?」

ガイが笑いながら説明をしてくれる。

温度も感じるし味も匂いも鮮明に分かる夢って今まであっただろうかと考えるが、そんな事よりも目の前に広がる光景に興味を持っていかれる。


「ねぇ、ガイさん。お勧めのお店ってあるの?」

「そうだなー、雑貨屋は人気だし店ってわけじゃないが冒険者ギルドも見たがる奴が多いぞ。」

「冒険者ギルド!?異世界の定番じゃない!行くいくー。」


二人が歩き出した後ろでスライムと一緒にご飯を食べる冒険者が居た。冒険者は普通だがスライムは虹色に輝いていてどう見ても普通ではなかった。しかしアコは気づくことなく歩いて行ってしまった。


市場を抜けてから大通りを挟んだ向こう側に人集りが見えてくる。市場でも見かけたがこちらにいる人の服装は鎧や武器を持つ人がほとんどだ。

掲示板に貼られた依頼には薬草採取や害獣駆除、庭の草抜きに子守、隣町までの護衛など様々なものがあり、これから依頼を受けるだろう人達が次々と紙を剥がし建物へ入って行く。

(あんなに厳ついおじさんが子守??小さな子供に見えるのに護衛するの??)

面白くてずっと眺めていると建物の中が騒がしくなってきたのでそっと覗いてみる。


「おいおい、その仕事は子供ができるようなもんじゃねーぞ。俺らみたいなDランク冒険者に任せときなって。」

「子供じゃありません。こうみえて成人してますから問題ありませんよ、この仕事は私が受けます。」

「いやいや、どう見ても幼女…」

さっき護衛依頼の紙を剥がしていた子供が3人の冒険者と揉めている。


(キタキタキタキター!冒険ギルドでのいざこざね!必ずあるのよね〜。見る感じあの幼女がヒロインかしら?揉め事を収める主人公はどこよ〜。)

よくある異世界物語の序盤に出てくる光景を目の当たりにして少し興奮気味になる。


「何やら不穏な空気になってるな、客に何かあっちゃ困るからな…雑貨屋に行くか。」

「えっ?」

ガイに手をとられ冒険者ギルドをあとにし雑貨屋へと向かう。

これからが良いところだったのでは?と思いつつ雑貨屋へ着くと、身なりの良い金髪碧眼のイケメンが町娘的服装だがピンク髪に眩しい笑顔を浮かべた美少女とアクセサリーを見ていた。

そこへ身なりの良い金髪ツリ目ツインテールの女の子がやってきた。


「あらあら、キース様こんなところで会うなんて偶然ですわね。ところで其方のキース様の背中に隠れていらっしゃる平民のくせに我が校に通ってらっしゃる恥知らずな方は、なぜキース様といらっしゃるのかしら?」


(おやおやおや〜?ここでもテンプレな展開が!?悪役令嬢と平民ヒロインに攻略者その1ってとこかしら!?)

ゲーム的展開も小説的展開もどっちも好きである為またもや興奮気味になる。ここはゆっくり見学したいと思い棚の陰に隠れ覗き見をしようとした。


「ここでも喧嘩か?貴族のケンカに巻き込まれたら大変だ、ここは諦めて別の店に行くか。」

「えぇ〜またぁ?」

「客の安全のためだ、いくぞ。」

「…。」

無言の抵抗も虚しく腕を引っ張られ店を出る。


少し不貞腐れながら歩いていると、タブレットを見ながら歩く男の子にエルフと獣人の女の子がいるグループとすれ違う。

(わわっ、すっごい可愛いあの子達!)

アコにとって違和感のないタブレットがこの世界で珍しいのだと気づかないままで終わる。


街の入り口である大きい門までやってきた。

「ここの門も有名なんだ、街の出入り口は四つあるが街の外の者はここで受付をしてからじゃないと入れないからな。」

「制服カッコイイ〜、一緒に写真撮ってくれないかなぁ。…ん?ねぇねぇガイさん並んでる中に大きな狼みたいなのいるんだけど。」

「あれはフェンリルだな。あの大きさなら500年は生きてるんじゃないか?」

(異世界でも幻獣扱いされがちな生き物じゃ!?)

「そういえば、この街には図書館があるんだ。アコは通訳があるから読めるぞ、行ってみるか?」

「行く!」


異世界の本なら魔法とか見たこともない動植物図鑑とかあるんじゃないかと期待に胸膨らませご機嫌でガイについて行く。

その後ろでは先程のフェンリルを連れた旅人が何やら揉めているとも知らずに…。


図書館に着くと興味のある本を片っ端から手に取り机に広げた。夢中で読んでいる反対の隅の席では、これまた魔法書を夢中で読み漁る三歳児が居たが勿論アコは気づかなかった…。


「アコ。そろそろ帰る時間だぞ。」

「ふぇ?」

ガイに呼ばれ顔を上げると目の前が真っ白になる。眩しくて目を瞑りゆっくり開けると、ペッ◯ー君が居た。

(えー!?終わりなの?ってまだこれ夢の中じゃん、気になる事多すぎて続きが見たいわ!)


「おかえりなさいませ。旅はいかがでしたか?鞄とスマホの返却をお願いします。またのご利用をお待ちしています」


(まぁ楽しかったしいっか。)

鞄とスマホを返却ボックスに入れ、タッチパネルを見ると予約と表示されている。

予約すればまたこの夢が見れたらいいなと思いぼたんを押してみる。


観光先一覧

・悪役令嬢の断罪

・冒険者の魔物討伐

・旅人と悪徳商人の攻防

・転生者の魔術無双

・ex


(え、これって街の先々であったことじゃ!?冒険者ギルドでの続きがきになるかな…)

予約ボタンを押し本当に続きが見れたらいいなと思いながら出口と書かれた扉を開き、気づくと自分の部屋の天井が見えた。


「ふふ、楽しかったなー…あっこんな時間!急がなきゃ!」


ベッドの下に落ちた異世界パスポートに気づくのは週末の掃除中だとまだ知らずに日常に戻った。

気分転換に没頭できて楽しかったです。

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