くらげあい~返事をください。~
友人の失恋話を聞いて、即興で考えました。
面白ければ感想ください。
「あの時のメールの返事をください。」
「覚えてたの!?」
「え?」
「え?」
「月がきれいですね」
SNSアプリが流行っている現代、時代遅れのSMSでこのメッセージが送られてきたのは、一昨年の春だった。当時の私は、高校の卒業式も終わり、引っ越しの準備を始めていた私はその手を止めた。
(・・・いきなりだね)
この文章を送ってきた相手は、高校のクラスメイトだった。いつも、仲良くしゃべっていたグループの一人。接点も多く、正直にいえば自分も彼に異性として好意を抱いている。
しかし、・・・しかしだ。
(これはふざけて送られてきたのか、本気なのかわかんないな)
そもそも、私は彼のことが好きなのだろうか。いや、好きなんだけど。どこが?身長か?確かに彼は高身長だ。高学歴?確か、彼は私立の薬学部に進学が決まっていたような。高収入?そのまま、薬剤師になれるのなら、平均以上にもらえるのだろうか。
(・・・落ち着け)
そもそも、これは結婚相手に求めるあれこれのはずだ。現状には即してはいない。ならば、私は彼のことが嫌いなのか。いいや、嫌いではない。気が小さいし、押しが弱いし、愚痴っぽいし、地味に負けず嫌いで、何かとはりあおうとしてくるが、別に嫌いではない。では彼のことが好きなのか。いや、好きなんだけど。どこが?身長か?
(だめだ、ループしてる)
私は思考をやめ、スマホをベッドに投げて、荷造りを再開した。
(私が好きなのはいい。もう、よくわかんないけどいい。とりあえずいい。)
それよりも
(これは、本気か?本気なのか?)
まぁ、ふざけているのだろう。そうだ、そう思おう。だって、
(本気だったら、ちょっとイタい。)
なんだよ、月がきれいですねって。気障すぎるし!ポエマーだし!!恥ずかしいし!!!
(・・・返事なんて返そうかな)
正直、ほんっとうに冗談だと思うけど、何も返さなかったら負けた気がする。こうなれば、もっと気取って返事してやる。返答してやる。返送してやる。投げたスマホを拾って、返事を打ちはじめた。
~1時間後~
どうだ!これが!!私の本気だ!
「月は綺麗でも薄くかすれて、消えてしまうでしょう?なら、私は海の中のくらげのほうがいいわ」
・・・死にたくなってきた。
そのあと、メッセージを送らず(送れず)に、一か月が経って大学に入学してしまって返事が返せないままになってしまった。そして、今日は成人式。さすがに、2年も経てばあのメッセージもうやむやになってくれるだろう。おそらく今日の夜開催予定の同窓会には彼も来るんだろうし、久しぶりに会って話でもしようかと思ってたんだけど。おもってたんだけど?
「ぽ、ポエマー・・・」
お酒の勢いって怖いね。テンパってたのもあって全部話しちゃった。・・・メッセージの内容以外。