表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

BackSheep4

 八月の間、私は結局一度も屋敷には行かなかった。高校を卒業して大学に通いだしてからは、それが当たり前だった。

 だけど今年は何度もあの屋敷を訪れてしまった。近づかなかったことを後悔しているのか、それとも安堵しているのか上手く掴めない。

 ただあの屋敷以外でも仲間たちとは出会うし、彼らと会話を重ねた。だから気が進まないけど、夏休みが終わる前に私は屋敷に向かうことにした。

 見慣れた山道。鬱蒼とした洋館。思い出の風景とちっとも変っていない。あるいはそう思いたいだけなのか。

 チャイムを鳴らすとトマスがすぐに顔を出した。そういえばトマスとだけはしばらく会っていなかった。

「久しぶり」

「うん。ごめんね」

「何が?」

「その全然来れなくて」

「気にしてない」

 といって彼女は屋敷に私を迎え入れた。屋敷の中の気配が静かだ。

「もう学校行ってるよ。高校生だもの」

 得意げな笑みをトマスが私に向けた。私はどうやら無意識にマリアの姿を探していたようだ。そしてトマスはそれに気づいていたようだ。

 客室にまで案内されて、いつものように席につく。一月来なかっだけで、屋敷の様子は変わりない。

「トマスはマリアに話しているの?」

「なんのこと?」

「名前のこと」

 名前というより苗字のことか。

「あーおば様は知ってるよ。ジーザスも知ってるけど、なんにも言わなかったよ。だから知ってると思う」

「そっか」

 それなら私が気にすることではない。

「そういえばおば様があんたと話したいって言ってたよ」

「えっ。前のお手伝いの人だよね。そのマリアの親戚の人」

「なんだ。意外と詳しかったんだ」

 あの人が私に話をしたいか。思い当たることと言えば、ジーザスのことか。一応私たちはこの間、初さんに付き合っていると嘘の報告をしたばかりだ。表向きの情報だけが、回ったのだろうか。

「まっまぁね」

 私は平静を装いつつ、内心は憂鬱だった。

「吉相由紀美かぁ」

 感慨深く言葉が零れた。口にしたのはトマスの本名だ。

「やめてよ。好きじゃないから」

「ごめんつい。聞こえた?」

 字は違うけど、彼女はこの家と隠れた縁があった。今思えば、ジーザスが彼女と交流をとった理由には、苗字のことがあったのかもしれない。

 彼は何も答えてはくれなさそうだけど。

「嫌なものは聞こえちゃうの。きっと警戒してるからね」

 なるほど。嫌だから聞こえるし、見てしまう。

「ってマリアがこの間言ってた」

「なるほど。トマスらしくないと思った」

「酷いなー。まぁあんたたちみたいなロマンティストじゃないよ」

 一体トマスは誰までのことを言っているのだろうか。そういえば、最近シモンに変な相談をされたことを思い出した。

「シモンが言ってたんだけど」

 私がそう話を切り出し、先日シモンに会ったことを伝えた。トマスは目を丸くしていた。予想外の反応だ。

「どうしたの?」

「いや驚いてて」

「シモンらしくないよね」

「そっちもだけど、そっちじゃない」

 トマスにマジマジと顔を見られたが気にしないことにした。

「はぁー私も恋したいなー」

 トマスは深いため息をこぼした。

「いないの。相手?」

「私の理想が高いのかも。この家にいるからね。シモンもジーザスも優良物件だもの」

 確かにあの二人を見ていると、自然とハードルは上がりそうだ。

 そこで一端会話は途切れた。沈黙の中で、ここ最近あったみんなのことを思い出した。

 そろそろ覚悟を決めるべきなのかもしれない。

「私が高校三年の冬の話なんだけど」

「どうしたのいきなり」

「そろそろ話そうかなって」

 本音を言うなら私はまだ思い出話をしていたい。ただ私がこの話すことを待ちきれない人がいるのも確かだ。

 果たして私はうまく話せるのだろうか。破滅の話。終わりの話。それとも始まりの話。私にはあの話を上手く話す責任がある。



ルカ 戸松陽歌

マリア 吉祥香恋

ジーザス 新道寺祐一

シモン 門田祐樹

トマス 吉相由紀美

レン 椎名蓮子


ルカ 戸松陽歌

マリア 椎名蓮子

ジーザス 新道寺祐一

シモン 門田祐樹

トマス 吉祥由紀美


新道寺初

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ