現状を把握することが大事と学んだから
目を疑うような光景がそこには広がっていた。
あれれ?さっきまで俺はパチンコ屋にいたのに……
ここはどう見ても先ほどまでいた煌びやかな装飾もなく、耳を劈くような音もなかった。
勘のいい俺はすぐに気づいた。す
これはあれだ、ぶっちーの言ってた神隠しのことか。
神隠しの条件にある大負けもあってるしな。
ポケットには財布とスマホと自転車の鍵があった。
そういえばバッグはトイレの荷物置きに置いていた。
痛いことをした。廃棄が決まったたまごサンドが二個も入っていたのに……
だがスマホはある。これは大きい。
しかしお約束の圏外によりスマホの意味は写真を撮ること以外無くなった。
しかしこれは神隠しっていうより異世界召喚って感じだな……
なんていうかここは日本ではない、という前に地球でない気がするのだ。
空気感が違う、というのか何というのか、とりあえず俺が暮らしていた世界とは違う気がした。
なるほどなるほど、異世界ね……
「って冗談じゃねえよおおお!」
怒りに任せて叫んでいた。
落ち着いて冷静に考えても、異世界にいるということを理解するにはまだまだ時間がかかるよな普通に。
これから先のことを考えるより、なぜ、どうして?という思考にしかならなかった。
とりあえず息を整えて、この異世界とやらを見渡してみた。
おそらく俺は町の入り口と思われる所のすぐ外に召喚されている。
目の前には古びた木でできた門があり、『ようこそリマの町へ』と書いてある。
外壁から見てもかなり大きめの町に見える。
門の外だというのに中から活気のいい声が聞こえてくる。
……俺にはもはやこの門をくぐるという選択肢しかないのか異世界召喚的によお!!!
なんでよりによって俺なんだ。
他にもいたはずだ。パチンコ負けてトイレでボロカス愚痴を言っている独り言パチンカスジジイがいたはずなんだ。
「一体何なんだよこれ……これからどうしていけばいいんだよ……」
思わず地面を叩きながら悔やんでしまう。
ぶっちーの言うことをしっかり聞いておくべきだった。
間違えたのは俺なんだ。
選択肢を間違え、異世界に召喚されたのは、俺なんだ。
……待てよ?
そう言えばぶっちーは言ってたな。
神隠しは警察も捜査していて、大負けの人が被害にあうとーー
ってことは俺以外にも召喚された人いるっぽくね!?
なんだよなんだよ!心配して損したぜ。
自分で自分を安心させて気持ちを和らげた。
この世界でまず何をすべきかをわかった気がする。
「まずは俺と同じ召喚者を探す。異世界を味わうのはそれからだ」
自分の立ち位置がわかってきた途端に異世界を楽しめそうな気がしてきた。
なんといっても男の子が大好きな異世界召喚者だもんな。
さっきまでの悲壮感漂いMAXの俺はもういないぜ!
同じ立場の人間を探し、そして仲間になり、その後のことはその時に決める!
まずはこの町に入ることにしよう。
町の入り口に召喚されたのだ。
さすがにこの町に何かヒントがなければ不憫すぎるぞ俺。
そのことには町の門に手をつけようとした時に気づいた。
…………?
そう言えばさっきからやたらとポケットが重いんだが何か持っていたか?
ポケットの財布を手に取ってみた。
なんでこんなに重いんだ?
そう思い中身を見てみると
「……あれ?俺全額突っ込んだのに……」
中には見たことのない金貨やお札が大量に入っていた。
俺はスタート地点にて、大金持ちになっていた。