あ
とても寒く、吹雪 は白い渦を巻き、辺りは白銀の雪景色。
その中に彼は一人立っている。
そしてしばらくすると、その中に突然ぼんやりと、黒の乗用車が浮かび上がってくる。
さらにその間反対には、黒い乗用車に向かって7.62口径のM24対人ライフルのスコープを覗き、伏せている一人の男の姿も見える。
そして、白銀の世界のそれらは、砂時計をひっくり返した様に突然静かに動き出した。
彼はその場にたたずみ、その光景をを眺めた。
すると、黒の乗用車から一人の女性が降りてきた。
その女性は遠目でもわかるほどの美人で、さらに彼女はとても特徴的な美しい赤毛の髪をしている。
ただ魅せられた。
彼は言葉では表現できない程の彼女の魅力に見惚れてしまった。
すると、微かに彼の耳に吹雪の音とは別に鈍い金属音が聞こえてきた。
「キーン、ガチャッ! 」
音の聞こえる方へ視線を向けると、黒い乗用車と間反対にいた男がライフル銃に黄金色に輝く弾を1発込めゆっくりとボルトハンドルを引いた。
「! 」
それを見ていた彼は次に起きる事が手に取るようにわかった。
「ダメだ! やめろ! 」
彼は自分の出る声の限りに叫んだ。
しかし、その声はただ虚しく吹雪の音にかき消された。
そして男はライフル銃の銃口を赤髪の女性へと向けた。
男は指を引き金にかけた。
彼は何もできずただ立ち尽くして、その光景見ていることしかでいなかった。
そして次の瞬間!
ドンッ!
吹き荒れる吹雪の音を一瞬にしてかき消すほどの低い射撃音が辺りに鳴り響いた。
女性は降り積もる雪の中に倒れ、次第に辺りを赤く染め、男はその状況見届けながら葉巻に火を点け、ライフル銃を片手に吹雪の中に消えて行った。
彼は理解しがたい突然の悪夢に胸を痛めた…。
この悪夢が全ての始まりだった……。
ここはとあるニューヨーク郊外の小さなコーヒーショップ。
1960年代のジャズ喫茶をベースとしたデザインの店内で、働く1人の少年がいた。
彼の名はノア・アイス・フィールドといい、明るい性格で人当たりも良く、それでいて彼の淹れるコーヒーは格別に美味しと評判で、この店ではそれを目当てに来る客がいるほどだ。
「ノアくん、今日も君の淹れるコーヒーは美味しいなぁ! 」
「私もこのコーヒーを飲みながら本を読む時間が何よりの幸せだわ! 」
「ありがとうございます! 」
彼のコーヒーを飲んだ客は、口を揃えてみんな「美味しい」と言った。
そして今日も、沢山の客で店は賑わっている。
「マスター、今日も忙しいですね…」
「うん、確かに忙しいなぁ…けど、私は、沢山の人に美味しいコーヒーを飲んでもらう為に、まだまだ頑張るよ! 」
「さすがですね、マスター」
「さぁ、頑張るぞぁ! 」
「はい! 」
カラン、カラン!
店内に、新たな客の訪れを告げる、ドアの呼び鈴が鳴り響いた。
「 いらしゃいま…… 」
しかし、店の呼び鈴を鳴らしたのは、客とは程遠い軍服姿の多勢だった
店内は彼らの来訪に、一瞬にして静まりかえった。
客とは程遠いというのは、彼らの面構え、規律のとれた並び、その全てから誰もが分かった。
「久しいな、無敗の黒狼よ…」
「! 」
その言葉とともに、綺麗に並んだ軍人の列が両サイド二つに割れ、その後ろから見るからに威厳のある一人の男が前へ歩み出てきた。
そして、その男の登場に静まりかえった店内は一気に凍りついた。
「ジル・バルド何でお前がここにいる! 」
ノアは、軍服に身を包んだジル・バルトとう初老の男の姿を見て、驚きを隠せない様子をしている。そして、少し身構えた。
「まぁ、そう身構えるでない黒狼よ」
「ジル・バルド、お前は五年前に俺が捕らえたロシア兵士だが」
その言葉とともに、綺麗に並んだ軍人の列が両サイド二つに割れ、その後ろから見るからに威厳のある一人の男が前へ歩み出てきた。
そして、その男の登場に静まりかえった店内は一気に凍りついた。
「ジル・バルド何でお前がここにいる! 」
ノアは、軍服に身を包んだジル・バルトとう初老の男の姿を見て、驚きを隠せない様子をしている。そして、少し身構えた。
「まぁ、そう身構えるでない黒狼よ」
「ジル・バルド、お前は五年前に俺が捕らえたロシア兵士だろうが! 今頃牢のなかのばず!」
ノアは少し身構えたまま、少し強い口調で言った。
「まぁ、募る話もあるだろうが、こちらも急ぎの用があるんでね」
「……」
「まぁ、単刀直入に言うと、ノア・アイス・フィールド、君を連れて来るように上に言われてね」
「へぇロシア兵士が我が国の軍にね…で、上とは一体誰なんだ? 」
「ローウェン・アドルフ元帥だ」
ちっ! あのクソジジイ! 何考えてんだ!
「それで、嫌だと言ったら? 」
「引きずってでも連れて行く…」
「……」
そのやり取りに、店内の雰囲気は重く、客はみんな息を呑んで、どこか不安げな面持ちを浮かべている。
ノアは少し考えた。
「はぁ、分かった、行くよ」
「うむ、ではさっそく行くとしよう」
ノアの答えに店内の客は皆、安堵と共に落胆の表情を浮かべた。
「マスターすいません、行ってきます…」
「……わかった、気をつけるんだよ」
「はい…」
そう言ってノアは彼らと共に店を出ていった。
ノアは少し身構えたまま、少し強い口調で言った。
「まぁ、募る話もあるだろうが、こちらも急ぎの用があるんでね」
「……」
「まぁ、単刀直入に言うと、ノア・アイス・フィールド、君を連れて来るように上に言われてね」
「なるほど…で、上とは一体誰なんだ? 」
「ローウェン・アドルフ元帥だ」
ちっ! あのクソジジイ!
「それで、嫌だと言ったら? 」
「引きずってでも連れて行く…」
「……」
そのやり取りに、店内の雰囲気は重く、客はみんな息を呑んで、どこか不安げな面持ちを浮かべている。
ノアは少し考えた。
「はぁ、分かった、行くよ」
「うむ、ではさっそく行くとしよう」
ノアの答えに店内の客は皆、安堵と共に落胆の表情を浮かべた。
「マスターすいません、行ってきます…」
「……わかった、気をつけるんだよ」
「はい…」
そう言ってノアは彼らと共に店を出ていった。
外では当然のように軍用車両が数台止まっており、正面の車両の後部座席に乗るように促された。
そして、ノアの車両には、武装した兵士四人とジルが共に乗車した。
続々と走り出す車両の中、ノアの乗る車両には、なんとも言えない緊張感で埋め尽くされていた。
しばらくしてノアが、淡々と、それでいて、少し殺意のこもった口調で話し出した。
「ジル…なんでお前がここで今、他国の軍服を纏い、アイツの犬に成り下がってんだ!」
「まぁそう殺気立つでない、時の流れというものは、いつでも何が起こるか予知できぬものだ…」
「俺が軍を抜けた後に一体どうなったていうんだ!」
「だが、ひとつ言えることは、いくら状況が変わり、時が流れようが、お主がワシに付けた傷はけして癒えぬということだ…」
ジルはそう言ってノアに憎しみと怒りの眼差しを向けた。
「ふんっ、あの時のお前の罪の対価にしては安いものだと思うけどな!」
「……」
会話が一旦区切りを見せた時、ノアが視線を周りに向けると、他に同乗していた兵士達は、話の内容に、不思議そうな顔をしている。
「ノア・アイス・フィールドよ、ひとつ聞きたいのだが、なぜお主はあの店で、素直に私の要件を呑んだのだ?」
「…」
「お主なら我々の息の根など止めるのに秒もかからんであろうに…」
唐突なジルの言葉はあまりにも恐ろしく、周りの兵士達は皆息を呑んだ。
「少なくとも周りに、被害がでるからな…」
「ガッハッハッ、丸くなったな黒狼よ!」
「チッ! うるせえな! そんな事よりお前の事を話せよ!」
「あ、んんまぁ、まぁ、そう焦るでない、時期にわかるだろう」
「 ジル大佐! 到着しました!」
車両はアメリカ軍本部の前で止まった。
「では参ろうか…」
ジルを先頭に、その後にノア、そしてそのノアを囲うように武装兵士達が本部入り口へと脚を運ぶ。
「ここは相変わらず何も昔と変わらないな…」
白をベースとした、古代ローマの建造物をモチーフにした内装は清楚で、それでいて確かな存在感がある力強い作りになっている。
そして、古代ローマの建造特有の、独特な彫りが施された柱が通路の両側に並び、その一つ一つ異なり、見る者を楽しませ、魅了する。
辺りを埋め尽くす白には負けないほどの真紅のカーペットを進むと、その先に元帥のいる総本部がある。
コンコン。
「元帥殿! ノア・アイス・フィールドを連れて参りました」
「来たか…入りなさい」
「はっ! 失礼します」
そして、扉のドアノブに兵士が手をかけた時!
「待て!」
「え!」
扉を開けようとした兵士をノアは止めた。
「失礼……します!」
ドンッ!
ノアは突然勢いよく扉を蹴り開けた。
するとそのタイミングとほぼ同時と言っていいほどのタイミングで五本のナイフが凄まじい速さでノアと兵士に向かって飛んできた!
ただ唖然と立ち尽くす兵立ち尽くす兵士、サーベルにてをかけるジル。
だが、その状況で一人、すでに躍動する者がいた。
そして、次の瞬間には何事も無かったように五本のナイフのうち三本は床に、一本はノア達の後ろの壁に突き刺さっており、残りの一本はノアが持っている。
突然の出来事に静まり返るその場にただ、高い金属音だけが微かに残っていた。
「うむ、鈍っていないようだな」
「手荒な挨拶だな、ジジイ!」
「久しいなノア…」
「ふんっ!」
二人は淡々と軽い挨拶を交わすなか、後ろにいた兵士突然足に力が抜けたように尻もちをついた。
「ははは、大丈夫か?」
ノアは優しく手を差し伸べる。
「す、すいません!」
するとそれを見たローウェン・アドルフ元帥は、大きな声で大口を開き笑った。
「仕方あるまい若者よ!」
「す、すいません元帥殿! 恥ずべき姿をお見せして本当に申し訳ございません!」
兵士は臆した自分を恥じらい、そして、自粛している。
「新米兵よ、今何が起こったかお主は分かったかね?」
「す、すいません…」
ローウェン元帥は髭をなでおろし勝ち誇ったと言わんだわりの不思議な笑をこぼした。
「説明するとだね、ノアはあの瞬間に四つの行動を素早く、正確にこなしていたのだよ」
「! 」
「通して言うとまず、一本目のナイフの持ち手を左手で掴み取り、右手でジルが抜こうとしたサーベルを抑え、それと同時に三本のナイフを叩き落として、残る一本を持っているナイフの刃で軌道をずらし、君に当たらぬようにしていたのだよ…」
一連の流れを聴いた新米兵は、驚きと、ノアの人間離れした行動に、ただ、言葉を失い唖然としている。
「おい、ジジイ! そんな事いいから俺を連れて来させた理由はなんなんだよ!」
「あ、あぁそうだったな…」
ローウェンは客間の席に座るようにノアに促し、分厚い書類と共にその向かい側に腰を下ろした。
そして、ジルと新米兵に手で席を外すように指示をした。
「失礼しました!」
扉がゆっくりと閉まり、室内は静寂に包まれた。
すると先程まで笑をこぼしていたローウェンは突然引き締まった面持ちでノアを見た。
そして書類の中から一枚の赤髪の少女の写真をノアの前に提示した。
「この女を生け捕りにしてほしい、これは極秘だ!」
「断る!」
「!」
「俺はもう軍を抜けた人間、それにもう、誰かを殺したくないんだ…」
ローウェン元帥は頭を掻きながら困った表情を浮かべている。
「まぁ、そういうことだから」
そう言ってノアは席を立ち客間を足早に出て行った。
「お邪魔するよ、ローウェン元帥!」
ローウェンは客間の入り口の方へ行くと、そこには大統領のセルシオ・ガル・シオンが黒服のボディガードと共に、ノアの目の前に立っているた。
「大統領! どう致しましたか!」
ローウェンは敬礼をし、言った。
「例の極秘任務の話でね」
そう言った大統領の視線は、すでにノアに向けられている。
「セルシオさん、悪いけど俺は受けられない!」
「うーん、それは困るな、こちらとしても君の力が必要なのだよ、協力してくれないかね」
「いや、それはできません」
ローウェンと同じくセルシオもまた困った表情を浮かべた。
しかし、その表情は一変し、その瞳の奥は笑っている。
「ノア君だったね…君は確か〇〇のストリートの一角のコーヒーショップで働いているんだってね…」
「それがどうしたんですか」
「いいや、君なら言わずして分かるだろう?」
セルシオは悪魔のような下品な笑い声を小さくあげた。
(チッ!汚ねえこいつ!)
ノアは右手の拳を強く握り、怒りを表にしている。
「まぁ、よろしくねノア君! 詳しい事はわから聞いてくれ」
「……」
ノアは明らかに理不尽で、それでいて、相手との戦力差が目に見えるほど歴然たるゆえ、ただ、黙り、無言の承諾を強いられるのだった。
そしてそんなノアにも目もくれずセルシオはボディガードと共に部屋を出ていった。
「くそ!」
「すまないノア…私でも大統領には…」
「いいよ謝らなくて、俺はこれまで数多くの戦場で沢山の人を殺してきた身、だからもう争わなくていい今を大切にしたい」
「やるのか?」
「それしか、今を守る方法がないと思う」
「そか、じゃあ任務の詳細を説明するな」
ローウェンはあらためて先程の書類をノアに全て渡した。
「今回の任務の書類はこれで全てだ」
早速ノアは分厚い書類を手に取った。そして、ひと通り目を通すと書類をローウェンに返した。
「どうだ?」
「まぁ、武装勢力を一掃しないといけない感じだな…」
「そうだな、相手は反政府勢力だ、恐らく制圧の為に大統領はお前を選んだのだろう…」
「制圧の為に根源の頭を刈り取ろうというわけか」
「とりあえず移動手段はこちらで用意する、その間に武器を選んでいてくれ」
そう言ってローウェンは客間の本棚が並んでいるうちの一つに手をかけた、すると回転扉になっており、裏には壁掛けの物から棚の物まで数多くの多彩な武器が並んでいる。
「でわ
ローウェンは敬礼をし、言った。
「例の極秘任務の話でね」
そう言った大統領の視線は、すでにノアに向けられている。
「セルシオさん、悪いけど俺は受けられない!」
「うーん、それは困るな、こちらとしても君の力が必要なのだよ、協力してくれないかね」
「いや、それはできません」
ローウェンと同じくセルシオもまた困った表情を浮かべた。
しかし、その表情は一変し、その瞳の奥は笑っている。
「ノア君だったね…君は確か〇〇のストリートの一角のコーヒーショップで働いているんだってね…」
「それがどうしたんですか」
「いいや、君なら言わずして分かるだろう?」
セルシオは悪魔のような下品な笑い声を小さくあげた。
(チッ!汚ねえこいつ!)
ノアは右手の拳を強く握り、怒りを表にしている。
「まぁ、よろしくねノア君!」
「……」
ノアは明らかに理不尽で、それでいて、相手との戦力差が目に見えるほど歴然たるゆえ、ただ、黙り、無言の承諾を強いられるのだった。