33話 塔の裏の秘境
「うわーーこっちもすごい絶景だよ」
そう言って叫んでいるリンさんがいる方向を見ると
「うわっ」
「確かに今まで町を上から見たことなんてなかったよな」
そう、リンさんが見ていたのは僕達が最初にいた町
塔の上からだと町の全体が見える
こうやってよく見るとけっこう大きな町だ
町全体はまるで計算されているかのように円形をしていて
東西南北の門の上には小さな塔が建っており
塔の三角屋根の下には・・・あれは鐘かな?
そして、東西南北の門から真っ直ぐに伸びる大通りの中心には噴水がある
よく見ると北東のエリアには立派な教会が見える
北西には立派なお屋敷が
南東には立派な煙突が目立つ建物がいくつか見える・・・あそこは鍛冶場とかがあるのかな?
南西には屋外訓練所などがある大きな建物が守衛さん達の訓練所とかかな?
そういえばまだ町って、大通くらいしか見て無かったかも
今度時間あるときに探索してみよう
さて・・・そろそろ現実に戻るか
町のほうを見てる僕の横には、けっこう高い天然の石を削ったような石版が立っていて
その石版の下にあるパネルのようなものがさっきから早く触れろといわんばかりに赤く点滅をしてる
「いつまでも見ててもしょうがないから触れてみようか」
「あははっ」
「たのむ」
僕が恐る恐るパネルに触れると
ピカッ
石版が輝いたと思ったら
いきなり塔の屋上全体に光で下の階にもあった塔の紋章が浮かび上がり
いきなり巨大に緑色のクリスタルが現れていて僕達の上空に浮かんでいた
(太さは塔全体のの半分くらい、高さはその横幅の倍くらいはある)
そのクリスタルの全体が輝いたと思ったら
その光が次第に小さくそして強くなったと思った瞬間
町のほうに向かってその光がまるでレーザー光線のように飛んでいった!!
そのまま噴水に向かうのかと思ったら
まずは、西の門の上の鐘に当たり
ゴーーーーーン ゴーーーーーン
と言う鐘の音を響かせそのまま真っ直ぐ噴水の台座に光が届いた
その瞬間
《[PT:死神さんが通る]によって西の塔が開放されました》
《四方すべて塔が開放された時、イベントが開催されます》
それだけみたいだ
ん?
今度はパネルが緑色に光っていて
[塔を登りし者 その証を示せ]
と書いてあった
「証?そんなのあったっけ?」
「う~~ん、やっぱり村長さんに話を聞いたほうがよかったのかな?」
「証明書とかじゃダメなのかな?」
ん?
証明書?
もしかして
僕はアイテムボックスからギルドカードを取り出し
恐る恐るパネルに置いて見ると
[証を確認 印を刻みます]
やっぱよかったのか
ギルドカードをとってよく見ると
カードの左の縁に緑色の額のようなものが書かれてその中央には西の紋章が刻まれていた
これが印か
[ギルドカードに西の紋が刻まれました、その事によりゲート開封時西のゲートの利用が可能になります]
あれ?コレってもしかして、塔を上って印を刻まないと別のエリアにいけないとか?
じゃあ、全部のエリアに行きたかったら
東西南北全てのエリアボスを倒して
全部の塔に登って証を刻まないといけないと・・・
だから、エリアボスも最初に比べるとだいぶ弱くなってるし
塔のボスもそこまで強くなかったのか
塔のボスは、強さよりか暗闇のほうが手ごわかったかも
二人もギルドカードに印を刻んだので
「じゃあそろそろ下に降りようか」
「そうだな」
「うん」
と言うことで下の階に降りて
休憩室をそのまま通り過ぎようかとしたのだが
「あれっ?」
休憩室のベンチの前を通り過ぎようとして例の紋章の上に乗っかった瞬間
紋章が光り・・・気がつくと1階にいた
「えっ・・うそ・・」
急いでPTチャットで二人に連絡すると
二人もやってきて
「この紋章はその為の物だったんだ」
「あの階段降りずにすんでよかったーー」
「あの紋章を刻まないと発動しない仕掛けだったみたいだね」
「うんうん」
そうして1階に下りてきたのだが
1階は相変わらず真っ暗で
「まずい、召喚:パール」
「まだバットが出るのか、召喚:レーヴァ」
「あわあわ、召喚:モモン、ルルゥ」
ちなみにリンさんが呼び出したのはさっき仲間にした[スワロウ]でやっぱり[暗視]のスキルを持っていた
呼び出した四匹でバットを対処しつつそのまま塔の外に出た
「ふぅ、最後まで気が抜けなかったね」
「そうだな」
「あははっ」
塔の門の前の階段に座りながら
「これからどうする?」
「一度戻るか」
「さんせーい」
「あの熊の中を通って」
そう言うとリンさんは
「うぅぅっ・・・またあそこ通るんだ」
「通らないと帰れないし・・なぁ」
「あははっ、その前に試したいことがあるんだけどいいかな?」
僕はそう言って
二人を連れて・・・また塔の裏に・・・
「ああ、塔をクリアーしたからな」
「うん、あれからどうなったか気になってね」
塔の裏は相変わらず淡い光を放つ柵に覆われていて
裏の門も最初より少し薄くなったが光の壁は健在
「やっぱり無理だよ」
そう言うリンさんを無視して門に触れてみると
門の壁に塔の紋章が浮かび上がり
すり抜けた
「あれ?通れた」
「おぉっ」
「えーーっ」
どうせなので少し出て来るモンスターだけでも調べようとパートナーを呼び出しながら慎重に進んでいこうとした瞬間
「ガオゥーーッ」
と言う鳴き声とともに火の矢がいくつも飛んできた
「えっ」
「危ない」
何とか避けて火の矢が飛んできた方を見るとそこには
[ファイアーベアLv24]
血のように真っ赤な毛色の普通のベアを一回り大きくしたようなベアがそこにいた
しかも口から火がちらちら吹き出してるし
「シャーーッ」
脇の木の上からは
全身黄色くパチパチと光っているニシキヘビ
[スパークパイソンLv21]
その逆の木の上からは
「ウホウホッ」
胸の辺りが岩のように固い石の様なってるゴリラ
[ロックコングLv23]
手と足の先も岩のように堅くなっているみたいだ
何かいきなりレベルが違っている
しかも・・今までの敵は使ってこなかった魔法を使ってくるとは
「ガオッーッ」
再び飛んできた火の矢を
「ソキウスお願い」
火の耐久があるクラブのソキウスに護ってもらったのだが・・
それでも一撃でHP4割吹き飛んだ
「これはたぶん・・・レベルは20代に見えるけど、実際はもっとレベル高いかも」
そう言いながらも何とか反撃を試みるが
「ききゅーーっ」
パールも相手の動きが速すぎるせいかまともに急所に当てることができず、あまりダメージを与えられない
そして・・・
「シャーーッ」
パイソンの放った電気の矢によって電気系が苦手なソキウスが倒され
ファイアーベアの火の矢により火が苦手なリーフとレーヴァも燃やされて
「危ない」
リンさんに向かって飛んできたロックベアの投げた岩が
庇ったアインもろとも命中して
「レンすまん、先に戻ってる」
二人そろって倒されてしまった・・
残ったのは僕とミドとパール
ミドは決死の覚悟でファイアーベアに挑みかかるが
さすがレベルが違うし体格差もある
少しは粘ったものの、最後は押し切られ
「グオォォーーッ」
ミドも倒されてしまった・・・が
その隙をつき
「きゅーぅーーーっ」
パールが死角からの急所攻撃!!
見事当たった攻撃により
ファイアーベアの首が落ちた
流石急所に当たりさえすれば[暗殺]は発動するんだ
「やったーパール・・う?」
その瞬間
僕の視線がずれた
そして僕の首の下からひとつの影が・・・
[スラッシュスワロウLv25]
銀色に光る翼を持ったツバメの姿を見た瞬間
僕の目の前が真っ暗になっていった
「ごめんパール・・・」
そして次の瞬間僕は町の噴水の裏[敗者の広場]にいた
「おぉっ、やっと来たか」
「あははっおつかれさま」
先に戻っていた二人が出迎えてくれた
「あははっお疲れ様、リンさんごめんね死に戻りさせちゃって」
「ううん、どうせ戻るつもりだったんだから丁度よかったよ」
「そう言ってもらえるとよかったよ」
そう言いながら三人で地面に座って笑いあっていた
全然歯が立ちませんでしたw
その理由は次の話で詳しく話すことになるはず




