15話 親友の相棒と真のゲーム開発者
最初の町の噴水広場そこにたどり着くと
「おっ、こっちこっち」
そこにいたのは、朝あったばかりの見知った親友の姿ではなかった
髪の色を紺にして、前髪を伸ばし片目が少し隠れてる後ろ髪も現実よりボリュームを増やして少し長くしてる、リアバレ防止なんだろうけど親しい人が見ればすぐにわかる程度だ
「よお、無事に入れてよかったな」
「あぁ、最初キャラメイク前にフリーズした時はだめかと思ったぜ」
「そーなんだ」
「ああ、その後GMから連絡が来て、このソフトはどこで手に入れたかなど聞かれたよ」
「でも入れたからよかったよね」
「そーだな」
「そーいえば、名前はどーした?」
「やっぱ何時も使ってる名前が取れなくて[アインス]にしたよ」
「ドイツ語で1かよ」
「だって、他の全部取れなかったんだよ、ゼロワンすらダメだった時はどーしようかと思ったよ」
「あははっ、それでパートナーはどんなモンスター捕まえた?」
「ふっふっふっ、それは後のお楽しみ」
「おお、けっこう時間かかってたみたいだし期待してるよ、それで協会にはもう行ったの?」
「テイマー協会だっけ? まだ行ってなかったわ、わりいが付き合ってくれないか」
「僕もちょっと用があるし、いいよ」
二人で協会に入ると
相変わらず人は多いが、昨日と違って正面受付はあまり並んでないので
「僕はちょっと売店見てくるから、受け付け終わったらそこのクエスト掲示板前で待ち合わせな」
「おっけー」
そう言って、二階の売店に行き[簡易細工キット]と言う名の自動研磨機を買い
ついでに倉庫に魔石や今使わなそうなアイテムを入れてクエスト提示板に行って提示板を覗きながらアインスを待ってると
「おまたせ、そーいえばお前武器ってどこで手に入れた?無人販売所に売ってるのか?」
「僕は杖だから、知り合った木工スキル持ってる人に作ってもらったけど、初期の武器はここでもらえるらしいよ」
「そーなんだ」
「聞いた話によると、ここの反対の向こうの受付かも」
「ちょっと行ってくるわ」
「ぼくもついてくよ」
そうして無事に武器をもらい(槍をもらってた)
そのまま僕も今まで行かなかった西のほうに狩りに行く事になった
二人でしゃべりながら西門をくぐると真っ直ぐ伸びた道の両脇にはまばらながら木が生い茂りその影からモンスターの影が見え隠れしてる
ここのモンスターは[ラット]あと[プチウルフ]そして
「あそこにいるのは[プチベア]かな?」
ふかふかした熊のぬいぐるみのようなモンスター[プチベア]だ
数は少なそうだけど
「まぁ最初だしラットでも戦ってみるか」
そういうと、アインスはウィンドを操作して
「召喚:レーヴァ」
出て来たのは、白い人魂のようなものに茶色い簡素なローブを頭からかぶったそんな感じのモンスター
「それって」
「俺の相棒、[プチゴースト]のレーヴァだ」
聞いたことないモンスターだった
「そんなのどこにいたんだよ」
周りにいた人も驚いてこっちに注目してる
「あははっ、朝に話し聞いたときに擬態したり隠れてるモンスターがいるって聞いたから色々探して岩の隙間を覗き込んだら隠れてるのみつけて捕まえた」
「おい、そんなとこからみつけるなって」
「あははっ、まあレーヴァそこのラットに攻撃だ」
そう言うとゴーストのレーヴァはゆっくりとラットに近寄り触った
すると、ラットのHPが少し削れた
どうやらゴーストの攻撃は相手に触るだけでダメージ与えられるみたいだしかも触ってる間じりじりとHPが削れてる
ラットも流石にこのままやられてるだけではない
ゴーストを振り払うと、そのまま体当たり
しかし、一割もダメージを与えられない
ゴーストって意外と硬い?
「レーヴァはスキルに[物理軽減]を持ってるから普通の攻撃じゃあまりダメージ受けないんだよ、それに・・・」
ダメージ受けたかと思うと、レーヴァがまたラットに触ると
「HPが回復していく」
そう、さっき受けたダメージが回復していってる
「レーヴァの攻撃はHPドレインなんだ」
「うわっ」
回りも驚いてる
「でも、弱点は与えるダメージが少なすぎて倒すのに時間がかかるってことかな」
なるほど、かなり弱いはずのラット倒すのにけっこう時間がかかってる
「そこはレベルが上がれば何とかなるんじゃないの?」
「そーだな、もしくは」
一匹目のラットを倒したレーヴァは
「レーヴァ、次はあのラットにダークアローだ」
そう言うと、レーヴァの目の前から黒い矢というか針のようなものが飛び出し二匹目のラットに刺さりHPが3割削れる
「まぁこんなもんか、後は攻撃だ」
その後はやっぱりドレイン攻撃でじわじわ削っていって、何とか倒した
「ん~~やっぱ最初はこんなもんか」
ふわふわと浮かぶ相棒を見ながらそんなことを言う
「そんなもんだよ、じゃは次は僕がやるよ」
「召喚:メリー」
メリーを呼び出し
「メリー、ゴー」
近くのラットに体当たり5割ほど削れる
その後ラットが噛み付くが1割も削れず、メリーの体当たり二回目で倒れた
「ラビットじゃないんだ、それにやっぱ強いな」
「さすがに、プチじゃないしレベルも違うよ」
「それいくつなの?」
「レベル4」
「なるほど、そういえばプチモンスターっていくつで進化するかわかってるんだっけ?」
「うーん、僕もわからないけど進化しないわけないと思うんだけど」
そう悩んでると、周りから
「プチウルフとプチシープはレベル5で進化するのはわかってるよ、けど進化するとレベル1に戻るみたいだけど」
「そうなんですか」
「けど、他のプチモンスターはレベル5になっても進化してないみたいだからその種族によるのかも、たとえばこのフィールドにいるプチベアなんかも、レベル5では進化してないみたいだし」
なるほど、種族によって進化するレベルが違うのか
「ありがとうございます」
「じゃあ、次はお前のラビットの実力を見せてもらおうか」
「それならもうちょっと奥に進もうか」
「そんな強いのか?」
「あの子はちょっと特殊でね、あんまり他の人に見られたくないんだ」
そう話してると
「ちょっと、森の奥に進むのは危険だからやめたほうがいいよ」
「奥に進むなら別のとこのほうがいいよ」
「森の奥は・・出るんだ」
何か皆さんの様子がおかしい
「出る?幽霊?」
そう言ってレーヴァの方を見る
「違う、違う、そんな可愛いのじゃない」
じゃあなんだろう
「出るんだ・・・・熊が」
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時は遡り
ここは、とある病院の病室
ピッピッピッピッピッ
病室には人工呼吸器をつけた20代くらいの男性が一人眠っているように目を閉じている
「よう、幸平起きてるか」
そこに現れたのは[モンスターオブフォーチュン]開発室でチーフと呼ばれた男[藍原 利久]だった
彼の呼びかけに幸平と呼ばれた男性は瞳を少しだけ開き起きている事をアピールした
「そのままでいいから聴いてくれ、昨日お前が作ったゲームが正規にサービスを開始したぞ」
そう言うと、彼はすこし嬉しそうな、そして悲しそうな複雑な表情を浮かべた
「少しのトラブルが合ったが順調に稼動してるよ」
「そういえば昨日サービス初日初っ端にお前の悪意の結晶の一匹が捕まったぞ)」
彼はそれを聞いたとたん、信じられないという表情でビクンと反応した
「ほれ、これが証拠だ」
そう言って、見せられたタブレットの画像にはレン君がパールを楽しそうにモフモフしている画像が映し出されてた
彼はその画面をいの開ける瞼を全開に見開いて嬉しそうに見ている
その瞼からうっすら涙が流れていた
「他の六匹はまだ捕まってないが、そいつは特にオマエのお気に入りだっただろ」
彼はロクに動かせない首を少し縦に振り肯定する
「今のお前にはちょっと刺激が強すぎるかもしれないが、あいつの捕まり方がちょっと変わっててな、と言うかあいつはまともには捕まるはずないけどな、その画像がコレだ」
彼に例の横取り動画を見せると興奮したように身体を揺らし、飛んで行った石が草むらのボーパルラビットを捕まえた瞬間、あーーーっというちょっとあっけに取られたような表情に変わった
「流石にあいつも最初から飛んでくる石には反応でき無かったってやつだな」
そう言うと、彼はやさしそうな表情で静かに肯定の表現をした
「何はともあれ、今は順調に進んでる、何も心配しないでゆっくり体を直せ、本当の開発者のお前がいないことには何も始まらないんだからな」
そういわれると彼は嬉しそうに、そして悲しそうにそして動かない体に対しての悔しさが含まれた何ともいえない表情をしていた
「じゃあ、またなんかあったらくるから、今は体を直すことだけを考えてろ、席は残してあるからな」
そー言うと病室を後にした
その病院の廊下で藍原は看護婦に呼び止められて
「病室の彼なんですが、もう・・・元のカラダに戻る力が残されては・・」
「わかってる・・・でもこうやって少しでも活を入れてやらないとな・・・」
「そうでしたか・・・」
「何、あいつはまだ死なないよ、死ねないよ、まだ始まったばかりだし」
「それにあいつが真に望んだことはまだ達成してない・・・あれがゲーム内に出て来るまであいつは死ねないさ」
このゲーム[モンスター・オブ・フォーチュン]は彼[服部 幸平]が学生時代から少しづつ書き留めていったキャラ、設定、シナリオを元に作られた企画で、学校を卒業してすぐ彼は藍原のいるゲーム会社に入り
彼の熱意を買った藍原が社長に掛け合い作り上げたゲームです
彼が倒れた原因は疲労、というか心血注ぎすぎて一週間に睡眠時間5時間と言う生活を半年以上続けた結果です(自業自得)
もちろん両親や会社の同僚、藍原も彼を止めようとしたのですが一度やり出したら止まらない性格で、体を壊すまで止まらなかった・・・その結果が今の姿です