表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/101

9話:ハッチの中で探ったものは……

 おいおい、真っ暗でなんにも見えねぇぞ。


 ハッチの中は、漆黒の闇だった。

 暗闇の中、手探りで前にゆっくり歩みを進めるとハッチが閉まり始め、離陸を始めた。

 オレは揺れの衝撃で自身が倒れないように気をつけながら、更に歩みを進める。

 十歩ほど進むと、見えない視界の中で何かにぶつかった。


 なんだろう……、うん……? 柔らかい? あれ、なんだこれ?


 目の前にあるであろう謎の物体を慎重に手でまさぐる。


 このサラサラした糸みたいな……これ髪の毛か! ということはもしかして!


 バチン。


 オレが物体の正体を分かったのと同時に、突然ハッチ内部の照明が光りだした。


「うわっ、まぶし!」


 急な強い光には思わず目をつぶり、徐々に目を開きはじめるとそこには……


「だ、大丈夫ですか?」

「あぁ、ありがとう……」 


 ローブを纏った黒いロングヘアーの見目麗しい女性が立っていた。

 濁りがない深い赤色の瞳に、誰でも2度見をしてしまいそうな美しい顔立ちは天使を想起させる。

 やっぱり、オレが今触りまくっていたのは……。


「あ、あの……、もしかして……、怒ってますか?」

「あまりにも大胆だったので……。今回は特別に許しますが、次はダメですから」

「ありがとうございます! いや違う、すみません、本当にすみませんでした!」


 あぁ、やっぱりオレって底なしのバカなんだなぁ。

 オレが頭を下げて必死に謝罪していると、


「なんで男って、どいつもこいつもこうなのかしら?」


 女性の背後から、ミディアムの金髪をした女性が頭を抱えながら現れた。

 目の前の女性とは異なり、スーツに黒いヒールという服装でいかにも出来るキャリアウーマンという感じが伝わってくる。

 年齢は目の前の女性と同じくらいだろうが、ローブの女性とタイプが相反する。

 人形のように整った顔立ちだが、黄金色の眼からは何処となく肉食動物を思わせる雰囲気を感じる。

 完璧なプロポーションからは、誇り高さと覇気を漂わせており、それはまるで戦場で戦う女騎士を思い起こさせる。

暗闇から突如として現れた、ローブを纏った愛らしい女性とスーツを纏った凛とした女性。

方向性こそ全く違うが、彼女らは決して一言で片づけることが出来ない存在であることは間違いない。


「局長、座って待っていればよかったのに」

「イズモ、局長って言うのはやめて欲しいな。私も就任したばかりで慣れてないのよ、それにまた何かやらかすと面倒だからね。まぁ、今まさに起きたけど」


 局長と思われる方が、オレに鋭い目線を浴びせてくる。


 いや、これは本当に事故だからな?


「私は気にしてないよ」

「ねぇ、イズモ? あなたはど変態なの? 触られて気持ちいいとか思っちゃったの?」

「そんなこと言ってなくない?! そんなこと言ったら、セレナだって縄で」

「待って、待って、ちょっと何をバラそうとして」

「あの、すいません。オレはどうすればいいんですか?」


 2人の女性は、オレそっちのけで盛り上がり始めたので質問する。


「「あっ、すいません」」


我に返ったのか、慌てた2人がハモって返事をする。

そして、スーツ姿の女性が思い出したように手をパンと1回たたくと、


「そういえば、私たちの自己紹介がまだだったね。私は、セレナ・キクカワ。1週間前から局長になったの。お隣にいるの魔術師は、イズモ・セト。サクラのお姉さんよ」

「よろしくね、ホクトくん」

「えっ、はい、よろしく」


 この人、サクラのお姉さんなのか。

 言われてみれば、顔つきや口調が似ているような気がするな。


「ところで、お姉さんのスズランちゃんはどうだった?」

「姉ちゃんですか? 車を破壊しようとしたくらい怒ってましたけど」


 イズモの突然の質問にオレは戸惑いながら答える。


「でしょうね、スズランちゃんはちょっとプライドの高いところあるからね」

「あの、オレの姉ちゃんとはどういった関係で?」

「同じ魔術学校の同級生なんですよ」


 なるほど、ということはセレナとイズモは姉ちゃんの知り合いなのか。


「イズモもそうだけど、私もあなたのお姉さんには色々とお世話になったわ。良い意味でも悪い意味でもね。まあ、そういった話は今度するとして、あなたはなぜここに連れて来られたかサクラから話を聞いた?」

「えー、詳しいことはさっぱり。部下になれとしか言われてないですけど」


 セレナが質問してきたので、オレはありのままを答える。

 考えてみれば、この人達の正体をオレは正確には知っていない。

 とはいっても、魔法省公認のローブを着ているイズモから大体は想像できるが。


「サクラらしいやり方ね。ちなみに、私たちは何をしている人か分かっている?」

「何をしているって……、魔法省の人たちじゃないんですか?」


 セレナが薄ら笑いを浮かべて妙な質問をしてきたので、オレは思ったことを口に出す。

 この嫌な感じ、もしかして……。


「残念ながら、魔法省ではなく帝国フレイトという組織よ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ