水掻き男
硬貨を握りしめて、街の両替屋に向かった弟子だったが、
人混みの中で人にぶつかり硬貨を落としてしまう。
慌てて硬貨を拾おうとすると、別の人物の手が伸びてきて硬貨をつかむ。
その手の指と指との間には小さな水掻きがついていた。
弟子が慌てて相手の人物の顔を見上げた時、相手が何かを呟いた。
ジャム(잠)眠れ
弟子は、目の前がぼんやりしてきて、次第に意識がなくなった。
弟子はすぐに意識を取り戻したが、そこには水掻きの手の男はいなかった。
白昼夢をみている気分だった弟子は、気を取り直して両替屋に向かった。
そこで自分の硬貨がすべて無くなっている事に気がつく。
両替屋の話によると、最近、古代の硬貨が盗まれる事件があったそうだ。
弟子は咄嗟にさっきの男を思い出した。
そして突然の魔法、手の水掻き、無くなった硬貨から、師匠の言った言葉を思い出す。
「・・・それか海に人間が住んでたか、いや人間ではない可能性もあるな・・・」
結局1ゴールドも稼げなかった弟子だったが、師匠の家に戻り街での出来事を話した。
師匠:なるほど弟子は、その水掻き男が硬貨を盗んでると思うのじゃな。
師匠はしばらく考えてからいった。
師匠:それだったら、水掻き男が遺跡に直接行って硬貨を取っても良さそうじゃがな。
弟子:もしかしたら遺跡の硬貨も無くなっているのかも、
師匠:まさか遺跡の硬貨は大量にあるのじゃぞ、すべてを盗むことはできないじゃろ。
弟子:そんなのわからないじゃないですか、またダンジョンに行ってみましょうよ。
師匠の袖を引っ張って、しつこく催促する弟子
師匠:わかったわかった。では行くとして、魔法の準備は大丈夫なのか?
弟子:クプタ(굽다)なら任せて下さい。
師匠:・・・ええい、仕方がないな、今回は調査だからな。
師匠と弟子はダンジョンの前でアースエレメンタルを召喚。
師匠:フクチョンリョン ケオソ ウリルル チキョラ
(흙정령 깨어서 우리를 지켜라)
大地の精霊、目覚め!我らを守れ!
師匠:これで前回よりは長くエレメンタルが持つじゃろ
弟子:前回は家から召喚させて行きましたからね。
ヨルダ(열다)でダンジョンの扉を開いた師匠は、続けてこう唱えた。
ピチヨ ウリルル カムチュジ(빛 이여 우리를 가추지)光よ我らの姿を隠せ
弟子:あれ?し、師匠どこいったんですか?
師匠:バカ、姿を隠したんじゃ、すぐ隣におる。
ワシのローブの裾でも握っておれ、迷子になるなよ。
弟子:わぁ、僕の姿もなくなってる。(自分の体を見て驚く弟子)
師匠:今回は調査だからな、アースエレメンタルをおとりにして、
ダンジョンの潜れるところまで潜ってみよう。
弟子:了解です。
こうして透明になった師匠と弟子は遺跡のダンジョンを進んでいった。
アースエレメンタルは、術者の魔力を察知して師匠と弟子の後をついった。
つづく