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006 月の巫女 2

投稿!おりゃりゃ!

 褐色の肌から水滴が落ちる。水捌けのいい床から温まった湯が溝口に吸い込まれ、流れてゆく。

 それをわたしは意味なく見つめながら、頭からシャワーをかぶった。

 まだまだ若い。きめ細やかな肌をシャワーから発する湯気が隠す。頭から流れてくるお湯が自身の長い黒髪を濡らし、肌に張り付く。わたしは自身の蒼い瞳を細め、大きな溜め息をついた。


 傷一つない肌は年頃の乙女のような張りを保ち、華奢な腕やスラッとした足は本当に運動をしたことがあるのかと思うほどに細く長い。誰一人この少女が殺し屋という職業をやっているなんて思いもしないだろう。

 ダークエルフと言えば何処か打たれ弱そうなイメージがある。しかし、実際は全くの逆で魔法魔術的な影響を直に受けているため意外と身体は丈夫なのだ。事実、大きな怪我をしたとしても体内の魔力が修復しようとするため、人間よりも遥かに治りが早い。さすがにエルフや竜人などには負けてしまいがちだが…もともとは森で生きてきた種族。魔力の扱いには長けていた。


 身体を壁に預け、シャワーをかぶっていた彼女はもう一度大きなため息をつくと自身の身体を洗い流してゆく。

 湯が疲れを一緒に流してくれているかのような感覚。魔力が傷を治してくれると言っても疲れがとれるわけではない。むしろ魔力が身体から出ていく分疲労は積み重なるばかりだ。長所もあり短所もある、それが普通で常識で今の彼女の身体は連日の出来事で休息を求めていた。




 ◆◆◆




 わたしはシャワー室を後にし、黒のタンクトップに同色のショートパンツというラフな格好で無造作に長い髪を拭きながら自身の一室へと戻る。

 この住居は昔人間が使っていたものを勝手に再利用して住んでいるものだった。木造の住宅ではなく石造りで。所々潰れ、穴が開いていたり吹きさらしになっていたりと住めるようなところではなかったのだが、この反抗勢力(レジスタンス)の拠点で住むことになった時に最低限生活できるよう修復し今に至る。先ほど使っていたシャワー室ももともとは半壊しており使うことさえできなかったのだ。

 ひび割れたガラス越しに不気味な赤い光がうっすらと射し込む。これはこの世界で言う日光のようなもの。天から射す太陽の光が分厚い赤い雲を通り、僅かに地を照らしているらしい。確証も証拠もないし、もとの日光と違いすぎているためあまり信じている者は少ないようだが。

 

「……。あれからもう丸一日か…」


 わたしは壁にかかっている古い丸時計を見ながら呟く。

 女王を殺し、巫女姫と謁見してからもう丸一日たっていた。その間にわたしがしていたことと言えば体力を回復させるための睡眠と魔術の修行。いつも通りと言えばいつも通りなのだが、やはり仕事が入らなければやることがない。魔族との殺り合いで疲れていると言っても怠けるつもりは毛頭ない。

 これなら適当に遠征部隊にでもついていけば良かったかと密かに思いながらわたしは手拭いを首にかけベッドに腰を下ろした。


「?」


 ふとわたしは唐突に気配を感じ、顔を上げる。殺気ではなく、只の生き物の気配。しかし、それは一瞬だけで今は感じることが出来ない。

 首を傾げながらもわたしはここの唯一の玄関に行き、勢いよく扉を開ける。


「…はぁ…ノックぐらいしなさいよ…」


 扉の前に置かれていた物を見てわたしは悪態をついた。

 見馴れた大きめの無骨な黒箱。それはいつもの巫女姫から送られてくる仕事の報酬であった。

 わたしは少し魔術を発動させ、鎖で固定されている黒箱を持ち上げる。流石に重く力が腕にのし掛かってくるがそれは魔術で対応し、苦労せず部屋に運び入れる。

 ズンッと重い音をたたせながら部屋の空いているスペースに置くと、棚に置かれていた剣を一本取り、鞘から抜き放つ。

 一閃───鎖で巻かれていた黒箱に斬撃を放つ。

 その一太刀で丈夫そうな鎖は断ち切られ意味のない物となる。

 剣を鞘に納めたわたしは蓋を蹴り上げ少々乱暴に開封した。


「なかなかいいのが揃ってるわね」


 わたしは中の物を一目見て感想を漏らす。

 中に入っていたもの。ごちゃごちゃといろいろ入ってはいるが一つだけ共通点があった。それは"使い古された鉄製の武器"と言うことだ。


「いつもならもっとボロボロのを送ってくるけど…。なるほど、今回は報酬がいいみたいね」


 事が事だけに今回は良質な素材を送ってくれたようで、いつもなら殆ど錆び錆びの剣や穴だらけの盾など本当に武器として使えないものばかりだったのだが。


「このダガーとか普通に使えそうだけど…いいのかしらね」


 わたしは中の一つを手に取り刃を確認してから鞘に戻す。

 そこで一つのものに目が止まり、それを手に取る。

 それは大きめの麻袋。持てばそこからじゃらじゃらと金属の音がし、しっかりとした重みを感じるそれ。


「これは…。お金ね…いつもいらないって言っているのに」


 この世界でもお金は流通していた。物々交換が多いこの時代。金貨や銀貨などそれほど価値がないと思うかもしれないが、そんなことはない。硬貨などは貴重な金属材料でもあるし、物々交換で穏便に収まることなど実は少ない。種族間での価値が全然変わってくるためそれとこれの価値が合わないとかは日常茶飯事だ。人間が生きていた時代でもお金はこう言うときの為の物でもあったと聞いたことがある。価値観の違い。異種族だけではなく同じ種族でも違いがあるのだから共通の近しい価値がある物を使わなければ取引などできるはずがないのだ。


「ん?……何か入ってるわね…手紙?」


 わたしは中を開け確かめるように覗いたところで硬貨とは明らかに違う紙のような物を見つける。


「巫女姫様から…?えーと…───」


 ───このお金でちゃんと食事をとってくださいね。面倒だからって抜いちゃだめだよ?──


「……貴女はわたしのお母さんですか…。いや、まあ年齢は遥かに年上でしょうけど…」


 まさかわざわざ手紙にまでして言ってくるとは思わなかったわたしは若干表情をひきつらせながらもそれを綺麗に折り畳み引き出しにしまう。

 彼女は何故か何かしらに託けて世話を焼きたがった。わたしがもともと面倒臭がりな性格なのを彼女は知っているようで会う度に母親のようなことを言って心配してくる。別にそれが嫌ということはないのだが…少し面倒なところがある優しい少女。それがわたしの知っている巫女姫月詠であった。


「ふぅ…。仕方ないわね…本当は面倒だから適当でいいかと思ってたんだけど…。錬成してから出掛けましょうか…」


 何だかんだ言っても巫女姫に弱いのがリラである。一人文句を言いながら彼女は錬成の準備に取りかかる。自身の武器は多ければ多いほどいいと言うのが彼女の持論だ。早く終わらせようと思いながら彼女はいつもより早く作業に移ったのだった。

 


 


 

 あらすじにも書きましたがタイトル変更してみました!よろしくお願いしますです。あらすじもまた変更すると思いますので重ね重ねよろしくです。

 そして投稿のことですがこちらともう一方を交互に出していこうかなと思っております。こちらの都合で少々変わってくるかもしれませんが…決めておいた方が分かりやすいかと思いまして。

 こちらはあまり読み手が少ないのであちらにも書くと思いますが…よろしくお願いします。

 では!

 

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