004 黒き少女 4
こんにちは!少ないですがささっと書いてみました!こちらの方が書きやすい気がする…。いや、たんに一時の波に乗ってるだけかも知れませんがっ。たまにありますよね!ありません…?
静けさが辺りを覆い、闇夜の暗闇が光を打ち消す。太陽の光すら透さない雲が天を隠し、明けることのない夜が広がる世界。
「せめて、月明かりぐらい透してくれたら…少しは風情があったんだけどな~」
円形の窓から空を見上げ呟く幼さが残る一人の少女。
ゆらゆらと揺れる蝋燭の光を跳ね返すは美しい長い銀の髪。それを一括りに束ね、白衣と赤い帯、赤い緋袴を纏う赤眼の美少女。その服装だけでも目立つ特徴はたくさんあるが彼女の本当に注目するべき箇所はそこではない。
「リラ…大丈夫かな…」
ポツリと彼女はその小さな口で一言だけ呟く。その呟きは誰に聞き届けられることもなく消えていった。
彼女は眼前に垂れた銀の髪をその耳に引っ掻ける仕草をする。
その少女の耳は普通の耳とは違っていた。ピンッと突き出たように長い耳。そして、日焼けとは異なるきめ細やかな褐色の肌。彼女はエルフ…その同種。闇の眷属とまで言われる。ダークエルフであった。
「失礼いたします。月詠様」
音もなく障子が開き、姿を現すは白い人影。
白一色の修道服で顔半分は白のベールで隠された黒髪の女性。
「夢魔の軍勢に動きがあったようです」
「!」
少女は少なからず驚きながらも黙して頷くことで続きを促す。
彼女は挨拶もそこそこに手短に本題だけを伝える。
「北の頂に集結していた夢魔の軍勢が逃げるように離れていったとの報告が」
「よっよかった~…」
少女はパッと笑顔になり、次いで胸を撫で下ろすように大きく息を吐く。
「? 月詠様は知っておられたのではないのですか…?」
「ん?ああ…まあそうなんだけどね…。やっぱりちゃんと自身の耳で目で確認しないと…安心なんて出来ないんだよ…こんなことをやっていると特にね…」
目を細め頬を掻く少女はその幼さに余りある哀愁を漂わせながら溜め息をつく。
「そんなことより。これで一応こちらの勢力は追い討ちをかけられずにすみそうだね。あとはちゃんとリラたちが無事に帰って来たらいいんだけど…」
「彼女たちなら問題ないでしょう…。殺しても死なない人たちですからね。最大の難関は越えているのですから、逃亡など朝飯前でしょう」
「ははは…。貴女は本当にあの子たちには辛口だね」
少女の心配にその白い女性はさらっとキツイことを言い放つ。
それに苦笑しながらも少女は言う。
「それで?アレの準備は出来てるんだよね?そろそろタイムリミットだよ」
「分かっています。もう間もなくかと」
「分かった」
神妙な表情で少女は頷く。短く要領の得ない受け答え。それでも二人の間では理解できているようだ。
「それでは失礼します」
「うん。ありがと」
障子が閉められ気配が遠ざかる。
少女はまた一人になると窓の縁に寄り、空を見上げる。
「…もう…二度と失わせないから…」
そう呟く少女の赤い瞳は空を向いている。しかし、彼女は空ではなく何かを決意した目で違うモノを見つめていた。
◆◆◆
「死ぬかと思ったわ…」
「なかなか楽しめたなっ。死ぬかと思ったけどな~」
びちゃびちゃと水を滴らせ、川底から這い出てくる人影が二人。黒い少女と緑色の蜥蜴男という奇妙な組み合わせで、口々に文句を垂れ流しながら此処彼処にゴロゴロと転がっている岩に腰かける。
「谷底に川があって良かったわ…。地面に叩きつけられるかと思ったわよ…」
「流石にそれはないだろ。巫女さんのことだ、何かしらあるのは分かっていたさ」
はあ…と大きな溜め息をつくのはダークエルフのリラ。その隣でどっかりと胡座をかくのはリザードマンのソーンであった。
「お陰で髪も服もびしょびしょよ…。……血は取れたけど」
額に引っ付いた長い黒髪を鬱陶しげに払い。リラは言う。
「ま、どうにかなったからいいんじゃねえか。帰ればどうにでもなるだろ。死んだらどうしようもねぇがな」
「はぁ…」
ソーンの言葉に何も言えずリラは再度大きな溜め息をつき、水と気持ちを振り払うようにして立ち上がる。
「流石にここまで追いかけては来ないだろうけど…ここにいても仕方ないし。早く帰りましょ」
「そうだなっ」
彼女の言葉にソーンは二つ返事で返し立ち上がる。
リラは振り返りもう一度来た道を見る。
川の勢いが速かった為、大分下流に流されてしまったが…ここからでも館は見える。
小さく薄暗く妖しげに揺らめく館は…この世のものではないようで、何処か幻想的だ。
もう二度と行くことはないだろう…と彼女はそう思いながら背を向け、暗い鬱蒼とした森の中へと消えていった。
誤字脱字があれば言ってくれると助かります~よろしくお願いします!




