表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/55

剣技無情 四

 隼人は、仔犬を抱いていた。

白助しろすけ、おとなしくしていろ」

 言いながら、隼人は優しく仔犬を撫でる。白助と名付けられたこの仔犬は、とても穏やかな性格だ。きゃんきゃん吠えたりはしないし、やたらと動き回ったりもしない。いつもは、隼人と沙羅の周りを静かにうろうろしている。

 そんな隼人と白助の前では、沙羅がいつものように神への祈りを捧げている。沙羅は毎日、朝と晩そして食前と食後に祈るのだ。

 正直、隼人には全く分からない儀式である。なぜ、そんなことをするのだろうか? だからといって、沙羅の信仰に対し口を出そうとも思っていない。沙羅のしたいようにさせている。


 やがて、沙羅は祈りを終えた。

「ごめんね、待たせて。さあ、食べよ」

 そう言って、にっこりと微笑む沙羅。隼人は頷き、お椀を手に取り食べ始める。今日の食事は、粥と野草と小魚だ。ご馳走という訳ではないが、腹の足しにはなる。

 食べながら、隼人は沙羅を見つめた。彼女はどんなに辛くても、愚痴をこぼしたことがない。黙って自分に付いて来てくれた。もし沙羅と出会わなかったら……隼人は今も、夜魔として生きていただろう。

 沙羅は隼人に、初めて人間としての生き方を教えてくれた女なのだ。


「ん? どうしたの?」

 隼人の視線に気付き、首を傾げる沙羅。隼人は目を逸らした。

「なんでもない。お前が元気になって、本当に良かった……そう思っただけだ」

「何それ。変なの」

 くすりと笑う沙羅。すると、白助が彼女のそばに近づいていく。鼻を鳴らして、沙羅の顔を見上げた。

「白助、お前もお腹が空いたのかい」

 沙羅は微笑み、皿の上に粥をよそる。

 その皿を、白助の前に置いた。すると、白助は嬉しそうに皿に顔を突っ込む。

「さあ、お食べ。たらふくは食べられないけど」

 白助を見る沙羅の目は、優しいものに満ちていた。隼人も、思わず微笑む。彼は食べ終えると、沙羅に向かい口を開いた。

「そろそろ、裏の仕事が入ってくれればいいけどな。そうすれば、お前にも白助にも、美味いものを腹一杯になるまで食わせてやれるんだが」

 何気なく発した、隼人の言葉。だが、沙羅の表情は曇っていった。

「仕事……ね。裏の仕事は、いつまで続けるの?」

 顔を上げ、尋ねる沙羅。

「さあな。この稼業にいったん足を突っ込んだら、簡単には抜けられない……それは、お前だって分かるだろう」

「そう……悲しい話だね。あたしたちが食べていくためには、誰かが命を落とさなきゃならないんだね」

 沙羅の表情には、暗い陰がある。隼人は顔をしかめた。

「仕方ないんだよ、食うためなんだから。それに、殺しているのは俺だ。お前じゃない」

「神は、そんな風には見てくれないと思う」

 そう言うと、沙羅は壁に飾られている木彫りの聖母像を見上げた。聖母像は、慈悲深い笑みを浮かべている。

「あたしも、あんたと一緒に人殺しの罪を背負っているんだね」

 そう言うと、沙羅は胸のあたりで手を組んだ。目を閉じ、祈り始める。

 その姿を見た隼人は、そっと白助を抱き上げた。沙羅の邪魔にならないよう、白助の相手をする。

 隼人には、沙羅の信仰はまるで理解できないものだった。彼女は、その信仰のせいで家族を失い、自身も殺されかけたのだ。にも関わらず、未だに信仰を捨てていない。

 理解は出来ないが、それでも分かっていることが一つある。沙羅にとって、信仰は貴いもの……ということだ。ならば、その儀式も貴いものだろう。彼女の邪魔をしてはいけない。隼人は白助を連れ、その場を離れた。


 ・・・


「呪道、いったいどういう訳だ?」

 きつい口調で尋ねるお勢に対し、呪道は申し訳なさそうに頭を掻いた。

「いやあ、申し訳ありません。実はですね、上州熊の阿呆がしくじりましてね……参りましたよ」

「それは分かっている。私が言いたいのは、なぜ大角がしゃしゃり出て来るのかということだ」

 きつい口調で言いながら、呪道を睨み付けるお勢。だが、呪道は怯まない。

「いやあ、元締のきつい目も魅力的ですね。なんか俺、ぞくぞくしてきちゃいますよ――」

「私の質問に答えろ」

 お勢のにべもない態度に、呪道は苦笑した。だが、横にいる鉄は呆れ返った表情になる。この呪道という男の思考は、並の人間では理解できないだろう。




 鉄は呪道に呼び出され、龍牙会の元締・お勢の隠れ家に来ている。お勢の隠れ家は、江戸の中だけでも数軒あり、日によって何処に泊まるかはまちまちだという。もっとも、鉄はそんな事情は知ったことではないが。お勢の居場所など、知りたくもないし興味もない。出来ることなら、こんな場所には来たくなかったのだ。




「実はですね、甲斐歳三は大角を骨抜きにしちまってるんですよ。大角は女より男が好きですし、甲斐の野郎は見ての通りの美男子です。恐らく、甲斐の奴が泣きついたんでしょうなあ……ま、上州熊が仕損じたのが悪いんですがね」

 へらへら笑う呪道。お勢の目付きが、さらに険しくなった。

「大角は、こう言ったのだ……甲斐が狙われないよう、龍牙会の方で便宜を計ってくれ、とな。それも、他の商人たちがいる場でだ。あの場では、私は承知せざるを得なかった。これでは、甲斐を仕留めることは――」

「だったら、仕掛屋さんに任せたらどうです?」

 すました顔で、呪道は尋ねた。

「仕掛屋に?」

「はい、そうです。仕掛屋さんの方も構わないと言ってくれてますしね。なあ鉄さん?」

 そう言って、呪道は鉄の方に視線を移す。

 鉄は、面倒くさそうに頷いて見せた。

「ほら、仕掛屋さんの方も乗り気ですから。この際、甲斐の始末は仕掛屋さんに頼みましょう」

 にこにこ笑いながら、呪道は言った。だが、お勢の表情は険しいままだ。

「だが、そうなると大角はどうするのだ? 甲斐が殺られたとなると、奴はだまっていないぞ」

 お勢の問いに、鉄が横から口を挟んだ。

「なんなら、ついでに大角も仕留めてやろうか?」

 その言葉に、お勢は訝しげな表情を浮かべた。

「鉄、本気なのか? 大角を仕留める気か?」

「ああ。龍牙会につまらねえ根回しをするような奴なら、始末しちまった方がいいだろう。金さえ貰えば、俺たちが殺ってやる。どうせ、訳の分からねえ薬で儲けてる外道一味なんだろ。相手にとって不足なしだ」

 にやりと笑う鉄。さらに、呪道が畳み掛ける。

「元締、いい機会じゃありませんか。大角の奴は、龍牙会を完全に舐めてます。あんな奴は、始末しといた方がいいと思いますよ。それに、龍牙会と仕掛屋さんとの関係の強化も出来ますし――」

「いざとなったら、全ての責任は仕掛屋に押し付ければいい訳だしな。そうだろ、呪道?」

 嫌味たらしい口調で、鉄が口を挟む。だが、呪道は怯んでいなかった。へらへら笑いながら、鉄の視線を受け止める。

「いやいや、何を言ってるんだよ鉄さん。んなこと、俺は考えてもいないから」

 言いながら、呪道はとぼけた表情で手を振る。本当に面の皮の厚い男だ。鉄は口元を歪めた。

 その時、お勢が口を開いた。

「鉄……この仕事は、上州熊が二十両で受けた。さらに、私が十両を上乗せしよう。三十両で甲斐とお玉と立島、それに大角精吉だ。引き受けてくれるよう、仕掛屋の元締さんに掛け合ってくれぬか?」

「ああ、構わねえよ。多分、うちの元締も嫌とは言わねえさ」

 そう言って、鉄はにやりと笑った。




 数日後、中村左内を初めとする仕掛屋の面々は、隠れ家に集合していた。

「今回の相手は、甲斐歳三とお玉と用心棒の立島右京、それに大角屋の主人・大角精吉だ。金は一人六両……どうするんだ?」

 言いながら、左内は小判を一枚ずつ、机の上に乗せていく。

「俺はやるよ。相手が誰だろうが殺す」

 そう言うと、隼人は前金の三両を手に取った。続いて、小吉も三両を懐に入れる。

「いやあ、たまりませんなあ、この小判の感触! やっぱ、世の中は金だよ!」

「市、お前はどうするんだよ?」

 左内の言葉に、市はすました表情で三両を手に取った。

「やるよ。六両でも安いが、まあ仕方ねえ。俺も懐が寒くなってきたしな」

「じゃあ、これで決まりだな」

 言いながら、残った三両を懐に入れる鉄。そして、市の方を向いた。

「市、それに小吉……お前らは、大角を殺ってくれ。俺と八丁堀と隼人で、甲斐たちを殺る」

「何で俺が大角なんだ?」

 訝しげな市に、鉄は不気味な笑みを浮かべる。

「大角精吉はな、男が好きなんだよ。お前の面なら、間違いなくいける。小吉と組んで上手く近づき、二人きりになったところを仕留めろ。いいな?」

「そういうことかい。あまり気は進まねえが、その手でいくか」

 言いながら、市は表情を歪めた。


 ・・・


 大角精吉は、目の前にいる男の美しさに恍惚となっていた。


「旦那、あちらの人が旦那に話があると言ってます」

 昼間、店にいた時のことだ。いかにも軽薄そうな若者に声をかけられ、振り向いた大角。すると、すらりとした美男子が、何か言いたげな表情でこちらを見ている。

「ど、どうしたんだい?」

 大角は、年がいもなく胸の高鳴りを感じていた。愛人である甲斐歳三とは、また違った魅力を持っている。端正な顔立ちには、貴公子然とした品の良さが漂っている。

 同時に、狼のような野性的な雰囲気をも醸し出しているのだ。背は高く、一見するとほっそりした体つきである。しかし立ち姿や、着物から覗く腕などを見るに、鍛えられた肉体の持ち主であることが窺えた。

「あっしは、竹細工師の大吉という者です。あっしの竹細工を、見ていただけませんか?」

 爽やかな笑みを浮かべる大吉と名乗った若者。大角は、そっと耳元で囁いた。

「今夜、ゆかり屋という出会い茶屋に来てくれないか? 詳しいことは、そこで話し合おう」




 その日の夜。

「大吉……ここまで来た以上、どういうことか分かっているね」

 ゆかり屋の一室で、大吉にしなだれかかっていく大角。豚のように肥えた中年男が、女性のような仕草で美形の青年を上目遣いで見つめているのだ……端から見れば、滑稽としか言い様がないだろう。

 だが、大吉はにこりともしていない。その手には、ある物が握られていた。

「すまねえなあ大角さん。俺は大吉じゃねえんだ。本当の名前は、市なんだよ」

「なんだって?」

 首を傾げる大角。だが、その首に市の竹串が突き刺さる。竹串は、大角の延髄を正確に貫いていた。


 ・・・


 その頃、甲斐は提灯を片手に夜道を歩いていた。傍らにはお玉、少し遅れて立島右京が同行している。

 しかし、甲斐は足を止めた。

「またですか……しつこいですね。龍牙会に釘を刺したはずなんですが、どうやら見込み違いだったようですね」

 不快そうな表情で、甲斐は振り返った。すると、立島は刀の柄に手をかける。

「どうやら、我々には敵が多すぎるようです。仕方ないから、しらみ潰しにいきましょう」

 そう言って、辺りを見回す立島。だが、その表情が一変した。

「ちょっと待ってくださいよ、甲斐さん」

 とぼけた声で、後を追って来た者がいる。中村左内だ。左内は提灯を片手に、顔をしかめて走って来る。

「中村さん、どうかしましたか?」

 立島は、鋭い目付きで左内を見つめた。甲斐やお玉も、不快そうな表情を浮かべている。

「すみませんが立島さん、ちょっとお時間をよろしいですかな? 折り入って、お話ししたいことがあるんですよ」

 言いながら、左内はぺこぺこ頭を下げる。

「無理ですね。夜も遅いですし、早く帰りたいんですよ。どんな話か知りませんが、明日にしてください」

 にべもない態度で、甲斐は断った。だが、立島の口からは違う返事が出た。

「私は構いませんよ。さあ、行きましょう」

 不敵な笑みを浮かべ、左内に近づいて行く立島。甲斐は怒りを露にした。

「先生、どういうことですか?」

「中村さんは、私に用があるらしい。私も、中村さんには用がある。後は、あなたの好きにして下さい。くびにしていただいても構いません」

 そう言うと、立島は左内に会釈する。

「では中村さん、参りましょうか」




「あいつ、人斬りしか能の無い屑の分際で……」

 去っていく立島の後ろ姿を見ながら、甲斐は毒づいた。と同時に、物陰から二人の男が姿を現す。

「やあ甲斐さん、俺は骨接ぎを営む鉄って者だよ。あんた、妙な薬を売ってるらしいね」

 にやにや笑いながら、悠然と歩いていく鉄。その隣には、隼人がいる。隼人は無言のまま、じっと甲斐を見つめていた。

「何だ、あんたら殺し屋さんかい」

 甲斐の方も、余裕の表情だ。その手は、懐にしまった短筒へと伸びる。

「あたしらはねえ、法に触れるようなことはしちゃいないんだよ。あんたらみたいな人殺しに、とやかく言われる覚えはないね」

 言ったのはお玉だ。彼女は顔を歪めながら、短刀を抜いた。

「そりゃそうだけどよ、お前らが餓鬼どもに売った薬のせいで、あっちこっちから苦情が来てんだよ。それに、こっちも仕事でな。悪いが死んでもらうぜ」

 言いながら、首を回す鉄。だが次の瞬間、その表情が変わる。

 甲斐が、短筒を取り出したからだ。

「いくらあんたらが強くても、こいつには勝てないだろ」

 甲斐の表情は、勝利を確信していた。


 ・・・


 左内は立島を連れ、のんびりと歩いていた。その表情はのほほんとしており、脱力しきった雰囲気だ。堅さは微塵も感じられない。

 しかし、立島は突然立ち止まった。

「中村さん、もういいんじゃないですか? あなたは、私を斬りに来たんですよね?」

 そう言うと、立島は刀の柄に手を伸ばす。彼の目付きは鋭いが、口元には笑みが浮かんでいる。そう、立島は嬉しかったのだ。ようやく、中村左内と立ち合える。

 思えば、この日が来るのを以前より待ち望んでいたのだ。道場の上では、何度やっても勝てなかった。

 だが、真剣ならば話は別だ。必ず勝てる。


 やれやれ、とでも言いたげな様子で振り向く左内。そこには、どこか憐れむような表情が浮かんでいた。

「すっかり刀の魔物に取り憑かれちまったか。本当に、愚かな男だな」

 静かな口調で言うと、左内は刀を抜いた。正眼に構え、じっと向き合う。

「あなたに勝つために、今まで何人も斬りましたよ。あなたを斬れば、ようやく終われます」

 口元に笑みを浮かべ、立島も正眼に構える。すると、左内は切っ先を下ろした。地面すれすれのところまで、刀を下げているのだ。

「何をしているのです? 奇手に走るとは、あなたらしくないですね」

 軽蔑したような声を出す立島。しかし、左内は平然としている。

「お前、池田左馬之介が誰に殺られたか、知っているのか?」

「えっ……」

「知らねえようだから教えてやる。池田はな、女に殺されたんだよ。女の短筒で、いとも簡単に」

 そう言った瞬間、立島の顔が歪む。

「な、何だと!」

「あんだけ人を斬ってきた男が、最後には女の短筒で撃たれて地獄逝き……刀なんざ、しょせんそんなもんだ。女の短筒にも勝てやしねえんだよ」

「黙れ……黙れぇ!」

「虚しい話だよなあ。いくら剣の腕を磨き、人を斬ったところで、何の意味も無かった訳だ――」

「言うなあぁぁ!」

 喚きながら、斬りかかっていく立島。だが、左内も動く。刀の切っ先で土を抉り取り、立島の目の前に振り撒いた――

 土が目に入り、一瞬動きが止まる立島。

 その時、左内は斬りつけた。一撃で胴を切り裂き、返す刀で首の動脈を斬る――

「ひ、卑怯者がぁ……」

 刀を落とし、崩れ落ちる立島。だが倒れながらも、恐ろしい形相で左内を見上げる。

「ふん、俺は仕掛屋だぜ……侍じゃねえんだよ。それに、これは殺し合いだ。だいたい、お前みたいな人斬りの外道に、卑怯なんて言われたくねえなあ」


 ・・・


「さて、あんたらに聞きたい。俺を殺せと依頼したのは誰だ? 早い者勝ちだよ。先に言った方は助けてやる」

 言いながら、二人に銃口を向ける甲斐。

 鉄は顔をしかめた。甲斐が短筒を持っているなど、全く想定外である。若い薬屋、そう聞いていたのだが……。

 顔をしかめながら、鉄は甲斐との距離を目で計る。恐らくは三間(約五・四メートル)程か。この距離では、二人同時にかかっても厳しいだろう。しかも、相手は甲斐だけではない。短刀を構えたお玉もいる。


 これは、さすがにどうしようもないか……。


「さあて、どうする? 早くしないと、二人とも殺しちゅうよ?」

 いかにも楽しそうに、甲斐は喋り続ける。すると、隼人が口を開いた。

「短筒か。そんなもんで、勝った気でいるのかい」

「何だと?」

 甲斐の口元が歪む。だが、隼人は冷静そのものだ。怯えている訳でも、自棄を起こした訳でもない。

「じゃあ、勝負といくか」

 言葉と同時に、隼人の手が動いた――

 直後に隼人が何をしたのか、はっきりと見た者はいない。確かなことは、甲斐の肩に手裏剣が刺さっているという事実だけだ。唖然とした表情で、肩に刺さっている手裏剣を見つめる甲斐。一呼吸おいて、握っていた短筒が落ちる。

 だが、隼人の動きは止まらない。ぱっと地面に伏せると同時に、鎖を投げたのだ。分銅付きの鎖は、甲斐の片足に絡まる。

 隼人はさらに、ぐいと鎖を引っ張る。小柄だが、隼人の腕力は強い。甲斐は抵抗も出来ず、仰向けに倒れた。

 慌てて起き上がろうとする甲斐。だが、既に隼人は間近に迫っていた。甲斐は何の抵抗も出来ず、喉を鎌で切り裂かれる――


 それは、十数える間もない内に起きた出来事だった。お玉は呆然とした様子で、隼人の早業を目の当たりにしていた。

「やあ姉さん、次はあんたの番だ」

 その声に、お玉は我に返る。慌てて動こうとするが、既に遅かった。鉄の強靭な腕が、彼女の細い首に巻きつく。

 お玉の首は、一瞬にしてへし折られていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ