新装:初手
鈴木銀河、22歳、転生しました。
先日買った剣を振っている。この剣は、相当なレア物(?)らしい。 イルカは、この剣を「生死刀」と言っていたが、よくわからないし、「この話はまた今度だ」と言い放った。
「銀河、どうだ?その剣は」
「重いです。 ところで、聖剣徒ってどうやったらなれるんですか?」
「試験を受けるだけだ。 それに合格すれば聖剣徒になれる。」
「試験か。 いつですか?」
「1年後だ。」
「え」
「本来、1年に1回なんだが、つい1週間前に試験が終わったところだ。」
「あ、そうですか。 イルカさんは受けたんですか?」
「ああ。 残念だが不合格だ。私は聖剣徒に向いてないようだ。」
「向いてないとかあるんですか・・・?」
「まあ、それに関してはいつか分かる。 ところで、今お前は何歳だ?」
「22ですけど、なんですか?」
「22か、誕生日は?」
「2か月後くらいです。」
「そうか、試験は、15歳から25歳までしか受けれなく、生涯で5回しか受けれないんだ。」
「てことは、俺は3回・・・か。」
「そうなるな。」
「イルカさんはいくつなんですか?」
「仮にも女にそれを聞くか。 まあいい、20だ。」
「あ、そうなんですか。」
まさかの年下というのはなんか不自然な感じだ。
「私は16から1年おきに受けていて今回で3回目だった。」
「あと2回ですか。 試験ってどんな感じなんですか?」
「すまないが、それは口外禁止なんだ。 じゃなくとも、毎回試験内容が全く違うらしいから、意味無いがな。」
「口外禁止か・・・」
剣を振りながら話を続ける。
試験という響きは正直好きではない。
「ちょっと都まで走ってきていいですか?」
「ん? いいが。」
走り出し、前回通った道を思い出しながら都へ向かう。
「やっぱり辛い・・・ 剣士になる以上鍛えないとなぁ・・・」
おれが着いたのは、前回いった剣屋。
「お邪魔しますっ・・・」
「あれ、銀河君。」
「メントさん、一ついいですか・・・?」
「なんだい?生死刀については話せないよ。」
「えっ」
俺の思惑に反して、そんな言葉が飛んできた。
「残念だったね。イル姉から口止めされてるんだ。」
「そうですか・・・」
「ま、イル姉から聞けるまで我慢するんだな。」
「ところで、メントさんはイルカさんとどういう関係なんですか?」
「ん~、そうだね、すごいざっくり言うとお得意様? ま、昔から付き合いがあるっていうのが一番だね。
イル姉の家族がここによく来ててね、うちの親と仲よくて、俺もその流れでイル姉と仲良くなったんだよ。」
「家族ぐるみってやつですか。」
「ま、そうなるね。」
「イルカさんの家族は、聖剣徒なんですか?」
「いや、違うんだよね。 もともとイル姉の家族は聖剣徒と違う剣家でね、聖剣徒になっちゃいけないっていう決まりがあったんだよね。」
「ってことは、イルカさんは出家でもしたんですか?」
「出家というのは少し違うんだよな。なんて言ったらい・・・」
メントの動きが止まり、視線が合わない。
「メント、そこまでにしておけ。」
「イル姉・・・」
「銀河、帰るぞ。」
「はい・・・」
そのまま走って帰った。
「ところで、メントからどこまで聞いた?」
「イルカさんが剣家の出身で、メントさんと昔から仲がいいってことです。」
「そうか。まあ、本当は生死刀について聞きたかったんだろう?」
「まあ、はい。」
「私の話も含めて、私と同じか先に聖剣徒に合格すれば教えてやろう。」
「遅くないですか?」
「そうか?」
「まあ、いいです。」
そういって剣の練習を始める。
「銀河、私と勝負をしないか?」
「え? 勝てるわけないじゃないですか」
「まあ、大丈夫だ。」
「・・・」
言われるがままに勝負をする。
「勝負は単純だ、私に1発でも剣を当てれれば貴様の勝ちだ。」
「俺はじゃあどうやったら負けるんですか?」
「私が貴様を押さえつけたらだな。」
「はあ。」
「さあ、剣を構えろ。」
そういわれ、剣を構える。
「始めよう。」
その言葉とほぼ同時に、イルカがこちらに向かってきた。
「っ!」
当然ではあるが速い。 身を引くのが精いっぱいだ。
「ほう。」
これでも前は剣道をやっていた。なんとなくの護身は出来てるつもりだが、とても速さが比べ物にならないレベルだ。いなすことすらできない。
「まだまだ、遅いな。」
そのまま重心がおかしくなった俺に向け、イルカが突きの構えを見せた。
避けようにもどうしようもなく、地面に倒れこんだ。
その俺に剣を突き付けた。
「まだやるか?」
「いや、いいです。」
圧巻 というべきだろうか。身のこなしが素早い。
「ああ、そういえばお前の鎧を買っていなかったな。よし、都に行こう。」
「今からですか?」
「ああ。聖剣徒になりたいといってこれくらいで倒れたらまだまだだぞ。」
「はあ・・・」
分かるような分からないような理由で連れ出された。
今度の店は、特に仲がいい様子ではないようで。
「うわっ・・・重い・・・ これ着て動けとかきつ過ぎだろ・・・」
「ははは、兄ちゃん、それで重いなんて言ってたらまだまだだぜ!」
「そうなんですか。」
「おう、それは比較的軽いやつだぞ。 他のも着てみろよ。」
イルカと同じようなことを言うが気前のよさそうな店主だ。
「ん~・・・ 」
結局、普通の鎧にした。今はめっちゃ重く感じるけど大丈夫だろうと思い。
しかし、この後走って帰らされると思うと気が重くなる。
「よし、走って帰るぞ。」
「ですよね。」
期待を裏切らない発言。 この状況じゃ裏切ってほしかったが。
結局半分くらい行ったところでバテて歩いて帰った。
「で、イルカさん、生死刀って何なんですか?」
「ん~、まあ、話してもいいか。」
「あ、結局話すんですね。」
まあ、聞けるなら何でもいい。
取り敢えず早くこの剣を扱えるようになりたいのが第一だ。