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とあるきっかけ

いよいよ物語スタートです。


真由香と、彼女を取り巻くメインキャラ、探偵部メンツが、初めて登場します。


話の軸をつくる人たちです。

一体、どのように登場するかは内緒です。


それでは第1話、幕開けです!







   





 キキィ、というブレーキの音が聞こえ、私は目を覚ました。


車に乗っているうちに、いつのまにやら眠ってしまっていたらしい。


辺りを見回すと、見たことのない景色が、それはそれはイヤと言うほどよく見えた。



「………ここか。」



私は不満丸出しの表情で、目の前にあるコンクリートだかなんかでできている建造物を眺めた。



高校だ。



そう、私は他校からはるばると…正確には、県外のはるか遠くの高校からわざわざ転校してきた。


高校で転校、というのはあまりピンとこないかもしれない。珍しいことだから無理ないけど。


でも、父親の仕事の都合上、それは仕方のなかったことだった。



転校するには受験がいるらしく、私はテストを再度受けた。

結果は、楽々クリア。さほど難しいとは思わなくて、この高校のレベルの低さを感じた。



だが、それは全てが始まる序章に過ぎないのであって、本当の試練は転入後から始まる。



まず、授業。



いくら受験が楽勝だったとはいえ、その学校の授業までは楽勝とは限らない。


しかも。


前の学校でならっていたことと違うことをやっていたとしたら。

その時点で私はギブアップ。こっからは予想だが、問題がとけなかったら恐らく宿題がだされてしまうだろう。


それを泣く泣く解く…


あくまで予想だけれど。


これが見事に的中していたならば、その次の日くらいから私は学校に行かなくなる。不登校になる。絶対いやだ。



そしてもう1つ。



青春真っ盛りの高校生には欠かせない部活だ。


正直な思いを言おう。



私は部活なんてしたくない。



だって、いろいろめんどくさいし。これに限るよ。



嫌な部活を挙げたらきりがない。


野球部のマネージャーになったら。

部員の汗まみれ泥まみれのユニフォームを洗濯したり、縫ったり。

ボール拾いしたり、くそ重いスポーツドリンクを用意するなんてことは目に見えている。

却下。


バレー部に入ったら。

鬼のような練習。ケガをしてもまた立ち上がり、サーブ打ったりレシーブ返したり。

テーピングするのもめんどくさいし、第一痛いかもしれない。

たまったものじゃないわ。


…などなど、いろいろな理由があってやりたくない。私はそんな人間なんで仕方がない。



校門をくぐり、事務室から今度は校長室に案内され…


心の中ではなんにも思っていないから、校長に質問されても、愛想笑いを浮かべて、はい、いいえ、とかの2択の言葉をいうだけでその場をやり過ごした。


それから、担任の先生に会った。見た感じはキレイな女性の先生だ。まず一安心。


だが、教室に向かうことになったとき、また面倒なことを思い出してしまった。


「自己紹介があったんだった…」


そう。転校した先ではもはやセオリーになっている、自己紹介がまだ残っていたんだ。


め ん ど く さ い 。。。


教室の前まで来たとき、その思いは顔にまででてしまっていたらしく、担任に気づかれてしまっていた。


「き、きんちょうしなくても、大丈夫ですからねっ!」


うーん。私、そんな顔してたのかな。


そう考えたと同時に、ある不安が湧いてきた。

なぜかって?


先生の対応からして、"入ったときの大丈夫じゃない感"が半端じゃないから。


どんなクラスなのよ…


私は、最悪、不良ばっかりのクラスと予想して、ため息一つついて引き戸をあけた。




ガラララ…




だが、開けてみればこれといって悪い状況ではなかった。むしろ、ごくごくありふれた光景が広がっていた。



後ろや横を向いてふざけあう男子。


楽しそうに会話をしている女子。


窓の方を向いてぼんやりしている人や、机に寝ている人。



どこの高校にでもありそうな、フツーのクラスだった。


私は黒板の前の段に上がり、先生から軽く紹介を受け、さらに名前を書くことを促された。


内心ため息を深くつきつつ、チョークを拾ってささっと名前を書いた。


「森 真由香といいます よろしくお願いします」


と、できるだけ感情をこめずにものすごく早口で言った。


「そ、それでは、あそこの…ほら、あの、えーっと…」


うわぁ…


先生の方が明らかにテンパっている。


「あ、そうそう、水上君。水上君の、1つ後ろの席。あそこに座ってくださいねっ!」


ようやっとその生徒の名前を名簿を見て思いだし、先生はほっとしたようだ。


この担任、大丈夫なの…?


どうやら、不安要因は先生だったらしい。

でも、とりあえず座る席がわかったので、そこに移動することにした。


ガタ。


生徒がチラチラ私を見てくる。

男子もいるが、大半は女子だ。あまり気にはしてない。同性から見られたって、なんとも思わないし。



キーンコーン、カーンコーン……



「あ、そ、それじゃ、朝のホームルーム、終わりますねっ!」


あ、分かった。この先生、いつもこんな調子なんだろう。

なんだろ。

おもしろそうだけど。


とてつもなく不安な担任に当たっちゃったわ…


どうしようかなぁ~…



「ねえ。」



…ん?



「ねぇってば!」


「何…?」


前を見ると、さっき名簿で名前を当てられた生徒が、馴れ馴れしく話しかけてきた。確か、水上って名前の男子…。


「ね、森さん。どの部活に入るか、決めた?」


高い声だ。だけど、変声期前の男子のキンキンの声ではなく、やわらかい、優しい声だった。


…あ、そうだった。


私、今質問されてたんだった。


「いや、まだ決めてないけど…」


ちょうどいい機会だ。活動の少ない部を聞いてみよう。


「水上君。この学校であまり活動してないような部活って、ある?」


変に思われないか不安だったが、ここはあえて直球どストレートに聞いたほうがいいような気がした。


すると、


「え?あー、た…いや、僕はあまり他の部の活動、知らないから…んー、でも…」


た?


たって、何なの?


そう疑問に思ったけど、彼は知らないと言ったのだから、もうどうでもよくなった。


「そ。わかった。他の人に聞いてみる。じゃあね。」


まだ何か言いたげにそこにいた水上君を放って、私は違う人にあたった。今度は女子だ。


「ろくな活動をしてなさそうな部がひとつ、あるかな。」


その女子は言った。


「ほんと?なんて部?」


やった。情報ゲット。

どういう部でもいいから、とにかく帰ってもバレないようなやつならそれでいいや。


「えっと。探偵部っていうんだけど。」


ん? 

たんていぶ?

どうでもいいけど、英語にするとディテクティブ??


なんだ、それ?


「なんか、部室はあるけど…。活動を見たことないし、もしかしたら、人がいないのかも」


なるほど。


これは、俗にいう、帰宅部系のヤツかもしれない。ラッキーだ。


「ん。分かった。ありがと。」


「どういたしまして!あ、わたし、市原彩っていうの。よろしくね!」


「うん。よろしく。」


こうして、市原さんからの情報で、とりあえず入る部活は決めた。


なんで部に入るのかというと。

この学校では、どの生徒も、必ずどこかの部活に所属していないと成績がガタ落ちするのだという。


部活がイヤな私にとって、それは苦でしかなかった。


恐らく、その探偵部というのはそんな生徒の集まりの、「部」という名だけのものなんだろう。


そうであれば、早速放課後にでも行ってみようかな。

そう考えた。


それが過ちだと気づいていれば、たぶんこんなことにはならなかっただろうに...



6限の授業を終え、私は足早にクラスを出た。


早く部活申請して帰ろっと。


まだ読んでない小説が残ってるんだ。






タッタッタッ……………





おおよそ5、6分かかったが、ようやくそれらしきところにたどり着いた。


『探偵部』という、木の札が教室前にかかっている。

きっと、ここだ。


コンコン……



「失礼しま……………」









…………………うっ………!!







なに、この、陰気くさくてしめった感じは…?






「入部希望者、かね?」



明らかに私の苦手な雰囲気だ。


そしてこの声は、机が6つくっついている、その一番奥から聞こえてきた。

そこには、いかにも「探偵」な感じの帽子をかぶった人がいて、こっちをまじまじと見てそういった。


「まぁ、座りたまえ。」


!!?


なんて上から目線な奴………!


もっと気の利いた言葉があるでしょ!?


「なんだ、入部希望者だろう? どうぞ?」


「失礼します………」


表しはしなかったけど、今の失礼します、のすの後には、(怒)がくっついていた。

内心キレてるけど、まぁ気にしないで。


「ようこそ、我が探偵部へ。僕が部長、2ーAの井中邦人だ。よろしく。………で、君は?」



サラっとした言い方だったが、どこからか、上から目線なとこが気に入らない。


「2-Bの森真由香です…………」


やっぱり表しはしないけど、またもや、すの後には(怒)がくっついていた。

スルーしてくれたら嬉しいかな。


……って、そんなことはどーでもいい。


それより、まずい。

明らかに活動してそうな感じじゃない……


「そうか。森というのか。わかった。で、まぁ、これを見てほしい。部の活動内容だ。」


と、井中(呼び捨てにしておく)が差し出した紙を見た。







活動内容


学校内・外を問わず、依頼を受け、その解決を全力で行う。

尚、他校もしくは敵地へ赴く場合、迅速かつ、支障をきたさないこと。変装も可。


部員:4名              以上






内容を見た後、私は叫びたくなった。


「子供かーっ!」


というか、心の中では絶叫していた。

こいつ、アニメやドラマの見すぎなんじゃないか。

そう思うほど、高校生らしからぬ内容だった。


だから市原さんは、「ろくな」活動をしてないって言ったのか………納得。


「おいおい、井中、それだけじゃわかるわけないだろうが、活動なんて。」


後ろから新たな声がした。


そうだった。確か、他に部員はもう3人…


「俺は才田。才田一哉。2-Dだ。よろしくな。説明は補足するから、ここにサインを………」


げっ。私を逃がさないつもりだ。


イヤだ。


私は、本能的に立ち上がり、鞄をもった。


「も、もういい!」

「え?」


もう、耐えられない!


「私、この部に入らない!どっか、別の部活へ………!」


走って出ようとした、そのとき。



ガラッ。



戸が開き、人が1人現れた。


セミロングでダークブラウンの髪。そして整った顔立ちとスタイルをした女子生徒だった。



その女子の顔をみた私は、ん?と感じた。


なんか、見たことあるような……でも、市原さんじゃない。

私、こんな綺麗な女子と話したっけ?

疑問が湧いてきた、そのとき。


「あーーー!森さん!きてくれたんだね!」


あれ?この声は?


聞いたことがある。しかも、結構最近に……







………………………あっ!



ま、まさか…………


「分からない?水上だよ~。水上優里。ほら、前の席の。」



………えっ?水上ってことは…………




そのまさかだったーーーーーーーーーー!




目の前にいるのは、クラスで一番に話しかけてきた、「男子」だった。

その変貌ぶりはかなりすごかった。名前もなんかそれっぽい女子ネームチックだし。


「み、み、水上く………」


「よしたまえ。水上を君で呼ぶな。」


なぜか静止してきたのは井中。


「水上は、ある深い事情があって、学校側は男子として登校させている。だがな…まぁ、その、なんだ…」



説明できてないじゃない。

というか、多分詳しくはわかってない。知ったかぶりすんな。


「まぁ、半分男で半分女、かな。あまり気にしなくていいよ。この格好はここだけだし、授業の時はちゃんと学生服着るから。」




いやいや、気にするに決まってるじゃない。

そんなワケアリみたいな人。

 



でも…………確かに、男子ではなさそうな感じはした。


話したときの声の高さや、声質、明らかに高校生男子には思えない顔つきはしていた。

なら、女装じゃないのかな?名前からして女子っぽいし、体つきもかなり華奢だし…………


いやいや、学校は男子だと認めているはず…

学校が見抜けないはずはないから、やっぱり男子?




うーん……




そんな感じで考えていると、当の本人が近寄ってきた。近くで見ても、男子には見えなさげだ。


「これからは、優里って呼んでね!」


私は、


「え!?あ、うん…………」


と答えるのが精一杯だった。困惑はピークだった。


「ねぇ、森さん!」


彼…………もとい、彼女は、教室で話しかけてきたときと同じ口調で、


「探偵部、入ってくれるよね!?」


と、聞いてきた。


この話の流れからして…………


断ったら、完全に悪人じゃん…………(泣)





…………仕方ない。






「分かった。入るわ、探偵部。」






「…………………………………」







「……え?」



何か、変なこといったかな…………?

そう思った、直後だった。






「やったぁ~~~~~!ありがとっ!!森さん!」


優里が、ジャンプして私に向かってきた。


「わーーーーっ!?やだ、ちょっとっ!うれしいからって抱くなーー!」


一応、学校上では男女だけど、今、この状況だと、ただの百合だ(哀)。


「これで、決定だな。」


と、井中。

止めないのか。




まぁ、そんなこんなあって。

私は、探偵部に入った。


優里がいるからかもしれないけれど。


「あぁ。これから、5人で頑張って行こう!」


才田くんがそういった。





その、まさにその瞬間だった。


私は思ったことがある。










私は、選択を誤った。





正規ルートから、外れた。





そう、理想だった、楽で平和なスクールライフから、かなり脱線してしまったのだ。







なのに。







私は、なぜだか嬉しかった。


気合いのスイッチが入り、私は初めて、この部で。


部活をやろうという気にはなった。



だが。


「いや~。ありがたい。ほんとにありがたいよ、森さん。」



問題が一つ。



「まぁ、なんだ。この僕にはかなわない凡人だろうけど、よろしく。」


この部長が、とっっっっても上から目線であること。





「……いい加減にしろっ!!」





ドガッ!!!!!




鈍い音が聞こえた。

蹴ったのは、才田くんではない。もちろん、優里

でもない。



私だ。



才田くんが、起こしにかかった。

優里はびっくりしていたが、すぐに笑い出した。



こうして、このドタバタ探偵部に居座ることに、なったのだが。


「あれ?部員って、私をいれて5人だよね?あと1人は?」


「あー、すまないが、言わないでくれたまえ。頼むから、その減らず口をチャックしててくれ」


この部長、どうにかならないのかな。


「いいだろ。俺が言う。」

「才田……!」


井中の静止を振り切り、才田くんが声をあげた。


「森さん。実は、3年生のB組に、今来ていない先輩の部員がいるんだ。名前は…」


才田くんが言おうとしたとき、


「岸部零亜」


と、途中から井中が遮った。


「3-B、岸部零亜。この部のもともとの部長だった先輩だ。今は原因不明の体調不良でずって休みが続いている。公欠にはなっているが一切は不明なのだよ。だから気にするな、森。分かったか?」


何か気にしているのか、語勢が強い。


「なんだ、言うなら最初から言えよ。」

才田くんはそう言った。


私なりに整理してみると、




3年生------岸部零亜


2年生------井中邦人、才田一哉、水上優里、私。


1年生は、ゼロ。



「まぁ、そんなとこさ。人数が少ない分、動きやすいのはいいんだ。でも、次の1年生が入ってこなければ、後継者がいなくなって、いずれはーーーーーーーー」

「言うな。才田。」




井中……?



「廃部など…………考えるな。」

「わりぃ…つい。」



廃部かぁ…



「でもね。森さん。今にも、この部はつぶれそうだったんだよ。知ってた?」

「どう言うこと?」


押し黙ってしまった男子二人に代わって優里が説明してくれた。


この学校は、部員が4人以下の部活は承認しないことになっているらしく、そうなったときには、生徒会から廃部命令がだされるのだという。


生徒会って、そんな権力あったんだ…


と、そう思ったとき、また井中があらわれた。


「とにかくだ。この探偵部に入ったからには、この部を存続させるよう努力してもらわなくてはならんのだよ。」

「どうしてそこまでやるのよ?」




私は、その理由が分からなかった。

何かしら特別な思いはあるんだろうけど。




「………君に言う必要はない。」



くっ!!!!



人がこない原因のひとつはあんたなのよ!!!

絶対に!



……キレても仕方ない。


やめにしよう。


「今は、精一杯がんばらなくちゃね、森さん。」

「優里…………」


確かに。今は、頑張るしかないのかも。


「そういうことだ。分かったな?森。」



…………原因のあんたが言うか。



かくして、私の、とてつもなく変な部活がスタートしたのだった。


どうなることやら、見当もつかない。



依頼なんて、くるんだろうか…………?


井中、才田のキャラはすぐ作れたんですが、問題はかなり複雑な設定のキャラである優里。このキャラだけは時間がかかりました。

何せ、未だに男か女か、はっきりしていませんから。。。


いずれ、それを題材にしたものもやるつもりです。続けばですが。


後、登場してない探偵部は、岸部零亜ただ一人です。


でも、彼女の登場は、また今度になります。

さて、次回からはついに謎解き開始いたします~。


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