繰り返す物語に『白雪姫』の鏡は何を想う?
『白雪姫』という名前は個人に名付けられたものではなく、『雪のようにからだが白く、血のように赤いうつくしいほっぺたをもち、このこくたんのわくのように黒い髪』を持った人間を指すものとしています。
⇒歳をとってそれらを失った人間は、元・白雪姫となる
お城の中
女の子が1人。
女の子はいつも1人。
でも、女の子には全てを写す“鏡”があった。
ーおまえは美しいー
鏡は言う。
ー母様よりも?ー
…なんてね。「私は美しさなんていらないわ。」…小さく呟く。
「そんなこと言うもんじゃないよ。」
君の母様だって美しさがあったからこそ
救われて、愛されて、幸せになったんだよ。
「あれが幸せなの?」
母様の美しさに魅了された父…王にこの国の民。皆は母様の言う事に盲信する。…それがどんなに可笑しなことでも。
「いいや。」
鏡は私を嘲笑うかの様に言葉を切り出す。
「皆の者が盲信している以上、それが正しいものだよ。」
…何故、民は自分の家族を母様に捧げるのかしら?自分の娘が殺されるのを黙ってみてるの。
ー母様は若くて美しい娘の生き血を喰らうー
…何故、父様はそれを黙って見てるのかしら?
ー父様は、母様がより一層美しくなる、と喜んでいらっしゃるー
「…でも、そう。」
ー皆が正しいというなら、それが正しいのかもしれないわねー
「…そんなことは無いよ。」
鏡ははっきりと、悲しそうに否定する。
…?…先程まで鏡が言っていたことなのに。
「おまえまで“皆”に交じる必要は無いよ。確かに、この世界はおまえの母様の…『白雪姫』の物語だ。でも、おまえは主人公の娘…いわば主要人物でありながら物語には関与していない…世界から外された存在。世界で一番自由な存在。」
…?…『白雪姫』の物語…私が主要人物…?
「あぁ、きっとおまえにはわからないだろう。君は物語に関わっていないからね。…わたしはおまえが羨ましいよ。」
ーわたしは物語が続く限り“皆”と同じ考え方を続けなくてはならないからねー
世界の考え方が
『世界で一番美しいのは白雪姫』ならば『真実の鏡』であるわたしはそう答える他無い。
例え、自分が想う“世界で一番美しい”人間とは違っても。
早く、早く、早く、この物語が終わらないだろうか?
さもなくば、きっと“この美しい娘”も皆に浸食されてしまう。『白雪姫』の物語に関わってしまう。『白雪姫』になってしまう。
早く、早く、早く、彼女が『白雪姫』になる前に。
今までと同じ様に…
『物語』は繰り返してしまうのだろうか?
鏡は『白雪姫』となる前の少女に好意を示す。…物語の結末(いずれ魔女となり殺されること)を知っている為、少女には『白雪姫』にならないで欲しいと願ってる。