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拡張するセカイ ♯.1

 この日俺がログインしてくると自分のストレージに見慣れないアイテムが追加されていた。

 そのアイテムの名前は『転生薬』見た目は普通のポーションと同じなのに、中に入っている液体の色がどう考えても妙だ。

 絶えず色を変え続ける薬品を何の警戒もしないまま口にすることなど俺にはできるはずもない。

 転生薬の説明を読もうとしてコンソールを出現させると、俺はすぐにその正体と意味を知った。


「これを使えば好きな種族になることができるってことか」


 数時間前、予定されていたアップデートが終わり、俺は変化したものを確認しようとここに来た。それはもはやアップデートの度にする決まりごとの様なものだったが、まず自分の工房が変わらずにここにあり続けることに安堵したのもそう遠い昔の話ではない。

 俺のステータス欄にはいままで無かった表記が追加されていた。

『人族』

 それは新たに追加された種族という概念のひとつで既存のプレイヤーは一先ず全員がこれに分類されるようになっているらしい。


「確か、獣人族と魔人族、だったか」


 机の上に置かれた転生薬を使うことで種族を変えられるのだろう。

 だからといってもだ。

 今はそれを使う気持ちにはなれなかった。

 春樹に促され俺もあのPVが乗っていた動画を見たが、自分のプレイスタイルに合っているのは人族のままのような気がしていたからだ。

 アーツを重点的に使うプレイヤーには獣人族。

 基本的に魔法を使うプレイヤーなら魔人族。

 そしてどちらでもない平均的なプレイヤーは人族。

 俺はまさしく平均的なプレイヤーなのではないだろうか。

 ≪強化術≫スキルを用い使うのは魔法に属し≪剣術≫スキルにあるのはアーツ。

 どちらかに重きを置いているわけではなく二つが両立されていることこそが俺の戦い方でありプレイスタイルなのだ。


「とりあえず片付けておくか」


 この先も使うこともないだろうといくつものポーションが並ぶ棚の一番奥に押し込んだ。


「ユウ? 来てたの?」


 俺の工房に住み付いた水妖精、リリィが眠そうな目をこすりながら現れた。

 キャンペーンクエスト以降妖精の郷とここを行き来できるようになったはずなのにどういうわけかリリィは常に俺の工房に居ることが多くなり、今では工房の片隅に小さなドールハウスの様な専用の部屋まで置かれていた。もっともこれはリリィだけじゃなくヒカルとセッカにも押し切られて俺が作ったものだが。


「まあな。クロスケは?」

「奥で寝てるよ」


 ダーク・オウルであるクロスケは最近日中は寝てばかり。

 俺が連れてエリアに行ったりすることが減ったことも原因の一つなのだろうが、元々夜行性のフクロウがモチーフのモンスターだ。案外これが普通なのかもしれない。


「そうか。ところでリリィは何か食べるか?」

「え? 作ってくれるの?」

「起きたばっかりならそう重い物じゃないほうがいいだろうし、簡単なスープで良いか」

「やだ。ケーキがいい」

「朝からか?」

「もう昼だよぅ」

「昼に起きたのか、お前は」

「気にしない。気にしない」

「……まったく」


 と、呆れつつも俺はリリィのリクエスト通りにケーキを焼く準備を始めた。

 リリィとクロスケが仲間になって間もない頃、俺はある意味予定通り≪調理≫スキルを習得した。習得するためのクエストは街にいる料理自慢のNPCから料理の基礎を習うだけという簡単なものだったために二時間と掛からずに俺の習得済みスキル一覧に≪調理≫が追加されたのだ。

 そのあとはひたすら反復練習という名目でリリィに菓子作りをせがまれることになったのだが、時間を見つけては普通の料理も練習するようにしていた。

 自分で作った料理を食べて気付いたことだが、プレイヤーが作った料理というものは僅かながらの支援効果が付与出来るものだったらしい。そう解かると俺は携帯できる料理の研究を始めた。おにぎりやサンドイッチに始まり自家製の固形チーズのようなものまで。

 結果としては未だ完成したと胸を張れるまでにはは至ってなかった。

 まず最初の課題として一口で食べられるものという所は料理というよりもお菓子作りの範疇だった。クッキーや一口サイズのカップケーキなど。半ば無理矢理リリィにねだられて作っていたのがこんな風に役立つとは思ってもいなかっただけにこうして今なおリリィにお菓子作りをしているわけだが。


「お、良い感じに焼けてきたな」


 部屋に残された僅かなスペースに置かれたオーブンのなかでスポンジケーキが甘い匂いを漂わせ膨らんできた。

 現実ではここまで上手く焼けないだろうけど、ゲームの中では≪調理≫スキルの熟練度が上がるに連れて失敗することが減ってきたように思う。


「リリィ。今回は何味にするんだ」

「なにがあるの?」

「えーっと、残ってるのはチョコと果実のクリームとスタンダードな生クリームだな」


 我ながら≪鍛冶≫スキルを最初に獲得した生産プレイヤーがストックしているアイテムではないような気がする。

 保存が効くように陶器の容器に入れておいたクリームはどちらもケーキ一個分だけ残っている。

 食材はその名前こそ多少もじってあるものの現実とよく似た姿で露店に売りに出されていて助かった。調理スキルの先輩でもあるマオに聞くという手もあったが最初に自分で少しづつ食べ比べなければならないかもしれないなと辟易した覚えがある。

 なによりここの果実は現実の色と違い過ぎた。

 赤いはずのリンゴが綺麗な青になっていたり、緑色のメロンが鮮やかなピンクになっていたりするのだ。いったい何に気を使っているのかと思いもしたが食べてみると味自体は現実のそれに酷似していて、こう何度も料理していると自然とそれにも慣れてきた自分がいた。

 リリィ用にとテーブルの上に置かれた小さなテーブルとそこにある小さな椅子に座り考え込む素振りを見せてからパッと晴れやかな顔で告げる。


「んー、チョコの方!」

「あいよ」


 チョコと果実のクリームに使われている果物は現実でいえばラズベリーに近い。これも赤色ではなく黄色をしているのだが問題なく使えた。

 甘さと苦さ、そして果実独特の甘酸っぱさが程良いバランスになったお手製のクリームは仲間内で一番評判が良かった代物だ。

 現実の菓子作りとゲーム内での菓子作りの違いはその容易さの違いもあるだろう。

 焼きあがったスポンジにクリームを塗る行為も現実のそれよりもかなり楽にできるようになっている。


「シンプルだけどこれで完成だな」


 新鮮な果物を乗せることなく純白のパウダーシュガーを振りかけて出来あがったケーキには全体に光沢のある茶色いクリームが万遍なく行き渡り、甘く魅力的な香りを周囲に漂わせている。

 片付けておいたナイフで切り分け一人分づつ取り分けて皿に乗せていく。といっても俺とリリィ二人分だけなのだが。


「いっただきまーす」


 リリィはプレイヤーからすると長い槍を構えるようにフォークを持ち、それを器用に使ってケーキを食べていく。

 一口分にしては随分と大きく取り分けたケーキをおもいっきり頬を膨らませながら食べる可愛らしい様子を見ながら、残ったケーキをどうするか考えていた。


「どうせこれもすぐに無くなるんだろうけどな」


 半分以上残されているケーキが乗せられた皿を見ながら呟く。

 ここにいるのは俺とリリィとクロスケだけだが、ここに訪れるのはもう二人いる。

 その二人もリリィ同様にここに来る度、俺になにかしらの菓子をねだることが決まり事のようになってしまっているのだから困ったものだ。


「こんにちはー」

「……こんにちは」


 勢い良く工房のドアが開かれ、見覚えのある……?


「セッカとヒカル……だよな?」


 セッカはいつも通りなのにヒカルは目深に被ったフードと若干デザインが変更された装備に身を包んでいるせいなのか、どこか違う雰囲気があった。

 フードから覗く顔も髪型も新しくなった装備を着ている小さな体も同じなのだけど、何かが違う。

 戸惑いの思案顔を浮かべる俺にヒカルはあっけらかんとした声でいった。


「そうですよ。当たり前じゃないですか」

「だよな」


 頷きながらもやはり何かが違うとヒカルの顔をじっと見つめた。

 まるで間違い探しのように記憶の中にあるヒカルといま目の前にいるヒカルを比べる度に、何かが違うと感じてやまないのだ。


「はぁ……私も驚いた」


 さも当然と自然な感じで近くの椅子に座り、自分用にとケーキを切り分けているセッカが呟いた。


「でもセッカちゃんは私だってわかってくれたもんね」

「あ、いや、ヒカルだってことは解かるんだけど」

「けどなんですか?」


 セッカの隣、俺のちょうど正面にある椅子に座りニヤニヤとした笑みを向けてくる。


「飲み物は?」


 ケーキを乗せた皿の隣に空のカップを置き訊ねてきた。


「そこにあるものを好きに使ってくれ」


 指差す先には買い揃えてある茶葉とコーヒー豆が置かれた棚。

 食べ物の調理と違い飲み物を淹れることは≪調理≫スキルの有無に関係なくできることの一つだった。勿論、現実のように初めて淹れたものと何度も淹れたことのある人が淹れたものとでは雲泥の差が出てくるが、セッカにおいてはその心配はないだろう。

 俺の工房に来るようになって間もないころからセッカは自らお茶やコーヒーを淹れるようになっていた。そのお陰もあって今ではスキルを持つ俺よりも上手く淹れることができるようになっているのだから。


「それ、取らないのか?」


 ヒカルのフードを指差して尋ねた。

 外でフードを被ることは何も珍しいことではない。だが、屋内に入ってまで被り続けるのは特別な理由がなければあまりないことだろう。

 俺の問いにヒカルは含み笑いで返してきた。

 無いが言いたいのか解からないという顔をして俺は自分の前に置かれたカップを持ち中に注がれた紅茶を一口飲んだ。


「そろそろ言ったら?」


 全員分の紅茶を注ぎ終えたセッカが再び椅子に座り相も変わらずニヤニヤと笑うヒカルを注意する。

 ニヤけるヒカルと困り顔を見せるセッカの顔を交互に見比べ、俺は椅子の背もたれに深く体を預けた。


「へっへっへっ」

「……なんだよ」

「じゃーん!」


 勢い良く立ち上がり、目深く被っていたフードを大袈裟に外してみせた。


「へえ、それが魔人族か」


 今までのヒカルとの違いは僅かだが、確かにそこにあった。

 尖った耳。

 これまでとは違うのがその一点だけとはいえ種族が違うというのはここまで大きな違いを生み出してしまうのかと感嘆してしまうほどだ。


「ん? なんかヒカル変わった?」


 俺が最初に取り分けていたケーキを食べ終えたリリィがフードを取ったヒカルを見て首を傾げる。


「そうだよー。リリィちゃんと一緒になったんだから」


 と、嬉しそうに告げるヒカルだが、リリィは些か不明慮だと言わんばかりの顔をしている。


「わたしは妖精だよ? それってエルフなんじゃないの?」

「え? 同じじゃないの?」

「違うぞ。一般的にエルフは森に住む人間サイズの妖精で、リリィはフェアリーっていう小型の妖精の一種だ。あってるか?」

「うん。そーだよ」

「小型の妖精にはピクシーってのもいるらしいけど」


 俺の記憶に付け加えたのはセッカだった。

 どうやらヒカルよりセッカの方が神話やお伽噺に造詣が深いらしい。


「わたしはあんな悪戯者じゃないやい」

「まあ、大飯喰らいではあるがな」


 そう言いながら俺は空になったリリィの皿にもう一切れ取り分けたケーキを乗せた。


「食べるだろ?」

「もっちろん」


 一瞬ムッとした顔を見せたリリィだが新たに盛られたケーキを見てぱあっと笑顔になった。


「魔人族、か。実際のとこどうなんだ?」

「なにが?」

「種族が変わってるってことはパラメータも新しくなってるんだろ」

「なってますよ」

「教えてくれないか? 何がどう変わっているのかを」


 ヒカルが自身のパラメータを確認しながら語り始めた。

 まず人族との違いはあの動画の通りだった。MPとINT、MINDが高くHP、ATK、DEFが低くいが、SPEEDなど他のパラメータは変わらないようだ。

 このパラメータの変化では魔法使いの方が魔人族にはあっているのは疑いようがない。

 それだけに近接攻撃をメインに戦うヒカルが選ぶ種族ではなかった。

 俺がそれを指摘するとヒカルは、


「リリィちゃんと同じがよかったんです」


 と、いって笑った。

 細かく言うのならエルフとフェアリーで違うのだろうが、大きく人とそれ以外という括りで分ければリリィと同じということになる、のか?

 どちらにしても満足しているのなら俺が口を出すことではないのだろうけど、やはり近接攻撃職ならばHPやDEFが低いことは大きなマイナスになりかねない。

 リーチの短い短剣を使う以上攻撃を受けてしまう危険性は後衛職よりも大きいのだから。

 パラメータの変化は事前情報通りだった為に気になってくるのは他のこと。


「他には何か変化はあったのか?」

「今のところ何もないですよ」

「そっか」


 嘘をつく必要などないのだから実際に現時点ではそれ以上の変化は無いと考えて間違いないはずだ。ならば、より大きな違いが出てくるとすればこれから先、レベルが上がった時や新たなスキルを獲得した時になるのだろうか。


「セッカは種族を変えないのか?」

「……変えない」

「ユウこそ変えるつもりはないんですか?」

「俺か? 俺は変えるつもりなんてないよ」


 俺は自分のスキルや武器、プレイスタイルについて話しだした。

 種族の中で人族が一番適していると判断したこと。

 そして、情報の少ない状況で他の種族に変えるつもりもないことを。


「えー、そうなんですか」


 大袈裟なリアクションをみせるヒカルに思わず苦笑いしてしまう。

 話ながら器用に食べたらしい空になった皿にもう一つケーキを取り分け変わらぬスピードで食べ始めた。


「街の様子はどうなんだ?」

「凄いですよ。いろんな種族になったプレイヤーたちで溢れてるんです」

「と言っても中央大陸だけしか見てきてないけど」

「へえ、それは見てみたいな」


 俺の知るウィザースターや王都に様々な姿をしたプレイヤーがいることを想像した。

 これまでも装備や最初に設定した姿形だけで千差万別のキャラクターがいたのに、今はそれ以上に多種多様なキャラクターがいるのだろう。

 今直ぐにでもそれを見に行きたいという気持ちが自然と湧きあがってくる。


「ヒカルは魔人族になったんだから、もう一つの大陸にも行けるようになったんだよな。行ってみたのか」

「それをいうならセッカちゃんやユウだって人族の住む大陸に行けるはずですよ。二人こそ行ってみたりしないんですか」

「俺はほら、工房がここにあるし」

「私もあまり興味無い」


 素っ気なく答えるセッカが最後の一切れを取り俺が作ったケーキは綺麗に無くなった。

 俺以外の三人がそれぞれ二つづつ食べたってことはもう一つ残っているはずなのにと横目で確認するといつの間にかクロスケがケーキを一切れ平らげているではないか。俺が取り分けた記憶はないから誰かが与えたのだろう。そしてそんなことをする人物はここに一人しかいない。

 心当たりに視線だけで問い掛けると、件の人物は僅かに微笑んで見せた。俺の予想通りセッカが皿を用意してクロスケにケーキを取り分けたらしい。

 一通り腹ごしらえを終えた俺とセッカにヒカルが問い掛けてきた。


「それで、今日は何をするのさ?」


 三人でパーティを組んでからというもの、その日何をしたいかはしたいことがある人に合わせるようになっていたためにこうして冒険に出る前に相談することが通例となっていた。


「素材は足りてるし、俺は特別したいことはないかな」


 様変わりしただろう街並みを見ていたいという気持ちはあったが、どこかエリアに出ることになるのなら確実に町に出ることになる。自ずと自分の目で見る機会もあるはずだ。


「私も同じ。特に無いよ」


 淡々とセッカが言った。

 これまでもセッカが自分から何かしたいことがあると言い出すことは稀だった。いつもは俺が欲しい素材があるといってエリアに行くことになったり、ヒカルが行ってみたい場所があるというとそれに付き合ったりするばかりで、誰も何も無い時はこうして俺の工房でひたすら喋りつづけているだけという時だって決して珍しいことではなかった。

 今日もまた喋り続けるだけになるかもしれないなと工房の中で出来ることを探している俺の前でヒカルが勢いを付けて立ち上がった。


「ど、どうした?」

「私やりたいことがあるんですっ」

「何でも言ってくれていいぞ。なあ?」

「どーんとこーい」


 妙な言い回しだがセッカも嫌と言うつもりはないらしい。


「最初に訊いておきたいんだけどさ。二人はこれで満足なの?」


 と、ヒカルが工房の中を見回しながら訊いてきた。


「満足なのって、ここは俺の工房なんだぞ」

「別に問題ない……よ?」

「問題大有りだよ、セッカちゃん!」


 質問の意味が解からずに聞き返す俺たちにヒカルはセッカの肩を掴みながら言い放った。


「よーく見てみて、ここすっごく狭いでしょ」


 今度はセッカの顔を掴みゆっくりと周囲を見るように動かした。


「鍛冶用の炉に調薬用の道具、調理用の小型のキッチンに作業台。それに素材が置かれた棚の数々。どう考えてもこれはキャパオーバーだよ」


 全て俺の生産スキルに関係する道具であり、装備の強化やポーションの製作に必要な素材アイテムたちだ。元々俺の使う工房としての役割しかない建物だった為にこれでいいと思い、これに慣れてしまっていたが、改めて考えると少しばかり手狭になってきた感はある。


「だからさ、もっと広いとこに行かない?」

「……引っ越すの?」


 工房の持ち主である俺に二人の視線が注がれる。


「引っ越すつもりはないぞ。それに、広くしたいだけなら増設すればいいんだ。かなり金は掛かるけどな」


 そのままにしていた理由はこれに尽きる。

 完成品のアイテムを買うことは少ないが反対に売りに出すこともない。偶に余程余った素材を売ることだけで基本的に所持金はごく僅かなのが困ったことに俺の現状だった。

 それに増して最近は食材アイテムを仕入れたりすることが増えたために工房の増設など夢のまた夢となってしまっている。


「ユウにお金がないことなんて分かってますよ」


 などと言われても反論する言葉を持たないほどに。


「私達もそんなにないよ」


 そもそも工房を買う時は持ち得る殆どのアイテムを売り、手に入れた金額の殆どを消費してしまっていた。目的もなくお金を貯めておく性分でもない限り一般的なプレイヤーがお金を余らせているなんてことは現状あまりないことだと言える。

 これから先、いつかは使う以上の金額を手に入れることになるかもしれないものの、それはあくまで先の話。現状は必要な時に必要な分だけ稼ぐということを繰り返すしかないのだ。


「それも分かってるって」


 笑顔で言い切るヒカルに、俺とセッカは顔を見合わせた。


「だからギルドを作りましょう」

「ギルド? 俺たちがか?」

「そうです。ユウたちもあの動画見たんですよね」

「そら、まあ、一応」


 嘘だ。

 二度三度と繰り返して見た。特に途中で映るPVの部分はそれこそ覚えるほどに。


「ああ、だからか」

「そうです。ギルドにはギルドホームが与えられるって言ってたじゃないですか。私達の目的はそれです」


 グッと拳を握り言い切るヒカルはもはや何を言っても無駄だろう。

 一度椅子に座るように促して俺たちは話を続けることにした。



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