理想の小妖精 ♯.3
探し物がある。
思いきって打ち明けた俺の望みに返ってきたのはヒカルの真摯な視線。自分の武器を直してくれたのだから全力で探し物を手伝おうという意思がひしひしと伝わってくる。
「ユウの探し物ってなんなんです?」
「まずはこれを見てくれ」
左手に付けられたアクセサリを見せる。
「実はこれにあう石を探しているんだ」
左手の人差し指には自分が作ったグリンリングが。中指にはマオから貰った空白の指輪。そして左腕には怪しい露天商のプレイヤーから貰った無銘の腕輪。
この二つのアクセサリには本来付けられているはずの物がない。
「ということはユウが探しているのは宝石なんですか?」
「いや、違う」
宝石ならよほど高いものでもない限り自分で用意することができる。鉱石を採掘していた際にも研磨して原石を宝石にしたことだってあるのだ。貴重なものだとは思うがわざわざ探しまわる程でもない。
「見てもらった方が早いかもな。ヒカルは魔石って知っているか?」
「一応、名前くらいは。見たことはないですけど」
ヒカルが魔石を知っていても見たことがないというのは現状そう珍しいわけではない。何故なら魔石は現在のゲーム内ではかなりのレアアイテムに分類されているからだ。
その使用方法はたった一つ。装備に付与するだけでいい。そうするだけで防御力や攻撃力が一定値上昇することも特殊効果が追加されることもある。
アクセサリには装備上限があり、防具には装備箇所という装備限界がある。さらには専用武器の強化状態は全て個人の努力の成果。レベルが上がれば上がるごとに次の強化までの道のりは遠くなり、直接的な強化ができなくなってしまう。
その憂いを解決させるアイテムが魔石だった。
魔石の効果付与はそれぞれのアイテムにつき一つづつ可能。重さが1のアクセサリならば最大で十個魔石の効果付与が行えるということだ。それに各種防具、専用武器を加えれば最大十九種類の効果付与ができるとなれば高レベルの攻略重視のプレイヤーでなくとも無視できなくなるだろう。
流通数が増えていけば問題ないのだが、それまで待つつもりはない。
せめてこの二つのアクセサリに使う分くらいは確保したいものだ。
「まさかっ、魔石を探すつもりなんですか」
「ああ。そのつもりだけど」
流通数が少ない理由は明確、その獲得方法が確立していないからだ。
様々な憶測がされ、実際に手に入れたプレイヤーも少なからずいるということは知っているが、同じ性能の魔石を安定して手に入れられるという話は聞いたことがない。
自分の欲している効果を手に入れるには運が必要ということだ。
「あの……こう言ってはなんですけど、無理だと思いますよ」
「……そうか?」
「そうですよ。だって見たこともないのに――」
暗い顔を見せるヒカルに俺はコンソールを操作してストレージからアイテムを一つ取り出した。
「これを見てもそう言えるかな」
手のひらに収まる紫色の小さな宝石。
宝石の中心が水面のようにゆらりと揺らめいた。
「ええぇ」
「『鳥獣の魔石』草原エリアにいるラッシュバードっていうモンスターを狩っていた時に偶然手に入れたものだよ」
ラッシュバードというのは草原エリアに生息する雑魚モンスターの一種。その羽は糸へと精製することができ布製の防具の生産には欠かせないものとなっていた。
俺がその羽を集めていた理由はリタに防具の強化をお願いしたから。料金をまける代わりにとかなりの数を要求されたのだった。
スローター系のクエストかと見紛うくらいの数を狩っているうちにいつの間にかドロップしていたのだ。
「偶然手に入れたのはいいけど、俺には使えない類いの魔石だったんだよ」
「使えない?」
「この魔石の付与効果は詠唱時間短縮。まあ魔法使い向けの魔石だな」
「なるほど」
「前もって言っておくけど、それほど寄り好みするつもりはないんだ。自分に使えるものならそれで」
欲をかけば攻撃力上昇や防御力上昇などの直接パラメータに関係するものがいい。
「そのアクセサリ三つ全部分の魔石が必要なんですか?」
「んー、できれば全部につけられる分が欲しいけど、まずはこの二つかな。この二つは完成させたものを見せるって約束もあるし」
怪しい露天商プレイヤーはいつ会えるかわからないけれど、マオはいつでも会うことができる。マオはこの町でアクセサリショップを営んでいるのだから。
「それ全部自分で作ったんですか?」
「いや。俺が作ったのはこの緑色の指輪だけで他は貰ったものなんだ」
「やっぱり自分でも作るんですね」
「その為にスキルもとったからな。最近作ったので言えば……こんなところか」
棚にある箱から一つ指輪を取り出しそれをヒカルに渡す。
「誰かへのプレゼントですか?」
「いや。違うけど」
「でも、これ明らかに女性用ですよね。なんていうか大きさ的に?」
「まあ俺が付けるなら小指になるだろうな」
違うとはいったものの、実際これは自分用に作ったものではなかった。
ライラとフーカに作ってあげると約束したこともあり、いつ彼女たちが素材を持って来てもいいように、女性向けのデザインを模索していたということ。
「欲しいなら別に作ってあげるけど?」
「ふぇ、いいです。貰うなんて出来ません」
「そうか? まあ無理に押し付けるのもよくないからな」
少しだけ残念に思いながら指輪を箱に戻さずにストレージに入れた。
久々取り出して見たらその出来の粗さが目立って感じる。時間が空いた時にでも作り直してみよう。
「なにがともあれ、ヒカルには魔石探しを手伝って貰いたいんだけど……いいか?」
「何でも手伝うといったのは私ですからそれはいいんですけど、何を手伝えばいいんですか?」
「まずは情報収集から――と言いたいところだけど、実はちょっとだけ当てがあるんだ」
「当て、ですか?」
「噂だけど、王都にはこの町には無かった魔石を売っている店があるらしいんだ。まずはそこに行ってみようと思う」
問題なのはそこはNPCショップではないということ。
いち早く王都にできたプレイヤーショップは驚くことに魔石を取り扱っている雑貨屋のようなものという噂であり、その価格が本来の適正価格をまるで無視したものだという話だった。
「あの……でも……」
どうやらヒカルもそのプレイヤーショップの噂を耳にしたことがあるらしい。
「不安に思うのも分かるけど、実際に自分の目で見てみないとな。俺と一緒に噂の真偽のほどを確かめようじゃないか」
魔石を棚に置き、使った機材を片付けていく。
ここですべきことはもうない。だとすれば前に進むだけだ。
「行こう。まだ時間はあるのだろう?」
「えっと、はい。もう少しなら大丈夫です」
今の時間は午後十時。寝るにはまだ早い時間だともいえる。
工房を離れウィザースターにある転送ポータルを使い王都へと向かう。王都にある建物の外観はどれも似た感じでプレイヤーショップとNPCショップを見分けるのはその看板に書かれた文字だけ。
マップを頼りに行こうとしてもプレイヤーショップは余程大きな店を構えない限り名前が載ることはない。その為に自分の足で探しだす必要があるのだ。
「噂じゃこの辺りのはずなんだけど」
それらしい看板の建物が並ぶ通りでキョロキョロと辺りを見渡し目的の店を探す。
「あれじゃないですか?」
俺より先にその店を見つけたらしいヒカルが指差したのは看板が黒く塗りつぶされたプレイヤーショップ。文字を読み取ることのできないが王都にあるプレイヤーショップはまだ少ない。わざわざ自分の店の看板を隠す理由などないのだから、そこが自分たちの探し求めていた店だという可能性が高いということになる。
「行ってみるか」
違っていれば直ぐに引き返せばいい。
評判の悪いプレイヤーショップというのも見てみたいという変な好奇心が湧いてくるのを抑えきれない。
「うわぁ……」
ドアを開けて店内に足を踏み入れたその瞬間、隣に立つヒカルが複雑な表情をして微妙な声を漏らしていた。
NPCショップではないのは直ぐに解かった。NPCショップなら来客と同時に店主が声をかけてくるはずだ。それがどのようなものだとしても。
「誰かいるのか?」
ヒカルの抱いた感想は俺も概ね同じだった。
珍しいアイテムとどこにでもあるようなありふれたアイテムが乱雑に置かれたこの店の棚は自分の店の商品をあまり大切に思っていないように見える。
プレイヤーショップでも生産職が開いている店ではないということか。
二度三度と呼び続けても店主が現れる気配すらない。
どうしたものかと考えていた矢先、ヒカルが棚のアイテムに触ろうとしているのが見えた。
「触っちゃダメヨー」
「へ、なに?」
「買う気がないのなら触らないでホシイのヨー。価値が下がっちゃうネー」
「ご、ごめんなさい」
独特なしゃべり方をする店主が姿を現した。
「解ればいいのヨー」
怪しいプレイヤーショップには怪しいプレイヤーが付きものなのだろうかともう一人、俺の知る胡散臭いプレイヤーの顔を思い出していた。
わざわざあのしゃべり方をロールしているというのならば、筋金入りの変人かもしれないな。
「アンタがここの店主か?」
「そうダヨー。ナニか欲しいものがあるのかヨー」
「魔石を探しているんだ。この店には売っているか?」
まるで一昔前の駄菓子屋を思い出させる軒先に置かれた座布団に座り、ニヤリと表情を歪ませる。
「そこにあるヨー」
手が見えないほど長い袖を振りながら示したのは乱雑に棚に置かれている箱の一つ。これは小物入れというよりいは宝石箱のようだ。
店主に言われるがまま宝石箱を開けるとそこには二十個近い魔石が収められていた。
「うそ、なんで、こんなに……」
ヒカルが驚くのも無理はない。
俺だって自分の目で見ていても信じられないという思いが津波のように押し寄せてくるのだから。
「本物なの?」
「当たり前だヨー。ニセモノ良くないからネー」
「手にとって見てもいいか?」
「どうしようかナー。それ高いのヨー。壊されちゃ困るんだヨー」
「解かってる。壊した場合は買い取らせて貰う」
「でも高いヨー。お金あるのかヨー」
コンソールに所持金を表示させてそれを店主に見せた。
「仕方ないネー。見るだけだヨー。壊さないでヨー」
解かってると小さく頷き、宝石箱から魔石を一つ取り出して確認してみる。
色や形は俺の持つ魔石と同じ。魔石というのは全て同じ形をしているのかもしれないがそれを確かめようとしてもサンプルが少な過ぎる。
あと確かめることといえば性能。
「どうです? 探していたものはここありますか?」
ヒカルの問い掛けに俺は答えを詰まらせた。
さて、どうしたものか。
確かめてみたのは一つだけだが、どうやらこれらの魔石は本物だと思って間違いないだろう。けど、これらの性能は低すぎる。
寄り好みするつもりはないと言っていてもそこはやはりより性能の高いものが欲しいと考えてしまうのは人の常。妥協するとしてももう少しいいもので妥協したい。
「どうするんだヨー。買うのか買わないのか、どっちなんだヨー」
魔石を箱に戻し、そっと箱の蓋を閉じる。
「この魔石をどうやって手に入れたのか聞いてもいいか?」
「ダメだヨー。それは秘密なんだヨー」
だろうな。俺が店主でもレアアイテムの入手方法は簡単にばらすことはしないだろう。その情報だけでひと財産を築けるだろうが、同時に魔石の価値を大きく下げる結果に繋がりかねないからだ。
「そうか。悪いな、ここに俺の探してる類の魔石は無かったようだ」
「わかったヨー。他にはなにかあるカナー」
「いや。今は何もない」
俺がそういうと店主は黙り込んでしまった。
もしかして冷やかしだと思われてしまったかもしれないな。
「そろそろ出ようか?」
「いいんですか?」
「ああ。残念だけど別の方法を探すことにするよ」
箱を棚に戻し、俺はプレイヤーショップから出ることを決めた。
「また来るといいヨー」
店主が感情の籠っていない声で俺たちを見送った。
怪しい店主のいるプレイヤーショップから出た俺たちは少しだけ歩いて人気の少ない場所に出た。
俺が建物の横に置かれた木箱に腰を下ろし、ヒカルがその隣の樽に背を預けている。
「どうして買わなかったんですか?」
「気になるか?」
「はい。だってあれだけの魔石があったなら一つくらいは探してたのありそうじゃないですか」
ヒカルのいいたいことは尤も。
自分たちで探す数個の魔石よりも、宝石箱にあった数十個の魔石のほうが探している物が見つかる可能性は高い。
寄り好みしないと言っていたのにとヒカルが思ってしまうのも無理なないことだ。
「確かに無いわけじゃなかなったんだけどな。正直、性能と価格が釣り合っていなかったんだ」
「高かったのですか?」
「違う違う、その反対。安かったんだよ。びっくりするくらいに」
「安かったのならいいじゃないですか?」
「適正価格と離れていれば疑ってかかるのは当然だろ。それも、高いのならまだしも安いんだ。警戒しておいて損はないさ」
本当のところさっきのプレイヤーショップで買ってしまえばよかったと思わなくもない。
これ以上ヒカルを付き合わせるのも悪いし、自分の懸念さえ無視すればいい買い物になったかもしれないとさえ思う。
けれど自分の中の何かが俺に購入を押し止めさせた。
「これで手掛りがなくなったわけだけど」
「はい?」
「俺的には十分手伝って貰えたと思っているんだけど、どうする?」
これ以上は手掛りを探すことから始めなければならなくなる。短剣の修理の代金代わりというのならこれ以上の時間を俺が使わせることは過剰な請求のような気がしてきた。
「でも魔石はまだ見つかっていませんよね?」
「まあな。けどこれ以上は無理強いするつもりはないんだ」
「最後まで付き合いますよ。途中で投げ出すのは私も嫌ですから」
どうやら俺に気を使って言っているわけではなさそうだ。
それならばここで無理に帰すのも悪いか。
「わかった。でも、今日はこれくらいにしておこうか。そろそろ十二時になりそうだ」
「あ、そうですね。解りました。今日はこれで――」
「ちょっと待って」
自分からここまでにしようと言い出したにもかかわらず、コンソールを操作してログアウトしようとするヒカルを呼び止めた。
「とりあえず俺とパーティを組んでおこう」
「パーティですか?」
「ああ。これから一緒に行動することになるのならパーティを組んでいたほうがなにかと便利だからな」
「でしたらついでにフレンド登録もしませんか?」
「ああ。解かった」
パーティの申請に続きフレンド登録の申請も送る。
俺の視界の左上にあるHPバーの下にヒカルのHPバーが追加され、その後にフレンド一覧にヒカルの名前も追加された。
「それじゃ私はこれで――」
「ああ。なにかあったらメッセージを送るから」
「はい。私も何か見つけたら知らせしますね」
ログアウトしていくヒカルを見送り、俺は自分の工房へと戻ろうとする足を止める。何かあれば知らせるといった以上、俺が何もしないままでいるのは許されないだろう。かといってだらだらし続けるのもよくない。あと一時間だけと自分に言い聞かせて、ウィザースターを探索し始める。
(とはいってもこの町は殆ど探した後なんだよなぁ)
何も無かったから怪しい噂にまで手を出したのだ。今更探し直した所で新たな発見があるとは思えない。
(だとすればやっぱり王都に行くべきか?)
まだ探しきれていないのは王都の方だろう。
他にも小さなコミュニティが形成されている小さな町や村ならエリアを抜ければ行けるけれど、そこはこの際、除外してもいいだろう。王都でも何も発見できなかった場合には行くことになるかもしれないと考えながらも俺は転送ポータルを使い王都へと行ことにした。
淡い光に包まれながら転送を終えた俺の目に驚くべき光景が広がる。
現実の時間とゲーム内の時間は違う。そう知っていたが町にいる限りそこまで気にすることはなかった。夜と昼では行き交うNPCが違うことと、電灯代わりのランタンに火が灯されてるということ。
消えない炎によって照らされる町はどこか暖かい雰囲気を持っていて、わざわざ夜を狙ったように町へと来るプレイヤーもいるほどだとか。
ウィザースターでもそうなのだから王都でもそうなのだろうと思っていた俺の予想を裏切り、王都では電気の無機質な明かりが灯されている。
(こっちの方が見慣れているはずなのにな)
現実でランタンを灯している町などありはしない。だから電気の明かりの方が当たり前のはずなのだが、何故か違和感が拭いきれない。
それに王都を行き交うNPCの雰囲気も違う。
仕事終わりの衛兵や武器を提げた男達。活気はどこの町よりもあるのだがその反面、あまり治安がいいというわけでもなさそうだ。
プレイヤーの数が少ないだけかとも思ったがどうやらそういうわけではないらしい。
夜の王都を好んで集まってくるプレイヤーはガタイのいい男とどこかガラの悪い女性ばかり。そういう風にロールしているのか地がそうなのかは知らないがあまりお近づきになりたいとは思わせてくれない人ばかりだった。
(RPGでは情報収集の定石は酒場なんだけどなぁ)
昼の酒場が大衆食堂と情報交換の場だとすれば、夜の酒場は酔っ払いの楽園。全年齢対象のゲームにあるお酒で酔えるわけなどあるはずもないのだから、彼らはその場の雰囲気で酔っているということになるのだが、まともに話を聞いてもらえるような感じではない。
酒場を後に回すことにして、俺は王都の他の店を見て回ることにした。
昼間ヒカルと回ったのは二軒の鍛冶屋だけ。他にも行っていない店はたくさんある。
さまざまなアイテムが売っているNPCショップとか。
閉まってる。
アクセサリ等が売っている雑貨屋とかも。
閉まっている。
生産職でなければ使い道のない素材アイテムを取り扱っている店なら。
close
「なんでだよっ」
プレイヤーが実際に遊んでいる時間はバラバラのために、基本的にNPCショップは二十四時間営業。いつ来ても買い物ができるようになっているはずだ。
閉店があるのはプレイヤーショップだけだとばかり思っていた。
結局王都でやっていたのは酒場だけ。
あの中に行く勇気はまだ持てないので諦めてウィザースターへと帰ることにした。
「はぁあああ」
当初決めた一時間という制限時間まではまだ三十分以上あるのだが、王都の惨状に疲れてしまった。自分の工房へ戻って来てそのまま作業机の前にある椅子に腰掛け、力無く机に突っ伏した。
完全な無駄足だった。
朝になればまた違うのかもしれないが、それを待つ気力はもはや残っていない。
ヒカルに知らせられそうなことは何も無かったと落ち込みながらもコンソールを開き、公式のアナウンスをぺらぺらとめくり始めた。
目的はあれど集中力など皆無。何も頭に入ることないまま教科書を捲っている気分だ。
「どうしよう」
内容を知ら見するだけで読みこまないままページを進めていくと不意にメッセージの着信を知らせるアイコンが浮かび上がる。
これもページを捲る感覚のまま何気ない気持ちで開く。
どうせ何かのメルマガかなにかだと思い大して期待などしてなかったのだが、そこにあった画像に思わず姿勢を正した。
もう一度真剣に読もうとしたその瞬間、二通目のメッセージが届く。
送り主はヒカル。
内容は先程俺の元に送られてきたメルマガに関してだった。
どうやらヒカルの元にも同じ物が届けられたらしい。
メルマガの内容は明日、キャンペーンクエストを開始するという告知。前回のイベントとは違い事前に告知がされなかったのには意味があるのだろうかと気になったりもしたが、それよりも俺の目を引いたのは報酬の一つとして公開されているなかに魔石のような宝石が含まれていたこと。
実物を見てみない限りその性能などは解からないのだけど、これがこのタイミングで来たのはもはや天啓のような気さえしてくる。
ヒカルにキャンペーンクエストの開始時刻でもある明日の朝十時に俺の工房まで来れるかとメッセージで訊ねてみると直ぐに返信が来た。
答えはもちろんですという一文。それに俺はまた明日とだけ返す。
後は実際に明日のキャンペーンクエストを始めてみなければ分からないことだ。
眠気を残さないようにとログアウトしてそのまま眠りについた。




