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極大迷宮篇 Ep.25『めいきゅうのでぐち』


 消滅したホロウクロコダイルを見届けて剣銃(ガンブレイズ)をホルダーに戻す俺と同じように細剣を鞘に納めたイナミナがほっと胸を撫で下ろして微かな笑みを浮かべた。


「これでどこかに中断ポイントが現れてくれるはず」


 でなければ出現するのは次の階層に続く階段だろうか。

 もとより今日はこれ以上進むつもりはなく極大迷宮(ダンジョン)から脱出しようと考えていた立場から言わせてもらうならば、せっかくボスモンスターらしきホロウクロコダイルを倒したとはいえど、出現するのは中断ポイントに該当する極大迷宮(ダンジョン)の脱出口であってほしい。

 もし仮にここで出てくるのが次の階層に進むための階段だったとしても、目的に沿って行動するつもりならばそれを無視して再度この階層の探索をすることになってしまうのだ。

 しばらくこの場で待っていても部屋の中に突然扉が現れるなんてことにはならず、またモンスターの襲撃も起こらない平穏で静寂に包まれた時間が流れていた。

 これでは駄目だと再度探索を考え始めた頃、壁際の一角に変化が起こった。

 何かが起きたということはわかるが、戦闘が終わってから部屋が薄暗くなり始め視界が悪くなっていることと、自分たちが立っている場所からは存外に離れた距離で起きたことだったために目を凝らして見てもはっきりとは視認できない。

 ふと思いついたようにイナミナと視線を交わして無言のままそこに向かう。


「あれが中断ポイントなんでしょうか?」

「さぁ、どうでしょう?」


 近付くにつれてはっきりと見えるようになってきたのは壁にできた白く光る扉のようなもの。扉と言っても開閉するための取っ手が付いているわけでもなく、また押して開ける構造でもない。どちらかと言えば何もなかった壁にできた通路の入り口。


「あっ」


 そっと手を伸ばして光に触れてみると何の抵抗もなくすり抜けてしまった。

 想像していた抵抗がなかったことでバランスを崩しそうになるも咄嗟に手を引き戻して立ち止まる。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい。別にダメージを受けるとかはないみたいですけど」


 暖かくも冷たくもない。それどころか何にも触れた感覚のない扉を見つめて本当にこれが外に出るための道なのだろうかと考えてみる。

 このまま進んで戻れなかった場合のことを考えるとどうしてもその一歩が踏み出せないでいた。


「行ってみましょう」

「いいんですか?」

「このまま別の道を探すのも大変そうですし、それにこの部屋の中に出てきたってことは、そういうことなんだと思います」

「確かに…」


 こういう時にイナミナの方が意外な胆力を魅せてくる。

 進む以外の選択肢など無いだろうと言わんばかりに力強い眼差しを向けてくる彼女に俺は息をのんで覚悟を決めた。


「わかりました」


 頷き光の扉に向かい合う。


「行きますよ」

「はい」


 隣にイナミナが並び息を合わせて光の中に一歩踏み出す。

 一歩二歩と歩みを進めていくと徐々に世界は光に包まれてくる。すぐ隣を歩いているはずのイナミナの気配すら見失ってしまいそうになるほどの強い光。

 いつまで、どこまで、歩けばいいのか。浮かぶ疑問を振り払い進み続けていると今度は徐々に光が弱まっていき、周囲の景色がはっきりと視認できるようになってきた。

 光の通路によって繋がった先。それは今度こそはっきりとわかる扉が鎮座された閉ざされた一室だった。


「これが本当の外に繋がっている扉なんでしょうか?」


 壁や床と同じ質感をした石材で作られた扉を怪しみながらイナミナが呟く。

 扉の後ろに回り込むように移動してみるとその扉の裏側には何もないことがわかった。

 あるのは一枚の扉だけ。

 豪華な額縁に飾られた絵画がそのまま専用の台座に載せられて壁に掛けられることなく設置されているかのような光景だ。

 後ろから扉を押してみるもびくともしない。

 正面からなら開けられるかもと移動してまたしても手を伸ばした。

 指に触れる冷たい石の質感。

 少しも力を込めることなく、指先が触れただけで簡単に動く扉。


「ここから先に進められそうですよ」


 イナミナに声を掛けてぐっと中途半場に開けられていた扉を全開にする。


「奥に何かがあるみたいです」


 後ろから身を乗り出して中を見たイナミナがそれを見つける。

 完全に開かれた扉の向こうに広がっていた空間には台形の台座に浮かぶ球体の結晶というモニュメントがあった。


「なんか、あれって町にある転移ポータルと似てませんか?」


 歩く靴音がコツコツと響く部屋に入り、中央に鎮座しているモニュメントを指して確認するように問い掛けてきた。


「ということはこれが中断ポイントなんですかね」


 触れれば何が起こるかわからないとモニュメントの前に立って聞き返す。


「たぶんそうじゃないんですか?」


 慎重に振舞おうとしている俺を余所にイナミナは何気なくそれに手を伸ばしてた。

 彼女の指先がモニュメントの球体に触れると一度強い発光が起きる。


「イナミナさん!?」


 光に驚いて名前を呼ぶ。


「どうやらセーブされたみたいです」

「はい?」


 自身の手のひらを見つめながらイナミナが呟いた。


「進行度って言うんでしょうか。私がどこまで進んだのかが記録されたっぽいです」

「ああ」

「ユウさんもどうぞ」

「あ、はい」


 既にイナミナが行ったことを自分が躊躇することもない。

 促されるがまま球体に手を翳すことで光が瞬き、自分の進行度が記録された。


「あ、消えた」


 手のひらに刻まれた『10』の数字。それも数秒で消えてしまう。次に自分の進行度を確認しようとするのならば自身のパラメータ画面に追記された項目で知ることができるようだ。


「ここから帰れるみたいですよ」


 予想通りにモニュメントは中断ポイントの役割を与えられているみたいだが、それにはプレイヤーを地上に帰還させるという機能も付随されているらしい。

 ちらりと覗き込んだ感じでは操作するといってもあまり細かな操作は必要とされていないのか、モニュメントの上に浮かぶコンソールで転移する地点を指定して実行するだけでいいようだ。


「いいですか?」

「はい」

「では、帰りましょう」


 モニュメントの操作はイナミナに任せた。

 パーティを組んでいるからこそ誰か一人の決定が全員に適応される。

 イナミナが帰還の選択肢を選んだことで淡い光が二人を包んで次の瞬間には二人は地上、極大迷宮(ダンジョン)の外に転移したのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【8】ランク【4】


HP【B】

MP【C】

攻撃力【D】

防御力【F】

魔攻力【E】

魔防力【F】

速度 【C】


専用武器


剣銃(ガンブレイズ)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲(ガントレット)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭防具――【イヴァターレ・H】

胴防具――【イヴァターレ・B】

腕防具――【イヴァターレ・A】

脚防具――【イヴァターレ・L】

足防具――【イヴァターレ・S】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【6/10】

↳【生命の指輪】

↳【精神のお守り】

↳【攻撃の腕輪】

↳【魔攻の腕輪】

↳【魔防の腕輪】

↳【速度の腕輪】

↳【変化の指輪】

↳【隠匿の指輪】

↳【変化のピアス】

↳【―】


所持スキル


≪剣銃≫【Lv132】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――“威力”、“攻撃範囲”が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――“威力”、“射程”、“弾速”、が強化された砲撃を放つ。

↳<インパクトノーツ>――次に発動する全てのアーツの威力を増加させる。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技(エスペシャル・アーツ)

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技(エスペシャル・アーツ)

≪魔導手甲≫【Lv20】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。

↳<ブロウ>――“威力”を高めた打撃を放つ。

≪錬成強化≫【Lv110】――武器を錬成強化することができる。

≪竜化≫【Lv―】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に生命力が回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に精神力が回復する。

≪状態異常無効≫【Lv―】――状態異常にならない。(特定の状態異常を除く)

≪全能力強化≫【Lv100】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【8】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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