表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
652/665

極大迷宮篇 Ep.21『鏡の煌めき』


 風はいつも私をさらなる景色の先に連れてってくれる。頬を撫でる風に心地よさを感じていると不思議と心が落ち着いていくのがわかる。

 うっすらと青く色付いた風が自分の体を包むと向き合うヴァルキュリアもまたその体色を変えた。

 怪しくも美しい緑色。

 全身を覆う鎧の鏡面の輝きは変わらず対峙する私を映している。

 ゆらりとヴァルキュリアの姿が歪む。

 タイミングを同じくして強く床を蹴り飛び出した。


「ハアっ」


 気合一閃、細剣(ハチマル)を振り抜く。

 交差するように突き出されたヴァルキュリアの刃が私の顔のすぐ傍を駆け抜けた。

 立ち位置を入れ替わるように飛び出した二人が同時に立ち止まり振り返る。

 そこから繰り出されるのもまた更なる突撃。

 二つの閃光が共に流星のように地を駆けて、時にはぶつかり、時にはすれ違い、薄く水が溜まった床に無数の水柱を迸らせていた。

 空気を震わせるほどの轟音。

 剣がぶつかり合うことで起こる衝撃が何もない虚空で弾ける。


「どうしたんですか? さっきより遅くなったみたいですけど」


 挑発するかのように告げる私にヴァルキュリアは無言の威圧で返してきた。

 苛立ちをぶつけるかの如く力任せにロングソードを振り下ろしてくる。だがその剣筋は読み易い。次の一撃のことなど考えていないかのような攻撃は今のスピードなら簡単に躱すことができる。強く一歩を踏み出して幅跳びをするみたいに大きく跳んで背後に回り込むとすかさず細剣(ハチマル)を突き出す。

 私の細剣(ハチマル)が最も適している攻撃は刺突というわけではない。自身の攻撃力を最大限に活かそうとするのならば突進の勢いを加えられる突きになったというだけだ。

 並大抵なモンスターならば硬い装甲をも容易に貫ける一撃も緑色に変化した鎧を貫くことはできない。

 無防備な背中を狙った攻撃も切っ先が触れた瞬間に凄まじい閃光が弾けてヴァルキュリアを前のめりに押し倒して、細剣(ハチマル)を後ろに跳ね上げさせた。

 ダンっと大きな音を立ててヴァルキュリアが踏み留まり、私は数回のステップで体勢を崩すことなく次の攻撃に備えた構えを取る。


「まだまだぁ」


 叫んで駆け出して細剣(ハチマル)を振り上げる。

 返す刀で振り回されたロングソードが細剣(ハチマル)とぶつかり互いを大きく跳ね返す。

 ぐんっと上がる腕を押さえ付けずにその勢いを利用して剣先で円を描く。


「<シル・ファード>」


 床すれすれを細剣(ハチマル)が滑り、刀身に纏わる風が床の水を巻き上げていた。

 使い慣れた斬撃アーツによってヴァルキュリアとのせめぎ合いに初めて勝つことができた。下から上へと切り上げて弾き飛ばしたロングソードが後ろに跳ね上がる。


「もう一度、<シル・ファード>」


 攻撃に攻撃を繋げて更なる斬撃アーツを放つ。

 鍛え上げたスキルで使えるようになったアーツはスキルレベルを上げ続けることでアーツのリキャストタイムを短縮することもできる。より強力な新しいアーツを習得することもできるが、私が選んだのは一つのアーツを鍛え続けること。そのおかげで<シル・ファード>はリキャストタイムなしで連発することができるようになっている。

 ただしMPの消費量を減らすことは叶わず、すべての攻撃にアーツを発動させていたのではすぐにMP切れに追い込まれてしまうことは難点であることは変わらないが。

 ここ一番だと決め込んだ場面で繰り出す斬撃は纏う風に背中を押されるように斬る速度を上げていく。

 ヴァルキュリアは反撃を試みるも次第に私の攻撃の速度に追いつけなくなって防御一辺倒へとなってしまっていた。

 身を守るロングソードの上から何度も何度も細剣(ハチマル)を叩き付けると少しずつヴァルキュリアが後退し始める。

 剣同士の激突音に混じって微かな亀裂音がした。それはヴァルキュリア本体ではなく、それが構えているロングソードの刀身に入ったごく僅かな罅の音。


「そこっ!」


 一振り一振りに気合いを入れて力強く剣を振るう。

 刃にできた傷を寸分違わずに狙い続けることでその瞬間は訪れた。

 小さな亀裂が刀身全体に広がっていき、バキッと大きな音を立ててロングソードが根元から折れたのだ。


「<シル・ファリオン>」


 斬撃を飛ばすアーツで足元の水を吹き飛ばし煙幕を生み出して、声もなく驚いた素振りを見せるヴァルキュリアの胸元へと滑り込む。

 細剣(ハチマル)の切っ先を下げてぐっと身を屈め、


「<シル・ファード>!」


 全身のバネを駆使して勢いよく切り上げる。

 纏う風と同じ青く透き通った斬撃がヴァルキュリアを斬り裂く。

 けれどまだHPの大半は残っている。


「全てを出し切ってみせる! <ラシル・エクリシア>」


 全身を覆っている風が切っ先に集まり一つの斬撃となって放たれる。

 ヴァルキュリアを飲み込んでいく風の刃。

 まるで嵐か突風か。

 青く輝く風が収まる時、その場にヴァルキュリアはいない。

 風が止み、周囲に漂うのは青と緑に煌めく極細の欠片。

 ふと果てのない天井を見上げてみる。

 夜空に浮かぶ星のように青と緑の光が徐々に渦を描き始める。

 自然と体が動く。

 両手を伸ばして深呼吸をするように大きく息を吸い込む。

 光が私の体に吸い込まれていって暖かい力が体の底から漲ってくる。

 そして私は、変わった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【42】ランク【6】


HP【A】

MP【A】

攻撃力【B】

防御力【C】

魔攻力【C】

魔防力【D】

速度 【A】


専用武器


細剣(ハチマル)

↳アビリティ――【不壊特性】【属性剣・風】


防具


頭防具――【リオニールメイルイヤリング】

胴防具――【リオニールメイル】

腕防具――【レオルナルアーム】

脚防具――【レオルナルベルト】

足防具――【リオニールグリーブ】


アクセサリ【10/10】

↳【体力上昇のリング】

↳【魔力上昇のリング】

↳【攻撃上昇の腕輪】

↳【魔攻上昇の腕輪】

↳【魔防上昇の腕輪】

↳【速度上昇の腕輪】

↳【風精霊のとんぼ玉】

↳【水精霊のとんぼ玉】

↳【浄化の宝玉】

↳【セイギノミカタの徽章】


所持スキル


≪細剣≫【Lv320】――武器種“細剣”のアーツを使用できる。

↳<シル・ファード>――特別な風によって強化された斬撃を放つ。

↳<シル・ファリオン>――斬撃を風に乗せて飛ばす。

↳<シル・ドンガ>――前面広範囲に向けて風の壁を発生させる。

↳<シル・エアル>――全身に風を纏うことで速度と攻撃力が上昇する。

↳<ラシル・エクリシア>――全身を包んだ風を一気に放つ必殺技(エスペシャル・アーツ)

≪自動回復・HP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に生命力が回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に精神力が回復する。

≪状態異常無効≫【Lv―】――状態異常にならない。(特定の状態異常を除く)

≪全能力強化≫【Lv260】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【3】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ