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極大迷宮篇 Ep.13『滑り込んで七層』


 砂漠のように砂に覆われている第七層。

 風化して崩れそうだというのにしっかりとした壁がある。

 歩く足を絡め取ろうとする粒子が細かい砂が敷き詰められているそこでプレイヤーを待ち受けていたのは砂の中から現われる乾いた砂を強引に固めて作られた不格好な泥人形みたいなモンスターばかりだった。


「これでラスト!」


 細剣を勢いよく振り抜いたイナミナが振り返りながら言った、

 彼女の足下で彼女の加速によって巻き上がった砂が煙のようにふわりと風に靡く。この一瞬、イナミナの足下から砂が消えて上の階層と同じ洞窟の岩肌が顔を覗かせた。

 瞬く間に足下の砂が流れて元の砂漠のような様相へと戻る。

 件のモンスター、名は【サンドマン】。種類を分けるのならばゴーレムといった所だろうか。これまでのモンスターと同じく倒すことができれば光石を入手することができる。が、これまでと違うのはサンドマンを倒す度にほんの僅かではあるものの地面にある砂が量を増していた。


「これで何度目の戦闘になるんですかね」


 辟易したというようにイナミナが言う。

 それもそのはず、この階層に足を踏み入れて空というもの、歩く度と言うには大袈裟だがそれこそ一つの角を曲がる度くらいにはサンドマンの襲撃に遭っていた。

 サンドマンは決して強くない。それこそ渾身の一撃を叩き込めば僅か数発で倒してしまえる程度だ。しかしこれまでにない頻度での戦闘はこちらを疲弊させるという意味では正しく成功しているとさえ思える程に。


「まあ、部屋の中にサンドマンがいると落ち着いて探すこともできませんから、仕方ないんじゃないですか」

「それはそうなんですけど。毎回毎回決まって待ち構えられているとこう、何か言ってやりたくなりません?」

「誰にです?」

「えっと、この極大迷宮(ダンジョン)を作った人に」

「何をですか?」

「無意味にモンスターを出現させないでとか、もっと分かりやすいギミックにして欲しいとかですかね」

「だったら、運営に対して要望を出さないと」

「それですぐに改善されるんです?」

「しないと思いますよ」

「じゃあ、駄目じゃないですか」

「そうですね」


 軽口を叩き合いつつ部屋の探索を進める。

 程なくして俺が、続いてイナミナが探索を切り上げた。


「どうやら、ここにもないみたいですね」

「みたいですね」


 子供が公園にある砂場で遊んでいるかのようにしゃがみ込んで地面にある砂を掻き分けていた俺たちが一通り探してみた結果何もないという答えで合致した。この時砂を払うのに使える道具など持ち合わせているはずもなく自分の手で砂を掻き分けることになったために、少し探索しただけで手は真っ白に染まってしまう。左腕に装備している魔導手甲(ガントレット)も素手の右手と同様手首から先が真っ白だ。


「次に行きましょう」

「はい」


 立ち上がって手に付いた砂を払いながらイナミナの提案を受け入れた。

 実のところこの第七層。俺たちは到達して間もなくそれまでの例に漏れず横道に一切目もくれずまっすぐ最奥、それこそ最も下の階層に続く階段がある可能性が高い場所を目指して進みそれらしきものを見つけることが出来ていた。

 慣例からそこで待ち受けているのは強力なモンスターであると考えて身構え、心と道具の準備を終えていざ扉を開けて奥の部屋へと足を踏み入れたが、そこで俺たちはある意味で肩透かしを食らっていた。

 部屋の中には誰も何もおらず静寂が支配していた。そこにあったのはただ一つ閉ざされている巨大な扉だけ。扉には同じ形状をした六つの窪み。

 押しても引いても動かない扉を調べて出た結論は至極当たり前のこと。閉ざされた扉を開くためには言うなれば鍵が必要であるということ。

 もし、ここに至るまでにいくつもあった小部屋等々を探索していればすんなりとこの扉を開くことができたのだろうか。仮に探索していたとしてももう一度この階層を見て回ることになったのだろうか。

 結果として今のように第七層を隈無く探し回る羽目になっているのだから何も言えることはないが。


「結局見つけられたのはこれ一つだけでしたね」


 そう言ってイナミナが自身のストレージから取り出したのは一枚の石版。直径五センチ程度の小さな石版には昔どこかで見たことがあるような謎の図形が刻まれている。それを見つけたのは来た道を引き返して探した二つ目の小部屋。そこに出現したサンドマンを葬り、一定の安全を確保した後に小部屋の中を注意深く探し回ってようやく見つけ出すことができたのだ。

 見つけた石版を見ても扉に嵌めること以外は分からないとはいえ、見つけ出した場所を思えば順当に探索を行い件の扉の前へと辿り着いていたとしたらこれが最後の一枚になっていたはず。

 それが自分たちにとっては最初の一枚。

 探索を無視してショートカットするのではなくしっかりとそれぞれの階層を見て回れという極大迷宮(ダンジョン)からのメッセージであるかのようだ。

 何かを確認するかの如く取り出した石版を再びストレージに仕舞って小部屋を後にすると左右に伸びた通路をそれぞれ一瞥してイナミナは次の目的地を決めた。


「次はこっちの部屋ですね」


 砂に覆われた第七層。石版が隠されているであろう小部屋はそれこそ無数に存在している。実際の第七層の広さがどれほどのものか確かめる術は持たないが、ちょとした直線通路の途中、曲がった先の壁際等々、一見すると扉とは思えないような場所にも扉は隠されていて、その一つ一つを確かめることが石版を手に入れるためには着実で確実な手段となっていた。

 見つけた小部屋に必ずと言っていいほど足を踏み入れていたために全体像の把握が困難となってしまっていたが、階段前の部屋に来るときと石版を探して来た道を引き返しているときの記憶を纏めると第七層は真四角の形をしているのかもと想像することができていた。その形が正しいのだとしたらすぐに元の位置に戻ってくることになるかもしれないと注意深く観察してみると実際に幾度か下の階層に続く階段がある前の部屋に繋がっている通路や第六層に続いている階段がある通路を横切ることになった。

 驚いたことに第七層はグルグルと渦を描く回廊を歩いているのではなく、どこかを起点にして延々とループして同じ場所を歩かされているみたいだった。

 適当な小部屋に入れば待っているのは数体のサンドマンとの戦闘。

 サンドマンはスライム系のモンスターとは違い核があるわけではない。全身を形成している砂が全てでありプレイヤーの攻撃はその体のどこを捉えたとしても正しくダメージが入る。そういう意味では倒しやすい敵であると言えた。弱点らしい弱点は見受けられないが、どんな攻撃であっても等しくダメージを与えられるモンスターと思えばイメージしやすいだろう。

 総じてこちらの攻撃力が高ければ複数のサンドマンであっても倒すのに掛かる時間は一瞬。

 瞬く間にサンドマンが葬られ、足下には小さな砂の山と光石だけが落ちている。


「さ、探しましょう」


 なんてことでもないように言い退けてイナミナはしゃがんで砂を払いながら石版を探し始めた。

 膝を付いて探すと砂が手だけでではなく足にも付くがそれすらも数回パンパンッと叩き払うだけで綺麗になるのだから仮想世界様々だと思わずにはいられない。

 イナミナは右側から、俺は左側から中心に向かって砂のなかを探し続ける。

 すでに十を超える回数小部屋のなかを見てきた。これだけの回数を熟せば探す手にも慣れが出てくる。さっと大振りで地面の砂を掻き分けるだけでそこに何かがあるのかどうか判明することができるようになっていたのだ。

 さほど時間を掛けずに探し終えた俺は手と足に付いた砂を払いながら立ち上がって振り返ると何やら地面に手を付けたままの格好で動かないイナミナがいた。


「どうかしましたか?」

「見つけた」


 動かない彼女が心配になって近付き声を掛ける。

 イナミナが砂のなかに突っ込んだ手をゆっくりと引き抜くとその手の中には小さな灰色の石版が握られている。

 先程見つけた石版の色は若干青みがかっていたことを思えば全くの同一の物ではないことはわかる。それに加えて片面に刻まれている謎の図形の形も異なっている。共通しているのは形と大きさだけ。


「これで合っていますよね?」

「えっと…」


 色や図形が違うことに一抹の不安を覚えたイナミナが確認を求めてくる彼女の手の中にある石版を見る。

 比較するために最初に手に入れた石版をストレージから取り出すように促す。左右の手にそれぞれ一枚の石版が持たれ並べられた二枚の石版を見比べてみると個別に見た時よりも確実に同種の石版であると判別できた。


「俺は合っていると思いますよ」


 扉の窪みは全部で六つ。

 つまり石版は残り四つ存在していることになる。

 仮に偽物が紛れているのだとしても残る石版を見つけだせばこれが正しい物かどうか判明するはず。

 少なくとも自分はこの石版が本物だと思っていることを告げるとイナミナはほっとしたように安堵の表情を浮かべていた。


「よかった」

「残りは四つ。頑張って見つけましょう」


 イナミナの不安を振り払うべく明るく言って小部屋から出る。

 通路に出て向かいにある小部屋は見てみるべきかとふと考えた。メタ的な予測を立てるのならば石版を見つけた小部屋の近くには石版は隠されていない。しかしそんな予測を逆手にとって隠されている可能性もある。結局は自分の目で確かめるしかないのだと気を取り直して目の前にある小部屋へと入っていく。

 案の定現われるサンドマンをさっさと倒して部屋の中を見て回るも石版は見つけられなかった。

 それから探索を行うこと十数分。

 何度第七層を歩き回ったことかわからない。

 ループしているかもと考えていなければどれも見たことのある部屋ばかりで割と早い段階でここには無かったからとスルーすることが多くなってしまっていたかもしれない。

 根気よく何度も同じ階層を探索してようやく石版を五つ集めることができた。

 当初抱いた色と刻まれた図形が異なるために偽物だったかもしれないという懸念も手に入れた全ての石版の色と図形が異なっていたために杞憂だったと払拭された。


「もう一週行きますよ」


 イナミナの号令を合図に近くの小部屋から探索を再開する。

 一つ二つと小部屋を探索してみるも空振り。

 この頃になると何も見つけられないことに何の感情も抱かないようになっていた。

 自分がイメージする第七層のおよそ半分を見終えた頃。ちょうど第六層に続いている階段を通り過ぎた先にある小部屋に足を踏み入れると最早通例となっているサンドマンの襲撃があった。さほど手こずることもなく倒してから部屋の中で砂を掻き分けて石版を探していると、ふと自分の手が止まった。


「砂の量が増えている?」


 それこそ石版の最初の一枚を手に入れた時のことを思い出してみると今とは雲泥の差の様相が浮かんで来た。

 初めは数センチ程度しか無かった砂の嵩が明らかに増えているのだ。

 何気なく砂を掻き分けるのではなく砂のなかに右手を突っ込んでみた。ぐっと力を込めると砂は大した抵抗もなく手首を超えて肘まで飲み込んでいった。

 はっとして慌てて右手を引き抜く。

 水分を含んだ砂浜の砂のように掻き分けると山ができて崩れてはこない。そのおかげで探し物をするには楽だったが、よくよく考えると妙なことだ。


「イナミナさん!」


 思わず名前を呼ぶと彼女はどうしたのだろかという顔でこちらを振り返った。


「一度ここを出ましょう」


 有無を言わさないと手を掴み部屋から出て行く。


「どうしたんですか?」


 足に絡みつく砂を蹴り分けて通路に出るとようやくイナミナが声を発した。


「気付いていないんですか? 小部屋の中にある砂の量が増えていることに」

「そんなこと気付いていますけど」

「え?」

「というかユウさんは気付いていなかったんですか?」


 何を当たり前のことを言っているのだろうかという口振りで聞き返されてしまった。


「一週目よりも二週目。二週目よりも三週目のほうが小部屋の中にある砂の量が増えていたじゃないですか」


 そうはっきりと断言されると返す言葉もない。

 気付いていたけど言わなかったのだと取り繕うとしたのすら見抜かれているような気分になって曖昧に笑って誤魔化した。


「とりあえず別の小部屋に行ってみませんか」

「…はい」


 イナミナの先導で斜め向かいの小部屋に入る。

 ここも当初に比べて地面の砂の量が多い。

 現われたサンドマンを倒してから探索を始めるとようやく砂の量が増えた理由が判明した。


「サンドマンが残した砂が消えること無く積み重なっているのか」


 得心がいったと独り言ちる。

 プレイヤーを追い込む何らかのギミックではないことに安堵しつつ砂を掻き分けて石版を探していると突然コツンと硬いものが指先に触れた。

 砂を払い指に触れたものを見失ってしまわないように取り出すとそれは若干赤みがかった石版だった。


「見つけました!」


 最後の一つを発見するという見せ場を自分が奪ってしまったことに後から気付き申し訳なさそうな顔をしているとイナミナは小首を傾げて、


「どうしたんですか?」


 と聞いてきた。

 正直に自分の思いを伝えると一瞬キョトンとした顔をしてからけらけらと笑いながら問題ないよと言ってくれた。


「何がともあれ。これで揃いましたよ!」

「思っていたよりも時間が掛かりましたけど、あとはあの扉を開けて次の階層に進むだけです」

「でも、もし開けられなかったらまた別の石版を探すことになるんですよね」

「あぁ。そうならないことを祈りましょう」


 六つの石版を手にして下の階層に続く階段がある部屋へと移動する。

 現状はこれ以上小部屋を探索する必要はないとまっすぐ目的地を目指して進むと五分と経たずに到着した。

 部屋に入り扉の前に立つ。


「この窪みに石版を嵌めれば…」


 自分とイナミナの手にそれぞれ握られた合計六つの石版。

 そこに刻まれた図形の意味を考えながら扉を見つめているとどこからともなくダムが決壊した時のような何かが流れる音が聞こえてきた。


「な、何の音ですか!?」


 驚き振り返るイナミナ。


「あそこ。壁の上です」


 俺が指差した先に二人の視線が集まる。

 壁の上にある大きな空洞。そこから大量の砂が取り留めも無く流れ込んできたのだ。

 瞬く間に空洞の真下は砂に埋もれてしまう。

 空洞は自分たちが入ってきた通路の上にもあって、砂が塞いだのはその出入り口だった。


「戻れないと言うことでしょうか」

「もしかするともっとヤバい状況かも」


 音の出所を探ると四方八方から。即ち自分たちが入ってきた方向だけではなく全ての方向から砂が流れ込んできているということのようだ。

 この時の自分は知らなかったが、この流れ込んでくる砂の勢いは石版を集めてくるまでに倒したサンドマンの総数によって変わるらしい。倒したサンドマンの総数が多ければ多いほど流れてくる砂の勢いと量は増えてプレイヤーが扉を開けるのに使える時間が減る仕様となっているようだ。

 今回自分たちはクローズドで挑んだ。だから扉に挑戦しているプレイヤーは自分たちだけ。であれば通常の挑戦ではどうだったのだろうかといえば、扉前のボスモンスター戦と同じようにそれぞれのパーティで挑む扉が別に用意されているようだ。


「砂で埋め尽くされるまでが制限時間ということか」


 急いで扉を開けるべく近くの窪みに雑に石版を嵌め込んでいく。

 自分が持つ石版、イナミナが持つ石版。それぞれが扉の窪みに嵌まったが、扉はうんともすんとも言わず堅く閉ざされたままだった。


「まさか、正しい位置に正しい石版を嵌めないと開けられないってこと!?」


 動かない扉を前にイナミナが声を裏返らせた。


「イナミナさん」

「何ですか?」

「パズルは得意ですか?」

「じっくり考えられる時間があるのでしたら」

「…なるほど」


 正確には目の前のこれはパズルというよりもある種の謎解きのようなものだと思う。


「正しい位置に正しい石版をというのなら何かしらのヒントが隠されているはず」


 聞こえてくる砂の轟音が否が応にも焦らせてくる。

 流れてきて積まれていく砂の範囲が徐々に広がっているのも似たような効果を自分たちにもたらしていた。


「ヒントですか?」

「はい。少なくとも扉と石版にそれぞれ何かしらがあるはずです」

「石版はあの図形じゃないんですか?」

「多分そうなんでしょうけど、あの図形の意味分かります?」

「さっぱり」


 間違った位置とはいえ扉に嵌め込まれている石版を見る。

 それぞれに異なっている図形だが、全てを纏めて見ると微かに共通している何かを感じた。


「図形が嵌め込む位置を記しているとして……どれがどれだ?」

「色! 色はどうです? 石版の色は関係ないんですか?」


 わからないと顔を横に振って眉間に皺を寄せながら扉を見つめる。

 考え込んでいる俺の横でイナミナが扉から一つの石版を取り外した。


「扉には何かないんですか?」


 窪みには何も印のようなものは見当たらない。

 石版にあった色も扉には関係がないようだ。


「こっちは?」


 ヒントも見つけられないままイナミナは別の石版を外した。


「あっ」


 石版が取り外されたことで剥き出しになった窪みに先程は見受けられなかった何かの絵柄がうっすらと見えた。

 声を出したイナミナは扉に駆け寄って手で扉の窪みの中を擦った。

 パラパラと乾いた土の欠片が落ちる。


「これ! 見てください!」


 声を弾ませるイナミナに引き寄せられるように彼女が示す窪みを見る。

 そこには半分近く削れてしまって判別が難しい何かの図形が刻まれていた。


「これって、その石版にある図形ですよね?」


 未だ扉に嵌め込まれている石版を指差していうイナミナ。

 図形の欠けた部分を指で遮ることで全体像が把握できる。それはどうやら石版の図形と同じもののようだ。


「そうです!」


 俺が返事をするとすぐ、イナミナは件の石版を扉から外して図形が示す場所に嵌め込んだ。


「せめて何か正解かどうかくらい教えてほしいです」

「大丈夫。これが正解ですよ。というか正解だと思って次の場所も探してみましょう」


 石版が外されている窪みは一つ。それはイナミナに任せて俺は一番右にある石版を外して中を指で擦ったりして汚れを落とすことにした。堅く乾いた土のようなものを剥がしてみるとまたしても時間経過か何かで消えかかっている図形を見つけることができた。


「この図形はあの石版だ」


 扉に嵌め込まれている石版を外して嵌める。

 その横でイナミナが綺麗にした窪みにははっきりとした図形が残り見ることができた。


「これも違う。こっちも。あれも。そうだ、ユウさんが持っている石版はどうですか?」


 扉に嵌め込まれているものと自分の手の中にあるものを見比べて、


「同じ図形だ」


 すぐに正解の場所に嵌め込んだ。

 これで半分。

 残りはどうだろうかと石版を外して掃除をしてみると三つの内の一つは偶然にも正しい位置に嵌め込むことができていたみたいで、取り外した石版をそのまま嵌め込むことになった。

 砂は既に自分たちの足下に迫っている。

 それでも残すは二つだとバカ正直に内側を綺麗にしようとした俺を遮ってイナミナが残す二つの石版を入れ替えた。


「四つが正解だったら、残る二つは入れ替えるだけで良いんです」


 これでも開かなければ集めてきた石版が間違っている可能性。そもそもからして自分たちの考えが間違っている可能性がある。

 祈るような気持ちで扉を見つめているとゴゴゴッと大きな音を立てて左右に別れて開かれた。


「早く、早く」


 扉の開放を急かしているのはイナミナだけじゃない。四方八方から迫る砂もまた自分たちを焦らせてくる。

 部屋を埋め尽くそうとしてくる砂によって扉の開閉がし難くなるのではないかという不安もあったが、どうやら問題はないようだ。

 ドバンッと大きな音を立てて砂が勢いを増す。

 堰を切った川の如く嵩を増す砂が足首にまで到達してきた。

 イナミナがその場で足踏みをしているのは決して焦っていることだけが理由ではない。足に付く砂を払うのもまた目的の一つとなっているようで、自分もまた同じようにその場で足踏みをした。


「このくらい開けば抜けられますよね」


 人一人が通れる分の隙間ができた瞬間にイナミナが駆け出した。

 またしても流れ出ている砂の勢いが増した。迫る砂の勢いもこれまでとは比べものにならないほど。


「急げ!」


 先を走るイナミナの背中に叫ぶ。

 全速力で駆け抜けた彼女が扉の隙間を抜けて出る。

 そのまま下に続く階段を駆け下りている姿を見送って、俺は背後から迫る砂から逃れるべく頭から扉の隙間に飛び込んだ。

 ゴロゴロと転がりながら抜けた先で身を起こして扉の向こうを見る。

 増え続ける砂はもはや大きな波の如く。

 隙間から砂がはみ出してくるかどうかを検証する必要などないと一目散に階段を下りイナミナを追い駆けていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【7】ランク【4】


生命力

精神力

攻撃力【D】

防御力【F】

魔攻力【E】

魔防力【F】

速度 【C】


専用武器


剣銃(ガンブレイズ)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲(ガントレット)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭防具――【イヴァターレ・H】

胴防具――【イヴァターレ・B】

腕防具――【イヴァターレ・A】

脚防具――【イヴァターレ・L】

足防具――【イヴァターレ・S】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【6/10】

↳【生命の指輪】

↳【精神のお守り】

↳【攻撃の腕輪】

↳【魔攻の腕輪】

↳【魔防の腕輪】

↳【速度の腕輪】

↳【変化の指輪】

↳【隠匿の指輪】

↳【変化のピアス】

↳【―】


所持スキル


≪剣銃≫【Lv132】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――“威力”、“攻撃範囲”が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――“威力”、“射程”、“弾速”、が強化された砲撃を放つ。

↳<インパクトノーツ>――次に発動する全てのアーツの威力を増加させる。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技(エスペシャル・アーツ)

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技(エスペシャル・アーツ)

≪魔導手甲≫【Lv20】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。

↳<ブロウ>――“威力”を高めた打撃を放つ。

≪錬成強化≫【Lv110】――武器を錬成強化することができる。

≪竜化≫【Lv―】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に生命力が回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に精神力が回復する。

≪状態異常無効≫【Lv―】――状態異常にならない。(特定の状態異常を除く)

≪全能力強化≫【Lv100】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【7】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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