極大迷宮篇 Ep.11『五層の番兵』
長い通路に出る度に道を塞ぐかの如く出現するストーンゴブリンを討伐しながら五層の探索を進めていると程なくして一つの大きな部屋へと行き着いた。
壁は変わらず第五層の洞窟のまま。天井は通路に比べれば格段に高くなっているが、光源のようなものが少ないために闇に覆われているように暗い。最もそれまでの通路と異なるのが地面。人工的に手が加えられているかのように長方形の石のブロックが敷き詰められていたのだ。
歩きやすくなっているから文句はないが、こうして極大迷宮で足場が固められている状況は大抵なんらかのボスモンスターが出現する舞台となっている。
「ボスが待っているのならどんとこいです」
「頼もしいですね」
「えへへ」
「行きましょう」
気合い十分なイナミナと並んで部屋の中へと入っていく。
二人に続いて球体カメラが部屋に入ったその瞬間、それまで存在していなかった扉が下に落ちて出入り口を塞いでしまった。
「何が来るのでしょうか」
「さあ、何でしょうね」
ワクワクといった書き文字を背負っているような錯覚すら覚えるイナミナの様子に苦笑しながら、明かりが集まっている部屋の中心部に視線を向ける。
同じ階層ならば大抵がそれまでに出現していたモンスターと同系種のモンスターがボスモンスターとして現われる。この第五層ならばストーンゴブリンの系譜となるか。
「上から何かが落ちてきます!」
何気なく天井を見上げてたイナミナが叫ぶ。
落ちてきたのは岩。それも一つや二つじゃない。無数とも言える数の岩が降り注ぐそれを回避しようと身構えるも自分たちから離れた部屋の中央に集中していて当たる心配はなさそうだ。
断続的な地響きを轟かせながらいくつもの岩が積み重なっていく。
自分の身長を超える高さまで岩が積まれた段階で降り止み、一瞬の静寂の後ピシッという音を立てて亀裂が入った。
次の瞬間、積み重なった岩が内側から弾ける。
周囲に土埃が巻き上がり、極細の岩の欠片が舞い散った。
「あれが五層のボスモンスター」
細剣を携えて身構えるイナミナが戦々恐々と呟く。
積み重なった岩の中から現われたのは【ロックオーガ】。オーガ系の一種である【ロック・オーガ】ではなく純然たるロックオーガというモンスターだ。
見た目は全身が岩で形成されたオーガ。それこそ先程まで戦っていたストーンゴブリンをより凶暴そうに、より強力にしたもののよう。
それとの違いは体躯の大きさだけではない。よりディテールが細かい鬼面を着けた顔。鍛え上げられたボディビルダーの体みたいに筋肉の筋まで再現されている肉体。それら全てが岩を削り出して作られた彫刻のようであり、またどこか生物的な息吹を感じる。
ストーンゴブリンとの最大の違いはその手に持たれた巨大な棍棒の存在だろうか。これもまた岩で作られているものではあるというのに鋼鉄の如き鈍い輝きがある。
「行きます!」
ギョロっと岩の瞳がこちらを見た。
戦闘開始の号砲などあるはずもなく、それは常に誰かの一歩によるものだ。
イナミナが真っ先に飛び出して細剣を突き出す。
ストーンゴブリン程度の防御力ならば簡単に突き破れる。それ以上の防御力があるのならばどの程度のダメージを与えられるのかを知るための試金石となる。
イナミナの攻撃の行く末を固唾を飲んで見守っていた先で大きく聞こえて来たのはまさしく硬い鋼鉄同士が激突したときのような轟音。
岩とは到底思えないロックオーガの肉体によって阻まれた刃が跳ね返って打ち上がる。
体勢を崩しかけたイナミナをフォローするためにと俺はすかさずにロックオーガへと攻撃を仕掛けるべく飛び出した。
イナミナの初撃を見ていた地点からロックオーガまでは幾分かの距離がある。剣形態では攻撃が間に合わないと銃形態に変えて引き金を引く。
撃ち出された光弾がロックオーガの頭部に当たり弾ける。
光弾の瞬きに目を眩ませたのか一瞬ロックオーガの動きが止まった。
「イナミナさん。掴んで!」
左手を前に出して撃ち出した【アンカーショット】は極細のワイヤー。本来ならば目視することが困難なほど細いものだが、部屋の光が集中している場所にいるのならばその反射で視認することができるはず。
何よりも高速の突きを得意とするイナミナだ。自身の剣筋を見極められる目があるのならば極細のワイヤー程度ならばしっかりと判別することができるだろうと信じてそれを放っていた。
「――っ!!」
返事をするよりも速く【アンカーショット】を掴んだ瞬間に強く左手を手前に引き寄せる。
「助かりました」
重力に逆らい地面から数センチ浮いた位置で急激な方向転換をしたイナミナが俺の近くに着地した。
掴んでいた【アンカーショット】を手放した瞬間にワイヤーが消滅する。
「ダメージは普通に通るみたいですね」
ロックオーガの頭上のHPゲージを確認しながらいうとイナミナは怪訝そうな顔をして、
「あの硬さなのに!?」
と驚愕していた。
「そんなに硬かったんですか?」
「わたし細剣を手放しそうになりましたもん」
自身の細剣を掴む手を見せてくるイナミナの様子にその言葉の意味を探る。
攻撃が通用しないわけじゃない。
ダメージは正しく与えられている。
しかし、武器を手放しそうになったと言う。
「まさか――」
一つの考えに行き着いて呟くとイナミナは声を潜めて、
「何か思いついたんですか?」
「プレイヤーの装備を解除する攻撃があるのは知ってますよね」
「それは“武装解除”系のことですか?」
「はい。武器破壊じゃなくて解除。つまりは防具ならそれが脱げるように、武器なら――」
「持っていられなくする」
「その通りです」
視力が復活したらしいロックオーガが見失っていた俺たちを見つけて吼える。
「一般的なのは魔法ですけど、もしかすればロックオーガには相手の武器を弾き飛ばすという形でこちらの武装を解除してくるのかも知れません」
大股で歩き近付いてくるロックオーガ。
その手に持つ大鉈の切っ先が地面に一筋の傷を刻み足跡のように残されている。
「イナミナさんが手放さなかったように成功率自体は高くないのかも知れませんけど、直接攻撃の度に発動するとしたら」
「わかりました。気を付けて攻撃します!」
近接戦闘以外の攻撃手段を持たないのか、イナミナは微塵も臆することなく再度ロックオーガへと向かっていった。
接近するイナミナに攻撃が向かないようにとロックオーガの注意を引くべく撃ち続ける。
バンッバンッと弾ける閃光。
光弾が命中するたびに怯むロックオーガだがHPゲージに変動はない。
「嘘だろ、まさか物理攻撃以外はダメージにならないってんじゃないだろうな」
だとすれば魔法をメインに戦っているプレイヤーの天敵だ。
初心者ではないプレイヤーならば魔法が効かない相手に対する攻撃手段も確立しているだろう。あるいはきっぱりと割り切って魔法に集中しているかも知れないが、どちらにしてもパーティを組んでいれば仲間のサポートという立ち位置で戦うことができる。
クローズドが解禁されて数週間が経過する頃には中間ポイントとなる十階層毎の区切りに到達するしない以前の話でこのボスモンスターが極大迷宮における最初の壁と言われるようになっているとは露知らず、俺は今後の自分の立ち回りを改めて考え始めていた。
前戦を張るイナミナの後ろから意味がないと知りながらも射撃を繰り返しながら徐々にロックオーガとの距離を詰めていく。
刃が届く距離になった瞬間に剣形態に変えて大地を踏み締めているその脚に目掛けて剣銃を振り抜いた。
「うおっと!?」
先程自身の武器である細剣を落とし掛けたイナミナの感覚が理解できた。
ロックオーガを斬り付けて攻撃が命中した瞬間に武器を通して返ってきた衝撃が腕を痺れさせて一瞬力が抜けてしまいそうになったのだ。
意識して即座に手に力を入れることで武器を落としたりはしなかったとはいえ、攻撃のリズムが崩されてしまったのは事実だ。
追撃を行えずに手を止めた瞬間にロックオーガの攻撃が来る。
振り上げられた鋼鉄の棍棒が頭上に迫るが、自身に届く前にイナミナの高速の突きによって軌道を変えられて誰も居ない地面を強く打ち付ける。
ぐらぐらと揺れる地面が二人の行動を阻害してくるかのようだ。
攻撃が空ぶったことなど全く意に介さないというように、それこそ古のゲームセンターにあるようなモグラ叩きみたいに連続して棍棒を振り下ろしてくる。
反撃など考えないで、揺れに耐えながら全ての打撃を回避していく。
右に左にと駆け巡りロックオーガ攻撃が止んだ瞬間がこちらの反撃のチャンス。
オートで発動している武装解除の効果によって蓮撃は困難を極めるが、連続攻撃そのものは不可能ではない。
自分が武器を落とさずに堪えられるだけの時間とロスを考慮して立ち回ればどうにかなるはずだ。
そのためにはまず軽い攻撃を重ねるのではなく、できるだけ重い攻撃でダメージを与えることが重要となる。この時最初に問題となったのはアーツを発動させた場合に受ける武装解除の効果の程度。通常攻撃の時と同じなのか、こちらの攻撃の威力の度合いによって変わってくるのか。
「ハッ!! <セイヴァー>」
まずはそれの検証だとロックオーガの背後に回り込んで斬撃アーツを発動させる。
狙いは脚の裏。剣銃の刀身に光が宿り、剣閃が流星の如く迸る。
「おおっと」
想像していた通りにロックオーガが持つ武装解除が襲ってくる。しかしその強さは通常の攻撃を命中させたときと変わらない。
どうやら武装解除の効果は一定となっているらしい。
それならばと続け様にもう一度斬撃アーツを放つ。
いつもの蓮撃とは異なり今は次撃に繋げるためには自分の位置を変える必要がある。そうしなければロックオーガが振り回す腕によって殴り飛ばされてしまうことになるからだ。
大きな括りとしては同じ剣という武器を用いている俺とイナミナの立ち回り、特にロックオーガに対して保ち続けている距離感というものは似ているような気がする。相手の攻撃を回避しやすく、自身の攻撃を当てやすい。それでいて互いの邪魔にならないように心懸けながら動き攻撃を行っていくことで次第に与えたダメージが積み重なってロックオーガの頭上に浮かぶHPゲージを大きく削っていた。
「いいね。コツが掴めてきた気がするよ」
武装解除を堪えるためにどのタイミングで手に力を込めればいいのかわかった。この戦闘以外では役に立ちそうもない感覚とはいえ、この瞬間には大変有益な感覚だ。
振り下ろされるロックオーガの棍棒を回避してすかさずに斬撃アーツを発動させる。
目の前に叩き付けられた棍棒を持つロックオーガの腕が巨大な柱のように目の前に聳え立つが、寧ろそれはこちらかすれば絶好の的。思い切り剣銃で斬り付けると一筋の切り傷がテクスチャが剥がれたポリゴンのような形として刻まれ、さらに続けて微細な石の欠片が舞う。
ぐっと剣銃を持つ手に力を込める。そうすることで決して剣銃は俺の手を離れない。
「はああっ。<シル・ファード>」
ロックオーガの体を挟んで反対側で高速の突きのアーツが瞬く。
当然棍棒を俺の方に向けて振り下ろしたのならばイナミナが立つ反対側は無防備な背中を晒した状態となる。強固な背筋が亀の甲羅のようにロックオーガの身を守るもイナミナの繰り出す一撃はそれすらも貫く。
閃光が瞬いた瞬間にロックオーガのHPゲージがガクンッと減り残り半分を切ったことを表わした黄色に変わる。
「避けてください!」
ドスンと大きな音を立ててロックオーガが前のめりに倒れる。その位置には攻撃を終えたばかりの俺がいる。
緊迫感のある叫び声を耳にしてすかさず回避を目論むも明らかにただの跳躍では回避しきれない距離にいる。それならばと自身の後方に向けて【アンカーショット】を放ち着弾した瞬間に左手を引いた。
体を襲う急加速に身を任して高速移動する俺がいた場所にロックオーガは両手を伸ばした格好で倒れ動かなくなっている。
「ありがとう。助かりました」
「いえ。間に合って良かったです」
回避を成功させて身を起こした後にイナミナに声を掛けると元気な声が返ってきた。
それにしてもと動きを止めたロックオーガを見る。これはダメージが蓄積したことで現われる硬直状態なのだろうか。もしそうならばこちらにとって絶好のダメージを稼ぐチャンスなのだが。
確信が持てずに出方を探っていると突然、ロックオーガを囲むように地面を突き破って先の尖った岩の山がいくつも現われたのだ。
まるでロックオーガを守るために現われた岩の山。
あるいはロックオーガを閉じ込めるための岩の檻。
「さて、どっちかな」
小さく独り言ちて攻撃するかどうかを考える。
前者ならば攻撃をするのは悪手。しかし後者ならば。
例え数秒の逡巡とはいえ戦闘の最中には後に多大な影響をもたらす時間のロス。
行動しないよりもした方が良いと考えて駆け出した俺が振り抜いた刃が岩の山の合間を縫ってロックオーガに届きかけたその刹那、まるで獲物を待ち構えていた食虫植物のようにロックオーガを囲っていた岩の山が内側へと倒れかかってきた。
「嘘、だろ……」
自分の安直な行動を悔やむよりもまずは自身の安全を確保する方が大事だ。
逃げ場などないように見える状況のなかで懸命に活路を探す。
後ろは無理。
横も全て防がれてしまっている。
ならば…。
「前に、出る!!」
体を起こす気配のないロックオーガに向かって駆け出した。
腕を伸ばした格好で固まっているおかげでできている空白にスライディングするように滑り込む。
閉じでしまいそうになる瞼を意思の力で開いてしかと見る。
内側に崩れてきた岩の山はロックオーガの体に激突してバラバラに崩壊していく。
舞い散る砂埃とガラガラと音を立てて降り注ぐ大小様々な岩が雨のように降り注ぐ。
軒先の屋根を打つ雨音などとは比べものにもならない大きな轟音に顔を顰めながらもそれが止んだ瞬間に地面すれすれに【アンカーショット】を撃ち出して素早く自身の体をロックオーガの体の下から退避させた。
「ユウさん!!」
偶然にも退避したのはイナミナがいた位置だったらしく、ロックオーガの元から飛び出してきた俺が地面を転がって勢いを殺して起き上がったタイミングで駆け寄ってきた。
「良かった。無事だったんですね」
「なんとか」
ほっと胸を撫下ろしていたイナミナに微妙な顔をして答える。
「迂闊でした。碌に攻撃もできないままこんな状況になってしまうなんて」
「大丈夫です」
「え?」
「ダメージらしいダメージは受けていませんから。まだまだこれからですよ」
「そうですね」
前向きなイナミナには救われると笑みを返す。
気持ちを切り替えて砂埃が煙幕のように舞っているところを見てみると灰色をした煙を吹き飛ばすようにロックオーガが立ち上がった。
その体に降り注いでいた岩の雨はもはや何処かに消えている。
消えた岩の行方。それは紛れもない。体の至る所に棘のようなものが生成されているロックオーガに吸収されたとみるべきだろう。
ついでにと言うか、これが本来の目的とした変化なのか、携えていた棍棒もまたその体に吸収されている。代わりに現われたのは両腕が異常なまでに肥大化した姿。それこそその両腕が棘の付いた棍棒と変化してしまったかのようだ。
「今度は左右に別れても簡単に隙を突くことは出来なさそうですね」
イナミナの言うとおりこれまでの攻撃は片方の腕で持った棍棒によるものだったが今度は両腕が棍棒と化している。単純に考えて攻撃手段が倍になった。それは即ち左右の腕で俺とイナミナを捉えられることに他ならない。
「だとしても俺たちにできることは変わりません」
「そうですよね。わたしが求めている“変身”を手に入れるためにもこんなところで躓いてはいられません!」
「その通りです!」
気合いを込め直してもう一度ロックオーガと向かい合う。
石でできた頭がこちらを向く。
輝きなどない。無機質な瞳が獲物を求めて動いた。
「行きましょう」
「はい!」
言葉を交わして駆け出す。
接近する俺たちを捉えたロックオーガが両腕を文字通り棍棒として振り下ろしてきた。
ダダンっと二度続く打撃音が轟く。
地面が揺れて俺たちの足を止めようとしてくる。
「それはもう見せてもらった!」
両腕が武器となっても攻撃自体は変わらない。
それならば対応はもうできている。
揺れは長く続かない。
じっとその場に留まり堪えるよりも強引に駆け抜けた方が確実に攻撃に繋げられる。
無論普通の地震ならばこんな手段に出れば自殺行為そのものだが、今回は違う。ロックオーガによって引き起こされる揺れなのだ。
微かな揺れは残るが、それを無視してロックオーガの元へと辿り着いた。
「<セイヴァー>」
斬撃アーツを放ち地面に叩き付けられている腕をまっすぐ縦に斬り裂く。
棍棒となった腕に付いた棘のせいでこちらから安全に攻撃できる位置が限られているのには困ったが、一度その位置を把握してしまえば棘は無視できるも同然。
「ぐっ」
すぐに追撃を行おうとさっきまでのタイミングで武装解除を堪えようとしていたが、この変化によってロックオーガが常時発動させている武装解除の効果が高まったのか剣銃が手を離れようとする勢いが増した。
奥歯を噛んで強く柄を掴むことで取り落とすことは無かったが、残念なことに追撃は叶わなかった。
「ああっ!?」
反対側から攻撃を仕掛けていたイナミナの困惑した声が聞こえてくる。どうやら彼女も武装解除の効果が高まったことを実感したらしい。
ちらりとそちらの様子を一瞥して、大きなアクシデントが起きていないことを確認すると一拍を置いた攻撃を放つ。
「くっ」
またしても感じる武装解除の効果を堪えていると、不意にガリガリと何かを削るような音が聞こえてきた。
「何の音だ?」
視線を巡らせて音の出所を探るとそれはロックオーガが自身の腕を地面に着けたまま振り回そうとして床を削る音だった。
「下がれ!」
今度は俺がイナミナに声を掛けた。
二人同時に後ろに下がってロックオーガの攻撃に備えていると、予期していた攻撃が目の前を通り過ぎた。
棘の付いた棍棒が地面を削り、そして同時に近くに残っていた岩の山の残骸を殴り飛ばす。
殴り飛ばされた残骸が飛礫となって飛んでくるが、攻撃に備えていたために俺とイナミナはその直撃を受けることなく避けきることができていた。
自身を独楽のように腕を振り回したロックオーガがゆっくりと止まる。
ふらふらとフラつきながらだらしなく腕を伸ばした格好で動きを止めたこの瞬間こそが本当のプレイヤーに与えられた攻撃のチャンスだ。
「一気に行きましょう!」
腕を狙うよりも本体に攻撃を叩き込んだ方がダメージは多い。
だらんと伸ばされた腕を避けて近付き、前からは変わっていないその腹に向けて、
「<セイヴァー>」
「<シル・ファード>」
それぞれが得意とするアーツを叩き込んだ。
無防備を晒しているといっても武装解除の効果は残っている。しかし腕を斬り付けた時に比べれば明らかに弱く、心懸ければ容易に耐えきれる程度だった。
「これなら――<インパクトノーツ>」
より威力を高めても問題はない。
次檄に対する威力増加の補助アーツを発動させて構える。
「<シル・ファード>」
想定よりも早く身を起こし始めたロックオーガを留めておくためにイナミナは敢えて本体ではなく、その巨体を支えている脚に目掛けてアーツの突きを放った。
ドカンと音を立ててよろめくロックオーガ。
それはこれまでに積み重ねられたダメージによって発生した“よろめき”の瞬間だった。
「今です!」
「はい! <セイヴァー>!!!」
威力を高めた斬撃アーツがロックオーガを斬り裂く。
その頭上に浮かぶHPゲージが赤を超えて一気にゼロへとなった。
巨大なロックオーガの体が光に包まれる。
一拍の間を置いて光が弾けて霧散した。
「やったあ!! って、うわあ!?」
喜ぶイナミナの目の前にこれまでにない大きさをした光石が落ちてきた。
「えっとこれは?」
「安心してください。パーティで一つというわけじゃないみたいですよ」
自分の足下に転がる光石を拾い上げて言う。
すると安心したのかイナミナはそれを拾い上げて興味深そうに眺めた後に自身のストレージに片付けていた。
「扉が開いたみたいです。先に進みましょう」
「そうですね」
回復は移動の最中で十分だろうと歩き出した俺を小走りで追いかけて来たイナミナと並んで第六層に続いている階段を下りていく。
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レベル【7】ランク【4】
生命力
精神力
攻撃力【D】
防御力【F】
魔攻力【E】
魔防力【F】
速度 【C】
専用武器
剣銃
↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】
魔導手甲
↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】
防具
頭防具――【イヴァターレ・H】
胴防具――【イヴァターレ・B】
腕防具――【イヴァターレ・A】
脚防具――【イヴァターレ・L】
足防具――【イヴァターレ・S】
一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】
アクセサリ【6/10】
↳【生命の指輪】
↳【精神のお守り】
↳【攻撃の腕輪】
↳【魔攻の腕輪】
↳【魔防の腕輪】
↳【速度の腕輪】
↳【変化の指輪】
↳【隠匿の指輪】
↳【変化のピアス】
↳【―】
所持スキル
≪剣銃≫【Lv132】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。
↳<セイヴァー>――“威力”、“攻撃範囲”が強化された斬撃を放つ。
↳<カノン>――“威力”、“射程”、“弾速”、が強化された砲撃を放つ。
↳<インパクトノーツ>――次に発動する全てのアーツの威力を増加させる。
↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技。
↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技。
≪魔導手甲≫【Lv20】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。
↳<ブロウ>――“威力”を高めた打撃を放つ。
≪錬成強化≫【Lv110】――武器を錬成強化することができる。
≪竜化≫【Lv―】――竜の力をその身に宿す。
≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。
≪自動回復・HP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に生命力が回復する。
≪自動回復・MP≫【Lv―】――常時発動。一秒毎に精神力が回復する。
≪状態異常無効≫【Lv―】――状態異常にならない。(特定の状態異常を除く)
≪全能力強化≫【Lv100】――全ての能力値が上昇する。
残スキルポイント【7】
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