表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガン・ブレイズ-ARMS・ONLINE-  作者: いつみ
第十八章 
603/665

大変な改変は異変!? 35『レベル“2”』


 変貌を遂げたジルバの体は一回りほど細くなっている。

 全身を覆っている鎧は体に張り付いているかのように人としてのシルエットを強調しているかのよう。

 姿形は全く異なっているというのに、どうしてだろう。竜化した自分を見ているみたいだ。


「な、なんだそれ」


 困惑という単語以外浮かんでこない。

 それほどまでにジルバの変貌は俺の想像を超えていた。


「それほど驚くことはないだろう。お前だってやっているじゃないか。“変身”だよヘ、ン、シ、ン」


 さも当然のことであるように告げるジルバに俺は分からないという顔を浮かべていた。竜化した鎧に隠されてはいるが。


「ちょうどいい。ちょっとばかし付き合えよ」


 ジルバが握るライフルの銃身にそれまでよりも一回りほど大きな刀身が備わっている。血のように赤く、氷のように冷たい印象を持つ刃が。

 変貌を切っ掛けに中断していた戦闘が再開された。

 本人としては軽い一歩のつもりだったのだろう。しかしその一歩は瞬く間に俺との距離を縮め、立ち止まった時にはその変貌した顔が目の前にあった。


「――っ」


 表情のない仮面のような顔。何の意匠が込められているのかは分からない、獣のようで、人のようで、化生のようで、その全てとは異なっているかのよう。


「おっと、行き過ぎたか」


 ライフルのグリップ部分でトンッと軽く俺の胸が押される。

 たったそれだけだというのにバランスを崩して後ろに倒れてしまいそうになる。

 倒れまいとして堪え、ハッとしたようにガンブレイズを振るも既にその場にジルバはいない。元々いた位置へと戻ってしまっていた。


「速い」

「あー、ちょいと待て」


 驚愕する俺の目の前でジルバがその場で数回ジャンプして自身の身体能力を確かめるような素振りを見せた。

 軽くライフルを振り、首を捻り、拳を作って、開く。

 まるで初めて竜化した時の自分を見ているようだ。


「いいね。それなりに慣れてきた」

「何?」

「気にするな。随分と久しぶりだったってだけだ」


 ダンッと一発の銃声が轟く。

 爆発音が続き白煙を巻き上げながら足元の地面が大きく抉られた。

 穴の開いた地面を一瞥してすぐに顔を上げる。視線の先でジルバの姿が一瞬にして掻き消えた。


「来る!」


 身構えた俺の背中に強い衝撃が走る。

 攻撃を受けたのだと咄嗟に振り返るもそこにはもう誰もいない。そしてまた別の方向から衝撃が走る。攻撃を受ける度に振り返り誰もいないという一連の動作を繰り返していると程なくして何かの影が視界の端に捉えることができた。


「瞬間…いや、超高速移動、みたいなものか」


 自分でも驚くほど冷静に分析することができているのは受けたダメージが想像していたよりも少なかったからだ。高速移動から繰り出される攻撃はどれも軽いものばかり。おそらく強攻撃を行うことができないのだろう。

 であれば、まだやりようがある。

 一旦反撃をすることを諦めてじっと防御だけに集中することにしたというわけだ。

 ガントレットを体の前で構えて【フォースシールド】を発生させることなく身を守る。

 繰り返される攻撃の最中、腰を落として防御し続けていると見えてくるものがある。


「なんだとっ!?」


 驚きを見せたのはジルバだった。

 それまで為す術も無く攻撃を受け続けていた俺がライフルが振り下ろされた直後、カウンターのようにガントレットを装備した拳を突き出した。

 ジルバの腹部を捉えた拳が彼の全身に衝撃を迸らせる。

 一瞬、動きを止めたジルバがまたしても超高速移動で俺から離れ、そして再び俺に攻撃を喰らわせようと襲ってきた。


「ぐあっ」


 だが、またしてもジルバの魔の手は俺に届くことなく途中で止まった。

 代わりに再び突き出した俺の左の拳がまたしてもその体を打ち付けていた。

 くの字に体を曲げたジルバがよろめき立ち止まる。


「何故……?」

「そうだな。強いて言うなら、慣れた」

「はあ!?」

「あれだけ繰り返されれば、嫌でも慣れるってもんだろ」


 受けたダメージを考えても安い代償であったように思う。

 ガンブレイズを銃形態に変えて立ち止まったジルバを狙い撃った。

 変貌を遂げたジルバの体の表面に火花が迸る。

 どうやら速度だけではなく防御力も向上しているようだ。


「それで、また同じ攻撃をしてくるつもりか?」

「まるで意味がないと言っているみたいだな」

「みたいじゃない、そう言っているんだ」


 背筋を伸ばしたジルバが無意味に俺の顔の横を撃った。

 まるで最初から当てるつもりなどなく、言葉の代わりに銃弾を放っただけのようだ。


「付け上がるなよ」

「どうかな。そう思うのなら同じように攻撃してみればいい」

「このおれが挑発に乗ると思うのか」

「残念だ」


 何十発という攻撃を繰り出した後にたった二回カウンターされただけだというのに、ジルバは慎重にも攻撃パターンを変えてきた。

 そして始まる至近距離での剣の打ち合い。

 刀身の長さの違いなど物ともしないように互いの攻撃を防ぎ、また一瞬の隙を狙って攻撃を仕掛ける。

 互いに有効打を与えられないまま続く剣戟はいつしか数分もの時が経過していた。


「どうした? 思ったほど強くなっていないんじゃないのか?」

「そんなわけが――」


 挑発するような俺の言葉にジルバがあり得ないと狼狽えた。


「確かにあの高速移動には驚いた。けど、正直に言えば、それだけだ。戦い始めた頃のような威圧は無くなっているぞ」

「…違う」


 力を込めてジルバを押し返す。

 純粋な力や速度は確かに増している。けれどそれが脅威たり得るかと言えば違う。一撃で体力の大半を奪ってくるようなモンスターと幾度となく戦ってきたことを思えば、今のジルバは不思議と人の範疇に収まっているようにさえ思えた。


「そうだな。例えるのならプレイヤーと戦っている時みたいだ」

「違う!」

「しかも、それなりに強い、な」

「何を馬鹿なことを」

「こうして斬り合えているのがその証拠だとは思わないか?」

「…くっ、何故いきなり強くなった?」

「違うね。弱くなったのさ、アンタが」

「ふざけるな!」


 至近距離からライフルの銃弾が放たれる。

 だはその弾丸は俺を貫くことなく、寸前の所で発生した【フォースシールド】によって阻まれた。


「弱くなっただと? ありえない。そんなはずがない!」


 激高してライフルで斬り掛かってきた。

 手首を返して素早くライフルを打ち払う。

 弾かれた腕が上がり、顔のない顔が驚愕で染まる。


「最初の頃の状態に戻ったらどうだ? その方がまだ強かったんじゃないか」

「あり得ない」

「だったら、このまま俺に負けろ」


 蹴りを放ち、体勢を崩したジルバを追い込む。

 連続斬りを受けたジルバのHPゲージが瞬く間に減っていった。


「<セイヴァー>」


 自身が優勢になったことでアーツを織り交ぜる余裕も出てきた。

 ライトエフェクトによって描かれた流星が幾重も重なり一つの絵柄を作り上げていく。


「<アクセルブースト>」


 最後の一撃を打ち込む直前、僅かな時間と次の攻撃を繰り出すための間を作りだすために、もう一度、今度はより強くジルバを蹴り飛ばした。

 ガンブレイズの刀身に重なる赤く光るもう一つの刃。

 ジルバはその輝きの意味を知らないはずなのに、それを一目見た瞬間に、それが自身に届きうるものだと直感したらしい。

 ヒュッと息を呑んで、後ろに下がった体勢のまま固まるジルバ。


「これで決める」


 ガンブレイズの切っ先を下げて近付いていく。

 戦闘が始まった頃とは全く逆の状況に陥ってしまっていることにジルバはまだ頭の整理が付いていないのか何か小さく呟きを繰り返しながら狼狽えるようにふらふらと後退している。

 両者の距離は僅か二メートル弱。

 踏み込めばガンブレイズの切っ先が届く距離だ。


「<ブレイジング・エッジ>」


 威力上昇のアーツの影響を受ける斬撃の必殺技(エスペシャル・アーツ)を放った。

 右から左へ流れる流星の如く、赤い光を帯びた青い剣閃がジルバを斬り裂く。

 攻撃と共に駆け抜けた俺の背後でジルバの仮面が崩れていく。

 剥き出しになったその顔が物語っている。「そんな馬鹿な」と。

 現状を理解する間も与えないまま、ジルバを大きな爆発が飲み込んだ。


「ふぃ」


 溜め込んでいた息を吐き出す。

 自ずと竜化が解け、本来の姿に戻った俺が振り返った先にはもう何も残されていない。ジルバがいた痕跡さえも。


「勝った…終わった、のか?」


 実感が無いと言えばその通り。

 例えコンソールが出現し、そこにこの戦闘のリザルト画面が表示されていようともだ。

 バンッと一際大きな音が響く。

 それはこの部屋の先に続く扉が開かれた音だ。


「なるほどね。まだ先があるってわけか」


 疲れた体に鞭打って――実際に身体的披露はないが、精神的疲労は感じている――俺は開かれた扉へと向かった。

 扉の向こうには階段がある。

 遙か上へと続いている階段だ。


「これはどこまで続いているんだろうな」


 ふと戦いを繰り広げていた部屋を見た。

 爆発は収まり、何かが燃えた形跡さえも消えている。戦闘で荒れた内装もいつしか最初の頃に戻されている。


「だから早いよ」


 せめて俺がこの場所を去ってから復元してほしかった。

 これではまるでこの戦いが幻であったと言われているかのようだ。

 苦笑を漏らして階段を上っていく。

 道中受けたダメージを早く回復させるために回復アイテムを使用しながら。

 ビルの何階分くらい上っただろうか。

 遠くで光が漏れている場所がある。

 そこが次なる舞台なのだと覚悟を決めて光に囲まれた扉を強く押し開いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【23】ランク【3】


HP【10040】(+320)

MP【8950】(+770)

ATK【286】(+1810)

DEF【248】(+1880)

INT【276】(+900)

MND【204】(+1110)

AGI【324】(+1130)


【火耐性】(+10)

【水耐性】(+50)

【土耐性】(+50)

【氷耐性】(+150)

【雷耐性】(+100)

【毒耐性】(+100)

【麻痺耐性】(+200)

【暗闇耐性】(+150)

【裂傷耐性】(+40)


専用武器


剣銃――ガンブレイズ【Rank1】【Lv1】(ATK+600 INT+600)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲――ガントレット【Lv67】(ATK+460 DEF+460 MND+420)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭――【イヴァターレ・ネックウォーマ】(MP+270 INT+210 MND+210 氷耐性+30 毒耐性+70 麻痺耐性+70 暗闇耐性+50)【打撃耐性】【衝撃耐性】

胴――【イヴァターレ・ジャケット】(HP+210 DEF+410 MND+380 雷耐性+30 氷耐性+60)【反動軽減】

腕――【イヴァターレ・グローブ】(ATK+330 DEF+240 AGI+160 火耐性+10 氷耐性+10 雷耐性+30 毒耐性+30)【命中率上昇】【会心率上昇】

脚――【イヴァターレ・ボトム】(HP+110 ATK+210 DEF+320 AGI+410 氷耐性+30 裂傷耐性+40)【命中率上昇】【会心率上昇】

足――【イヴァターレ・グリーブ】(ATK+110 DEF+370 AGI+460 氷耐性+20 雷耐性+40 麻痺耐性+30)【気絶無効】【落下ダメージ軽減】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【10/10】

↳【大命のリング】(HP+500)

↳【魔力のお守り】(MP+500)

↳【強力の腕輪】(ATK+100)

↳【知恵の腕輪】(INT+100)

↳【精神の腕輪】(MND+100)

↳【健脚の腕輪】(AGI+100)

↳【地の護石】(地耐性+50)

↳【水の護石】(水耐性+50)

↳【暗視の護符】(暗闇耐性+100)

↳【麻痺の護符】(麻痺耐性+100)


所持スキル


≪剣銃≫【Lv101】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――威力、攻撃範囲が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――威力、射程が強化された砲撃を放つ。

↳<アクセルブースト>――次に発動する物理攻撃アーツの威力を増加させる。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技。

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技。

≪魔導手甲≫【Lv1】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。

↳<ブロウ>――威力を高めた拳で殴り付ける。

≪錬成強化≫【Lv100】――武器レベル“100”までの武器を錬成強化することができる。

≪錬成突破≫【Lv1】――規定のレベルに到達した武器をRank“1”に錬成突破することができる。

≪竜化≫【Lv―】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にHPが少量回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にMPが少量回復する。

≪全状態異常耐性≫【Lv40】――状態異常になる確率をかなり下げる。

≪全能力強化≫【Lv95】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【0】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ