表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガン・ブレイズ-ARMS・ONLINE-  作者: いつみ
第十八章 
587/664

大変な改変は異変!? 19『次へ』


 戦いの影響で中破したことで使えなくなった玉座の間を離れ、俺たちが居るのは王城にあるもう一つの開かれた大きな部屋。叙勲の間とも呼ばれているその部屋は普段使われていないにもかかわらず埃一つないくらいに掃除が行き届いていた。

 開け広げられている豪勢な刺繍が施されているカーテンの向こうからは綺麗なオレンジ色をした夕日が差し込み、部屋の中を一色に染め上げている。


「ジルバを取り逃がした以上、あれで終わりとは考えるわけにはいかぬのだろうな」


 叙勲の間に置かれている儀礼用の王の椅子に座っている王さまが腕を組み眉間に皺を寄せながら言った。

 王さまの前にいる王妃さまたちが一様に神妙な表情で頷いている。


「とはいえ、ゴドウが無事だったのは其方たちのお陰だ。重ねて礼を言う」

「あ、いえ。でも、その……」

「陛下はいつから入れ替わっていたとお考えなのですか?」


 深く頭を下げた王さまに戸惑う俺に変わってムラマサが訊ねた。


「ふむ。ゴドウから聞いてみなければ正確なことは言えんが、我に毒を盛った時にはすでに入れ替わっていたと考えておる。そもそもからしてゴドウは気の小さな男でな。我を害してまで王位に就こうなどとは考えてもおらぬはずなのだ」

「そうなんですか?」

「確かにあの子の性格を思えば王よりも宰相として後ろから色々と知略を張り巡らせている方がしっくりきますね」


 王妃さまの言葉に俺は驚いてルミナの顔を見た。

 すると微妙な表情を浮かべて目を泳がしているルミナが慌てて俺から視線を逸らした。


「ああ、なるほど。どうやら貴方たちはルミナスからゴドウならばやりかねないとでも言われていたのでしょう」

「あ、はい。そうです」

「ふふふ。ルミナスもまだまだ人を見る目が足りていませんね。ゴドウはあからさまに「俺が影の支配者だ」といって悦には入るタイプでしょう」

「でしたら……」

「まあ、口だけでしょうけど」

「……はい?」

「陛下も言っておられたでしょう。あれは一際気の小さな男です。自分が王として人の上に立つことの重圧には耐えられるはずもない。せいぜい王の横に立って実権は彼が握っているのだと噂されるようになることを望むくらいでしょうか」

「えっと、それでいいんですか?」

「構いません。噂など所詮噂。実態が伴ってなければ虚しいだけです。それに、王というのはどんなに精錬潔癖そうに見えても敵が出てきてしまうもの。そこで王座を狙っているような口振りをしている補佐がいれば、ましてそれがゴドウという血と立場が確かなものであれば、そういった輩は皆ゴドウの元へ集うでしょう。それは良い撒き餌となりますし、ゴドウも敢えてそうなるように振る舞っているようにも見えますね」

「そうだな。あれは随分と前に我に言ってきたことがある。自分は王座に就くつもりはないから、後継はその次の世代にするべきだとな。ゴドウの結婚が早かったのもそれが理由だ。あれは自分の子を次の王に据えるつもりなのだ」

「認めたのですか!?」


 驚くルミナが思わずと言ったように大きな声を出した。


「ゴドウの子にその資質が見られるのならと条件は出したがな。だが、実際あれの子には王の資質が見られる。ゴドウに似て少しばかり気が小さいのが気になるが、それは周りが埋めてやれば事足りる。王が王として担うべき役割というものをよく理解している、そうは思わんか?」

「うーん、どうなんでしょう?」

「分からんのか?」

「分かるもなにも、あの子はまだ三歳ではありませんでした?」


 ルミナの一言にムラマサと俺は同じように虚を突かれた顔になった。

 王さまや王妃さまといえど孫が可愛い普通のおじいちゃんとおばあちゃんだということらしい。


「まあ、心配するな。我とてすぐに王位を譲るつもりは無い」

「そのつもりがあるのでしたら、今度からはより一層周囲に警戒してくださいね。ゴドウにそのつもりがないのだとしたら、陛下が倒れればこの国のトップがいなくなるのですからね」

「うむ。善処しよう」


 今回の毒を受けたことをなかったことにするかのような発現に王妃さまが苦言を呈した。


「それよりも問題はこれからのことだ」

「はい」

「そなたらはジルバが全ての黒幕だと思うか?」

「いえ。何かしら事情は知っているでしょうが、ジルバ一人で全てを企てたとするにはあまりにも事が大きすぎるように思えます」


 王さまの問いにルミナがはっきりと答えた。


「では、やはりまだ何も終わっていないと見るべきだろうな」

「おそらくは」

「そしてこの国にもまだ多くのフェイスレスは潜んでいるはず」

「はず、ではなく、確実に」


 目を伏せたルミナが確信に満ちた声で言った。


「そうだな、それが外に知られればこの国に余計な干渉がが増えることになるだろう。まかり間違えばフェイスレスがこの国から生じたものだとあらぬ誤解が起きかねん。下手なことが起きる前にこちらから手を打つ必要があるというわけだ」

「はい」


 ルミナが力強く頷く。


「ここで我らがするべきことは二つ。国内のフェイスレスに対処すること、そして逃がしてしまったジルバを捕らえることだ」

「ですが、フェイスレスを相手にするには…」

「わかっている」


 王妃さまが眉を潜めて言葉を濁したそれを王さまは言わなくても伝わっているとした。


「して、ムラマサとユウの二人に問いたい。我が国の兵がそなたらのようにフェイスレスを倒せるようになる手段はあるのだろうか? 武器防具の類が必要ならば王の名において集めることが可能だが」

「いえ、確かに武器や防具も重要ですが、フェイスレスを倒すとなれば重要なのは兵自身の技量かと」

「それは我が国の兵がそなたらに劣っているということか?」

「雑兵のフェイスレスならばどうにかすることもできるでしょう。しかし、アブゾーブ・オクトパスのような個体となると難しいかと」


 遠慮がちながらもはっきりと告げたムラマサの言葉を受けて王さまは怒るでも嘆くでもなく、まるでそう答えられることを予測していたというように大きな溜め息交じりに「そうか」と答えるのだった。


「何が足りないのですか?」


 王さまに代わって王妃さまが訊ねてくる。

 ムラマサはどう答えたものかと考え込み、慎重に言葉を選びながら話し出した。


「オレやユウがアブゾーブ・オクトパスのようなフェイスレスと戦えているのは二人共が人を超えた力を使うことができるからです」

「人を超えた力?」

「オレの場合は“鬼”の力。ユウの場合は“竜”の力」

「二人は人族ではないの?」

「種族という意味ではそうですが、この力はその存在を上書きするようなもの、と言えばいいのか。すいません。詳しい仕組みはオレもはっきりとわかっているわけではないので」

「ならば我らもその力を手にすることはできるのか?」

「残念ながら明確な方法というものをオレは知りません。オレがこの力を手に入れる切っ掛けは【氷滅鬼(こおりおに)】という鬼を討伐したときにその怨念とでもいうべき残滓を吸収してしまったことです。おそらくはユウも同じでしょう。自分一人の力だけで強力無比なモンスターを倒すことが条件なのだとすれば、兵士の方々に同じ事を命じることはできないのでは」

「そうだな。無為に死んでこいと命じることなど到底認められるものではないからな」


 最後に少しだけ挑発するような物言いになったムラマサだったが、王さまはそれを無視してできないことはできないと明言してみせたのだ。


「だからと言って手を拱いているつもりはないがな」


 強い意思を秘めた目で王さまが俺とムラマサを見る。


「勇気と無謀は違いますよ?」

「無論だ」


 ムラマサの注意を即座に肯定する。


「現実的なのは件のフェイスレスに有効な武器を作り出すことか」

「武器ですか?」

「そうだ。今のままでは兵士に死んでこいと言っているようなものだからな。せめてフェイスレスに通用する武器を持たせられれば、多少は事態も好転するだろう」

「それは、まあ、そうですけど」

「強すぎる武器は不要な争いを呼びませんか?」


 王さまの言葉にルミナとムラマサが揃って不安そうな声を出した。


「そなたらの危惧も分かる。だが、今のままではフェイスレスに蹂躙されるがままだ。今回は偶然にもムラマサやユウがいたから助かった。だが、これから先もずっと手を借り続けるわけにはいかぬだろう。国防をたった二人に頼り切ったままというのはまともな状態だとはとても言えないだろう」

「そう、ですね」

「何より二人には逃げていったジルバを追いかけてもらいたいのだ。遺憾ではあるが、今の我が国にそれを任せられるものはおらん。それに他国に逃げおうせたとするのなら我が国の兵士が完全武装して入り込むわけにもいかぬからな。その点、其方等ならば誰にも文句は言われないだろう」


 王さまが立ち上がってゆっくりと近付いてくる。


「どうだ。頼まれてはくれぬか?」


 目の前に立つ王さまに問い掛けられると俺とムラマサは揃って互いの顔を見合わせた。


「俺は……」

「申し訳ありません」


 俺とムラマサの言葉が重なる。

 しかしその言葉は大きく異なっていた。

 きっぱりと断って答えたムラマサの顔を見る。そこには一切迷いの無い、心を決めた表情を浮かべているムラマサがいた。


「オレはもう少しルミナに手を貸したいと思います」

「どういう意味だ?」

「オレの知るルミナはこの国に潜んでいるフェイスレスを無視することのできない人です。もしどこかでフェイスレスによる被害が出たと知れば彼女はすぐにでも飛び出してしまうはずです。それこそ、ルミナにフェイスレスを倒すことができるかどうかは構わずに」


 じとっとした目でルミナを見る王さま。

 王さまがルミナが取りかねない無謀な行いを責めるような視線を向けているが、強く否定することもできないのは、王さまとてルミナの性格を理解しているからだろう。

 然もありなんと溜め息を吐く王さまを王妃さまが苦笑交じりの笑みを浮かべて見つめている。


「ではムラマサは引き続きこの国で起きた事件の解決に力を貸してくれるということでいいのか?」

「ええ。とりあえずはそのつもりです」

「相分かった。すまんがこの我が儘娘のことを宜しく頼む」

「はい。然るべく」


 恭しく了承したムラマサが一歩下がった。

 次はユウの番だというように目線を送ってくる。


「つまり俺がジルバを追えばいいんだな?」


 それは誰に向けた言葉だったのか。

 自身の役割を決めたムラマサか、俺に頼んできた王さまたちか、それとも。

 わかったと軽く頷く。

 するとひとりでにコンソールが浮かび上がり、それまで空欄だったスペースに新しい一文が表示された。


『クエスト【ジルバの追走】が始まりました』


 どうやらこの時点で俺はムラマサのクエストを共に進めているのではなく、二つに別れたクエストの片方を独自に進めることになったらしい。


「どうかしましたか?」

「あ、いえ。大丈夫です」


 コンソールを見つめ固まっている俺を王妃さまが心配そうに声を掛けてきた。


「わかりました。俺がジルバを追いかけます」

「そうか。すまないが頼んだぞ」

「はい」


 ムラマサと同じように一礼をして下がる。


「緊急の伝令です!」


 するとこれで話は終わったというように開かれたままである叙勲の間の扉の向こう。王城の前が騒がしくなった。

 窓の傍へと駆け寄り何事かと見下ろしてみると待機している門兵の所に二人組の兵士が慌てて駆け込んできたのが見えた。

 彼らが纏っている鎧には大きな傷が汚れが見られ、まるで今の今まで戦闘の渦中にいたかのよう。


「何事だ?」と門兵の一人が訊ねる。

「南東マソル地域にて件のフェイスレスと思われるモンスターが出現しました。自分たちはシュルルイム隊長から伝令のために」

「わかった。まずは傷の治療を。私が上官に伝えておこう」

「お願いします、急いでください! シュルルイム隊長を、仲間を助けてください!」


 耳を澄まして外の声を聞いているとルミナがムラマサの手を引いて叙勲の間から飛び出そうとしていた。


「待て!」

「待ちません。彼らを助けられるのは私たちだけです!」


 王さまの静止を聞かずにルミナは去ってしまった。

 手を引かれているムラマサが振り返ってアイコンタクトを送ると、王さまは苦々しい顔をしてやむを得ないと頷いて答えている。

 ルミナとムラマサの姿が見えなくなった頃。王さまは疲れたというように浅く椅子に腰掛けていた。


「では、ユウよ。ジルバの件、頼んだぞ」

「はい」


 先程のクエストを受けた段階でムラマサとのパーティは解消されている。

 久々に一人分だけとなったHPゲージを一瞥して俺は新たに始めたクエストに挑む決心をしていた。


「ジルバが去って行った方向にあるのは【ノルア】という小国だな。まずはそこを目指すといい」


 叙勲の間を去ろうと振り返った俺に王さまが言った。

 最初の指針を受け取ったことで俺の次の目的地が決まった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【22】ランク【3】


HP【9960】(+320)

MP【8850】(+770)

ATK【276】(+1810)

DEF【238】(+1880)

INT【271】(+900)

MND【194】(+1110)

AGI【304】(+1130)


【火耐性】(+10)

【水耐性】(+50)

【土耐性】(+50)

【氷耐性】(+150)

【雷耐性】(+100)

【毒耐性】(+100)

【麻痺耐性】(+200)

【暗闇耐性】(+150)

【裂傷耐性】(+40)


専用武器


剣銃――ガンブレイズ【Rank1】【Lv1】(ATK+600 INT+600)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲――ガントレット【Lv67】(ATK+460 DEF+460 MND+420)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭――【イヴァターレ・ネックウォーマ】(MP+270 INT+210 MND+210 氷耐性+30 毒耐性+70 麻痺耐性+70 暗闇耐性+50)【打撃耐性】【衝撃耐性】

胴――【イヴァターレ・ジャケット】(HP+210 DEF+410 MND+380 雷耐性+30 氷耐性+60)【反動軽減】

腕――【イヴァターレ・グローブ】(ATK+330 DEF+240 AGI+160 火耐性+10 氷耐性+10 雷耐性+30 毒耐性+30)【命中率上昇】【会心率上昇】

脚――【イヴァターレ・ボトム】(HP+110 ATK+210 DEF+320 AGI+410 氷耐性+30 裂傷耐性+40)【命中率上昇】【会心率上昇】

足――【イヴァターレ・グリーブ】(ATK+110 DEF+370 AGI+460 氷耐性+20 雷耐性+40 麻痺耐性+30)【気絶無効】【落下ダメージ軽減】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【10/10】

↳【大命のリング】(HP+500)

↳【魔力のお守り】(MP+500)

↳【強力の腕輪】(ATK+100)

↳【知恵の腕輪】(INT+100)

↳【精神の腕輪】(MND+100)

↳【健脚の腕輪】(AGI+100)

↳【地の護石】(地耐性+50)

↳【水の護石】(水耐性+50)

↳【暗視の護符】(暗闇耐性+100)

↳【麻痺の護符】(麻痺耐性+100)


所持スキル


≪剣銃≫【Lv98】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――威力、攻撃範囲が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――威力、射程が強化された砲撃を放つ。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技。

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技。

≪錬成強化≫【Lv100】――武器レベル“100”までの武器を錬成強化することができる。

≪錬成突破≫【Lv1】――規定のレベルに到達した武器をRank“1”に錬成突破することができる。

≪竜化≫【Lv―】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にHPが少量回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にMPが少量回復する。

≪全状態異常耐性≫【Lv40】――状態異常になる確率をかなり下げる。

≪全能力強化≫【Lv90】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【8】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ