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闘争の世界 ep.28 『オレは勝つよ』

お盆の週なので来週の更新はお休みします。

台風が来ているようなので出かける用事があるのならお気を付けて。


新作始めています。

お盆の間も平日は更新してますのでよろしければ是非。

タイトルは【アルカナ戦記~機会に狙われた世界で最強の力を振るう俺~】となります。

どうか一度見てみてください。



 開幕直後、ムラマサは対峙するマルバとの距離を一気に詰めた。

 すかさず持っている抜き身の刀を振り上げて初撃を与える。


「<(おぼろ)>」


 流れるようにアーツの名称が発せられる。

 ムラマサが繰り出したのはスキル≪太刀・3≫で使えるようになる切り上げ攻撃のアーツだ。威力を高め、防御を崩すことを得意とするアーツを受けてマルバは持っている剣を上げてしまう。


「<(ながれ)>」


 続けてムラマサが繰り出したのは切り払いの斬撃。スキル≪刀・7≫で使えるようになるそれは体勢を崩した相手に大きなダメージを与えることができる。

 マルバは体勢が崩されているために防御をすることができない。ムラマサの切り払いのアーツをまともに受けたことで大きくHPを減らしていた。



「<(つらぬき)>」


 最後に放つのは突きのアーツ。スキル≪小太刀・6≫で使えるようになるそれは、本来刀身が短い小太刀だからこそ的確に弱点を突けるという使い勝手がいいアーツだが、ムラマサはそれを普通に刀で使うことにより純粋に威力の高い突きを行えるようになったのだった。

 先に使った<朧>や<流>のように付属効果がない代わりに威力はそれらの比ではない。

 ムラマサにとっては決め手としているアーツの一つであり、一連の連続攻撃の締めとなる一撃だ。


「うあっ」


 三連撃を受けたことによりマルバは大きくよろめく。

 ハルとの戦闘で受けたダメージと装備の損失によって一気に攻め立てられたマルバは残っているHPの大半を失ってしまう。

 冷静に戦況を見極めていたムラマサは追撃のアーツを使う事なく素直に刀で斬り掛かった。

 ここでマルバもちゃんと対応できていれば結果が変わったかも知れない。しかし残念なことにマルバは防御体勢すら取ることができないままムラマサが繰り出すトドメの一撃を受けてしまった。

 戦闘の舞台に立っていると聞こえてはこないが、この試合を見ている実況者たちは大いに盛り上がっていた。

 戦闘が始まってすぐに繰り広げられたムラマサによる一方的な展開。為す術もなくやられたマルバが舞台から姿を消したのと入れ替わるように新たなプレイヤーが姿を現わした。


「まさか、こんなに早く私の出番が来るとは。思ってもいませんでした」


 皺一つ無いパリッとした濃紺のスーツを身に纏い、長い黒髪を後ろで一纏めにしている女性だ。防具らしい防具は一つとしてなく、武器らしい武器も見当たらない。

 彼女の頭上に浮かび表示されている名前は【くろあん】。モデルのように背が高くすらりとした体格のくろあんは男女問わずに人気が出そうな人だ。


「四つしか使えないアーツの内、三つも明かしてよかったのですか? あなたならソレを使わなくても勝てたのでは?」


 くろあんが手に嵌めた黒い革グローブの手首の位置を整えながら問い掛けてくる。

 ムラマサは刀を鞘に収めてくろあんに向かい合うと少し考えた後に平然と答えた。


「んー、その場合ダメージを受けてしまうだろうと思ったから、かな」

「なるほど」


 ムラマサの答えに納得できたのか、くろあんはすっと背筋を伸ばしてムラマサの正面に立った。

 構えを取らずに自然体で立つくろあんと向かい合うムラマサ。

 二人の準備ができたと判断した運営のアナウンスが『両者、前へ!』と告げる。

 無言のまま戦いの舞台を進む二人。

 緊迫する空気が二人の間に漂い始める。


『両者、準備は宜しいか?』


 一定の距離を開けて立ち止まった二人は声に頷き返す。


『試合、開始!!!』


 戦いの火蓋が切って落とされた瞬間にムラマサは先程と同じようにくろあんに近付くべく一気に駆け寄った。


「それはさっき見たよ」


 アーツを発動させて切り上げの一撃を放とうとしたムラマサにくろあんは微かな笑みを浮かべて告げる。ムラマサにだけ聞こえるような小さな声だったが、それを耳にしたムラマサは<朧>を発動させることができなかった。

 発動させてしまうと的確なカウンターを受けてしまう、そんな直感がムラマサに一瞬の躊躇を与えてしまったのだ。


「意外と素直なんだね」

「そうかな?」

「そうともさ」


 アーツではなく普通に切り上げただけに留めたムラマサに向けてくろあんが変わらぬ笑みを浮かべて呟く。

 刀の切っ先がくろあんの首元を捉えるその刹那にガギンッという音が轟いた。

 完全に振り上げられる前に止まった刀。


「なるほど。それがキミの武器というわけか」


 自分の刀を受け止めてみせたくろあんが装備している武器を見て呟くムラマサ。

 くろあんが両手に装備している武器種はナイフのカテゴリの中にあるタクティカルナイフと呼ばれるもの。銘は【トライアンフ】。使い手の手にフィットするように細工が施された柄に曲線を描いた刀身。くろあんのスーツと同じように全体を濃紺に染め上げられたトライアンフはムラマサが振るう【白狼(びゃくろう)】という銘の刀をしっかりと受け止めている。


「良い武器だね」

「ありがとう。では、私もひとつアーツを披露するとしようか」


 獰猛な笑みを浮かべて宣言するくろあんが右手に持つトライアンフで白狼を払い退けると続けて左のトライアンフを使い勢いよくムラマサを斬り付けた。


「<ファング>」


 虎の頭部のような形をしたエフェクトを纏ったトライアンフの刃が迫る。


「くっ、<流>!」


 ムラマサは切り払いのアーツを発動させることで、くろあんが繰り出した<ファング>を迎え撃った。

 くろあんが使う<ファング>はスキル≪ナイフ・9≫で使えるようになる強威力の斬り掛かりのアーツだ。しかしそれは本来、獣の頭部を模したエフェクトは発生しない。くろあんが使うアーツにそれが発生しているのは単にトライアンフが持つ特殊効果によるものだった。

 武器が持つ特殊効果というものはムラマサが持つ白狼にも備わっている。トライアンフが獣のエフェクトを発生させることで攻撃範囲と威力を増加させるているように、白狼は装備者が使うアーツの名称を短縮させることで別のアーツと繋げて発動することができるようになる。

 アーツの名称変更という副次効果は相手に本来は別の名称を持つ同種のアーツだと気付かせないことに一役買っていたのだった。


「やるね。だったらこれはどうだい? <クラッシュ>」


 両手を合わせて突き出したことでライオンの頭部を模したライトエフェクトが獣の咆吼のような音と共にムラマサに飛び掛かった。

 至近距離に立ち、自分に迫るライオンの頭部に目掛けてムラマサは瞬時に<貫>を放った。

 矢を番えた弓のように腕を引いて白狼を勢いよく突き出す。

 獣の突きと白狼の突きがぶつかり合う。

 奇しくもほぼ同威力。

 同じタイミングで放たれた両者の突きは、互いにダメージを与えることなく弾け飛んで消えた。


「まだまだだ。続けていくよ」

「ああ。来い!」


 僅か数メートルしか空いていない二人の距離は互いに強く踏み出すことでいとも容易く縮まってしまう。

 ムラマサが振りかざした白狼の刃をくろあんがトライアンフを使って的確に弾く。

 浮いた刀を勢いよく振り下ろして反撃するムラマサにくろあんが直撃を免れるべく一歩後ろに下がる。

 追撃に突きの構えを取ったムラマサの前でくろあんがまたしても<クラッシュ>を放つ構えを取った。

 またしても同時に繰り出される<クラッシュ>と<貫>。

 二度目の激突の結果も先程と同様、二人を弾き飛ばすだけとなった。


「ここだ! <スネイル・バイト>」


 距離ができたタイミングで身を屈めて三種類目のアーツを放つくろあん。

 虎、ライオンときて今度は蛇のようなエフェクトがくろあんの腕を覆っている。それだけじゃない。くろあんが駆ける軌道もまた地を這う大蛇を彷彿とさせるものだった。


「狙いは下か!?」


 身を反らしても回避することなどできないだろうとムラマサは瞬時に回避を諦めて、同時に防御も諦めていた。選んだのは第三の手段。これまでと同じように同威力、あるいは上回る威力のアーツを使って迎撃すること。

 ムラマサが持つ手札では<朧>でも<流>でも<貫>であってもくろあんの<スネイル・バイト>を防ぐことはできないだろう。それは威力が足りないからではない。単純にその軌道がムラマサが持つアーツが繰り出す攻撃の軌道とはかけ離れてしまっているからだ。

 一瞬、ムラマサは切り払いの<流>ならばと思わなくもなかったが、実際の<流>の軌道は立った状態からの切り払い。切っ先が振り下ろされるのは精々ムラマサの腰の下まで。それでは地を這うように動いているくろあんを捉えることはできない。


「<八咫烏(やたがらす)>」


 ムラマサが使うアーツのなかで唯一漢字一文字ではないアーツ<八咫烏>はスキル≪直刀・5≫によって使えるようになるアーツで、鳥が地上の得物を攫う時のように急な弧を描く一撃はその威力もさながら、攻撃範囲の広さが何よりの特色だ。

 地を張るくろあんがムラマサの眼前で大きく跳ね上がる。

 くろあんが上昇したタイミングでムラマサは白狼の刃を振り下ろした。


「ハアッ」


 白狼の切っ先がくろあんを捉える。


「っつあっ」


 初めてアーツの激突による優劣がはっきりした。

 押し合いに負けたくろあんは上から強く叩きつけられたことで地面に強く体を打ち付けたのだ。

 追撃に備えて素早く体を起こしたくろあんは地面に付いた左手ではなく右手のトライアンフをムラマサに向ける。

 しかし時既に遅しとムラマサは離れた場所で白狼を構えていた。


「焦ることはないさ。まだ始まったばかりだろう」


 白狼の切っ先を向けて告げるムラマサに応えるようにくろあんはゆっくりと立ち上がる。


「そうだね。私も考えを改めようか」

「ん?」

「この後に最後の一人と戦うことになることは考えずに、今はただ、あなただけに集中しよう」


 息を整えて両手のトライアンフを掲げて初めてみせる構えを取るくろあん。

 互いの手の内を知った上で戦闘が仕切り直される。


ムラマサ レベル【26】


武器


【白狼】――白銀に輝く刀身が美しい刀。剣戟を繋げることができるようになる。


外装防具


【なし】――。


内部防具


【流水の着流し】――激流を象った紋様が施された着物。纏った者に水の加護を与える。


習得スキル


≪刀・7≫――<流>激流のように切り払う。体勢を崩した相手にはより大きいダメージを与えることができる。

≪太刀・3≫――<朧>勢いを付けて切り上げる。相手の防御を崩すこともある。

≪小太刀・6≫――<貫>的確に一点を貫く突きを放つ。武器の重さによって威力と速度が変化する。

≪直刀・5≫――<八咫烏>攻撃範囲の広い斬撃を放つ。攻撃範囲と威力は武器によって変化する。


残スキルポイント【0】


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