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闘争の世界 ep.20 『最終予選にむけて~闘技場②~』



 それからも戦い続けた結果、休憩のために一区切りを付けた時には俺のレベルは20になっていた。

 戦った回数は僅かに十回。時間も三十分ほどしかかけていない。元々17だったレベルが20になったのを効率的と見るか、非効率と見るか。

 困ったことに狙っていた新しい剣は手には入っていない。それだけを思えばダンジョンに挑んでいた方が良かったのかも知れないが、選ばなかったことについては検証のしようもない。

 頭を過ぎる後悔を振り払うように俺はメニュー画面から使わずに残していたスキルポイントの使い道を考えることにした。



「そろそろ威力が足りなくなってきた感じがする」



では出現したモンスターを倒しきることが出来なくなっていたのだ。例外なのは意外なことに砲撃アーツである<シーン・ボルト>。レベルが上がることで自動的にMPの総量が増した影響なのか放つ鏃の威力も相対的に上昇しているように感じられたのだ。

 とはいえ元々自分の武器に合わないスキルにある例外的なアーツを使っているにすぎない。それを戦闘の主軸に据えて戦うには若干の噛み合わなさが拭えないでいた。

 スキルポイントを消費して強化するとして優先するのはどちらのスキルか。僅かに悩むも答えは簡単に出た。やはり自分が使っている武器に対応したスキルを伸ばして行くべきだろう。

 スキルレベルを上げてしまえば現在使えているアーツは使えなくなってしまう。そういう仕様なのだから仕方が無いこととはいえ、現状使えているアーツを使えなくなるのは何度試しても慣れない。

 それでもと俺はスキルポイントを消費して≪片手剣≫のスキルレベルを上げた。


 所持しているスキルポイントは9。良く貯めたものだと思うが、同時に潤沢な数値ではないことも理解している。最悪の場合全てのスキルポイントを消費したとして<ラサレイト>ほど使い勝手の良いアーツが手に入らない可能性もあるのだから。

 まずは一つと≪片手剣・3≫のレベルを上げる。名称が≪片手剣・4≫になり、使用可能になったアーツが<ダブルスラッシュ>というものに変わった。アーツの説明欄を見るに一度の攻撃で斬撃が二つ発生するのではなく、二連撃の斬撃を繰り出すアーツのようだ。

 問題はそれがどのように使えるか。

 俺が使いにくく感じるのはアーツによって定められた挙動を強引に取らされてしまうもの。<ラサレイト>にはそれがなく、発動させてから自分の思うように攻撃すればその一撃が威力を強化されたものになるものだった。

 <ダブルスラッシュ>はそれが二度続けられるだけのアーツであることを望むがモンスターもいない虚空に向かって使ってみると案の定、俺の持つ精錬された片手剣に光が宿るのと同時に自分が強制的に一定の挙動を取らされてしまった。これでは使えない。戦闘が苦手な人には有用なシステムアシストだったが、どうしても俺はそれに慣れることができずにいた。



「もう一度だな」



 スキルレベルを上げるとそれより下のスキルは消失する。既に<ラサレイト>が使えなくなっているのと同じように、再びスキルレベルを上げることで<ダブルスラッシュ>が消え、新たに<ダブルピアー>というアーツが現われた。似たような名前を持つ二つのアーツであるが故に<ダブルピアー>は二連撃で突きを放つというものだった。勿論システムアシスト付き。これも俺が望んでいるものではない。

 三度スキルレベルを上げる。ものの数分足らずで貯め込んでいたスキルポイントの三分の一を消費してしまっていた。

 ≪片手剣・6≫

 スキルレベルの上限がどうなっているのかは分からないが、それでも一つのスキルのレベルとしては高いように思える。

 今回のアーツは<マルチスラント>。前の二つと同じように連撃のアーツではあるらしいが、それらとは異なり自分の動作に対してシステムアシストは働いていないようだ。



「これなら――いや、だめか」



 動きに制限が掛からないアーツであることは希望の通り。だが<ラサレイト>ほど攻撃の威力が上昇しているようには思えない。二度の攻撃を命中させれば確かに<ラサレイト>よりダメージを与えられるだろう。しかしそれは裏を返せば二度の攻撃を当てなければ高いダメージを出すことができないということ。それでは一発の斬撃で与えられるダメージは<ラサレイト>よりも低くなってしまうのだ。

 モンスターが相手ならそれでも使えるアーツだろう。けれどプレイヤーが相手ならば確実に二撃目は防がれてしまう。よしんば最初の一回は二撃とも命中させられたとしても、次からは確実に防がれる。そんな光景が目に浮かんだ。



「あと、6か。どうにかなれば良いけど」



 更にスキルポイントを消費して≪片手剣≫スキルを上げる。

 ≪片手剣・7≫

 アーツは<ヘビィスラッシュ>。これまで見てきたなかで一番威力が高いアーツだったが、発動させてみると突然剣に掛かった重さにバランスを崩しそうになってしまった。

 慣れればそれでも使いこなせるだろうが、何となく俺には合わない気がした。

 ≪片手剣・8≫

 対応するアーツは<パワーラサレイト>俺が使っていた<ラサレイト>の威力強化版のようだ。使った感覚もこれまで通り。順当な自身の強化ならばこれでいい。そう思って手を止めたはずの俺は、何を思ったのか何かに引き寄せられるかのように更にスキルレベルを上げていた。

 ≪片手剣・9≫

 <デルタスラッシュ>という三連撃のアーツが使えるようになった。が、やはりこれもシステムアシスト付き。こうもシステムアシスト付きのアーツが多いとまるでこの連撃の挙動を体感してみろといわんばかりに思えてくる。

 そして≪片手剣・10≫

 いつしか残るスキルポイントは僅かに二つ。しかしスキルレベルが10になったことでそれまでにはない変化が見受けられた。スキルの名称の真下に『Master』の表記が加わっていたのだ。連動して使えるようになったアーツは<デルタピアー>三連撃の突き技だ。



「ん? これ以上はスキルレベルが上げられないのか。でもその代わりに派生のスキルが習得可能になったみたいだな」



 一人でぶつぶつ呟きながらメニュー画面と睨み合っている俺はこれまでのスキルレベル上昇と同じ手順で≪片手剣≫から派生する二つのスキルを表示させた。

 一つは≪騎士剣≫。文字通り物語に出てくるような騎士が使う剣技をイメージしたアーツが使えるようになるスキル。

 もう一つは≪闘士剣≫。これは俗にいう剣闘士が使っていた剣技をイメージしたアーツを使うスキル。

 そのどちらにも対応している武器が片手剣であり、より正確に言うならば刀や曲剣、レイピアなどではなく、剣と言ってイメージしやすい両刃の片手剣。いわゆる西洋剣だ。

 現状俺が使っている精錬された片手剣はそれに該当するが、出来ることなら早く持ち替えたいと考えている俺にとってはこれらのスキルから一つを選択することは若干憚られた。



「それに盾なんて持ってないぞ」



 ≪騎士剣≫のスキルでは盾を用いたカウンター技もあるらしい。それはスキルの詳細画面でデッサン人形のようなキャラクターがいくつかのアーツを使っているデモ映像を見て知ることができた。

 それに比べて≪闘士剣≫は言っては悪いが粗暴な戦い方をしている。盾で防ぐのではなく、剣で受けて、引き寄せた所で蹴ったり殴ったり。相手を倒すためにより攻撃を意識しているかのような戦い方だ。

 だというのに、俺がこれまでにしてきた戦い方を思えばマッチしているのはどう考えても≪騎士剣≫ではなく≪闘士剣≫。格闘のスキルを使っている身からすれば言わずもがな。



「実質、俺が選べる選択肢は一つってことか」



 スキルポイントを一つ消費して≪闘士剣・1≫を習得する。それと同時に≪片手剣・10≫が消えた。

 使えるようになったアーツは<イグナイト>。説明文を見る限り俺が好んで使っていた<ラサレイト>と良く似た効果を持つアーツだ。



「<イグナイト>」



 試しに使ってみる。

 システムアシストは感じない。刀身に宿るライトエフェクトは何もない虚空を斬り付けたことで掻き消えた。

 発動させてから攻撃を加えるまでアーツの効果は継続するらしい。

 任意のタイミングで使う事ができるそれは俺が望んでいたアーツといって差異はない。



「残り1ポイント。スキルレベルを上げるのはリスクが高いな。だとすれば、新しく何か習得可能になったスキルを探してみるか、次に残しておくか、か」



 自分に言い聞かすように呟きながらメニュー画面にある習得可能スキル一覧に目を通していく。

 見受けられるのは見慣れたスキルばかり。そもそもスキルの発生条件は分かっていないのだ。唯一そうであろうと言われているのが武器を使っているとそれに対応したスキルを習得できるようになるということ。であればそれ以外のスキルはどうやって入手するのか。大半は偶然の賜物。つまり、俺が目を止めた≪竜冠(りゅうかん)≫というスキルもそれに当たる。

 自分が装備している防具と同じ“竜”の文字。それが一段と気になって俺は殆ど迷うことなく≪竜冠・1≫というスキルを習得した。

 これでスキルポイントはゼロになってしまった。だが、まったくと言って良い程後悔はない。それどころか≪竜冠・1≫というスキルが俺にもたらすその名と同じ名称のアーツ<竜冠>の効果を見て俺はずっと決まりかねていたスキルトリガーの最後の一枠が埋まったと確信することができた。

 <竜冠>は自身の背後に紋様を浮かび上がらせて、それが出現している間は使用者の攻撃力を増加してくれるというもの。効果時間は僅か三秒。スキルレベルを上げることで効果時間は伸びていくらしいが、その代わり他のアーツは習得しない。あくまでも<竜冠>を高めていくだけのようだ。



「とりあえず戦ってみるしかないな」



 中断していた闘技場での戦闘を再開することを決めた。

 闘技場での戦闘はこれで通算二十一回目。十回毎に出現するモンスターの強さが跳ね上がるのだとすれば、今度の相手は確実にそれまでのモンスターよりも強い。

 舞台の中心に魔法陣が広がる。

 紫色をした光が魔法陣から天井に向けて迸るといつの間にかその光の中にプレイヤーよりも頭一つ大きな人型のモンスターが立っていた。

 全身に鎧を纏った重騎士。だけど頭がない。頭部の代わりに怪しく揺らめく紫色の炎が灯されている。


『デュラハン・ナイト』


 首の無い馬を伴わずに現われた首なしの重騎士の名だ。

 存在しない頭部でデュラハン・ナイトが俺を見た。腰の鞘から剣を抜き模範的な騎士のように構えると直ぐさま俺も精錬された片手剣を構える。

 互いに戦う意思を見せた。

 デュラハン・ナイトがゆっくりと近付いてくる。

 ガシャガシャと金属の鎧が擦れ合うような音がデュラハン・ナイトが歩く度に響き渡る。

 ドンッと一際大きな音がしたその瞬間、デュラハン・ナイトが俺の目の前で大きく剣を振り上げた。




ユウ レベル【20】


武器


精錬された片手剣――一人前の鍛冶職人が作り出した片手用直剣。かなり頑丈に作られている。


外装防具


【竜玉の鎧】――ドラグライトアーマー。剛性と柔軟性を兼ね揃えた鎧。


内部防具


成竜の鎧――成長を遂げた竜が身を守る鱗の如き鎧。成竜の脚は数多の地形に適応する。


習得スキル


≪闘士剣・1≫――<イグナイト>発動が速い中威力の斬撃を放つ。効果は攻撃が命中するまで持続する

≪砲撃・7≫――<シーン・ボルト>弾丸と銃を使わずに放つことができる無属性射撃技。

≪格闘・1≫――<マグナ>発動後一度だけ武器を用いらない攻撃の威力を上げる。

≪竜冠・1≫――<竜冠>自身の背後に竜を象った紋様を出現させる。紋様が出現している間は攻撃力が増加する。効果時間【スキルレベル×3秒】


残スキルポイント【0】


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