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R:ep.04『剣士、自分の戦いの影響を知らぬ』



 プラスチックのような硬質なケースをいくつも地面に並べながらユートとタークは建物の影に隠れている。

 屋内で隠れなかったのは逃げ場が無くなるとタークが言ったから。ここでのやりかたを自分以上に知るタークの忠告だからとユートはその言葉を受け入れていたのだった。



「見つかったのは回復ポーションが六本、二人で分けるなら一人三本か。これで足りるのか?」

「十分とまでは言えませんが、最初の戦闘で獲得出来た数とすれば上々かと。それよりも……」



 そこで一旦言葉を句切り別のケースへと手を伸ばす。



「道具がいくつか手に入ったことのほうが大きいです」



 一つのケースの中に入っていたのは地図の切れ端のようなものと単眼鏡。別のケースの中には用途不明の金貨のようなものがある。

 幸運にもそれらは二個ずつ。現在の自分達の人数に照らし合わされたかのように見つかったのだ。



「この『地図の切れ端』は使うことでコンソールの簡易マップの表示範囲が広がります。『単眼鏡』は主に探索に使います。金貨はこちらのショップで使う専用の通貨です」



 一通りの説明を口にすると、そのまま『地図の切れ端』を手に持って使用した。といっての特別な手順が必要というわけではないらしい。ただ、手で持つだけで自動的に使用されたようだ。

 タークに倣いユートも『地図の切れ端』を使用した。すると視界に映っていた周囲を映した簡易マップが若干広がったように感じられた。



「それにしてもさっきのあれは何だったんだ?」

「さあ? 何かの不具合だったのかもしれませんね」



 マップを拡張して金貨と単眼鏡をストレージに収めるとユートは納得がいっていないという顔で呟いていた。

 実は先程の戦闘の際に感じたシステムアシストの消失という現象だが、それから暫く経った頃に復旧されていた。

 ユートがそれに気付いたのは奇しくもガンブレイズを半分近く崩れていた壁を壊す鈍器として用いた時。壁の中にあるのは件のケース。探索の合間に亀裂の隙間からそれを見つけたのだ。手近なものに壁を壊す道具になりそうなものはない。そのために妥協案として専用武器であるガンブレイズを使うことにしたのだ。

 攻撃が目的ではない。だからこそ銃形態のままそのグリップ部をハンマーのようにして壁を穿ち始めたその時だ。まるで一つの打撃攻撃として体を成したかのような動きが自分の意識の外で行われたのだ。

 ハッとしたようにガンブレイズを剣形態に変えると、その場で武術の型のようにガンブレイズを振るってみた。結果は素人剣術などではなく、最低限形になっている動きができた。つまりシステムアシストが問題無く働いているというわけだ。

 見つけ出したアイテムの分配を終えてそのようなことを思い出していると突然タークが顔を上げて真剣な目をして単眼鏡を使い何かを探し始めた。



「ど、どうしたんです?」

「シッ。静かに」



 短く注意するタークがとある一点で動きを止めるとそちらへ指を指す。



「おそらく敵です。どうします? 撃退しますか? それとも隠れますか?」

「俺達が見つかっている可能性は?」

「見た感じ周囲を警戒して移動しているようですからまだ見つかってはいないと思いますが」



 ユートも単眼鏡を取り出しタークが指差した方向を見る。そこにはタークが言うように辺りを警戒しながら歩いている三人組のプレイヤーがいる。それぞれの武器は槍、両手剣、片手剣。見事に近接寄りのプレイヤーが集まっているようだ。



「数的不利は否めません。本来なら戦闘を回避すべきだと思いますが」



 タークが自分の意見を告げる。

 実際問題実力にそこまで大きな差が生じていない現状ここで攻め立てる必要性は低い。無理に攻撃する必要はないように思うが。

 暫し考え込んでいると自分達の思惑とは違う所で事態が動いた。例の三人組に別の三人組のプレイヤーが攻撃を仕掛けたのだ。

 攻撃を仕掛けたプレイヤーの中には杖を掲げた人が二人。防具は規定のそれのままであることからも自分達とさほど変わらない実力であることは想像できた。



「行きましょう! 攻撃を仕掛けたのは此方の陣営です!」



 ユートの返事を待たずタークは駆け出していた。

 タークの手にはいつのまにか取り出していた投擲用のナイフが握られている。

 杖を掲げたプレイヤーの魔法だろう。断続的な爆発が起った。



「拙い。この爆発は――」

「どういうことですか?」

「他のプレイヤーが集まってくるんです。倒すのなら早くしないと」



 そう言って素早くナイフを投げる。

 戦闘に入り警戒心を高めていたのだろう。両手剣を持ったプレイヤーがタークに狙われたであろう槍を持ったプレイヤーの前に立ち塞がる。カキンッと甲高い音を立てて弾かれたそれは地面に転がると瞬時に消滅した。



「ぐあっ」



 短い悲鳴がする。

 魔法を放っていた二人のプレイヤーの前に出て壁役を担っていたプレイヤーが剣に槍に貫かれていたのだ。

 HPを失い消える一人のプレイヤー。倒した槍を持ったプレイヤーも数発の魔法を受けて満身創痍といった様相だった。



「はあっ」



 タークの横を通り抜けてそのまま両手剣を持ったプレイヤーさえ通り抜けるとそのまま槍を持ったプレイヤーに向けて横薙ぎの斬撃を放つ。

 すでに少なくはないダメージを受けていたからだろう。ガンブレイズの攻撃を受けて槍を持ったプレイヤーはその場から姿を消した。



「残り二人!」



 そう叫んだのは誰だったか。

 奇しくも攻撃を仕掛けた方も仕掛けられたほうも人数を一人削られて二人となっている。だがユートのいる陣営【ブルーイースト】は自分達を含めると四人となって元より一人増えた形となった。



「くそっ。逃げるぞ」



 素早く撤退の意を示したのは片手剣を持ったプレイヤー。

 逃がしては好機を逃すと杖を掲げた二人のプレイヤーは両手剣という重い武器のために動きが遅くなっているプレイヤーにそれぞれが得意とする魔法を放ったのだ。

 左右から挟み撃ちになるように放たれたのは炎と雷の魔法。真紅に燃える炎と眩い閃光を放つ雷は的確に両手剣を持ったプレイヤーを捉える。

 身を焦がしてダメージに耐えるもHPはみるみる削られていく。それでも倒しきるまでには至らなかったがタークのナイフによる追撃が残るHPを削り取っていく。

 その場から姿を消した両手剣を持ったプレイヤーを目の当たりにして片手剣を持つプレイヤーは顔を青ざめさせていた。



「リックっ!」



 叫んだそれは両手剣を持ったプレイヤーの名前だろう。

 諦めたように、また意を決したように片手剣を構えるプレイヤーは一矢報いるべくがむしゃらに襲いかかって来た。



「ユートさん!」



 切っ先を向けられたのはユート。距離を取り攻撃を仕掛けている杖を持つ二人組やナイフを投げるという攻撃を使うタークには刃が届かないと判断したのだろう。その為にまだ攻撃が届きそうなユートを敵として捉えたということのようだ。



「大丈夫っ」



 剣形態のガンブレイズを使い片手剣と打ち合う。

 至近距離での剣の打ち合いとなり魔法攻撃による援護やナイフによる援護攻撃は躊躇してしまう。

 結果的にユートと片手剣のプレイヤーによる剣戟が繰り広げられる。

 一瞬の隙を突くようにそれぞれの攻撃は相手の体を掠める。HPは確実に減っていっているとはいえ未だ致命傷とは成り得ていない。

 下手に時間だけが過ぎてしまう。このままではどちらの陣営かも分からないプレイヤーが集まって来てしまう。そう思ったユートは一段集中して攻勢を強めていった。



「セヤアアッ」



 気合いを込め片手剣を打ち上げる。

 体が仰け反り、無防備を曝す片手剣のプレイヤー。

 このチャンスを逃すわけにはいかないとユートは語気を強めて、



「<光刃(セイヴァー)>!」



 アーツを発動させて正面のプレイヤーを一刀両断した。

 消える【レッドウエスト】所属のプレイヤー。

 この場での戦闘は一段落した。だが、気を抜くことはできない。杖を持った二人組とは軽く挨拶をして別れ、ユートはタークと共にその場から離れて別の隠れられそうな場所を目指して移動を始めた。

 ちょうどその頃。

 ユートが知らないところで最初の戦闘が折り返しを迎えていた。

 この場合の折り返し、それはどちらかの陣営の残り人数が半数を切ったということ。そして今回先に半数を切ったのは【ブルーイースト】の方。

 ユート達の勝利などお構いなしというように戦局を表わす天秤は不利に傾いていたのだった。




ユート

レベル【14】ランク【2】

所持スキル

≪ガンブレイズ≫

≪錬成≫

≪竜精の刻印≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪状態異常耐性・全≫

≪HP強化≫

≪MP強化≫

≪ATK強化≫

≪DEF強化≫

≪INT強化≫

≪MIND強化≫

≪DEX強化≫

≪AGI強化≫

≪SPEED強化≫

残スキルポイント【6】



――――――――――



【作者からのお願い】

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