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R:ep.21『剣士、己と向き合う・後編』



「これはなんだ?」



 正面に座する二体の石像を怪訝に見る。

 自分だからこそ分かるのだ。これがただの石像なんかではないことを。無機質な灰色に包まれてこそいるが、その内側からは確かな存在感が放たれていることを。



『ここにあるのはあなたがつちかってきたちから。さあ、えらんで。あなたがとりもどすのはどっちのちからなの?』



 石像の台座に突き刺さっていたそれぞれの武器が物音を立てずに浮かび上がる。

 過去の石像(じぶん)の前には剣と銃二つの顔を持つ武器。ガン・ブレイズという銘を持つそれが。

 現在の石像(じぶん)の前には直刀が。

 どちらも自分にとって慣れ親しんだものとなっているのは間違いないが、何故この二つから選ぶのだろうという疑問が解消されていないままなのだ。

 そもそも過去の自分は消えたはずなのだ。だから新しいユートというキャラクターを作ったのだからこその不可解。これではまるで過去の残滓が自分の前に立ち塞がっているかのよう。真っ新に新しい自分などどう足掻いても作れるはずがないといっているかのようにすら思えてしまう。

 過去を忘れたいとも、過去が失敗だったとも思わないし言わない。けれど、過去の役割は綺麗に終えた。そう思っていたからこそこの状況が納得出来ないものになっているのだ。



『どうしたの? えらばないの?』

「俺がどちらかを選んだらどうなるんだ?」

『それがあなたのちからとしてもどるだけ。でも、たぶん、こっちだといみがない』



 そう言って光の存在が指差したのは現在の石像。過去と現在、その二つを比べた時にどちらがより強いかなんていうのは明白。装備や所持していたアイテム云々は別にしても、元々の能力値に差がありすぎる。



「だったら選択肢なんてないようなものじゃないか」

『それでも、えらぶのは、あなた』



 選ぶ事に責任が生じるのなら、それは限られた選択肢であっても同じなのだと言っているかのように思えた。

 選択肢を与えた光の存在はあくまでも与えただけ。そこからは全て自分の責任なのだと。



『えらんで。もう、じかんがない、よ』



 淡々とそれでいてどこか機械的に話す光の存在がまたしても促してきた。



「どういう意味だ?」



 思わず強くなる口調で問い掛ける。

 すると光の存在は、宙に浮かぶ一枚の絵画に視線を向けた。

 どこかの景色を切り取った静止画だったそれの表面に突然ノイズが走ったかと思うと、次の瞬間違うものを映し出した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「くっ、ユートさん」



 城石ががくっと膝から崩れ落ちる。

 手を伸ばした先の地面は大きく抉られ、地面から生えた棘は満足したというようにゆっくりと収縮していった。



「城石さんは早くここから離れてください。後は私達がソーンスライムを倒します!」



 声を荒げそう告げたフォラスはがむしゃらに矢を放つ。

 空に向かって放たれた複数の矢は最高度に達した所で光を帯びると無数に分裂し降り注ぐ。弓スキルのアーツ<五月雨(さみだれ)>と呼ばれている攻撃である。



「うおおおおおっっ」



 寡黙だったパロックが矢の雨を器用にも避けながらソーンスライムに攻撃を加える。

 その反対側ではセイグウが同じようにソーンスライムに重い一撃をお見舞いしていた。



「おっと、こっちを無視してもいいのか?」



 ソーンスライムの反撃はまず矢を放ったフォラスに向いた。

 触手のうちの一本がまるで槍のように伸びて彼女を貫こうとしているのだ。だが、その一撃はフォラスに命中する前に立ち塞がったパロックが防御した。となれば次に狙われるのは当然パロック、そしてなおも攻撃を続けているセイグウだ。フォラスに比べ近接戦闘に重きを置いた能力値をしているこの二人には触手一本では効果が薄いと判断したのだろう。ソーンスライムはユートを葬った時と同じように、地面に潜ませた触手を無数の棘を伴って出現させたのだ。

 しかし、その攻撃を件の二人は軽々と回避してみせた。

 背後から狙われたユートとは違い正面から迎え撃ったことでほんの僅かな攻撃の予兆というものを掴むことができていたのだ。

 三人に攻撃が向けば当然その反対側にいるマキトは自由になる。

 セイグウやパロック以上に最接近したマキトは余裕のある笑みを浮かべて思いっきり己の武器を振るった。


 悲鳴を上げることなく体を震わせることでダメージを表現するソーンスライムはその頭上にある残っている二本のHPゲージのうちの一本を4分の1近く減少させていた。

 触手を用いた多彩な攻撃が持つ威力やその見た目に反した素早い挙動に比べて打たれ強さはそこまでではないのか一般的に強攻撃と呼べるものでダメージを与えることができる。懸念材料といえばアーツを発動させた攻撃と、ただの強攻撃でも与えらえるダメージにそこまで差異がないことだろう。

 けれどそれは裏を返せばクールタイムのあるアーツを使う必要がないということ。攻撃のテンポを速めるにはこの方が適しているとすらいえる。



「せやっ」

「ふんっ」



 パロックとセイグウの気合いを込めた一撃が重なる。

 そして再びマキトが渾身の一撃を繰り出すとそれらをまともに受けたソーンスライムは二本目のHPゲージを消滅させていた。



「残り一本ですっ。ソーンスライムの挙動の変化に注意してください」



 警戒を促すフォラスの声が通る。

 それぞれが武器を構え、気を引き締めた戦闘は終盤に突入した――かに思えた。

 事実、ソーンスライムに残された最後のHPゲージは程なくして消滅した。しかし、それだけ。ソーンスライムそのものは健在のまま戦闘が終結するような気配は微塵も感じられなくなっていた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「どういうことだ? どうしてあのモンスターは消えない? どうして皆が疲弊しているんだっ?」



 困惑して叫んだところで知る由もなかったが、絵画を用いて再生されたのはリアルタイムの映像なんかではなくその差僅かに数十秒だとしても過去の映像を見ているに過ぎなかった。

 マキト達の疲弊の理由が延々と終わることの無い戦闘に精神が疲れていっているからだけではないことをこのときの自分はまだ知らなかった。



『それがゆがみ。あなたがたださないかぎり、かれらのたたかいはおわらない』

「そんな――いや、それだったら、逃げ出せばいいはずだ。シアンドッグはテイム出来たんだ。目的は果たせたはずだろう」



 彼らに聞こえるはずもないのに思わず声を荒らげてしまう。しかしそんな考えはいとも簡単に否定されてしまう。



『にげだすことは、ふかのう。いま、あのばしょは、あるしゅのとざされたばしょ、になっているから』



 何故かその言葉に嘘が無いと思ってしまった。つまり彼らは文字通り終わりの無い戦闘に強制的に挑まされているのだ。



「それなら敢えて自分のHPを全損させれば――」

『ほんき?』

「…まさか」



 自嘲気味に笑う。

 自分の口から出た言葉にあり得ないと思ってしまうのは、それをしたところで戦闘から逃れられる保証がないことを理解しているからだ。

 そもそもあの保護区内でのリスポーン地点は保護区の入り口付近にあった小屋の中になっているはず。そうでないのなら最後に立ち寄った町がそうなっているはず。

 保護区の小屋ならばまだいい。しかし別の町になっているのだとすれば、もしそこまでソーンスライムが追いかけてくることがあるのだとすれば、この終わりの無い戦闘を他者にまで強いることになってしまう。それだけは避けようとするはずだ。


 だから戦い続けている。

 HPゲージという目に見える指針を無くし何時終えるともしれない戦闘を続けることは想像以上の疲弊を伴うとしても。



『えらんで。あなたがとりもどすのは、どっちの、ちから?』



 いよいよ選択肢が狭まられてしまった。けれどその選択肢は当然で、正解で。

 頭では理解しているし納得している。そのはずなのにどういうわけか自分の体は思うように動いてはくれない。



「あー、もうっ、じれったい。決めるならパッと決めなさいよね!」



 突然自分のものとも光の存在のものとも違う声が聞こえてきた。

 驚き目を丸くする自分の目に飛び込んできたのは過去の石像(じぶん)の中から飛び出してくる小さなボールくらいの大きさの光。透き通る青色のほわほわとした綿毛のような光が旋回しながら空へと向かうと途中でポンッと弾けて、



「まったく、アンタってそんなに優柔不断だった?」



 中から小さな妖精が姿を現わしたのだ。

 金糸のような髪は腰まで伸びて、背中には先程の光と同様のクリアブルーの羽。纏っているドレスは雲のように白く、その瞳は青空のように強い意思を秘めた輝きがある。



「ちょっと、聞いてるの? ねえってば――」

「り、リリィ?」

「そうよ。それ以外の何だって言うのさ」

「や、だって――リリィは――」



 消えたはず。そう言おうとして言葉を詰まらせた。

 過去、確かに消えたはずの存在が現在(いま)目の前にいる。言葉にしてしまえばその事実が消えてしまいそうで言えなかったのだ。



「消えたはずって? まあ、アタシもそう思ってたんだけどさ、どういうわけかこうして無事にいるってわけなんだから別にいいじゃない」

「別にって……ハッ、ならフラッフは――」



 期待を込めて視線を向けるもそれはリリィの僅かに曇らせた表情(かお)が物語っていた。



「そう、か。そうだよな。リリィがいることすらあり得ないって思ったのに」

「でもあの子はこの世界にいるんじゃない? だってここにはいなくても、消えたって感じはしないもの」



 過去の石像を指差しながらあっけらかんと言った。

 あの時の顛末。世界に竜となって放たれた自分の力。そこにフラッフの意思があったのだとすればリリィの言うことは間違ってない。



「にしても、相も変わらず変なのに懐かれるのね」

「どういうことだ?」

「それ。今のアンタが紡いだ縁ってやつでしょ」



 リリィが指差した先。それは自分の足元。居たのは一匹の猫だった。



「なー」

「…お前」



 それは先程ソーンスライムから助け出した途端に自分と共に貫かれて倒れた仔猫のモンスターだった。



「オマエ? 変な名前ね」

「や、それは名前じゃなくて。ってか、どうして。さっきまでいなかったのに」

「アタシみたいに飛び出してきたんでしょう。アンタがうじうじと迷っているみたいだったから」

「へ?」



 見ればリリィからは過去の石像に、仔猫からは現在の石像に伸びる一本のラインのようなものがあった。

 つまり先程のリリィと同様、石像の中から出現したということだろうか。



『もう、じゅんばんがぎゃくになった』

「順番?」

『えらんだあとに、おしえること、だったのに』



 どことなくふてくされた様子の光の存在がいった。



『まあ、いい。えらんで。どっちをとりもどす、の?』



 変わらずに選択を迫ってくる。

 これまでは取り戻せるのが自分の力だけと思っていた。けれど、今は違う。それぞれの力には別の存在が紐付いている。



「選ばなかった方はどうなるんだ?」

『きえる』



 感情の起伏の無い言葉に思わず息を詰まらせた。

 消えると知ってなおどちらかを選ぶとなれば先程よりも迷ってしまう。



「ねぇ」

「ん? どうした?」

「あれ。助けたいのよね?」



 絵画を指差しながらリリィが訊ねてきた。



「あ、まあ」

「んで、アタシやその子も助けたい……というか見捨てられない」

「悪いか?」

「んーん。アンタらしいって思って」

「俺らしい?」

「うん。アタシが知ってる見た目はこっち。で、その子を助けた時の見た目はそっち。でも、本当の見た目は今のその姿なんでしょ?」



 過去と現在、そして現実。三つの自分を指差しながらリリィがいった。



「でも全部アンタ。中身は一緒。ならさ、どれかを選ぶ必要なんてなくない?」

「いや、選ばなきゃいけない――んだよな?」



 思わず光の存在を見た。

 表情はおろか顔のない光の存在は何故か否定も肯定もしてこない。



「いいのか?」

『なにが?』

「できるのか?」

『さあ、えらんで』

「俺が取り戻したいのは――」

『あなたがとりもどすのは?』



 あるはずのない光の存在の視線と自分の視線が交差する。

 それはまるで試しているかのようで、それでいて全てを受け入れているかのようで。



「『全て』だ!」



 刹那、石像の表面が砕け散る。

 内部から現われた自分、過去の『ユウ』と現在の『ユート』。二つの存在(じぶん)が眩い輝きを放つ。

 二体の前に浮かぶ武器が重なるように交差した。



『つかんで。それが、あなたが、とりもどすべき、ちから』



 言われるがまま手を伸ばす。

 二つの武器が作り出した渦の中に手を突っ込む。そしてその中にある『何か』を掴んだ。



――キャラクターデータの再構築を開始します。



 突然どこからとも無く無機質なシステムメッセージが聞こえてきた。

 それと同時に見えてくる掲示板のログのようなもの。



――キャラクターのランクの統合を開始します・・・・・・・・成功。ランク【2】になりました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――キャラクターのレベルの統合を開始します・・・・・・・・失敗。レベル【12】になりました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――パラメータの統合を開始します・・・・・・・・・成功しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 システムメッセージを聞きながら二体の自分が現実の姿を模した自分に重なる。

 足元から順に光二包まれ、光の中から二つの自分を織り交ぜたような新たな自分が姿を表わした。



――スキルの統合を開始します。


――専用スキル≪ガン・ブレイズ≫と≪直刀・Ⅹ≫を統合・・・・・・・・・成功。新スキル≪ガンブレイズ≫が生成されました。

――アーツ<インパクト・スラスト>が消失しました。

――アーツ<アクセル・スラスト>が消失しました。

――アーツ<サークル・スラスト>が消失しました。

――アーツ<インパクト・ブラスト>が消失しました。

――アーツ<アクセル・ブラスト>が消失しました。

――アーツ<オート・リロード>が消失しました。

――アーツ<一閃(いっせん)>が消失しました。

――アーツ<光刃(セイヴァー)>を習得しました。

――アーツ<琰弾(カノン)>を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 装備している靴はユートの時のショートブーツに似ている。但し施されている装飾はユウの時のもの。



――装備『魔導手甲』が消滅したことによりスキル≪ガントレット≫が消失しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪ソウル・ブースト≫が消失しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪鍛冶≫がスキル≪錬成≫に統合されました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪調薬≫がスキル≪錬成≫に統合されました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪細工≫がスキル≪錬成≫に統合されました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪調理≫がスキル≪錬成≫に統合されました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪錬成≫によって作成できる項目が追加されました。



 下半身を覆っているのはユウの時と同じデザインをしたパンツ。左の太股と腰周りにある複数の小さなポーチはユートの時に制作しようと思っていた『魔法の袋』だ。



――スキル≪採取≫が消失しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪採掘≫が消失しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 インナーは簡単なデザインの長袖シャツ。アウターはユウのものとユートのデザインが混ざり合ったファンタジー感満載のショートコート。背中に施されている刺繍はどことなく竜の翼を彷彿とさせる。



――スキル≪自動回復・HP≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪自動回復・MP≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪状態異常耐性・全≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 腕に現われる薄い金属製のアームガード。左右で違う紋様が刻まれたそれは銀色に輝いている。



――スキル≪HP強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪MP強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪ATK強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪DEF強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪INT強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪MIND強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪DEX強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪AGI強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪SPEED強化≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。

――スキル≪LUCK上昇≫が消失しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 腰の後ろに現われた武器を納めるためのホルダー。施された銀の装飾はその全体にまで及ぶ。



――スキル≪始原(しげん)紋章(もんしょう)≫が変異します。

――スキル≪竜精(りゅうせい)刻印(こくいん)≫を習得しました。

――スキルポイントの獲得に失敗しました。



 顔の作りはユートのまま。髪の色も銀に近い白髪。瞳の色は紅玉(ルビー)のように紅く。



――必殺技(エスペシャル・アーツ)<ブレイジング・エッジ>を習得しました。

――必殺技(エスペシャル・アーツ)<ブレイジング・ノヴァ>を習得しました。



 渦の中から取りだした武器はその姿を変えていた。

 刀身は直刀のそれから一回り大きく。柄の部分を動かすことで刀身が開き現われる砲身はまさにガン・ブレイズの頃のもの。

 スキル名に倣うのならばこの武器の銘は『ガンブレイズ』。剣と銃、二つ顔を持つのではなく、その二つが完全に合わさった武器。

 腰のホルダーにそれを収めると自動的に砲身は刀身の中に収納されたようだ。



――キャラクターの再構成が完了しました。



 システムメッセージに続いて見えていたログも消えた。



「それじゃあ、アタシとこの子は戻るわね。あ、それはさておき、アンタのことなんて呼べば良いの? ユウ? それともユートってやつ?」

「あー、そうだな。やっぱりユウは消えたって感じがするからさ、ユートで頼むわ」

「オッケー。そうだ、この子の名前、早く付けてあげなさいよ。良いわね?」

「ああ、わかっているよ」

「じゃあ、またねー」

「なー」



 リリィと仔猫が共に光となって自分の体に吸い込まれた。

 残されたのは自分と光の存在だけ。



「これでいいのか?」

『ちょっと、よていとは、ちがってる、けど、だいじょうぶ』

「で、俺ならあのソーンスライムを倒せるんだよな?」

『もんだいない。ゆがみをただせるのは、しかくのあるものだけ、だから』

「資格ね。まあいいや。さあ、俺をあの場所に戻してくれ」

『わかった』



 何故こうなったなどということはよく分かっていないけれど、これからすべきことははっきりしている。それが出来る力が自分にあるのだとすれば、迷う必要なんてない。

 光の存在の一言に続いて現われた巨大な扉。宙に浮かぶそれは独りでに開いた。



『がんばって』

「ああ。やってやるさ」



 力強く答えて扉を潜る。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 一瞬の閃光の先にあった光景はまさしくソーンスライムとの戦闘の真っ只中だった。



「え? ユート、さん?」

「おう。大丈夫ですか?」

「どうして?」

「説明は後です。とりあえず、ここは俺に任せてくれませんか?」



 突然現われたユートに真っ先に気付いたのはマキトだった。

 それまで姿を消していた人。そして一番弱いはずのプレイヤーの口から出た一言にマキトは信じられないという顔をした。



「大丈夫。俺ならアイツを倒せますから」



 自信に溢れた笑みを向けられたマキトは不思議と胸を撫で下ろしていた。これでこの戦闘が終わる。そう感じて。




ユート

レベル【12】ランク【2】

所持スキル

≪ガンブレイズ≫NEW

≪錬成≫

≪竜精の刻印≫NEW

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪状態異常耐性・全≫NEW

≪HP強化≫

≪MP強化≫

≪ATK強化≫

≪DEF強化≫

≪INT強化≫

≪MIND強化≫

≪DEX強化≫

≪AGI強化≫

≪SPEED強化≫


残スキルポイント【0】



――――――――――



【作者からのお願い】

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